細菌を使ってガンの早期発見と治療を(4:11)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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ご存知でないかもしれませんが、我々の体内にいるバクテリアは天の川銀河にある星の数より多いのです。この興味深い体内のバクテリア環境は、我々の健康に不可欠なものです。テクノロジーの急速な進化のお陰で、今やコンピューターをプログラムするようにバクテリアにプログラムを書き込みできます。
この略図をご覧下さい。何かスポーツゲームの様ですが、私が開発した最初のバクテリア・プログラムの設計図です。
ソフトウェアを作成するように、DNAを微生物の中に様々なアルゴリズムやブログラムとして複写したり書き込んだりできます。このプログラムでは、蛍光蛋白質が規則的に作られ、細菌同士を交信させ同期させる小さな分子が生まれます。それがこのビデオで見ているものです。ここに見える増殖している細菌叢は、ヒトの頭髪の太さ位の大きさです。これでは分からないのですが、我々の遺伝子プログラムは細菌それぞれに小さな分子を作らせ、その分子が何千もの細菌を制御しているのです。細菌は、このスケールでは良く同期していますが、細菌を同期させる分子の移動速度には限りがあるので、大きな細菌叢では遠く離れている細菌同士の間を、分子が繋ぐ波が出来上がります。スライドを右から左に横切る波が見えますね。
遺伝子プログラムは自然現象に頼り、クオラムセンシングと呼ばれ、この中で細菌は協働し、時には臨界濃度に達すると毒性を発したりします。これでクオラムセンシングが起きているのが見られ、細菌の増殖で細菌叢の濃度が高くなったり臨界値に達すると、光り出しているのが見られますね。我々の遺伝子プログラムは、細菌叢が外に向かって広がるにつれ、蛍光タンパク質のこういう規則的なパターンを作り続けます。
このビデオと実験を、我々は「超新星」と呼んでいます。星が爆発しているみたいだからです
この美しいパターンをプログラムする以外、他にバクテリアで何が出来るでしょう?
ガンのような病気を検出し治療する為に、細菌をプログラムできないか色々実験してみる事にしました。
細菌の驚くべき性質の1つは、ガン細胞内で自然に増殖するという事です。
通常のガン細胞は、免疫組織の機能が届かない所にあるので、細菌がガン細胞を見つけ、ガン細胞内で安穏と増殖してしまうのです。我々は、健康に良い善玉菌である共生細菌を使い始め、マウスに経口で投与すると、この共生菌は肝臓ガン細胞内を選んで増殖することを発見しました。共生細菌を確認して、それでガンを見つける最も便利な方法は、細菌に、尿で検出されるような信号を発信させることです。
よって、このようなプログラムをし、共生菌に尿の色を変える分子を作らせ、ガンの検知が出来るようにします。我々はこのテクノロジーで、特に発見が遅れがちな肝臓ガンを敏感に特定して検出できる事を示しました。
この細菌はガンを的確に見つけ出すので、ガンの検出の為だけでなく、治療にも細菌をプログラムしています。その方法は、ガン環境の中から、ガン細胞を縮小する治療分子作りをビデオのようなクオラムセンシングのプログラムを使い、行っています。
想像してみて下さい。プログラムされた共生細菌の内服により、ガンやその他の病気も検出し、治療できる日が来るという事を。細菌をプログラムする事で我々の生活も変わり、ガン研究の新しい展望が切り開かれて行きます。このビジョンを表現したいと芸術家ヴィック・ムニーズと細菌またはガン細胞だけで構成された世界のシンボルを作製しました。いずれは、このミクロの世界が持つ役割と素晴らしさが、これからのガン研究に創造的なアプローチを生むインスピレーションとなればと願っています。
ありがとうございました(拍手)
合成生物学者のタル・ダニノは、最も発見が難しいガンの1つ肝臓ガンに関して、主流から離れた考えを持っています。それは、プログラムされた細菌の内服で肝臓ガンを検出できるようにする、というものです。 彼は、細菌に関して私たちがやっと理解し始めた事を用いています:クオラムセンシングでの細菌の効力、また、一旦、細菌濃度が臨界値に達すると細菌が協働し合う性質を利用することです。TEDフェローのダニノは、クオラムセンシングがどのように働くのかを説明し、細菌が巧妙に相互作用する性質を利用する事で、ガン治療を変える日が来るだろうと語ります。