汚染物資を「食べる」ロボット(14:10)

ジョナサン・ロシター(Jonathan Rossiter)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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こんにちは 私はエンジニアで ロボットを製作しています。もちろん皆さんはロボットが どんなものかお分かりですね。分からなければ検索してみると はっきりします。
ではやってみます。検索するとこんな感じです。色んな種類の ロボットがあるのですが これらは主に構造上 人型ロボットになっています。如何にもロボットという感じです。プラスチックや金属で出来ており、モーターやギア等を 備えていますからね。中には結構 親しみの湧く物もあり、抱えて抱きしめたり 出来そうです。そうでないものもあり、『ターミネーター』から そのまま出てきたようです。
実際『ターミネーター』 そのものでしょう。このロボットで ワクワクするような凄い事が 沢山出来るのです。

しかし私は 違う種類のロボットに着目し そんな物を作ってみたいと 思っています。そこで私は人ではなく ある物から ヒントを得ました。
それは自然の中に 存在する生き物で、私達には出来ない 実に凄い事をするのです。現在あるロボットにも 出来ない事を。色々な事――床を這い回ったり 菜園に入り作物を食べたり 木に登ったり 水に出入りしたり 虫を捕まえて消化したりするのです。実に興味深い事をします。彼らは生き、呼吸をし、死に、自然の中にある物を食します。現存するロボットは実際 そんな事をしません。こんな特性をいくらか 未来のロボットに取り込めたら 大いに関心を集める課題を 解決する手助けになるかも しれませんよね?
現在の環境が抱える 2つの問題を見てみましょう。その環境の下では これらの動植物から見出した テクノロジーや技術を使う事ができ、問題解決の為には ロボットが使えるのです。

2つの環境問題を 検討してみましょう。両方共 私達が作り出した物で 人が環境と関わる中で かなり不快な事態を 引き起こしたと言える物です。1つ目は人口の増加と 関連しています。世界中の人口が急増する中で 農家や農場は より多くの作物の生産を 求められるようになりました。その為に農家は農地に、より多くの化学物質を 施すようになりました。化学肥料や硝酸塩 殺虫剤等です。それらは全て 穀物の生育を促す物ですが 悪影響もあります。その一例として 農地に化学肥料を与え過ぎると その全てが作物には行き届かず 多くが土に留まり 雨が降ると 肥料は地下水面に流れ込み そして地下水面から 流水となって湖や川に流れ込み 海へと流れて行くのです。この化学肥料(硝酸塩)の全てが そうした環境に流れ込むと それに影響を受ける 生物がいるのです。
例えば藻類です。藻類は硝酸塩や 化学肥料が好物なので そうした物質を 取り込み 条件が整えば 繁殖し 大量の新しい藻類が 増えるでしょう。これをブルームと言います。困った事に、藻類が こうした形で繁殖すると水中の酸素が不足するのです。この事態に陥ると即座に 他の水中の生物は 生き残れなくなるのです。では私達は何をすべきでしょう? 藻類を食べ、それを消費し 安全な物にするロボットを 試作しています。それが1つ目の問題です。

2つ目の問題も やはり人が生み出した物で 石油による汚染と 関わりがあります。石油は私達が使用する エンジンやボートから 流出します。時折 タンカーのオイルタンクから 海中にドッと漏れ出し 石油が海に流れ込みます。ロボットを使って この問題を処理できれば良いですよね? これが私達の仕事です。汚染物質を食べる ロボットを作るのです。

実際そのロボットを作る為に 2つの生物から ヒントを得ました。右側にウバザメが見えます ウバザメは 大きな体つきをしています。非肉食なので 一緒に泳ぐ事が出来ます ご覧の通りです サメは口を大きく開けて 水中を泳ぎ プランクトンを集めています。動き回り続ける為にその体内で エネルギーを使っているのです。そんなロボットが 私達に作れないものか。海を泳ぎながら 汚染物質を食べ尽くす ウバザメのような― 出来るかどうかやってみましょう。別の生物からも ヒントを得ました ここにマツモムシの 写真があります 本当に可愛らしい虫です 本当に可愛らしい虫です 水中で泳ぐ時 ぺダルのような脚で 前に進みます。

私達はこれら 2つの生物をヒントにして その両方を繋げ新種の ロボットを作ったのです。実際この虫からヒントを得て 作ったので このロボットは水面に浮かび 水面を漕ぎます。"Row(漕ぐ)-bot(ロボット)" という名前です。漕ぐロボットなのです。どんなものでしょう? ここに何枚か Row-botの写真があります お見せしましょう 最初に見たロボットとは 全く違っていますね グーグルは間違っています ロボットは むしろ こんな感じです。

