デジタル時代にアーティストがついに稼げるようになる方法(10:31)

ジャック・コンティ(Jack Conte)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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どうも皆さん まず2007年に 戻りますが 私が6ヶ月間 心血を注いだ アルバムが 当時Myspaceで 日に3回くらい再生されていました 私は落ち込んでいきました 他の人たちが ギターを弾き歌を歌って YouTubeという新しいサイトに 動画を上げ 30万回とか再生されているのに 気付いたからです それで私もYouTube動画を 作ろうと決めました ある時 私のバンドの動画が YouTubeのトップページに取り上げられて すごいことになり たくさんの新しいファンができました それからまた 音楽が嫌いなのか何なのか くさす人も大勢いましたが—

(笑)

でもいいんです 沢山の人が ライブに来てくれるようになり ツアーを始め レコードも出しました iTunesの最初の1ヶ月の売上げを 確認してみたら 22,000ドルにもなっていて 驚きました というのも私はその頃 親の家に住んでいて 動画をネットに上げて ミュージシャンとして 身を立てようとしていましたが 2009年当時そんなことに敬意を 払ってくれる人は文字通りゼロで ネットに動画を上げている当人たちでさえ そうだったのです

それからの4年間 私はインターネットに次から次へと 動画をアップロードし続け だんだんと内容も良くなっていき ブランド契約や コマーシャルや iTunesの売上げで 十分な収入が得られ 家を買ったり 録音スタジオを 作ったりしました しかし1つ大きな問題がありました 2013年にクリエイティブな人間が 金を稼ぐのは すごく奇妙なことだったんです 何よりビジネスモデルが 絶えず変化していました 58,000ドルあった iTunesダウンロードによる年間収入が ストリーミングによる 6,000ドル程度の収入へと減少しました ストリーミングはダウンロードより 分が悪かったんです ネットには新たなクリエイターが 続々登場していて 数万ドルのブランド契約を巡る競争が 激しくなりました それがバンドを支えていた ものだったんですが その上 私たちの動画自体は— ファンが喜んでいた クリエイティブなものであり 世界に価値をもたらして いたわけですが そういった動画は ほとんど収入になりませんでした これは私のYouTubeダッシュボードを 撮ったものですが 28日間で 百万回視聴され その広告収入が 166ドル足らずです

2013年には ネットに作品を上げて お金に換える仕組みが 全然機能して いなかったのです 新聞社であれ 何かの機関であれ 個人のクリエイターであれ それは変わりません ウェブコミックを作って 月間2万人の読者がいても 広告収入は200ドルくらい にしかならないんです 2万人って言ったら NBAのアリーナが埋まる人数ですよ いったい どこの世界で それが不十分だって言うんでしょう? 理解できません それで生活していけないなんて 私たちは何というシステムを 作ってしまったんでしょう?

これに関して私には 持論があります 「奇妙な100年間」理論です

(笑)

(拍手)

100年ほど前 ロウを塗った筒に 音を記録する方法が見出だされました 蓄音機の誕生です ほぼ同じ頃に 印画紙やセルロイドに 光を記録する方法が見出だされました 映画やテレビの誕生です そういう作品が初めて物に 記録できるようになったわけで これはすごいことでした それまではアートはまったく 束の間のものであり 交響曲の演奏を聴き損ねたら それっきりだったのです でも今や オーケストラの演奏を 物に記録しておいて 後で聴けるようになり それは素晴らしいことでした 実際それは ものすごいことであり それから100年の間 1900年から2000年まで 人類は何十億ドルもかけ 基本的にアーティストが2つのことを できるようにするインフラを作り上げたのです 1つは作品を物に記録すること もう1つは その物を それを欲しがる世界中の人々に 届けるということです 様々な業界の努力が この2つの問題に向けられました トラック輸送会社に 小売店舗 マーケティング会社に CDケース製造会社が こぞって この2つの問題の解決に 当たったのです

その後に起きたことは みんな知っての通りです 10年前 インターネットが成熟し Spotifyや Facebookや YouTubeや iTunesや Google検索が現れ 100年続いたインフラや サプライチェーンや 配送システムや 収益化の手法が たった10年で まったく迂回されるように なったのです 100年に及ぶ尽力の末にです 現在クリエイティブな人々にとってのシステムが 完全に破綻しているのも不思議はありません この新しい文脈において 収益化という部分が機能していないのも 不思議ではありません

しかし私が今クリエイターとして 今生きてクリエイティブな人間であることに すごくワクワクしているのは 我々クリエイターにとって 次の100年のインフラとなる 新しい仕組みを見極めようとし始めて まだ10年だと気付いたからです ほんの10年の間に たくさんの試行錯誤が行われ 非常に良いアイデアも生まれ 数多くの実験が行われて 何が機能し 何が機能しないか 分かってきました たとえばTwitch配信です Twitchって聞いたことのある人? Twitch配信者は 月に3〜5千ドルを ゲームプレイのストリーミングで 稼いでいます 有名なプレイヤーだと 年に10万ドル以上稼ぎます YouNowという サイトとアプリがありますが ミュージシャンやビデオブロガーに ファンがデジタルグッズで支払う仕組みがあります

