新時代のアメリカン・ドリーム(15:32)

コートニー・マーティン(Courtney E. Martin)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私はジャーナリストなので 好んで探すのは センセーショナルな見出しに隠れて 静かに繰り広げられる物語です また一方で 住まいを定め パートナーを選び 子供をもうける仕事も 行ってきました ここ数年ほどは 21世紀における 良い人生に相当するものは何かを 理解することにつとめてきました その理由は この課題の倫理的、哲学的な 含意に魅力を覚えること また 私自身がその答えを切望している からです。

私たちは不安定な時代に生きています 実際 アメリカの史上初めて 子供が自分たちと比べて よりよい生活を送れないだろうと考える親が 過半数に達しました このことは 貧富や性別を問わずに 当てはまるのです さて この話を聞いて 残念に感じる方もいるでしょう つまるところ アメリカに 深く立ち込めているのは 常に次世代が今の世代を超えるという 経済的超越の観念であり 子が親よりも 多く稼ぎ 高い購買力を持ち より豊かになるという考え方です 私たちはこの夢を 世界中に輸出してきたので ブラジルや中国 そしてケニアでも 子供たちに より多くを求めとどまることのない 願望が受け継がれています でも この歴史的な世論調査の結果を 初めて読んだとき なんと私は残念とは感じませんでした 挑発的だなと思いました よりよい生活とは 誰の基準によるものでしょうか?

よりよい生活とは 残りの人生をずっと頼っていける 安定した仕事を 見つけることでしょうか? そんな仕事は ほぼ絶滅種です 人は平均で4.7年に1度転職していて 2020年までに アメリカ人のほぼ半数が フリーランサーになると推計されています だったら よりよい生活は 単なる数字で表せますか? 可能な限り多く稼ぐことを 指すのでしょうか? この指標だけで測れば 私達は負け犬です インフレ調整後の一人当たり所得の中央値は 2000年位から横ばい状態です いいでしょう では よりよい生活とは 白い柵で囲まれた豪邸を所有することですか? そうする人は減っています 5百万人近くの人が リーマンショックで自宅を失い さらに多くの人が 長期ローンの現実をしぶしぶ受け入れ また多くの搾取に近い事例では 抱え込まされて ようやく 不動産の証書を維持しています 1995年以降 持ち家率が 最低記録を更新しています。

なので 私たちの世代は 安定雇用は見込めず 親世代ほどは稼げず おしゃれな邸宅には住めないでしょう アメリカを偉大にした全てに 別れを告げざるを得ませんね とはいえ — 今申し上げた物が 国家の力や充実した人生を測る上で 最適な物差しでしょうか? アメリカを偉大にしているのは 改革精神だと私は思います リーマンショックを受けて 多くのアメリカ人が よりよい生活の 真の意味を定義し直そうとしています それはドルやセントよりも コミュニティや創造性に 大きく関係していることがわかりました。

はっきり言いましょう 貧困生活を送る14.8%のアメリカ人が お金を必要としている ― 簡単明瞭です そして 雇用者や金融機関の 食い物にされないための政策を 私たち全員が必要としています この結果から打ち出すべき姿勢とは 貧富の間の大きな隔絶は 倫理的に全く許されないというものです でも 私達は しばしばそこで 議論をやめてしまいます 私達は 貧困について 画一的な認識で まるで 貧乏人だけが 犠牲者であるかのように語ります 私は 自分の調査報告を通じて こんなことも学びました よく生きる術は しばしば 最も弱い立場におかれた人たちによって 最も見事に実践されています。

さて 必要が成功の母というのなら 私の信条になりつつありますが― 景気後退は気づきの父かもしれません その時期 本質的な問いと 向き合うことを強いられます まあまあ快適に過ごせる時には 怠惰だったり他のことにかまけて 考えない問いです どのように働くべきか? どのように暮らすべきか? このような問いの答えを探すとき 知ってか知らずかのうちに 誰の耳元にも 先祖の言葉がささやかれているのです。

私の曽祖父は デトロイトの酔っぱらいで なんとか たまに 工場での仕事にありつく生活でした 信じられないような話ですが 曽祖父には子供が21人いました 私の曾祖母である 1人の女性との間にです 曾祖母は47歳に 卵巣がんで亡くなりました 今 私は 第二子を妊娠中ですが 曾祖母が経験した苦労は 私には計り知れません ちなみに双子が6組いました なので 私の祖父は ー 曾祖父母の息子にあたりますが 地方を回るセールスマンになり 山あり谷ありの人生を送りました 父は子どもの頃 借金取り立て人が来ると玄関に出て 両親は留守です と答えたりしていたのです 父はなんと 歯列矯正具を自分で ガレージのペンチで外したそうです 祖父が お金がなくて もう矯正歯科には 通えないと言われたときのことです だから私の父は 当然の成り行きとして 破産専門の弁護士になりました 小説になりそうな話でしょう? 父が 必死になったのは 兄と私のために 生活の土台を安定させることでした。