ここにRow-botを持って来ました。お見せしますね。大きさが分かるでしょうし 他のロボットとは 違っていると分かるでしょう。これはプラスチックで出来ています。Row-botを構成しているパーツ、これが何故特別なのか 見てみましょう。

Row-botは 3つのパーツから出来ていて それら3つは本当に 生物の一部のようです。脳があり 体があり 胃があります。エネルギーを生み出す為には 胃が必要なのです。どのRow-botにも これら3つのパーツがありますが、それはどんな生物も同様です。では1つずつ見て行きましょう。プラスチックで出来た体があり、それは 水面に浮かぶのです。その側面に水かきがあります。動く手助けとなるオールです。まるでマツモムシのようです。体はプラスチックですが ここには柔らかい ゴム製の口がこことここにあり その口は2つです。何故口が2つあるのでしょう? 1つは食べ物を取り入れ、もう片方は 食べ物を排出するのです。つまり口とお尻が ある事が分かります。お尻と言うか――

観衆:(笑)

――物が出て行く場所で 正に本物の生物のようです ウバザメにも似てきました。それは体です。

2つ目のパーツは 胃かもしれません。ロボットにエネルギーを供給し 汚染物質を処理する必要があるので 汚染物質が中に入り 何かを行います。真ん中の この部分には 微生物燃料電池という電池があります。これを置いて 燃料電池をお見せします。これはバッテリーを 装備する代わりとなり、従来の電力装置の 代わりとなるものです。1つお見せしましょう これはロボットの胃です 本当に胃の働きをします こちらの側から汚染物質という形で エネルギーを入れる事が出来るからで それが電気を生み出すのです。

これは何でしょう? 微生物燃料電池と 呼ばれるものです 少しだけ 化学燃料電池に似ています それを学校で 見かけたかもしれないし ニュースで見たかもしれません 化学燃料電池は 水素と酸素を取り込み 反応させて 電気を生み出します 技術は十分に確立されたもので アポロ宇宙計画で使われました 40〜50年前の事です それより少しだけ新しいのが 微生物燃料電池です 原理は同じです 片側に酸素を入れますが もう片側には 水素を入れる代わりに スープを少量入れます そのスープの中には 生きた微生物が入っています 少し有機物質を入れると― それは廃棄物や サンドイッチの残りといった 残飯かもしれませんが― そこに入れると 微生物がそれを食べ それが電気に変わるのです そればかりか 適切な微生物を選べば 汚染物質を処理する為に 微生物燃料電池が使えるのです 適切な微生物を選べば 微生物は藻類を食べます 別の種類の微生物を選べば 石油溶剤や原油を 食べるでしょう この胃がどうやって 汚染物質を処理する為に 使われているか だけでなく どうやって汚染から電気を 生み出すのに使われているかが 分かるでしょう ロボットは 食べ物を胃の中に入れ 消化して電気を作り 自然環境の中で動き回る為に 電気を使う行為を 繰り返すのです 電気を使う行為を 繰り返すのです。

Row-botを作動させると 何が起こるか見てみましょう 水を漕ぐとどうなるか― ビデオを2つお見せします 最初にお見せするのは 開いた口です 前方と後方の口が開き 十分に開ききると ロボットは 前方に漕ぎ始めます 食べ物を取り込み 処理物を排出する為に 水中をかき分けています ひとしきり動き終えると 止まり 口を閉じますー ゆっくりと口を閉じるのです そしてそこに留まり 食べ物を消化します。

もちろんこれは 微生物燃料電池で 微生物を含んでいます 本当は出来るだけ早く 沢山のエネルギーを 微生物から出したいのですが 微生物に無理は利かず 毎秒ミリワット又は マイクロワットといった ごく少量の電気しか 作り出せません これを分かりやすく説明すると 例えばあなたのスマホは 特に新型のものでは 約1ワットが必要です それは微生物燃料電池と比較すると 千倍、百万倍の エネルギーとなります それをどう使えるのでしょうか? Row-botが消化を完了し 食べ物を取り入れると すべての食物を消化するまで じっと待ちます それには数時間 時には数日かかります 典型的なRow-botのサイクルは 次のようなものです 口を開け 動き 口を閉じ その場にじっとして待つのです 一旦食べ物を消化すると 再び同じ事をして 動き回るのです しかし本当の 生物のようだと思いませんか? まるで私達が 行なっている事のようです 土曜日の夜に 外出して口を開け 腹を満たし テレビの前に座って消化をします 十分消化したら 同じ事を繰り返します。