私自身も この問題に 取り組んでいます 4年前 私は友人と一緒に Patreon という会社を始めました 今では80人で この問題に取り組んでいます これは基本的には 会員制のプラットフォームで クリエイターが収入を得るのを 簡単にしようというものです 毎月の暮らしのためのお金を ファンに出してもらうのです クリエイティブな人間でいることで 給料がもらえるようなものです これは そのクリエイターの例で “Kinda Funny”という名前ですが YouTubeで22万人の 購読者がいます 彼らのアップロードする動画は 1万5千回〜10万回 視聴されています ここでちょっと考えて もらいたいんですが 「1万5千回視聴」と聞いたり こういうコンテンツを 見たりすると ラジオで聞く 朝の番組や NBCなんかで観る トーク番組のような ちゃんとしたものじゃないと 反射的に思うでしょう でも“Kinda Funny” は Patreonに登場して2、3週間で 月31,000ドルの収入を 上げるようになっていたのです そんなに早く軌道に乗ったので 彼らは番組を追加することにし 2つ目のPatreonのページを作って 月21,000ドルの収入を 上積みしました そして彼らは実質的に メディア企業へと成長していて 会費ですべて賄っています

これは別の例ですが スポーツ記者の デレク・ボドナーは 『フィラデルフィア・マガジン』に 寄稿していましたが 数ヶ月前にスポーツ欄が なくなってしまいました 今や彼は記事を自分の Webサイト向けに書いています 今もスポーツ記者ですが 独力でやっているのです 1,700人のパトロンの会費で 月4,800ドルを得ています

これは“Crash Course”で 無料の教育コンテンツを 世界に提供しています この番組はPBSデジタルネットワークで 見ることができ 月に29,000ドルを得ています これは世界をヨットで旅する2人が その旅の様子を伝えることで 1,400人のパトロンから 資金を得ています これは“Chapo Trap House”という ポッドキャストですが このスクリーンショットを撮った後 収入が2,000ドル増えていて 現在はポッドキャストで 月に56,000ドル稼いでいます

この問題に取り組んでいるのは Patreonだけではありません Googleでさえ 取り組みだしました 2年ほど前に Fan Fundingというのを始め 最近またSuper Chatというのを導入し クリエイターがライブストリーミングで 収入を得られるようにしています 新聞社も会員サービスの 実験をしています ニューヨークタイムズ紙には 会員プログラムがあり ガーディアン紙の 会員プログラムには 20万人の有料購読者がいます このように煮え立つスープのように アイデアや実験や新展開が 今沸き起こっていて クリエイターがお金をもらえる方向へと 動いています そしてそれが機能しています まだ完璧ではありませんが ちゃんと機能しているんです

Patreonで月収を得ている クリエイターは5万人います 作品をアップし クリエイティブな人間でいることによって 毎月収入を得ているのです 次の100年のインフラが できようとしています 今回のものが 以前のと異なるのは— 作品を作る人と その作品が好きな人とを 直接結び付けている ということです

7、8年前 あるカクテルパーティーに 行ったんですが 私のバンドが 最初のヒットを飛ばし 上手く行き始めていたときで iTunesの売上げや ブランド提携などによって 1年で40万ドル稼いでいました ある人が話しかけてきました 「君はどんなことをしているの?」 「ミュージシャンです」 と答えると その人は一瞬で真顔になり 手を固く握り 私の肩に手を置くと すごく真剣で温かい声で 言ったんです 「いつか上手く行くことを祈るよ」

(笑)

そういう、私の記憶に刻み込まれた 瞬間がたくさんあります そのことを考えると 恥ずかしい思いがします クリエイティブな人間として価値を認められて いないと感じるのは すごく決まりの悪いものです でもクリエイターという種族は そういうカクテルパーティーを 後にしようとしています そのような文化から 脱却しようとしています クリエイターに支払うための仕組みは すごく良くなっていき 10年もしないうちに 高校や大学を卒業する若者が クリエイターになることを 普通の選択肢と思うようになるでしょう 医者になる 弁護士になる ポッドキャスターになる ウェブコミック作者になる 普通にできることになるでしょう 私たちはそういう道を 見つけつつあります クリエイターは実現可能で持続可能で 尊敬される仕事になります この1世紀の旅を経て 奇妙な100年の終端から 出てくるクリエイターたちは 素晴らしい新たなマシンを 手にするでしょう ちゃんとお金をもらえ ちゃんと価値を認めてもらえるのです 皆さん ありがとう

(拍手)

すごく上手く行ったと 思いますよ これを見たアーティストたちが どうか諦めないで すぐそこまで来ていると 知ってほしいです まだ たどり着いてはいませんが 2年もすれば クリエイターがネットで 生計を立てられるシステムやツールが たくさん できているでしょう ポッドキャストをやっていて 人気が出ているけど まだお金にならないというなら それは変わります お金になるようになります。すぐにも。

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このプレゼンテーションについて

20世紀はアーティストやクリエイターには奇妙な100年だったと、ミュージシャンであり起業家であるジャック・コンティは言います。(レコードの売上げのような) 芸をお金に変える伝統的な仕組みはインターネットによって破壊され、ミュージシャンや作家やアーティストはどう暮らしを立てたらよいものか分からなくなっています。コンティはPatreonによってアーティストがインターネットでファンから収入を得られる仕組みを作りました。このような支払いのプラットフォームは、デジタル時代にアーティストであることの意味を変えることになるのでしょうか?

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