私が先ほどから呈している疑問は 幾世代かの苦労を通してのものです 両親は 私が安定した基盤のもとで 成長できるように配慮したので それでこそ疑問を呈し またリスクを取って飛躍することができます そして皮肉にも そして時として 両親はそれが不満なようですが 安定に対する 両親の強い思いゆえに 私は安定を重視する価値観に 疑問を持つようになり 21世紀になってもまだ 安定に 昔から定義されてきた価値があるのかと 疑問を抱くようになりました。

では 疑問の1つ目を 掘り下げてみましょう 私たちはどう働くべきでしょうか? 私たちの母の世代のように 働くべきです そうです — 私たちは何十年もの間 会社勤めの男のために作られた社会に 女性を馴染ませるための努力を続け 窮屈な思いをした女性は多いですが 伝統的ではない道を 切り開いた女性たちもいます 人生の目的とお金をつなぎ合わせて 愛する家族のために やるべきことをやれるだけの しなやかさを持ち合わせていたからです 母は「帳尻は合わすもの」と 言っていました キャリアアドバイザーが言うところの 「キャリアのポートフォリオ」です 呼び方はどうであれ このような バランスの取れた 慌てない人生を切望する男性が増えています 男性たちも父として 息子としての 役目を望みその責任に気づきつつあります。

ビジュアルアーティストの アン・ハミルトンの言葉です — 「労働は知識を得る術の1つです」 労働から学べる知識があります 言葉を変えれば 仕事に取り組むということは 世界を理解するということです これが正しければ― 私はそう考えていますが 当時の母親は 小さい者や病人や年配者に対して 不釣り合いなほど多くの世話をし 最も奥の深い知識から 不釣り合いなほど多くの恩恵を 受けてきました 人が置かれる状況に対する知識です 男たちも 人の世話を優先することで 人間の暮らし全般に 生活の場を広げようとしている ようなところがあります。

さてこれは9時から5時までの勤務が 機能しなくなることを意味します キャリアを登るハシゴとしての タイムレコーダーは廃れつつあります 毎日 産業が生まれては消えていきます これまでの延長線上では駄目です 子どもたちにこういう質問は やめるべきです 「大きくなったら何になりたいか?」 その代わりにこう聞くのです 「大きくなったら どんな風に働きたい?」 次世代の仕事は常に変化を続けるでしょう 共通項は彼ら自身なのです 従って自分は何が得意か よりよく理解し 理想的な協力者を仲間集めできた人ほど より良い生活が送れるので。

将来の課題は 社会的な安全網を 作り直して ますます分断されてゆく 経済社会に適応することです 健康保険にはポータビリティーが必要です 私たちに必要な政策は 社会的に弱い立場の全国民に適用されて また弱者である他者を支えても 貧困に陥らないというものです 全国民の最低所得保障を 真剣に検討する必要があります 労働の組織化を一から改革する必要があります 21世紀の価値に適合するように構築された 労働観は 家族の生活費という 古びた考えではありません その考えは期限切れです お母さんに聞いてみてください。

では2つ目の疑問について 「私たちはどう生きるか?」 私たちは 移民だった先祖のように 生きるべきです 先祖がアメリカに来たとき 住み家を共有し 生活の知恵を教え合い 共同で子育てをすることはよくあり 食料の多寡に関わらず ひとり余分の食事をいつでも出せる術を 心得ていました でも 当時の人にとって 成功が意味するところは村を出て アメリカンドリームの象徴である 白い柵の邸宅を 手に入れることでした 私たちは今日なお 白い柵の邸宅を見て 成功や余裕のある落ち着いた生活を 思い浮かべます でも感傷の部分を取り除いてみると 白い柵は 我々を分断するものです 多くのアメリカ人が 白い柵や その中で繰り広げられる 極めて個人的な生活を拒絶して その代わりに 取り戻そうとしているのが 昔ながらの村での 相互依存の生活です。

例えば アメリカ人のうち5千万人が 複数の世代の住む世帯で生活しています この数字は リーマンショックで 跳ね上がったものですが あれ?こんな生活も悪くないなと 多くの人が感じたのです 1つ屋根の下に複数の世代で暮らす人の 3分の2が お互いの関係が良くなったと言っています 中には 1つ屋根を家族と共有するのではなく 日常社会の健康や経済的利益を 理解してくれる― 赤の他人と共有する人もいます CoAbodeは 他のシングルマザー同士で ハウスシェアをするための オンラインプラットフォームで 5万人がユーザー登録しています また 65歳以上の方は特に このような新しい居住形態を 探している方が目立ちます 自分たちの生活の質が プライバシーと連帯性の両方に 依存していることを理解しているのです 考えてみれば このことは 老若男女誰にでも 言えることです あまりにも長いこと私たちは 一国一城の主こそが幸せだと偽ってきました でも あらゆる調査で 違う結果が出ています 調査結果では 最も健全で 幸せで その上 安全に暮らす人は — 犯罪や 気候変動による災害など あらゆる要素において 近所付き合いをしながら暮らす アメリカ人だと分かったのです。