このサイクルを繰り返すと 最後には他の事が出来る程の 余分なエネルギーが得られます 最後には他の事が出来る程の 余分なエネルギーが得られます 例えばメッセージを送ります こんなメッセージです 「最近これだけ汚染物質を食べたよ」 とか 「こんな食べ物に出くわしたよ」 とか 「僕はここにいるよ」 「僕はここにいるよ」 とメッセージを送る能力は 非常に重要なものです 以前目にした油膜の事や 藻類の過剰繁殖を考えると 求められるのは 自然の中でRow-botを浮かべて 全ての汚染物質を食べ尽くし その後 回収する事です 何故でしょう? 今のロボット― 私がここに 持って来たRow-botは モーターやワイヤーがあり それ自体が生物分解性でない パーツで出来ています 現在のRow-botは 有害な電池のような物が付いています それを自然の中に 放置する事は出来ないので それを探知する必要があり 仕事を終えてしまったら 回収する必要があるのです 従って使用出来る Row-botの数は制限されます 一方で 少しばかり生物のような ロボットであるなら 命の終焉となり 朽ち果てます。

だから こんなロボットが プラスチック製ではなく そこらに捨てておくと 生分解する別の素材で 出来ていたら良いですよね? そうなったら ロボットの使い方が変わります 10〜100個のロボットを 自然に放ち それらを追跡し ロボットが 死んだ時 回収するのでなく 死んだ時 回収するのでなく 千、百万、十億個の ロボットを自然環境に 放つ事が出来ます 解き放つだけで良いのです 命の終わりには ロボットが 朽ち果てるのが分かっているので 心配には及びません これはロボットに関する概念と その使い方を変えます。

問題は そんな事が 可能かということです 可能だと私達は実証しました 生物分解性のロボットを 作る事は可能です 実に興味深い事に このロボットを作るには ありふれた素材が使えるのです いくつかご紹介しましょう 驚きですよ ゼリーから ロボットが作れるのです 現在あるモーターを 付ける代わりに 人工筋肉と呼ばれる物が 使えるのです 人工筋肉はスマート素材で 電気をその素材に通すと 収縮したり 曲がったり 捻れたりします 本物の筋肉のようです モーターを取り付ける代わりに この人工筋肉を付けるのです 人工筋肉は ゼリーから作れるのです ゼリー少しと塩少々を用意し 少しばかり細工をすると 人工筋肉が出来上がるのです。

先程 紙から微生物燃料電池の胃も 作れると言いました 先程 紙から微生物燃料電池の胃も 作れると言いました 生物分解性の素材から ロボットの全体が出来るのです 野外に放置すると その後 朽ち果てます 心の底からワクワクします これは私達のロボットに対する概念を 全く変えてしまいそうです それだけでなく これらのロボットを使って 出来る事への考え方が 実に クリエイティブな物にもなるのです。

一例をご紹介しましょう ロボットを作るのに ゼリーが使えたらー ゼリーを食べますよね? こんなものを作っては 如何でしょう? グミベアー・ロボットです ここにいくつか 予め用意しておきました さあここに グミの小袋があります レモン味です グミベアーを食べます この熊はロボットっぽくないですね? でもそういうふりをします 1つ口の中に放り込みます レモン味 美味いですね あまり噛まないように気をつけます ロボットですから 嫌でしょうし そして飲み込みます 胃の中に入ります そこでロボットは動き、思考し 曲ったりくねったりします 何かをするのです 更に腸の方まで移動して 潰瘍やがんが あるかどうかを見極め 注射のような事を するかも知れません 一旦その仕事を終えたら ロボットは胃で消化されたり それを望まなければ そのまま消化器官を通り トイレに流され 環境的で安全に分解されます これは又 私達の ロボットへの概念を変えます。

はじめに汚染物質を食べるロボットを ご紹介しました 次に私達が食べられる ロボットでした。これが将来のロボットとの 関わりのヒントを 与えてくれると思います。

ご清聴有難うございました。

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

このトークでは、汚水を飲み込む事で、自身を動かす為に必要な電気を生み出し、汚染物質を清掃するロボット"Row-bot"が紹介されています。ロボット専門家、ジョナサン・ロシターは、微生物を使った燃料電池で藻類の過剰繁殖を防いだり、水面に流出した油膜を中和しながら水中を泳ぐ特殊なマシンが、どのようにして生物分解型の、自動汚染除去ロボットの先駆けとなりうるかを説明しています。

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