私が今からお話しすることは 気候とその変動についてです ただ ホッキョクグマではなく 人間に関連するお話です

これは 2000年代の中頃に 私達家族が住んでいた家です 私は 海軍向けに気象、海洋情報を 提供する組織の最高執行責任者でした 施設は ステニス宇宙センターの川下 メキシコ湾に面したところにありました 私たちはミシシッピ州のウェイブランドという 小さな町に住んでいて 家は質素ながら快適で 見てのとおり 高潮に備えるため高床式になっていました みなさん 考えたことはありますか 30フィート つまり９mの 高潮が自分の家を襲ったら どうなるのだろうかと？ お見せしましょう さきほどの家です これは私です　これからどうしようか 考え込んでいるようです 「家を失う」と表現がありますが この時はハリケーン・カトリーナの直後で 家はあっちにある線路の方か それとも 反対側のメキシコ湾のどこかへと 流されてしまって いまだに 文字通り家を失ったままです どこに行ったものやら

（笑）

本当になくなってしまったのです

同情してほしくて 見せているのではありません 私たちは湾岸地域の住民の中でも 多くの点で 一番運がよかったのですから １つ目のポイントは 保険を掛けていたこと 保険に入っておくという考えは こういう場合には おそらくとても重要です ところで このような災害は より大規模になっていくでしょうか？ 多分そうなると思います というのも ご存知のとおり 海面が上昇するにつれて より勢力の弱い嵐でも これ位の被害をもたらすようになります

では少し客観的に この問題を検討してみましょう ご存じのとおり 気候というものはとても複雑で 様々な要因が絡み合っています でも 水が大事な要素だということを 皆さんに知って欲しいのです 画面下にある３つの青い丸を ごらん下さい 一番目立つ丸が 地球上にある全ての水を表しています より小さな２つの丸は 淡水を表しています 気候が変動するにつれて 水の分布が根本的に変化しつつあることが 分かっています 過剰だったり 不足したり 場所や時期が好ましくなかったりします 淡水であるべき場所に塩水があったり 氷結すべき場所に液体の水があったりします 乾燥すべき場所に水分があります また実際 海洋の化学的性質さえもが 変化しています そのことが 安全保障や軍事的な面で ３つの影響を及ぼしています 我々が遂行する 軍事行動をとりまく環境を変え 我々の軍事基地を脅かし さらに戦略地政学的リスクを はらんでいます これはやや突飛に思われるかもしれませんが あとで説明しましょう

では ２つほど例を見てみましょう まず 皆さんが勿論ご存知のこと 政治的、人道的な災禍の例から 始めます そう シリアのことです 長年にわたる一連の出来事で 原因の一端を担ったのが 気候だと判明しています 実のところ それは1970年代にさかのぼります アサド政権がシリアを支配した時 小麦や大麦といったものは 自給自足すべきと考えました アサドの執務室で 誰かが こう進言していればと お思いでしょう 「ボス ここは地中海東岸で やや乾燥しているから あまりいい案ではない気がするのですが」 でも実際にはこうだったのでしょう 「あなたは賢くて 権力があって ハンサムです　すぐ取り掛かります」 そして 実行に移しました すると 信じがたいことですが 90年代までには 食べ物の自給自足が できるようになりました しかし多大なる犠牲を払いました 地下水も地表の水も浪費しました もちろん シリア問題には 気候以外の要因も たくさんありました イラク戦争のことです 下の方の青い線が示す通り 100万人を超える難民が 都市部になだれ込んできました そして 10年ほど前に すさまじい熱波と干ばつが起こり シリア問題の至るところに 爪痕を残しています そう これは気候変動と関係していて さらに80万人ほどの農民たちを 同じ都市に追いやりました 何故か？ 全てを失ったからです あるのは土と埃だけ 他には何もありませんでした 現在は農民もイラク人も 都市部に住んでいます アサドのことですから 自国民のことを 気に掛けたりはしません そして突然 事態は深刻になります 情勢は極めて不安定になり 過激派の温床となったのです だから安全保障共同体において 我々は気候変動を 不安定性をもたらす リスクと位置付けています シリアでも不安定性を加速させる 要因になっています 簡単に言うと 事態はどんどん悪くなっています

他の場所も見てみましょう オスロの北 2000キロメートルないし 約1200マイル離れた場所に向かいます 北極から わずか1000キロの場所です ここはおそらく 戦略的に最も重要な島ですが ご存じないと思います スヴァールバルという場所です そこはロシアの北方艦隊が 外海へと出て 温かい海域へ航海するシーレーンを またぐような位置にあります その地理的な位置のために 各々の極軌道上にある 全ての極軌道衛星を制御できる― 場所ともなっています だから 宇宙空間の利用において 戦略的に有利なのです 気候変動のために この海域の海氷が減少して 人間の活動が著しく増加し 一触即発の状況に なりつつあります 事実 NATO（北大西洋条約機構） 国会議員会議は 来月 スヴァールバルのこの場所で 会合を開く予定です ロシアはこのことに対し 非常に強い不満を抱いています だから北極圏に紛争の火種を 探そうとするならば スヴァールバルに注目してください

さて 軍内部では 数百年とは言いませんが 数十年前から 理解していることがあります 準備すべき時期とは それがハリケーンや台風だろうと 戦略の見直しだろうと 事態が起こる前だということです ニミッツ元帥が写っています 備えを始める時なのです 幸いなことに マティス国防長官も このことを良く理解していて 環境がリスク要因であることも よく分かっています 彼はこのことを議会に対し 文書で伝えました また口頭でも「国防長官として このようなリスクを管理するのが 私の勤めだ」と発言しています このことを理解しているのは 米軍だけではありません 他国の海軍や陸軍にいる 多くの友人や協力者も 気候リスクに対し 非常にはっきりとした考えを持っています 実際 2014年に開かれた 国際シーパワーシンポジウムの半日セミナーで 私は 70人の海軍の代表に向けて この問題について 講演する光栄に浴しました

ウィンストン・チャーチルは ―本当のところは分かりませんが― こう発言したとされています 「アメリカ人は 必ず 正しいことをすると思っていい— ただ それ以外のことを やり尽くした後だが」

（笑）

我々も あらゆる可能性を 試している最中ではないかと思います でも きっと上手くいくはずだと 思っています けれど 皆さんの協力が必要です これは私からのお願いです 資源ゴミは水曜日に出すといった お願いではなく あらゆるビジネス界のリーダーや 技術者のリーダー 政界のリーダーと接して こう尋ねてほしいのです 「皆様方は 気候を安定させるために 何をなさっていますか？」 たったそれだけです なぜなら できるだけ多くの人が きちんと関心を持っていれば 政治家は 問題解決の先頭に立つことは ほとんどないでしょうが 誰かに導かれることで 状況を変えていくでしょう

確かなのは 氷は何も気にしないということ 誰がアメリカ大統領か 連邦議会では どの政党が与党で あなたの国では どこが与党か そんなことに関係なく ただ溶けるだけです

ありがとうございました

（拍手）