学習障害に対するセカンドオピニオン(9:01)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私が10歳のとき、医学生のいとこが、彼の大学を案内してくれました。特別にと、病理学研究室に 私を入れてくれたのです。彼は、瓶に入っていた人間の脳を取りだし私の手にのせてくれました。そこには、人間の意識の源――人間の体を司るものがのっていました。そのときです。大人になったら神経学者か科学者になると確信しました。
それから何年も経過して、私の夢は叶いました。博士号のテーマは、神経に起因する子どもの失読症でした。そのときに私が直面した驚きの事実を今日はお話しします。6人に1人の子どもが発達障害を抱えると推定されています。発達障害とは、子どもの精神的発達が遅滞し、一生続く精神障害の原因となるものです。この会場にいる皆さん誰もが、発達障害の子どもを1人は知っている計算になります。
しかし私が困惑したのは、このような障害は例外なく脳から発生しているのに、そのケースのほとんどが、目に見える行動だけを基準に診断されているのです。実際に脳を見ず脳の障害を診断するのは、心臓に問題がある患者の心電図や胸部のX線写真さえ撮らずに、身体的症状を頼りに治療するようなものです。脳障害の正しい診断や適切な治療には、まず脳を見る必要がある、というのが私の直感でした 。行動だけを観察していると、子どもの問題の肝心な部分を見逃したり、ときには誤った理解に至ります。しかし、これだけ医療技術が進歩しているにも関わらず、6人に1人が抱える脳障害の診断法は、あまりにも決まりきったものでした。
そんなとき、ハーバード大学のチームを知ることになりました。彼らは、ある高度な医療技術を、脳の研究ではなく脳障害をもつ子どもの診断に適用するところまで来たのです。その革新的な技術とは、脳波――すなわち脳の電気活動をリアルタイムで記録します。脳の様々な働きを観察することができて、視覚・注意力・言語・聴覚を司る働きの異常が少しでもあれば見つけ出すことができます。脳電気活動図と呼ばれるプログラムで、異常な電気信号の場所を特定します。統計的確率マッピングという別のプログラムが数学的計算を行い、異常を示すものが臨床的に重要かどうか判定します。子どもの脳神経の症状に正確な診断を下すことができるのです。そんなわけで、私は神経生理を扱う部門を指揮することになりました。この技術を用いて、脳障害をもつ子どもたちをやっと助けられるようになりました。インドでも、この技術を立ち上げる最中であることを嬉しく思います。
ある男の子の話を紹介します。ABCニュースでも取り上げられた、7歳のジャスティンです。彼は我々の診療所に来る前、重度の自閉症と診断されていました。自閉症の子どもに多いように、彼は心を閉ざしていました。ジャスティンは、時にうわの空になることもありました。両親は、医師から、ジャスティンが社会性を身につけるのは無理だろうと言われていました。また、言葉の習得の難しさも指摘されていました。
我々が、革新的な脳波技術を使ってジャスティンの脳を実際に観察したとき、驚く結果が出ました。ジャスティンが自閉症ではないとほぼ確実に言える結果が出たのです。肉眼だけでは特定できない――てんかん発作を患っていましたが、自閉症の症状に類似した――症状を引き起こしていました。抗てんかん薬を飲んでから驚く変化がありました。60日もしないうちに、彼の言葉は数える程度から300に増えました。コミュニケーションも劇的に向上し、普通の学校に入り、空手でも優秀な成績を収めました。
自閉症と診断された子どものうちの約半数は、目に見えないてんかん発作が原因だという研究結果が出ています。これは私が検査をした子どもたちです。皆、ジャスティンと同じ境遇にいたのです。どの子どもたちも、我々の診療所を訪れる前に自閉症、注意欠陥・多動症、知的障害、言語障害という診断を受けていました。私たちの脳波スキャナーで、脳に隠れた特定の問題があることがわかりました。彼らの行動を判断するだけでは絶対に発見できなかった問題です。このような脳波スキャンは、子どもたちに、より正確な脳神経の診断をすることができ、より適した治療をすることができます。
発達障害の子どもたちは、長いこと、誤診のために本来の問題を見いだしてもらえず、悪化するまま見捨てられてきました。そして、このような子どもと親は、長い間ひどい苛立ちと絶望感に苛まれてきました。しかし、我々は神経科学の新しい時代におり、リアルタイムで脳の機能をじかに見られるようになりました。それに伴うリスクや副作用はなく、障害をもつ多くの子どもたちの本当の原因を、痛みを伴わずに突き止められます。
皆さんが、発達障害に苦しむお子さんがいる方を一人でもご存じなら、この革新的な診断方法をぜひお伝えください。一人でも多くの悩みが解消できるかもしれません。もう1人の子どもの心が扉が開き、誤診されていた子ども――または、従来の方法で診断さえされていなかった子どもの本当の可能性に気づけるのです。そこには、まだ、回復するだけの時間があります。方法は簡単。彼らの脳波を観察するだけです。
ありがとう。
子どもの発達障害の一般的な診断の仕方は、彼らの行動を観察することですが、アディティ・シャンカーダスは脳を直接見るべきだと言います。シャンカーダスの研究所にある驚くべき脳波図計が従来の間違った診断を明らかにし、子どもたちの人生を変えた様子を語ります。