直感を持った人工知能が生み出すすごい発明(15:23)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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この中で創造的なことを している人 — デザイナー エンジニア 起業家 アーティスト あるいは単に想像力が豊かという人は どれくらいいますか? 手を挙げてください (歓声)
ほとんどがそうですね そういう人に お知らせすることがあります これからの20年で 私たちの仕事の仕方は これまでの2千年間における変化よりも 大きく変わるでしょう 私たちは人類史の新時代に 差し掛かっていると思います。
人類史には 仕事の仕方に応じて 大きく4つの時代がありました 狩猟採集時代が 数百万年続き それから数千年の 農耕時代があり 2百年ほどの 工業化時代があり 現在の情報化時代が ほんの数十年です そして今 私たちは人類にとって 新しく大きな時代の始まりにいます。
「拡張の時代」へようこそ この新時代においては 人間の自然な能力が 拡張されることになるでしょう 計算システムが 人間の思考を補助し ロボットシステムが 作業を助け デジタル神経系が 生来の感覚を大きく越えて 私たちを世界へと繋げます 認識力拡張の話から 始めましょう 強化サイボーグだという方は どれくらい いらっしゃいますか?
(笑)
私たちは既に増強されていると 言えると思います パーティで誰かに 知らないことを聞かれたところを 想像してください こういうものを持っていれば 数秒で答えが分かります でもこれはまだ原始的な 始まりでしかありません あのSiriでさえ ただの受け身のツールです 実際 過去350万年の間 人類の道具はずっと 完全に受け身のものでした 指示した通りのことだけをし それ以上のことはしません 人類最初の道具は 打ち付けた場所を切るだけでした のみは彫刻家が指定したところを 削るだけです 最も先進的なツールでさえ 明示的な指示なしには何もしません これは私がよくフラストレーションを 感じることですが 道具にこちらの意向を 指示する必要によって 我々は制限されてきました コンピューターがあっても 文字通り手を使って 指示する必要があります しかし私はスタートレックの スコッティみたいな人間です。
(笑)
コンピューターと 会話がしたいんです 「コンピューター 車をデザインしよう」 と言ったら コンピューターが 車を出して見せます 「もっと速そうな感じで ドイツっぽくなくしてくれ」と言うと コンピューターが注文通りに してくれるんです。
(笑)
この会話は まだ先の話ですが 皆さんが考えるほど 遠くはなく 私たちは既に 取り組んでいます 道具は受け身のものから 生成するものへと飛躍しつつあります デザイン生成ツールは コンピューターとアルゴリズムを使って 形状を合成し 自分で新しいデザインを 作り出します 必要なのは 目標と制約だけです。
例をお見せしましょう これはドローン用の フレームの例ですが こちらがするのは 必要なことを伝えるだけ 4つのプロペラがあるとか 出来るだけ軽くとか 空力的な効率を良くしろとか すると与えられた条件を満たす あらゆる可能な解の全体— 何百万通りという解を コンピューターが探索します これには大型のコンピューターが 必要になりますが 私たち自身が 考えも付かないような デザインが生まれます コンピューターは 自分だけで答えを出します 誰かが何か 描いてやることはなく 何もないところから 始めるのです ちなみに このドローンの フレームが ムササビの骨盤に似ているのは 偶然ではありません。
(笑)
このアルゴリズムは 進化と同じように働くよう デザインされているからです。
この技術を世の中で 実際に目にするようになって ワクワクしています この2年 オートデスク社は エアバス社と協力して 未来の飛行機のコンセプトモデルに 取り組んできました まだ先は長いですが デザイン生成AIを使って 最近こんなものを 作り出しました これは3D印刷された客室の隔壁ですが コンピューターがデザインしたものです 元の半分の重量で より高い強度を持ち 年内にエアバスA320で 使われ始める予定です 明確に定義された問題に対して コンピューターは今や 自力で独自の解を生み出せるんです しかし直感的とは言えません 毎回 1から始める 必要があります 学習しないからです うちの犬のマギーとは違います。
(笑)
マギーは実際 最先端のデザインツールよりも 賢いんです どういう意味かというと 飼い主がリードを 手にしていたら それはかなりの確率で 散歩を意味すると マギーは理解しています どうやってそう 学んだのでしょう? 飼い主がリードを手に取るたびに 散歩に出たからです そこでマギーは 3つのことをしていました 注意を払うこと 何が起きたか 覚えていること 心の中にパターンを作って 保持することです。
