いずれは地球も火星のようになるその理由(11:55)

アンジャリ・トゥリパーティー(Anjali Tripathi)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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夜空を見上げ星を見ると その数に驚かされます 美しいですね しかし そこには 目には見えない星が もっとあるのです なぜなら ほとんどの恒星には それぞれ 周回している惑星が 1つや2つはあると 分かっているからです

ですからこの写真には 今まで発見された系外惑星全ては 写っていないのです 惑星というと 私たちは遥か彼方にある 地球とは全く異なる天体を 想像しがちですが 私たちが暮らしている地球も惑星です 地球に関する多くの 驚くべき現象があります そのようなことを探し求め 幅広く宇宙を探索する中 驚くことが分かって来ています その中の地球に関するあることを お話ししたいと思います それは 毎分 約180kgの水素と 3kg近くのヘリウムが 地球から宇宙空間へと散逸しており 二度と戻って来るものではない ということです 水素やヘリウムその他多くの気体で 組成されている地球の大気は 宇宙飛行士が ISSから撮ったこの写真に 青い線となって写し出される 様々な気体の集まりにすぎません しかし 私たちの惑星を包む この薄い層のお陰で 地球では生命が繁栄し 隕石その他多くの衝撃から 地球が守られているというのは 驚愕の現象です それだからこそ この構成部分が 失われているということは それ程でないにしても 恐るべき話です

私は この現象を研究しています これは「大気の散逸」と呼ばれ 地球に限って起きていることではなく むしろ惑星である証拠だと 言ってもいいでしょう 地球だけでなく どの惑星にも 起きている大気の散逸は その惑星自体を 知る手がかりとなります 太陽系というと この絵を思い浮かべるでしょう 惑星が8個ありますが 9個だと言う人もいるでしょうから この絵に苛立つ そんなあなたの為に もう1つ加えましょう

(笑)

探査機「ニュー・ホライズン」の写真も あるので冥王星も並べましょう 実は ここでは 大気散逸に関する このトークの目的のため 冥王星も 他の見えない恒星を 周回する惑星と同じように 私の中では惑星なのです 惑星の基本的な性質の定義に 自己重力で1つに結合した天体 というのが含まれています つまり色々なものが 引力で引きつけられ結合しており 質量も重力も大きいので 丸いのです 冥王星を含む これら全ての惑星を見ると みんな丸いでしょう

重力の働きが分かりますね 惑星のもう1つの基本的性質は これでは見えない 恒星である太陽との関係にあります 太陽系にある惑星は全て 太陽を周回していますが それが基本的に大気の散逸を 引き起こしているのです 恒星が惑星に大気散逸を 起こさせている根本的な原因は 恒星から惑星に放射される 粒子や光や熱が 惑星の大気を 流出させているからです 熱気球を考えても また この写真で見られるタイの 「コムローイ祭り」の提灯を見ても 熱風は気体を上昇させる力を 生み出すのが分かります 太陽が持つ十分なエネルギーと熱で 重力に拘束されているだけの 非常に軽い気体は 宇宙空間へと拡散しています こうして 地球や他の惑星の大気が 恒星から熱を受け 自己重力に逆らいながら その双方の影響を受け 大気散逸が起きています

先程お話ししたように その割合は 毎分 水素が約180kg ヘリウムが3kg近くです では その様子は? すでに1980年代に NASAの「ダイナミックエクスプローラー」 探査衛星が 地球の紫外線写真を撮っています この地球の写真では 散逸している水素が 赤く表示されています 酸素や窒素の他の気体は 白くキラキラと極圏に オーロラの環になり 熱帯地方付近にも所々現れています この写真が決定的に証明しているのは 地球の大気は 地球上の私たちを しっかりと包んでいるだけでなく 宇宙の彼方まで 流出しているということです それも驚異的ペースで 起きているのです

しかし地球だけが大気の散逸を 起こしているのではありません お隣の火星は 地球よりずっと小さいので 大気を保持する重力は 遥かに小さく 大気はあるのですが 地球とは比較にならない程希薄です 地表を見て下さい 大気が薄く天体衝突の衝撃を 和らげられなかったことを示す 複数のクレーターが見えます また「赤い惑星」と呼ばれるように 火星が赤くなったのには 大気散逸が関わっているのです 火星は過去 水があり 水に十分なエネルギーが加わり 水素と酸素に分解して 軽い水素が宇宙空間に散逸し 残る酸素が 地表を酸化させ錆びつかせ 現在の錆色となったと 思われています

火星の写真を見て 多分 大気散逸が起こったのだろうと 言うのは構わないのですが NASAは火星の周回軌道に 探査衛星「メイヴン」を送り 火星の大気散逸を調べています 火星探査機メイヴンは 地球上の景色にとても似た映像を 送って来ています 火星が大気を失いつつあるとは 随分前から分かっていましたが それを示す素晴らしい写真があります 赤い円が見えますね 火星の輪郭です 青い色が 火星から散逸している水素を示しています 火星のサイズの10倍以上 その範囲は広がっています 散逸した水素は もはや火星の大気圏にはなく 宇宙空間にあります このことによって 水素が無くなったので 火星が赤くなったという 理論が裏付けられます 火星が失っているのは 水素だけではありません 地球の大気からヘリウムだけでなく 酸素や窒素も散逸していますが 火星からも酸素が失われているのが メイヴンからの記録で見て取れます 酸素は重いので 水素程 遠くへは行きませんが それでも火星から拡散しており 赤い枠内に閉じ込められている わけではないのが分かります

