自動運転の世界とはどんなものか(11:31)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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フランス産ワインに こだわりがある人もいれば ゴルフをするのを好む人も 文学に夢中な人もいます 私の人生における 最上の楽しみのひとつは 正直言って 少し特別です 空から街を眺めるんです それも飛行機の窓から この楽しさは伝えきれません。
いくつかの街は 穏やかに勤勉さを醸し出しています ドュッセルドルフや ルイビルのように 抑えきれないエネルギーを 放出する街もあります ニューヨークや 香港のように それからパリや イスタンブールなど 歴史にあふれ風格がある街もあります。
私には街が生き物のように見えます そして私は はるか上空から そうした街を見つけると 街の空間を作り上げている 大通りや高速道路を探すのが好きです 特に夜が良いのです 通勤者で 街の動脈とも言える 幹線道路が印象的な赤と金色に染まり 街の血管系がその生体機能を 発揮するのです それも私達の目の前で しかし車に座って 日々の通勤で1時間半経った後では その現実は全く違って見えます。
観衆:(笑)
何事も 公共ラジオも ポッドキャストも。
マインドフルネスの瞑想をもってしても その時間は有意義にはなりません。
観衆:(笑)
おかしくないですか 私達は 時速210キロを出せる 自動車を作ったのに その車を19世紀の馬車と 同じスピードで運転しているなんて。
観衆:(笑)
アメリカ国内だけでも 私達は2014年に269億時間を 通勤に費やしています それだけの時間があれば 古代エジプト人はギザのピラミッドを 26基作れたでしょう。
観衆:(笑)
それを一年で費やすのです 途方もない時間、エネルギー 人間の可能性の浪費です。
数十年に渡り 私達の渋滞対策は単純でした 新しい道路を建設するか 既在の道路を拡張することです それは うまく行きました パリでは見事に成功しました パリ市は数百もの歴史的建物を取り壊し 135メートルもの 交通に配慮した大通りを作りました そして それは今日でも 急速に発展する 新興の街ではうまく行っています しかしもっと確立された中心市街地では 交通網を著しく拡張するのは まず不可能です 住居が密集しすぎですし 不動産は高すぎ そして公共財政は脆すぎます 私達の街の血管系は詰まりつつあり 病気に向かっています 私達は注意をはらうべきなんです。
私達の現行の考え方では うまく行っていません 輸送の流れをよくするためには 新しい着想の源が必要です。
さて 輸送業で 16年ほど経験を積んだ頃 生物工学の顧客と話しているとき 「目からうろこの瞬間」が訪れました その顧客は いかに自らの治療で 血管系の特異性に影響を与えるか 教えてくれました 「なるほど」と思いました 「私達の血管系 すなわち 体内のすべての静脈と動脈は日々 奇跡のような物流管理を 成し遂げているのだ」 このとき気づいたのです 生物は数十億年にもわたって この輸送業に携わってきています それは無数の解決法を試してきました 栄養、ガス、たんぱく質を 流通させるためです 実にそれは世界で 最も高性能な輸送試験所です。
交通問題への解決法が 私達の中にあるとしたらどうでしょう 私は知りたかったのです なぜ血液は生涯のほとんどにわたって 血管を流れるのに 大都市では日常的に 流れが滞ってしまうのか? 実際のところ これらの二つは 大変異なるネットワークです お気づきかわかりませんが 私達 ひとりひとりの体内には 10万キロメートルの血管があります 10万キロです 地球の2周半分のものが 体内にあるんです つまり血管は私達の体内の いたるところにある ということです 皮膚表面のすぐ下だけではありません。
しかし私達の都市を見てみると なるほど 多少の地下鉄網もあれば トンネルや橋もあり そしてまた空にはヘリコプターが 飛んでいます しかし交通の大部分は 地上に集中しています つまり表面だけです 言い方を変えますと 血管系は体内の三次元を使うのに対し 都市交通は ほぼ二次元です ですから私達は もっと垂直方向も利用するべきなのです もし表面に広がる交通網が飽和状態ならば 交通を上にあげてみましょう。
この中国の交通渋滞をまたぐバスの構想は 都市における空間と移動に関する 新しく画期的な考え方でした 都市における空間と移動に関する 新しく画期的な考え方でした また更に上に行って 送電網のように 交通を吊るすこともできます テルアビブやアブダビでは 磁気で吊り下げられた まゆ型の乗り物の 将来型交通網の試験導入が 検討されています そして私達はどんどん上に行き 飛ぶこともできます エアバスのような会社が 空飛ぶタクシーの実用化に向け 真剣に取り組んでいるという事実は 私達に何かを訴えています 空飛ぶ車はついに よくあるサイエンス・フィクションから 魅力的な事業例の域へ 動き出しています ワクワクする瞬間です。
さて この3Dの輸送ネットワークを 構築することは 交通渋滞を軽減し 解決する方法のひとつですが 唯一の方法ではありません 私達は見直さないといけません どの乗り物を使うかというような 他の根本的な選択をです よくある こんな場面を想像してください あなたが運転を始めて42分たった頃 後部座席の二人の子供は 落ち着きがなくなってきました あなたは遅刻しそうです 前方の のろのろ運転の車が見えますか 遅刻しそうなときに限って現れますね。