興味深いことに これはまさにコンピューター科学者達が 過去60年の間 人工知能にさせようと 試み続けてきたことです 1952年に 三目並べができる コンピューターが作られました 大したことでした 45年後の1997年 ディープブルーはチェス王者 カスパロフを破りました 2011年 ワトソンはクイズ番組ジェパディで 歷代チャンピオン2人に勝ちました これはコンピューターには チェスよりも ずっと難しいことです 定められた手順に 従ってやる代わりに ワトソンは人間の対戦相手に勝つために 推論をする必要がありました そして2週間前 ディープマインド社のAlphaGoが 最も難しいゲームとされる碁で 世界最強の碁指しを 破りました 碁には宇宙の原子の 総数よりも 多くの手があります 勝つためにAlphaGoは 直感力を発達させる 必要がありました 実際AlphaGoが なぜそうしたのか 開発者自身にも 分からないことがありました。
物事はとても 速く進んでいます 人の一生の時間のうちに コンピューターにできることが 子供の遊びから 最高度の戦略的思考にまで 進歩したのです ここで起きているのは スポックのようだった コンピューターが カークみたいになった ということです。
(笑)
純粋な論理から 直感へという変化です みなさん この橋を 渡ろうと思いますか? 多くの人は 「まさか!」と言うでしょう。
(笑)
コンマ何秒で そういう判断をするのです この橋は安全でないと 知っていたかのようです 今やディープラーニングシステムが そのような直感を 獲得しつつあります 近い将来 皆さんは 自分の作ったものや デザインしたものを コンピューターに見せて 意見してもらえる ようになるでしょう 「相棒 こりゃ駄目だよ やり直しだね」 あるいは「みんなこの歌を 気に入ってくれるだろうか?」とか 「この新しい味のアイスは受けるか?」とか 聞けるでしょう さらに重要なのは これまで直面したことの ない問題に コンピューターで 取り組めるようになることです たとえば気候変動です 人類はあまり上手く 対処できていないので どんな助けでも ありがたいことでしょう それが私の お話ししていることです テクノロジーが人間の 認知能力を増強し 拡張されていない素の人間には 単に手の届かなかったものを 思い描き デザインできるように なるということです。
では我々が発明しデザインしようとしている そういう新しいクレージーなものは どうやって 製造するのか? 人類拡張の時代は 仮想的・知的な領域だけでなく 物質的世界にも 関わるものです テクノロジーはいかに 人間を拡張するのか? 物質的世界では ロボットシステムによってです 人間の仕事が ロボットに奪われる怖れは 確かにあって ある種の領域では 実際そうなるでしょう でも私がもっと興味があるのは 一緒に働く人間とロボットが 互いを拡張し合って 新しい領域を切り開く というアイデアです。
これはサンフランシスコにある 我々の応用技術研究所です その主要な研究領域の1つが 先進ロボット工学 — 特に人間とロボットの 共同作業です これは我々のロボットBishopです 繰り返し作業のある建築現場で 作業者を手伝うよう 実験的に セットアップしてあります 壁にコンセントや電灯スイッチのための 穴を開けるといった作業です。
(笑)
人間のパートナーが 単純な言葉やシンプルな手振りで やることを示します 犬に話かけるみたいに Bishopは指示されたことを 完璧な正確さで実行します 人間には 人間の得意なことを してもらいます 認識とか 知覚とか 意志決定です ロボットには ロボットの得意な ことをさせます 精密な反復作業です。
これはBishopがやった 別の面白いプロジェクトです このHIVEという名の プロジェクトでは 人間と コンピューターと ロボットが共同して 非常に複雑な設計問題を解決するという 体験を試行しています 人間は労働者として働きます 建築現場を動き回り 竹素材を扱います ちなみに形状の異なる竹は ロボットには扱うのが 非常に難しい素材です ロボットはこのファイバーを 張る作業をします 人間にはほとんど 不可能なことです そして人工知能が 全体の制御をしています 人間とロボットに それぞれの作業を指示し 何千という要素を管理します これが興味深いのは このパビリオンの構築は 人間とロボットと人工知能が 補い合って 取り組まねば 不可能だったということです。
もう1つプロジェクトをご紹介しましょう ちょっとクレージーなものです アムステルダムを中心に活動する ヨリス・ラーマンとMX3Dのチームとともに 世界初の自律的に建設する橋を デザイン生成と ロボットによる3D印刷で 作ろうというものです 今まさにアムステルダムで ヨリスと人工知能が 橋をデザインしています デザインが完成し 実行を指示すると ロボットがステンレスで橋を 3D印刷し始めます そして橋が出来るまで 人の手助けなしに 自律的に印刷を続けます。
コンピューターが 新しいものを想像しデザインする 人間の能力を拡張し ロボットシステムが 以前には作り得なかったものを 製造・建設する手助けをしてくれます そういったものを感じ制御する 能力についてはどうでしょう? 我々の作る物の神経系はどうか?
