オンライン上で 事実とフィクションを区別する方法(13:29)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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17才の頃から ジャーナリストをしていますが この業界は今 とても面白いです ご存じの通り メディア業界では ものすごい変化が 起きているからです ただ ほとんどの人は ビジネスモデルの崩壊や Googleの一人勝ちといった 観点から変化を捉えています。
ジャーナリストとして 本当に面白いですが 私が興味あるのは記事自体の 変化ではありません 書く前の段階の変化 つまり情報入手や ― 取材方法に関心があります 力関係は新聞社から読者へと 大きくシフトし 取材が様変わりしたからです 読み手はこれまで ニュースに 影響も変化も与えられませんでした 接点がなかったのです でも状況は変わりました。
私が初めてメディアに関心をもったのは 1984年 BBCがストを実施したときです マンガまで休みになり 怒っていたのです だから手紙を書きました 嫌がらせの手紙に 最高の結びは こうです 「愛を込めて マーカム 4才」 これは今でも通用します ストに与えた インパクトは不明です ただ わかったのは 返事に3週間もかかったこと 行動を起こして 結果を知りたくても そんなに時間がかかったのです それもすっかり変わりました 誰もが瞬時にやり取りします 読者が記事に反応した時代は終わり 今ではジャーナリストが 読者に頼っているのです 読者がニュースを探してくれます 取材の切り口も 皆が知りたい事も 読者が教えてくれます 全部リアルタイムで あっという間です いつもこんな状態で 追いつくのに必死です。
どのくらい読者に頼っているか ― 9月5日 コスタリカの 地震を例に 見てみましょう M7.6の大地震でした 地震が起きて60秒後 ― 250km先のマナグアが揺れました マナグアが揺れるまでに 60秒かかっているのです その30秒後 第一報がツイートされます "temblor" 地震というつぶやきでした 地震が到達するのに 60秒かかりました その30秒後には 地震のニュースが 瞬時に世界中を駆け巡ります 世界中の誰もが マナグアの地震を 知り得たのです きっかけは最初の1人が 状況を伝えたいと思い 投稿したことです いまは誰もが投稿します 最新情報や写真やビデオは 絶え間なくクラウドに 流れ込んでいきます。
常に膨大なデータが アップロードされています データによれば YouTubeでは毎分72時間以上の ビデオが投稿されます YouTubeでは毎分72時間以上の ビデオが投稿されます 1秒間に1時間分を超える 投稿があるのです Instagramでは1秒に58枚の写真 ― Facebookでは 3,500枚以上の 写真が投稿されます だから 私がこの話を終える頃には YouTubeには864時間分のビデオ ― FacebookとInstagramには 250万枚の写真が投稿されています。
あらゆる情報が入手可能な立場は ジャーナリストにとって面白い状況です 世界中の出来事を ほぼ同時に しかもタダで 知ることができます この状況は 誰にとっても同じです。
ただ問題があって 情報が大量になると 価値があるものを見つけるのが 難しくなります これを痛切に感じたのが ハリケーン・サンディのときです 長らく経験していなかった 巨大ハリケーンが iPhoneの総本山を襲ったのです (笑) さらに多種多様なメディアを みんなが持っています だからニセモノや 再投稿された古い写真 ― 過去の写真を使った合成写真を ジャーナリストは 見分ける必要があります 映画『デイ・アフター・トゥモロー』の 写真まで混じっています (笑) 中には リアルすぎて 本物かどうかわからないものも (笑)
冗談はさておき Instagramからの この写真では 徹底した検証が必要でした Instagramでフィルタが かけられています 光の当たり方が疑わしく見えました でも これは本物でした 水没したマンハッタン アベニューCです 本物と判明したのは 情報源が特定できたからです NYのフード・ブロガーで よく知られ 尊敬されていました この場合は本物だと証明できました これがジャーナリストの仕事 情報の確認です 外に出て情報を集め それを読者に見せる代わりに 問題になりそうな情報を止めます。
信頼できる情報源の 発見が重要になるため ジャーナリストは Twitterを頻繁に利用します 大量の情報が集まるので 使い方がわかれば まるで記事配信サービスのように 利用できます。
役に立つ反面 難しい面もあることが 2011年のエジプト革命でわかりました アラビア語が話せず エジプトではなく ダブリンにいる私にとっては Twitterリストや 質の高い情報源のリストや 信頼できる人が 重要でした そんなリストを 一から作るには どうしたらよいか? 何を探すべきか知らないと とても大変です これはイタリアの学者 アンドレ・パニソンが タハリール広場での Twitter上のやり取りを 視覚化したものです ムバラク大統領が 辞任した その日です 点はリツイートで 誰かがメッセージを リツイートすると 2点がつながります 回数が多い程 ― つながりが増えていきます すごい方法で会話を視覚化しています ただ ここから得られるのは 誰に関心をもち 誰を調べるべきかを 知る手がかりだけです 会話が展開すると どんどん活発になり 最終的に 会話は 巨大な リズムを刻む点の塊になります つながりを見て こう思うかも 「彼らについて調べよう 何か知ってるかもしれない どんな人間か 調べてみよう」
私たちジャーナリストは 情報があふれる今 ― ウェブの同時性に とても興味を覚えます この種の調査に使えるツールが 今はたくさんあるからです 以前よりも とても詳しく 情報源を調べることができます。
