アーティストは経済にどう貢献し、私たちは彼らをどう支えられるか?(06:42)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私は5人兄弟で 全員 科学者かエンジニアです 数年前 みんなに こんなメールを送りました 「兄弟各位 お元気でお過ごしのことと思います さてこの度 私は 工学修士課程を中退し 専業のミュージシャンを目指すことを お知らせいたします どうか心配しないでください」
兄弟その1が 返事をくれました 応援してくれましたが ちょっと慎重でした 兄の返事は「幸運を祈ってるよ きっと運が必要になるから」
(笑)
兄弟その2は もっと慎重でした 返事は「やめとけ! 人生最悪の選択になるぞ まっとうな職に就け」
(笑)
他の兄弟は よほど私の決意に感動したのか 返事もくれませんでした
(笑)
みんな私を気にかけ 心配するからこそ 慎重になるということは わかっています 気をもんでいたんです 兄たちは 私がアーティストとして 成功するのは難しいだろうし きっと大変な挑戦になるだろうと 思ったんです そして 兄たちの予想通りになりました アーティストで食べていくのは 本当に大変なんです 日々の支払いをするために 副業に就く友達も たくさんいるんですが 副業が本業になってしまうこともあります こんな経験をしているのは 私や友達だけではありません アメリカ国勢調査局によると 芸術系の学校を卒業した人のうち 専業のアーティストになれるのは わずか1割です 残りの9割は進路を変更して マーケティング、営業、教育など 他の職業に就きます
よくある話ですよね? 「アーティストは売れないもの」と みんな決めてかかっていますから でも なぜそう決めつけるのでしょう?
『ハフィントンポスト』の記事によると EUは4年前に 世界最大の芸術助成制度を始めました 「クリエイティブ・ヨーロッパ」という この制度は 24億ドルを 30万人以上のアーティストに 助成する予定です 一方 アメリカ最大の芸術助成制度である 全米芸術基金に対する連邦予算は 1億4600万ドルに過ぎません もっと広い視野から見てみましょう 米軍音楽隊の予算だけでも 全米芸術基金の 予算総額のほぼ2倍です
さらに『ハフィントンポスト』の ブレンダン・マクマホンの記事に 印象に残る説明があります 国防軍事関連の予算 1兆ドルの中から ほんの0.05%を 芸術振興にあてれば 運営費が2千万ドルかかる フルタイムのオーケストラを 20も運営できて さらに8万人以上のアーティスト全員に 5万ドルの年俸を払えるんです わずか0.05%で こんなにできるなら 1%だと 何ができるでしょう?
さて 私たちが生きる 資本主義社会では 確かに利益が重視されます だから 経済の面から 考えてみましょう アメリカにおける非営利のアート産業は 経済活動に換算して 1660億ドル以上の利益を生み 5700万人の雇用を支え 126億ドルの税収を生みます 126億ドルの税収を生みます
ただ これは経済に限った話ですよね? 誰もが知る通り アートには経済的な価値を はるかに超えるものがあります アートは人生に意味を与えます 文化にとっての魂であり 人と人を結びつけ 創造性や社会的一体感を支える 基礎となります
でも アートが これほど経済に貢献しているのに アートやアーティストへの投資が まだまだ少ないのは なぜでしょう? なぜ全米の8割以上の学校で 芸術教育プログラムの予算が 削減されているのでしょう? 私たちが まだ理解していない アートやアーティストの価値とは 一体 何でしょう?
私は 制度に欠陥がある上に まったく公正でないと思います だから 制度を変えたいんです 私が暮らしたい社会とは もっと芸術家の価値が高く評価され もっと文化的 経済的に支援され Uberのドライバーや やりたくもない会社勤めなんてしなくても 作品の制作に集中できるような社会です とはいえ アーティストの収入源は 他にもあります 私設の財団や 助成金や お金を出してくれる個人の後援者がいます ただ アーティストの大多数が そういうチャンスの存在を知りません 一方には お金のある団体や個人がいて もう一方には 資金が必要な アーティストがいるのに アーティストは お金のある人の情報を知らないし お金のある人は アーティストたちの情報を 必ずしも知りません
だから ここで Grantpaを 紹介する機会を得て 本当に嬉しいです これはアーティストに 助成金や資金援助を紹介する テクノロジーを利用した オンライン・プラットフォームで 素早く簡単な上に 敷居も高くありません Grantpaは 資金援助の不公平という 目下の問題を解決する 第一歩に過ぎません 私たちは 様々な領域で 協力体制を敷いて アーティストの社会的な立場を 再評価する必要があります アートを贅沢品と捉えるのか 生活必需品と捉えるのか? 私たちは アーティストの日々の暮らしを 本当に理解しているのか? それとも 皆さんはまだ 「アーティストはどれだけ苦労しても 好きで情熱を注いでいるんだから 幸せなはず」という了見ですか?
私は数年以内に 兄弟に こんなメールを送るつもりです 「兄弟各位 お元気でお過ごしのことと思います 私を含め 何百 何千ものアーティストが 順調に活躍していることを お伝えしようと思い メールを差し上げました 文化的にも 経済的にも 私たちへの評価は日増しに高まり 十分な資金を得て 作品制作に注力し 続々と作品を生み出しています 兄さんたちの支援に感謝します みんなのおかげです」
ありがとう
(拍手)
アートは私たちの人生に意味を与え、文化に生命を吹き込みます。では、なぜ私たちは、アーティストになったら生計を立てるのに苦労するだろうと考えてしまうのでしょう?ハディ・エルデベックは、アーティストが副業ではなく作品制作に集中できるように、助成金や資金援助を紹介するオンライン・プラットフォームを作り、アーティストの価値が認められる社会を作ろうとしています。