観衆:(笑)
あの運転手は駐車場を探しているのです 周辺に空いている駐車場はありませんが 彼は知るわけがありません 都市部の交通量の30%近くは 駐車場を探す運転手によって 引き起こされると推測されています 周辺の100台の車が見えますか うち85台には一人しか乗っていません その運転手85人は ロンドンの赤バス一台に収まりますよね そこで質問ですが なぜ私達は 最も必要である空間を こんなに無駄にするのでしょう なぜ自ら こんなことをするのでしょう。
生物なら絶対にそうしないでしょう 私達の動脈の中の空間は 十分に利用されています 心拍のたびに 上昇した血圧で 数百万の赤血球は文字通り圧縮され 大量の酸素の連なりとなり 素早く体の隅々にまで流れます そして赤血球の小さな空間も 無駄にはされません 健康な状態ならば 赤血球が運べる酸素の最大量の 95パーセント以上が利用されます 想像できるでしょうか もし私達が街で乗る乗り物が 95パーセント満たされていれば 歩いたり自転車に乗ったりできる 余分な空間が十分にでき 私達は都市を楽しめます。
血液が信じられないほど 効率的である理由は 赤血球が特定の臓器や組織のためだけに 貢献するのではないからです さもなければ きっと血管の中に 交通渋滞が起きるでしょう 赤血球は共有されています 体内のすべての細胞によって共有されます そして私達のネットワークは 大変 広範囲にわたるため 37兆個の細胞のひとつひとつが 必要に応じて的確に 酸素の配達を受けます。
血液は集合的かつ個別的な 輸送形式をとっています しかし私達の都市をみてみると 渋滞しています 私達は終わりなき議論に足止めされています 自動車中心の社会か 大がかりな大量輸送システムのどちらを作るか この議論を超越すべきだと思います 私達は自動車の便利さと 電車やバスの機能性を兼ね備えた 乗り物が作れると思います 想像してください あなたは1200人の乗客とともに 速くて乗り心地のよい都市型電車に 快適に座っています 都市型電車の問題点は 時には 自分の目的地に着くまでに 5回、10回、15回と 停まらなければならないことです。
停まらなくてもよい電車であったら どうでしょう この電車では 動いている間に車両が 力学的に切り離されます そして急行や自動運転バスになります 二次的道路ネットワークに進むのです そして一度も停車することなく 時間のかかる乗り換えもなく バスに乗って目的の郊外に 向かっているわけです そして近くなってくると あなたの座っている部分が分離し あなたの玄関先まで自動運転します それは集合的であると同時に個別的です これは共用モジュール式の 未来の自動運転車のひとつとなりえます。
さて ドローンがぶんぶん飛び回り 空飛ぶタクシー、モジュール式のバス 吊下げ式まゆ型乗り物が動き回る都市でも まだ十分目新しくないかのように 別の力が働いているように思います 都市型交通を魅力的にする力です 考えてみると 現世代の自動運転車は 人間が人間のために作った交通網に 参画しようとしているだけです 自動運転車に交通ルールを学ばせるのは 比較的簡単ですが 人間の予測不可能さに対処させるのは もっと大変です。
しかし街全体が自動運転になったら どうなるでしょう 信号は必要でしょうか 車線は必要でしょうか 制限速度はどうでしょう 赤血球は車線の中を流れません 赤信号で停まることもありません 初の自動運転の街には 赤信号も車線もありません そして すべての車が自動運転で連結されると すべてが予測可能で 反応時間も最小限で済みます 自動運転車はさらに速く 走れるようになり 合理的な考えにもとづき動くことで 自らや 周辺の車の速度も 上げられるようになります つまり厳しい交通ルールの代わりに 交通の流れは 動的で絶えず自己改善を続ける アルゴリズムの網によって規制されます 結果 不思議な交通ができあがります ドイツのアウトバーンの速くて円滑な緻密さと ムンバイの交差点に見られる 独創的な生きる力が合わさったものです。
観衆:(笑)
交通は機能的に豊かなものになるでしょう それは私達の血液のように液状になります そして奇妙な逆説により 交通網が機械化されれば されるほど その動きは更に有機的で活動的に 感じられるでしょう。
そうです 生物は 今日話した最高の交通にある特性を 全て持ち合わせています しかし そこに至るまで 数十億年かかっています そして あらゆる種類の 反復や変化を経てきました 私達は交通システムの発展を 数十億年も待つことはできません 私達には今 夢があり 概念があり 技術もあります 3D交通ネットワークを作り 新しい乗り物を発明し 都市の流れを変えるのです。
やってみましょう。
ありがとうございました。
観衆:(拍手)
もしも血管を流れる血液のように、交通が円滑に効率よく町中を流れるとしたらどうでしょう。交通マニアのワニス・カバジは、生物の特性にヒントを得て、未来の輸送システムをデザインできると考えています。この前向きな講演では、活力ある自動運転世界を現実のものにするのに役立つであろうモジュール着脱可能型のバス、空飛ぶタクシー、吊り下げ式のまゆ型乗り物のネットワークのような面白いコンセプトを垣間見ることができます。