「パナマ文書」が暴いた世界的大問題—次にすべきことは何か(7:49)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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今週 おびただしい数のニュースが 取り沙汰されています 1,100万件にも及ぶ 文書の流出によるもので 出処はパナマを拠点とする法律事務所 モサック・フォンセカです これらパナマ発の文書の流出で 秘密主義的なオフショア世界の姿が ほんの一部ですが露見しました これで判明したのが 銀行や弁護士などの顧客が モサック・フォンセカのような会社に 「匿名の会社が欲しいので 作ってください」 と依頼する実態です 実際にやり取りされたメールの 内容を読むことができ その仕組みや 運用のされ方がわかります
既に この流出事件の波紋が 一気に広がり始めています アイスランドの首相が辞職 他にも 残虐なシリアの独裁者 バシャール・アル=アサド大統領の協力者も オフショア法人を持っていると 報道されています また 20億ドルの資金の流れが浮上— これはロシアのプーチン大統領に つながっており 大統領の幼なじみで親友の 世界的チェロ奏者が関与しています 世界中の金持ちの中には 新たな一連のニュースや 新たな文書流出に ビクビクしている人々が まだまだいることでしょう
これって スパイ小説や ジョン・グリシャムの法廷ものの 筋書きみたいですよね あなたや私のような普通の人には 縁遠い話に思えます 関係ないことのように 思えるかもしれません でも 本当のところ 金持ちや権力者が オフショアに金を隠し持ち 納めるべき税金を 回避できるということは つまり医療や教育、道路整備など 重要な公共サービスのための 資金が入らないということになり 我々皆に影響するのです
私の組織 グローバル・ウィットネスにとって 今回の暴露はものすごい朗報でした 今 世界のメディアや政治リーダーが 個人による オフショア秘密管区を利用した— 資産の隠匿について取り上げていますが これは 私の組織が10年に渡り 世に訴え 暴いてきたことです
さて このオフショア界が どう動いているのか わかりにくい、理解しづらいと 思っている人も多いでしょう ロシアのマトリョーシカ人形を 思い浮かべてみてください ある会社が 別の会社の中に入っていて その会社が また別の会社の中に入っていて その構造の裏に本当は誰が隠れているのかを 掴むのがほぼ不可能になります 警察組織や税務当局 ジャーナリスト、市民社会にとって 本当に何が起きているのか 把握が非常に難しくなります
また 興味深いことに アメリカではこの事件に関する報道が 他の国より少ないのです それは おそらく アメリカの重要人物が この暴露というかスキャンダルの中に まだ姿を現していないせいでしょう オフショアに資金を隠している 裕福なアメリカ人がいないからではなく オフショア取引の仕組みの関係で モサック・フォンセカに アメリカの顧客が少ないだけです もしも情報の流出元が ケイマン諸島だったり デラウェアやワイオミングや ネバダなんかだったら アメリカ人が関与する ケースや事例がもっと出てくるでしょう
事実 アメリカには 会社を作るために必要な情報が 図書館のカードを作るために 必要な情報より少ない州もあります アメリカに存在する こういった秘密主義のせいで 学校区の職員が生徒のための金を着服したり 人を信じやすい投資家から金を騙し取る 詐欺行為がまかり通っています 我々皆に関係ある行為です
グローバル・ウィットネスでは オフショア取引の実態が どうなっているのか どうやって機能しているのか 知りたいと思いました そこで私たちは マンハッタンにある13の法律事務所に 覆面調査員を送りました 調査員はアフリカの公使を装いました 不審な金をアメリカに移動し 家やヨット、飛行機の購入を 考えているという設定です 非常にショックなことに 調査員した法律事務所のうち1つを除いて 1つを除いてすべてが 調査員に対し この不審な金の移動方法を提案したのです すべて初回の相談での話です どの法律事務所とも 取引は始まりませんでしたし 動いた資金もありませんでしたが 制度における問題点が露見しました
もう1つ大事なことは これを単独の事件に過ぎないなどと 考えないことです うちの覆面調査員にアドバイスを与えた 個別の法律事務所だけの話ではありません 今スキャンダルの渦中にいる 特定の大物政治家だけの話ではありません 制度の仕組み自体が問題なのです 汚職、租税回避、貧困や 政情不安定の温床だからです この問題に取り組むには ゲーム自体を変える必要があります ゲームのルールを変えて 不正をしにくくする必要があります
事態は厳しく、絶望的に 見えるかもしれません 自分にできることは何もないとか 今まで何も変わらなかったとか 金持ちや権力者は この先もいなくならないしとか でも 楽観的な視点からは 確実に変化が 起こり始めているようにも見えます
過去数年の間に 会社の所有者に関する情報の透明性に向け 大きな動きが見られてきました この問題への対策を政策に盛り込むと 英国のキャメロン首相が 2013年北アイルランドで開かれた G8サミットで表明しました それ以来 欧州連合では 国家単位での中央登記所で 欧州中の会社の真の所有者・管理者を 明らかにする方針です
残念なことに こういった動きに対し アメリカは遅れをとっています 二党共同で上院・下院に提出された 法案がありますが 我々が期待するような進歩は 見られていません ですから パナマ文書のリークから オフショアの世界が垣間見えたことが アメリカや世界各地での開示を促す きっかけになってほしいものです
我々グローバル・ウィットネスは 今が変革を起こす時だと考えます 民衆は怒るべきです 匿名の会社を盾に身元を隠している 輩に対して憤るべきです ビジネスリーダーは 立ち上がり こういった秘密主義はビジネスに あるまじきことだと明言すべきです 政治リーダーは この問題に向き合い 秘密の開示につながる法改正を 公約すべきです
力を合わせることで 現在横行中の 租税回避や汚職 資金洗浄などを許している— 秘密主義を終わりにできるのです
2016年4月3日、歴史上最大のデータ流出事件が発生しました。この「パナマ文書」により、金持ちや権力者がオフショア(租税回避地)口座に隠し持つ巨額の資産が明るみに出たのです。これにはどういう意味があるのでしょうか? グローバル・ウィットネスのロバート・パーマーに話を聞いてみました。