機械に奪われる仕事 — そして残る仕事(4:36)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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この子は私の姪で 名前をヤーリといいます。生まれて9カ月です。母親は医者で 父親は弁護士ですが ヤーリが大学に行く頃には 両親の仕事の様子は 劇的に変わっていることでしょう。
2013年オックスフォード大学の研究者達が未来の仕事についての研究を行いました。
職の2つに1つは 機械により自動化されるリスクが高いと 彼らは結論付けました。機械学習の技術こそ そのような変化の 主な原因となるものです。
これは人工知能分野の中でも 最も有力な領域です。この技術により、機械がデータから学習して、ある種のことを人間のようにできるようになります。私の会社Kaggleでは 最先端の機械学習技術に取り組んでいて、産業や学問上の重要な問題を 解決するために 何十万というエキスパートを 集めています そのお陰で 独特な知見が得られます 機械には何ができ 何ができないのか? どんな仕事に 自動化や 消失の怖れがあるのか?
機械学習が産業界で使われ出したのは 1990年代前半です。まずは比較的単純な タスクから始まりました。ローン申し込みに対する 信用リスクの評価や 手書きの郵便番号を読み取って 手紙を仕分けるといったことです。ここ数年の間に 飛躍的な進歩がありました。機械学習が はるかに複雑なタスクを こなせるようになったのです。2012年、Kaggleは 高校生の書いた小論文を採点できる アルゴリズムを作るという課題を 専門家コミュニティに提示しました。優勝したアルゴリズムは、人間の教師の採点と一致する評価をすることができました。昨年には さらに難しい 課題を出しました。「眼球の写真から 糖尿病性網膜症の診断をできるか?」というものです。
この時も、優勝したアルゴリズムは人間の眼科医の診断と一致する結果を出せました。
適切なデータが与えられれば このようなタスクで 機械は人間より優れた結果を 出し始めています。教師は40年の経歴において 小論文を1万本読むかもしれません。眼科医は眼を5万個 診断するかもしれません。しかし 機械なら数分のうちに 数百万の小論文を読み 数百万の眼を診ることができます。頻度が高く 多量のデータを 処理するタスクでは、人間が機械に勝てる見込みはありません。
しかし 我々に出来て 機械に出来ないことがあります。機械の技術が ほとんど進歩していないのは 経験のない状況で 判断する技術です。機械は前にほとんど見たことがない状況を うまく処理できないのです。機械学習に根本的な限界があるのは 大量の過去データから 学ぶ必要があるという点です。人間は違います 我々は ほとんど共通点のない 手掛かりを繋ぎ合わせ、見たことのない問題を 解決することができます。
パーシー・スペンサーは第2次世界大戦中、レーダー開発の任務に就いていた物理学者で、その時マグネトロンがチョコバーを 溶かすことに気づきました。電磁波に関する理解と 料理に関する知識を結びつけることで彼の発明したのが何か分かりますか? 電子レンジです。
これこそ想像力の 素晴らしい一例です。このような分野を超えた発想は、些細な形であれば 誰にでも毎日何千回と ひらめいています。経験のない状況においては 機械は人間には勝てず、それが人間の行うことを 機械で自動化する際の 基本的な限界を与えます。
これが将来の仕事に 意味することは何でしょう? 各々の仕事の未来の運命は ある1つの問への答えにかかっています。高頻度多量データ処理に 還元できる部分がどの程度あり、前例無き状況への対応を求められる部分が どの程度あるのか? 高頻度多量データ処理については 機械はどんどん賢くなっていきます。今では 機械が小論文の採点をし、ある種の病気の診断をします。数年内には、監査をしたり法律上の契約書から一般的な表現を解釈出来るようになるでしょう。それでも会計士や弁護士が いらなくはなりません。複雑な税務対策や 前例のない訴訟の対応には 必要とされるのです。機械により 能力のある者だけが残され、これらの職に就くことは難しくなります。
さて 前にも述べましたが 経験のない状況に対応する技術は 進歩していません。マーケティング活動における宣伝文句は 消費者の関心を引く必要があります。数ある中で 目立っていなければなりません。ビジネス戦略とは、他社がやっていない 市場のニッチを探り出すことです。マーケティング活動における宣伝文句を 創り出すのは人間の役目であり、ビジネス戦略を考え出すのも 人間です。
だからね、ヤーリちゃん、どんな仕事を選ぶにせよ 常日頃 新しいことに挑戦することです。そうすれば 機械に先んじることが出来るでしょう。
ありがとうございました(拍手)
機械学習は、もはや信用リスク評価や、手紙の仕分けといった単純な仕事だけをこなすわけではありません。今では小論文の採点や病気の診断といった、ずっと複雑なこともできるようになっています。このような進歩は不安を覚える疑問を提起します ― 将来私たちの仕事はロボットに取られてしまうのでしょうか?