より良い骨髄採取法の開発(4:14)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私は小児ガンの医師で、スタンフォードで幹細胞の研究もしていますが、そこでは主に骨髄移植に携わってきました。ジル・ボルト・テイラーが去年人間の脳を持ってきた事(注:2008年にTEDで発表された『ジル・ボルト・テイラーのパワフルな洞察の発作』で本物の人間の脳を持ってきたこと)に刺激され、1リットルの骨髄液を持ってきました。骨髄液は、実際に多くの患者さんを救うため私達が使用しているものです。その患者さんのほとんどは、白血病、リンパ腫、その他の進行した悪性腫瘍を抱えています。
数年前、私はスタンフォードで移植の研修生をしていました。私は手術室にいて、そこにはドナー志願のボブがいました。私達は国内のある白血病の子供の命を救うため、彼の骨髄液を送ろうとしていました。実際どうやって骨髄液を採取するのでしょう? 手術室のメンバーはそろっているし、一般的な麻酔設備、看護士、そして私の前には他の医者もいます。ボブは手術台にいます。このような小さい針 ―― それほど大きくない針を使います。やり方はこうです。基本的にこれをやわらかい組織に貫通させ、固い骨に穴をあけるのです。尻の中に――これは専門用語です――そして骨髄液を10ml吸引します。毎回、注射器で。それを看護師に渡します。彼女はそれを容器に入れ、私に返します。これを何度も繰り返します。大体200回くらい。最後には腕は痛み始め、手にはタコができます。ボブは言うまでもありません。彼のお尻はこんなスイスチーズの様になってしまいます。
私が思ったのは、この処置は40年間変わっていない――もっといい方法があるだろうということでした。そこで考えたのは、器具を最小限に挿入する方法です。新しい装置、メローマイナ―(骨髄採取器)です。これだけです。ではメローマイナ―の機能をお見せしましょう。
患者の模型です。骨に何十回も針を挿入する代わりに、腰の前か後ろに一回だけ挿入します。それから弾力性のある電動カテーテル――それには針金の輪が先端に付いていて、腰の固い骨の内側の輪郭に沿って動きます。こうして、とても速く、たくさんの骨髄液を1つの穴から吸い出すことができます。同じ穴からいくつもの経路も作れます。ロボットも必要ありません。ボブは1つ穴をあけるだけで、非常に素早く局所麻酔で外来で骨髄液採取ができるのです。
スタンフォードで少額の交付金をいただいたので、試作品を作り少し実験をしてみました。私達のチームはこの技術を発展させ、最終的に2匹の大きな動物、つまり豚での研究をしました。驚いたことに、結果は、普通の採取器に比べ骨髄液だけでなく10倍もの幹細胞の活動を含んだ骨髄液をこのメローマイナ―で採取することができたのです。この方法は昨年FDAによって認可されました。
実際の患者です。針金が柔軟にカーブに沿っていますね。同じ患者の同じ穴から2回吸引します。これは局所麻酔で外来で行われました。そして私達はまた従来より3倍から6倍も多くの幹細胞を同じ患者から採取出来ました。
これは私たちに重要な物でしょうか? 骨髄液は成体幹細胞の宝庫です。皆さんは胚性幹細胞をご存じですね。大きな可能性がありながら、まだ臨床試験はされていません。成体幹細胞は、私達の骨髄の中に造血幹細胞も含め体中にあります。私達はそれを40年以上幹細胞治療に利用してきました。ここ10年間で骨髄幹細胞の利用は激増し、様々な病気を治療しています。心臓病、血管の病気、整形外科、再生医学の患者の治療。また神経病学ではパーキンソン病や糖尿病にまで。
私達は今年 『メローマイナ―2.0』を商品化しました。これがより多くの幹細胞を採取する手掛かりとなり、よい成果をあげられることを心待ちにしています。これのおかげで、より多くの人が骨髄ドナー登録し、人命救助をしてくれることでしょう。さらにあなたが自分の骨髄幹細胞を若くて健康な時に預け、将来利用するという事が可能になるかもしれません。最後に――ここに骨髄移植成功者たちの写真が一枚あります。こうして彼らはスタンフォードで毎年集っているのです。この技術により、将来この写真の中により多くの人々を見られることを望んでおります。
ありがとうございました。
ダニエル・クラフトが彼の骨髄採取器(メローマイナー)をデモンストレーションします。
この新しい装置は骨髄液を素早く採取し、ドナーの痛みを最小限に抑えることができます。
彼は、成人骨髄液中の幹細胞はパーキンソン病から心臓病までの多くの末期症状の治療に利用可能と説いています。