あなたが初めて知るアメリカ合衆国の機密刑務所(14:55)

ウィル・ポッター(Will Potter)
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対訳テキスト
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ダニエル・ベリガン司祭は言いました。「囚人について書くのは 死者について書くのに 少し似ている」と。我々は囚人を幽霊のように扱う という意味だと思います。彼らの姿は見えず声も届かない、彼らを単に無視するのは容易く、政府が長期間 隠ぺいしている場合は なおさら容易です。

ジャーナリストとして私は、誰も見ていないところで 権力者が何をするかというような話は まさに私たちが伝えなければいけない話 だと思います。だから 私は調査を始めました。調査対象は、合衆国で最高の機密扱いで実験的な監獄棟、「準」テロリスト用の監獄です。このような監獄を 政府はCMU(コミュニケーション管理ユニット)と呼び、囚人や看守はCMU を「ミニ・グアンタナモ」と呼びます。それ自体 島のように孤立しています。でも グアンタナモと違い CMU は国内にあります。大きな連邦刑務所内に浮かぶ島のようです。

CMUは2つあります。1つは インディアナ州の テレホート刑務所内に開設され、もう1つは このイリノイ州の マリオン刑務所内にあります。2つとも、型通りの査定過程を経ていません。刑務所の開設時には 査定が法定義務なのに、です。CMUへの収容者は全員 有罪判決を受けています。訴状内容は、疑問の残るものもあれば 脅迫や暴行罪への関与もあります。ここで 囚人が有罪か無罪か 議論するつもりはありません。私がここに立つのは、最高裁判事、サーグッド・マーシャルの言葉に因ります。
「監獄と門が閉ざされても、囚人は人間性を閉ざされない」

私がインタビューした囚人は皆 言いました。獄中の暗闇には3つの光があると。電話と手紙と、そして家族の面会です。
CMUは独房ではありませんが、この3つを非常に厳しく制限し、合衆国内の最も厳しい刑務所以上です。CMU囚人の通話時間は月に 45 分以内、それに比して 他の刑務所では 月に 300 分以内です。CMU では手紙は 便箋6枚以内、面会時間は月4時間以内です。因みに、オリンピックパークの爆破犯 エリック・ルドルフのような人物でも、月最高 35 時間です。その上 CMU の面会では 身体の接触が認められず、家族とのハグすら禁止です。あるCMU囚人が言いました。「ここには拷問はない。精神面以外はね」と。

政府は CMU への投獄者を 決して公表しません。でも 裁判記録や 公開記録書類 を調べ、現在や過去の囚人への インタビューを繰り返した結果、CMU の内部を垣間見るための 小窓のようなものが開きました。

現在、CMU には 推定 60~70 人が収容され、そのうち圧倒的多数を イスラム教徒男性が占めます。その中にラフィール・ダフィール医師 のような人物も含まれます。経済制裁に違反し、イラクの子供たちのために 現地に医療品を供給した人物です。CMU 囚人には ヤシン・アレフのような人もいます。アレフと家族は、フセイン政権下のイラクからニューヨークへ逃れてきた難民です。アレフは2004年 FBI のおとり捜査の一環で逮捕されました。イスラム指導者の一人、アレフは融資の証人になるよう頼まれました。それがイスラム社会の伝統です。融資に関わる人物の1人が、おとり捜査中の誰かを 融資に参加させようとしたのが発覚。アレフの知らないことでした。でも そのため アレフは テロリスト集団への支援物資提供で 有罪判決を受けました。

CMUには、イスラム教徒ではない 囚人も収容されます。看守たちは彼らを「バランサー」と呼びます。人種的偏りのバランスを取る人 という意味です。人種差別で訴えられないためです。バランサーには 動物愛護運動家や 環境活動家も含まれます。例えばダニエル・マクガワンです。

マクガワンは、地球解放戦線で、環境保護の活動と称して2件の放火に参画した罪で 有罪となりました。量刑手続き中、マクガワンは 収容先の心配をしていました。テロリスト収容所と噂される機密刑務所ではと。判事は 彼の恐れを全て却下し、そのような刑務所の存在は 事実無根だとしました。でも、それは 政府の説明が 十分でないからかもしれません。なぜ CMU に収監されるのか? 誰の決定で CMU 送りになるのか? 移送中 マクガワンは言われました。マクガワンが「国内テロリスト」だからだと。FBI が 環境活動家に言及する時繰り返し使う用語です。さて、留意して下さい。合衆国内の囚人 400 人が テロリストに分類されていますが、 CMU に送られるのは ごく一握りです。マクガワンの場合、初めは 厳重警備ではない刑務所に収容されていました。コミュニケーション面での違反は ありませんでした。なぜ CMU に移送されたのでしょう。