よさそうなネタを見つけたと思っても 本当に使えるかどうか ― 確信がもてない場合があります 信頼できる情報源か ― 合成か 再投稿か わからないからです 調べる必要があります ご覧頂いているビデオは 2週間前に見つけました。
ビデオ 「風が強くなってきたわ」
(風雨の音)
(爆発音)「大変!」
プロデューサーなら 放送したくなるはずです すごい掘り出し物ですから 生々しい反応です 裏庭で撮影されました でも 本物か ニセモノか 古いものか 再投稿かを知る方法は?。
ビデオを調べて わかったのは YouTubeのユーザー名だけでした このアカウントの投稿は 1件だけ ユーザー名は "Rita Krill" 本名か 偽名かはわかりません そこで ネット上の 無料ツールで調べ始めました まずSpokeoで名前を探しました 全米を調べ NY ペンシルベニア ― ネバダ フロリダで この名を見つけました 次にWolfram Alphaを使って ビデオが投稿された日の 気象情報をチェックしました 名前が挙がった場所の内 ― その日 フロリダが雷雨でした だからWhitePagesの 電話帳でRita Krillをいくつか見つけ 住所を洗ったところ ― Google Mapsで 家を見つけました ビデオと よく似た ― プールがある家です 再びビデオを見て ヒントを探しました ビデオをよく見ると 大きなパラソルと 白いエアマットがあり プールの角は曲線を描いています 背景には木が2本 Google Mapsに戻り よく見ると エアマットも 2本の木も パラソルもあります 写真では閉じています 少し工夫すると プールの角が丸いこともわかります 調査をもとにリタに電話をかけ 自分で撮ったものだと確認しました クライアントは安心して放映できました。
一方 真実を知ることが 重大な結果をともなう場合があります 私達がシリアに注目するのは 戦争犯罪の証拠となりうる情報の 真偽を判断することが 当然 多くなるからです この場合 YouTubeが 世界情勢を知るために 重要な情報源です。
このビデオは かなり残酷なので 音声の一部を お聞きください 出所はシリアのハマーです (叫び声) 映像は血だらけの死体が ピックアップトラックから降ろされて 橋から投げ落とされる場面です ムスリム同胞団のメンバーが シリア軍兵士の死体を 捨てる所とされています でも男達は 呪いや 冒涜の言葉を言っており 本当は何者なのか ビデオの説明通りなのかは 意見が分かれます。
そこでTwitterでやり取りしていた ― ハマーにいる人達に この件を尋ねました 注目したのは橋です 特定できるかも知れません 3つの情報源の 証言はバラバラでした ある協力者は「橋はない」 別の協力者は「橋はあるが ハマーではない」 3人目は「橋はあると思う でも上流のダムが閉鎖しており 川に水がないはずで 映像と一致しない」 最後の証言がヒントになりました 手がかりを探して ビデオを見ると 特徴のある 手すりに気づきました 歩道上の影が 南へ伸びているので 橋は東西方向にかかっています 歩道は白と黒に塗られています 川面を見ると 西側にコンクリート護岸 血の流れが見えます つまり川が南から北へ 流れているのです 橋から向こうを見ると 土手に削られた部分があり 川幅が狭まっています。
次にGoogle Mapsで 橋を全部見ていきました 先ほどのダムから下流に向かって 橋がある場所を すべて確認し 該当しないものを外しました 探すのは東西にかかる橋です でもダムからハマーまで見ましたが 橋がありません でも航空写真に切り替えると 橋がひとつあったのです 証拠がまとまり始めます この橋は東西にかかっているようです この橋でしょうか ズームしてみましょう 橋の中央に線があり 2車線だとわかります 白と黒に塗られた歩道もあります さらにクリックすると アップロードされた写真が マップ上に現れます 写真をクリックすると 細部を見て ビデオと照合できます 最初に気づくのは 白と黒の縁石です 手がかりになりそうです 特徴のある手すりも見えます ここから男達が 死体を投げ捨てていました これが探していた橋だと 確信するまで検証を続けました。
ここから何がわかるでしょう? 思い出してほしいのは3人の情報 ― 「橋がない」という情報と 「ハマーではない」という情報 ― そして「橋はあるが 水位がおかしい」という情報です 3人目の情報が急に 信頼できるものに見えて来ました 私達はそれを無料ツールで 確認する事ができました ダブリンのオフィスにいながら たった20分で です これが作業の醍醐味です ネット上には大量の情報が 行き交っているので 選別はとても大変ですし 日々 難しくなります でも情報を適切に使えば 素晴らしい情報が手に入ります 手がかりさえあれば 皆さんが知られたくない 情報だって探り出せるでしょう。
今は これまでにない程 ― 大量の情報があり 選別も難しいですが 強力なツールがあります 無料のツールで お話ししたような調査が可能です 洗練されたアルゴリズムや 高速なコンピュータもあります。
でもアルゴリズムは 規則の集まりに過ぎず YesかNo 白か黒なのです 真実はそうではありません 真実には価値があります 真実は感情に訴え 流動的で 何より人間的なものです コンピュータが どれほど速くなろうと 情報がどれほど増えようと ― 真実を探すためには 人間が欠かせません 真実の探求は 人間の特性なのですから ありがとうございました。
観衆:(拍手)
この話が終わる頃には、YouTubeで864時間分のビデオ、FacebookとInstagramで250万枚の写真が増えているでしょう。では、私達はこのような情報の洪水を、どう整理したらいいのでしょうか。ロンドンでのTEDSalonでマーカム・ノーランが語るのは、彼がチームとともにリアル・タイムで情報を確認するために使う、調査のテクニックです。ハリケーンに襲われた自由の女神の写真やシリアから流出したビデオは本物でしょうか。