人間の神経系は 周囲で起きている あらゆることを伝えてくれます しかし我々の作る物の神経系は ごく原始的なものです 例えば 車が街中の交差点で 道路に開いた穴を踏んでも 自分で市道路局に 連絡することはありません 建物は 中に入った人たちが 気に入ってくれているか 設計家に伝えることは ありません おもちゃメーカーは おもちゃが実際に遊ばれているか どこでどう使われているか 楽しまれているかどうか 知りません バービー人形のデザイナーは 自分の人形に このようなライフスタイルを 想像していたことでしょう。
(笑)
でも本当はバービーが すごく孤独だったとしたら?
(笑)
自分のデザインしたものについて 実際にどんなことが起きているか デザイナーに分かれば 道路にせよ 建物にせよ バービーにせよ その知識を生かして 利用者にとって より良い体験を 生み出すことができるでしょう 欠けているのは 我々がデザインし 作り 使うもの すべてと我々を繋ぐ神経系です 世に出した自分の作品から そのような情報が流れてくる としたらどうでしょう? 自分の作ったものを 人々が買ってくれるよう 説得するために 我々は膨大な お金と労力を費やしています 昨年は2兆ドルという 規模でした もしデザインし 作ったものに対し 世に出した後 販売された後 公開された後に そのような繋がりを 持てたなら ビジネスのやり方も 変わるでしょう 作った商品を人々が欲しくなるよう 仕向けるのでなく 人々がそもそも欲しいと 思うものを作るのです。
良い知らせは デザインしたものと繋がる デジタル神経系に 我々は既に取り組んでいる ということです あるプロジェクトで私たちは ロサンゼルスの バンディート・ブラザーズに属する 2人と組んで 作業しています 彼らのやっていることの1つは とんでもないことをする とんでもない車を作るということです ほんとうにクレージーな連中です。
(笑)
いい意味で 我々がやっているのは 従来のレーシングカーの車体に 神経系を組み込むということです。
何十というセンサーを取り付け 世界第一級のドライバーに 運転してもらい 砂漠を1週間 狂ったように走り回るのです 車の神経系が 車に起きたことを すべて捕らえます データポイントの数は 40億にもなります 車が受けたあらゆる力を 記録しています それからクレージーなことをしました そうやって得たデータを Dreamcatcherという デザイン生成AIに入力します デザインツールに神経系を与えて 究極の車体を作れと言ったら 何ができるのでしょう? こんなものが得られます これは人間には決して デザインできないようなものです デザイン生成AIと デジタル神経系で 拡張された人間によって デザインされたもので ロボットで実際に 製造することができます。
そういう「拡張の時代」が 我々の未来であり 人間が知的・肉体的・認知的に 拡張されるのだとしたら いったい どんなことになるのか? そのおとぎの国は どんな風になるのでしょう?
来る世界では 物は製造されるより 栽培されるようになるでしょう 建築されるよりは 育てられるようになるでしょう 孤立したものから 繋がったものへと 採掘から 集積へと変わるでしょう 服従を求めるより 自律を尊ぶようになるでしょう。
拡張された能力によって 世界は劇的に 変わるでしょう 世界はもっと多様で 繋がっていて ダイナミックで 複雑で 適応的で そしてもちろん — より美しいものになります 未来に現れるものの姿は 見たこともないものに なるでしょう なぜなら それらを形作るのは テクノロジーと 自然と 人間による 新しい共同関係だからです それは楽しみに待つ価値のある 未来に思えます。
ありがとうございました。
(拍手)
デザインツールにデジタル神経系を与えたら何ができるでしょう? コンピューターが我々の思考力や想像力を高め、ロボットシステムが橋や車やドローンなどの画期的な新しいデザインを自分で考え出し、構築するのです。未来学者のモーリス・コンティといっしょに「拡張の時代」へと旅し、人にもロボットにも単独では作り得ないようなものが共同で作り上げられる世界を垣間見てみましょう。