他の CMU 収容者同様、マクガワンは 繰り返し 回答や聴聞や 提訴の機会を求めました。このような求めがいかに審議されるか、別の収監者の例を見てみましょう。「移送希望」「要求却下」。
あるとき、刑務所長が自ら マクガワンの移送を推薦しました。品行方正につき CMU 以外の刑務所に移送するようにと。が、刑務所長の推薦は却下されました。却下したのは 連邦刑務局のテロ対策部で FBI のテロ対策共同特捜部隊の 関連機関でした。

その後、マクガワンの CMU 送りの真相を 私は知ります。マクガワンが起こした事件のせいではなく、彼の発言のせいだったのです。テロ対策本部のメモには マクガワンの「反政府主義」が記録されています。服役中、マクガワンは環境問題についての執筆を続け、活動家は自分の過ちを反省し互いの意見を聞くべきと言い続けました。公平に見て、ワシントンDCで少しでも過ごしたことがある人なら、これがいかに過激な反政府思想か分かるはずです(笑)。

実際 私は、CMU 収容中の マクガワンに面会を求め、面会が認められました。これには驚きました。
理由の1つ目は、以前にTEDのステージで話したように、FBI が私の報道活動を監視しているのを知っていたからです。
理由の2つ目は、私が CMU を訪れる最初で唯一のジャーナリストとなったからです。さらに分かったのは、連邦刑務局を通じて 対テロ本部は私の CMU に関する発言を監視していること。例えばこのトークもそうです。なのに、どうして私の面会が認められたのか? 刑務所に出向く数日前にその理由が分かりました。

私は記者ではなく友人として面会が認められたのです。記者は CMU への立ち入り禁止です。マクガワンが CMU 当局に言われました。私が質問したり 会話を公表したりすれば、私の報道により マクガワンが罰せられると。私が面会に行くと、看守に念押しをされました。私と私の職業を知っているぞ、とね。そして私がインタビューを試みようものなら面会は終了になると言われました。刑務局はCMUを「自己完結型住宅設備」と表現します。でも私には、ジョージ・オーウェル風なブラックホールの描写に思えます。
CMU を訪れたら、考えられる全ての セキュリティ・チェックを通ります。でも 面会室への通路は静かです。CMU では囚人1人の面会時に他の監房が全て封鎖されるからです。私は小部屋に招き入れられました。両腕を広げると 両手が壁に触れるほどです。天井に グレープフルーツ大の球体がありました。ウェスト・ヴァージニア州の対テロ本部が 面会を同時中継で監視するためです。CMU の収容者への面会は英語でと本部から要求されました。これは、イスラム圏出身の家族の多くにとって 更なる試練です。防弾仕様の磨りガラスがあり、そのガラスの向こうにダニエル・マクガワンがいました。壁に設置された ハンドセットで会話をし、本や映画について話しました。私たちは笑えるネタを探そうと最善を尽くしました。CMU 収容中の退屈対策として、自分自身を楽しませるためマクガワンはうわさを流していました。私が実はトワイライト・ファン倶楽部 ワシントンDC本部の代表だと(笑)。
念のためですが、本当は違うんですよ(笑)。でもある意味 ちょっと面白いですね? FBI が 「ベラとエドワード」を テロリストのコード・ネームだと思ったら(笑)

面会でマクガワンが一番多く長く話したのは、姪御さんのリリーや 奥さんのジェニーのこと、そして 彼女たちにハグができず 彼女たちの手さえ握れないのが耐え難い拷問だということでした。私たちの面会の後、マクガワンは CMU 以外の刑務所に移送となり、その後 前触れなく CMU に逆戻りになりました。それ以前に私は CMUの漏えい文書を私のウェブサイトで公開していましたが、テロ対策本部いわく、マクガワンが妻に電話をかけて テロ対策本部に手紙を書くよう 頼んだとのこと。政府が自分をどう言っているか マクガワンは 知りたがり、そのせいで マクガワンは CMU に戻されたのです。やっと釈放されたのは、刑期が終わったときですが彼の身の上は、更にカフカ的様相を帯びます。彼は ハフィントンポストに寄稿し、その見出しは『裁判記録が証明―私が CMU に送られた理由は政治的演説』。

翌日、彼は政治的演説のせいで またもや拘留されました。すぐに弁護士が保釈手続きをしましたが、メッセージは明白でした。「CMU について語るべからず」です。
ブッシュ政権が CMU を 開設してから9年後の現在、政府は CMU 設立の経緯と理由を 成文化しようとしています。連邦刑務局によれば、CMUは「思想的な影響の大きい」 囚人を収容する施設ということです。CMUが政治的な囚人のための政治的な監獄だと 体裁よく言っている訳です。