さて 私はこれを じかに経験しました 私はここ数年間 コ・ハウジング住宅で暮らしています 1800坪余の土地に 何本もの柿の木と 共同の庭の周囲にくねくねと植えられた 沢山の実の成るブラックベリーの茂みがあり ちなみに オークランドの市街地の まっただ中にあります 大きさも形も違う9戸の住居が 別々に建ててありますが どの住居も 出来る限り 地球に優しく建ててあります 屋根には 大きな黒光りのする ソーラーパネルが張ってあり 各戸の月々の電気代が 5ドルを超えることは珍しいです ここで暮らす25人は 全て 年齢も 政治的信条も 職業も ばらばらで 各戸に一般の家にあるものが 全て揃っています でも その上に レストランを開業できる規模の 共同のキッチンと食堂があり 週に2度 みんなで一緒に 食事をします。

さて私がこのように暮らしていると 話すと よく2通りの極端な反応のどちらかが 返ってきます 「みんながこんな風に生活すれば良いのに」 と言われるか 「そんな恐ろしい生活絶対にお断り」 と言われるかです はっきりさせておきましょう 私たちはそれぞれのプライバシーに 敬意を払いつつも いわゆる「過激な親切心」に 注力しています それは 高級ホテルが掲げるような おもてなしではなく 一人ひとりが 親切を受けるに値するという考え方 以上それだけです。

このようなコミュニティで暮らして 一番驚くことは何でしょうか? 修繕や 料理や 草取りなどの 家事労働を共同するだけでなく 感情面での苦労も分かち合うのです 理想の家族像だけに依存して 自分のあらゆる欲求を 満たそうとするのではなく 20人ものいろんな人のところで 職場での辛い思いを愚痴ったり 先生からの暴力への対処法を 一緒に考えてもらえたりできます コミュニティの10代の子たちはよく 両親以外の大人のところへ行って 助言を求めるんです ベル・フック女史は これを 控えめな言い回しで 「革命的」子育てと呼びました 周囲の多様な大人が 手本となり頼りになるほうが 健全に子どもたちが育つのです これは実は 大人にとっても健康な環境でした 白いフェンスの中で 完璧な家庭を築こうとすると 大きなプレッシャーを伴います。

「より良い暮らしの新版」と 言っているんですが 完璧な家庭のために注力するのをやめて 不完全な身の回りのムラに対して もっと力をそそごうということです 1つ屋根の下で暮らす親族とか 私のような コ・ハウジングのコミュニティとか あるいは たくさんの隣人と よく知り合っていて お互いに声がけができる地域です つまり 良識ある社会です でも しばしばお金が絡むと 手を差し伸べることが 難しくなることもあります 最も頼りになる財産は 関係性の中に見つかります。

「より豊かな生活の新版」は 個々の先の見通しの問題でもありません 実際 自分が失敗者だったり 失敗したなと感じていたとしても 大丈夫です 今まで重視しなかった基準で見れば 成功者かもしれません 稼ぎはそこそこであっても 素晴らしい父親かもしれません 夢のようなマイホームは買えなくても 近隣とのホームパーティが 伝説と呼ばれるかもしれません もし教科書通りの成功を収めていても 私の言わんとすることは さらに残酷なことかもしれません 自分の重視する基準で 負け犬になったとしても 世間は罰したりしません 決めるのはあなたです。

仮に私が 皆を快適に養えるほどの 大金持ちになったとしても 短く理不尽な人生を送った曽祖母の 素晴らしさを私が示すことができるとは 思いません 苦しみから脱出し有意義な日々をめざす上で お金は解決になりません どんなに大きな家があっても 曽祖母が耐えねばならなかった苦痛を 消し去ることはできません 曾祖母の素晴らしさを示すには 人とのきずなをできる限り強め できる限りの勇気をもって生きていくことです 不安が広がる 現代社会において 心細くなるのも 仕方ありません この不安感の中で 硬直して砕けそうになることも しなやかな生き方も選べます 内向的になり 制度を改革する力への 信頼を失い 自分すら信じられない となるのか あるいは 外向的になって 手を差し伸べ、つながり、創造する能力への 信頼を育んで行くのか。

結局のところ 最も危ぶむべきは アメリカン・ドリームが 叶わないことではありません 最も危ぶむべきは 信じてもいない夢を叶えてしまうことです それはやめましょう 困難でも もっと興味あることに 挑んでください そうするとこんな人生になります 日々の行動や あなたが 最高の愛情と才能とエネルギーを 捧げる人が あなたの信じるものと 可能な限り寄り添うものになります ただ金銭を稼ぐだけという つまらないことではなく 自分の先祖への感謝を 具現化することであり そういう努力こそが 美しいのです。

ありがとうございました。

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このプレゼンテーションについて

歴史上初めて、アメリカ人の親の過半数が、子どもたちの将来の生活水準は自分たち以下になると考えるようになりました。でもこのことを懸念する必要はないと、ジャーナリストのコートニー・マーティンは語ります。むしろ、仕事や家庭においてコミュニティや創造性を重視した新しい姿勢を明確にするよい機会になるのです。「最も危ぶむべきは、アメリカン・ドリームを叶えられないことではありません。最も危ぶむべきは、自分が信じてもいない夢が叶ってしまうこと」だと、マーティンは言います。これはアメリカに限らずもっと広く世界に通じることではないでしょうか。

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