大気の散逸は地球にだけ 見られる現象ではなく どの惑星でも起きており 探査機を送り大気散逸を調べると その惑星の歴史が分かり また惑星一般についても 地球の未来についても 知ることができます それで地球の未来を予測するには 遠くの見えない惑星を知る というのが1つの方法です その前に一言 冥王星では このような写真は お見せできません がっかりでしょうが その写真が まだないのです 探査機「ニュー・ホライズン」が 冥王星の大気散逸について調査中なので 楽しみに しばらくお待ち下さい しかし ここでお話したい惑星は 「トランジット系外惑星」 として知られている

太陽系外の恒星を 周回する惑星です 「系外惑星」または 「太陽系外惑星」と呼ばれる トランジット系外惑星には ある特質があります 中央にある星をよく見ると 瞬いているでしょう その瞬きの理由は 常にその恒星を周回している 複数の惑星があるからです そして それが特有な効果を生み出し それらの惑星が恒星の光を遮るとき 瞬いて見えるのです 夜空の星の 瞬きを調べて 惑星を探し出すことが出来ます この方法で5千個以上もの惑星が 天の川銀河内で発見されています 前にも言いましたが もっとあると思っています

私たちが見ている星の瞬きは 惑星そのものからのものではなく 記録可能な 恒星の周期的な輝度の変化です 恒星を周回する惑星が 恒星からの光を遮り それで私たちには 瞬いているように見えるのです これから惑星を発見できるだけでなく 波長の異なる光をも検知できます 地球や火星を 紫外線で見ると言いましたが ハッブル宇宙望遠鏡で トランジット系外惑星の 紫外線観測をすると 惑星が恒星の前を通るとき 紫外線はずっと弱くなり 瞬きが ずっと大きくみえます それは拡散した水素を含む大気が 惑星を囲んでいるので 惑星は 膨らんで見え より多くの光が遮られることになるからだと 考えています

この手法を使い 大気散逸をしている 数個のトランジット系外惑星を 発見することが出来ました 私たちが発見した惑星の中の 幾つかは 「ホット・ジュピター」とでも 呼びたいものです この名前の由来は 木星のように 主に気体でできた惑星だからです ホット・ジュピターは 恒星にとても近く その距離は太陽と木星間の 百分の1程しかありません ホット・ジュピターにはたくさんの 今にも散逸しそうな軽い気体と 恒星から放射される強い熱があり 壊滅的ペースで 大気散逸が起きています 毎分180kgの水素を 失っている地球とは雲泥の差で ホット・ジュピターは 毎分約60万トンもの水素を 失っているのです

これでは そんな惑星は 無くなってしまうのではと 誰もが私たちの太陽系を見て 投げかけてきた疑問です なぜなら太陽に近い惑星は 岩石惑星で 太陽から遠い惑星は もっと大きく主に気体だからです 最初は木星のような惑星だったのに 太陽が近いので ガスが全部なくなったということが あり得るのでしょうか 惑星の始まりが ホット・ジュピターみたいな状態だったら 水星や地球のような惑星には ならないだろうと考えています しかし 小さい惑星で始まるなら 大量の気体が放出され それが大きく影響して 最初の状態とは随分違う惑星に なった可能性はあります

これは 一般的なことのようで 太陽系では どうなのかと お考えのことかもしれません これが地球の私たちと どんな関係があるのでしょう 遠い未来 太陽の光度が増し 太陽から放射される熱が 非常に強烈になるとしたなら 今 ホット・ジュピターから 気体が流出しているように 地球からも気体が 急速に流出して行きます それで 私たちが予期するのは 少なくとも 心の準備をしているのは 遠い未来に 地球は火星のようになる と言う現実があるからなのです 地球の水から分離した水素は 宇宙空間により速く 放出され 乾燥した赤い惑星だけが残るでしょう

でも 怖がらないで下さい 数十億年後の話ですから 十分準備の時間はあります

(笑)

未来に何が起きるのか というだけでなく 大気散逸が こうしている間も 起きていることに気付いて欲しかったのです 宇宙で起きていることや 遥か彼方の惑星について知らせてくれる 多くの素晴らしい技術が 今はあります 私たちは そんな世界を知ろうと これらの惑星を研究しています こうして火星や ホット・ジュピターのような 系外惑星を調べる過程で 大気散逸の様な現象を発見し 地球のことが さらに解明されます

次に宇宙とは どこか遠いことのように 感じられる時 この私の話を思い出して下さい

ありがとうございました

観衆:(拍手)

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このプレゼンテーションについて

毎分、約180kgの水素と3kg近くのヘリウムが、地球の大気から宇宙空間へ散逸しています。この大気散逸に関する研究をしている天文物理学者のアンジャリ・トゥリパーティーは、いつか(数十億年後に)この青い地球も大気散逸で火星のように赤くなると、興味をそそる分かり易いトークで説明します。

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