CMU 送りにされる理由は 人種 宗教 政治的信条です。
この評価付けが キツすぎると思うなら、政府自らの文書に目を通してください。マクガワンへの手紙が CMU に 拒絶されたとき送り主に伝えられた理由は「政治的な囚人に宛てられた 手紙だから」でした。また別の囚人で動物擁護活動家のアンディ・ステパニアンが CMUに移送された理由は、反政府的かつ反企業主義的な見解でした。

こんなことが起こるなんて信じがたいことかもしれませんが、今まさに起こっているのです。しかも合衆国内でです。でも、知る人は少ないですが合衆国には暗い歴史があります。政治的信条を理由に人を不当に処罰してきた歴史です。1960 年代、マリオンに CMU が設置される前、マリオンには悪名高い監視監房がありました。囚人たちは 1 日に 22 時間、独房に監禁されていました。刑務所長に言わせれば、その施設は「革命論者の動きを抑制する」目的だったとか。1980 年代、レキシントン・ハイセキュリティ ユニットと称する別の実験的刑務所では、ウェザー・アンダーグラウンドやブラック・リベレイションやプエルトリコ人独立闘争に関わった女性を収容していました。その監房では コミュニケーションが 厳しく制限され、睡眠遮断が行われ、いわゆる「イデオロギー転向」のための常夜灯が点いていました。こういった刑務所は最後には 閉鎖されましたが、それは 宗教団体や アムネスティなどの 人権擁護団体の運動があったからなのです。

今日では、市民権運動を行う弁護士と CCR(憲法に保証された人権擁護センター)が CMU を共同提訴しています。訴えの内容は、囚人たちの適正な法的権利が 剥脱されたこと及び、人権で守られているはずの政治的・宗教的演説に対して 報復的処罰となっていることです。この訴訟なしに これらの文書の多くは 明るみになりませんでした。

提訴した組織と私から 今日みなさんにお伝えしたいのは、囚人たちの処遇について 私達には証言する務めがあるということです。彼らの処遇には 刑務所の塀の外の 価値観が反映されています。この話は囚人だけの話ではなく、私たちについての話です。人権への私たちの意識が問われています。過去の過ちを繰り返さないような選択を するかどうかの問題です。ベリガン司祭が 死者の物語と表したことに 私たちが耳を傾けなければ、たちまち私たちの物語となるでしょう。

ありがとうございました(拍手)

トム・ライリー:幾つか 質問させてください。私が高校の時に学んだ 権利章典、合衆国憲法、言論の自由、適正な法的手続きやその他25の法や権利が侵害されているように思えます。何故このようなことが 起こりえるのでしょうか?

ウィル・ポッター:まさにそれこそが 私の仕事すべてを通じての一番の疑問です。端的に答えるなら、人々が知らないからです。私の考えでは、このような状況や あらゆる権利侵害の解決は2つの事柄にかかっているのです。まず、現実に起こっているという認識です。次に、それを実際に変革する方法と有効性です。今日お話しした囚人たちは、不運なことに、第1に、起こっていることを人々が知らないこと。第2に、彼らが既に権利を剥奪され、弁護士に依頼する術がないこと。英語のネイティブ話者でないことです。このようなケースでは、お話したような有能な代弁者がいることもありますが、現実に起こっていることに対する一般の認識が全然無いのです。

ライリー:評議会で審議される権利や 審議を申請する手段が 刑務所では保証されているのでは?

ポッター:アメリカ社会では 誰かが有罪判決を受けると、その告発が合法であろうと インチキであろうと、その後その人に起こることは 法的に正当であるとみなす傾向があります。だから そういう説明こそが 危険かつ弊害が大きいと思います。そのせいでこのようなことが起きてしまい、それに対して一般人は見て見ぬ振りをするだけです。

ライリー:スクリーンにあった文書はすべて、一言一句 全て本物で 一切の変更もされていませんよね?

ポッター:その通りです。全て私のサイトにアップロードしてあります。http://www.willpotter.com/CMU で出典も載せてあります。サイト上で、断片ではない 資料をご覧いただけます。完全版を見ていただけます。私が非常に頼りにしているのは、一次資料の文書、あるいは 以前や現在の囚人たちや 今日お話した状況を日々扱っている人たちとの 第一次のインタビューの内容です また、すでに申し上げたように 私もかつて同じ経験をしました。

ライリー:勇気のいる仕事をされていますね

ポッター:本当にありがとうございます。ありがとう皆さん(拍手)

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このプレゼンテーションについて:

アメリカ合衆国の刑務所内にはコミュニケーション管理ユニット(CMU)という刑務所があります。調査ジャーナリスト、ウィル・ポッターは、CMUの中に入った唯一の記者です。CMUはかつて内密に開設され、そして収容者の処遇は大きく変更されました。収容者が自分の子供を抱くことすらも禁止されているのです。どのような人物がCMUに収容されているか、政府がどのようにして収容者を隠し通そうとしているのかを、TEDフェローのポッターが示します。

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