小惑星ハンターの冒険(6:06)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私が手にしているのは とてつもなく古いものです。どんな人工物より 地球上の生命より どの大陸やそれらを囲む海よりも古いのです。これが形成されたのは 40億年以上も昔、太陽系の黎明期 惑星が生まれつつあった時です。このニッケルと鉄の錆びた塊は 特別な物には見えませんが、中を割って見ると 地球上の金属とは異なることが分かります。この模様は宇宙でのみできる金属結晶で、そこでは溶けた金属が百万年に数度ずつと 非常にゆっくりと冷えることがあるのです。惑星の形成後に残った何百万もの小惑星と呼ばれる物体で、この塊よりずっと大きかったものの一部でした。
小惑星は最も古く 最も数の多い 近隣の天体です。この図は太陽を周回する 地球近辺の小惑星を示しています。黄色は太陽です。小惑星は青で示した地球の軌道の周辺を飛び回っています。地球と太陽と小惑星のサイズが 非常に誇張され描かれているのは、見易くするためです。世界中の科学者チームは こう言う天体を探し、日々新しい発見をして 地球近辺の宇宙地図を着々と作り上げています。その予算の多くはNASAから出ています。小惑星探索は巨大な公共事業のプロジェクトだと私は思います。高速道路の建設の代わりに宇宙空間の地図作りをして、今後 何世代も残る公文書作成をしているのですから。
去年 1,556個もの小惑星が 地球近辺に発見されました。これらは地球近傍小惑星として知られている物です。最近更新された その総数は13,733個です。それぞれ写真が撮られ データに分類されており、その太陽の周りの軌道が決定されています。小惑星によりますが、ほとんどの惑星の軌道は 何十年間もの予測が可能です。その軌道は驚く程の精密さで 予測できる物もあります。例えば ジェット推進研究所の科学者は、小惑星トータティスの4年間の軌道を30キロ以内の精度で予測しました。その4年間でトータティスは85億キロ移動し、その予測精度は 0.000000004です。
(笑)
この小惑星の美しい一部を私が持っている理由は、地球近辺の他の天体同様、小惑星も予期せぬ訪問をしてくれるからです。
(笑)
3年前の今日、小さな小惑星が ロシアのチェリャビンスクに落下しました。これは直径約19メートル、コンビニ店1つ位の大きさでした。こんな大きさの物体は50年かそこらに1度地球に衝突します。
6,600万年前、ずっと大きな小惑星が地球に衝突し 地球生命の大量絶滅を起こしました。植物や動物の75%が 死んでしまったのです。それには、残念なことに恐竜も含まれています。その小惑星は直径10キロほどでした。10キロと言ったら ボーイング747が飛ぶ高度です。次 飛行機に乗ったら 窓際によって外を見て 地上にあるとてつもなく大きな岩が 飛行機の翼を擦ることを 想像してみて下さい。あまりに大きいので 通り過ぎるのに1分はかかるでしょう。そんな大きさの小惑星が 地球に衝突したのです。
私の生きる時代になって初めて 小惑星が地球にとって確実な脅威だと 考えられるようになりました。それ以来、小惑星を発見し記録を作る努力がなされてきました。私は 幸運にも、そんな研究の一環に携わっています。私はNASAのNEOWISEの赤外線望遠鏡を使う科学者チームの一員です。NEOWISEは小惑星を探す為に 作られたのではなく、元々は地球を周回し 太陽系の彼方を調べ 最も温度の低い恒星や 最も輝く銀河系の探査のために作られ、設計されたように7ヶ月間十分機能したのですが、6年後の今もまだ機能していて、小惑星の発見と研究に目的変更され 使用され続けています。素晴らしい小さな宇宙ロボットですが、今では 中古車の状態です。センサーを冷やす冷却剤は とっくに無くなっているので「エアコンが壊れた」と私たちは冗談をいっています。走行距離計は 14.8億キロを示していますが また十分に機能しており 11秒毎に画像をしっかりと撮ってくれています。私がここで話し始めてから 23枚の写真を撮っていることになります。
NEOWISEを 価値の高いものにしているのは、熱赤外線の観測能力にあります。つまりNEOWISEは 小惑星に反射される太陽の光ではなく、小惑星が発する熱を観測するのです。これは極めて重要な能力です。なぜなら小惑星には石炭のように黒いのもあり、他の望遠鏡では見つけ出すのは難しく、不可能だと言ってもいいのですが、小惑星がどんなに暗くてもNEOWISEには明るく見えるのです。
天文学者は手元にあるあらゆる技術を使い 小惑星を発見し研究しています。2010年、歴史的段階に到達しました。NASAは直径1キロを超える小惑星の90%以上を発見しました。地球に大量破壊を 起こしかねないものです。しかしこれだけではありません。140メートルかそれ以上の物なら、普通サイズの国を全滅させてしまいます。今までそんな小惑星のほんの25%しか発見されていません。
私たちは地球近傍小惑星を求めて宇宙を探索し続けなければなりません。人類だけが微積分を理解し、望遠鏡を作ることができ、これら小惑星を探す方法を知っているのです。これは私たちの責任です。早期警告を得て 危険な小惑星を早期発見したら 軌道変更が可能です。地震やハリケーンや火山の噴火とは異なり、小惑星の衝突は精密な予測で避けることが出来ます。今 私たちがすべきなのは、地球近傍の宇宙地図を作ることです。引き続き宇宙の探索は必要です。
ありがとうございました。
(拍手)
TEDフェローのキャリー・ニュージェントは、最も古く最も数多い身近にある天体である小惑星を発見し、そのデータ作成に携わっている科学者チームの一員、小惑星ハンターです。どうして私達は小惑星から目を離すべきではないのでしょうか。この事実に基づいた短いトークで、ニュージェントは、どのように小惑星の大きな衝撃が地球を形成して来たのか、そして小惑星を探し出すことは地球の生命体を守ることに他ならないと説明します。