テクノロジー企業に人文系が必要な理由(11:13)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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みんなバーに行ったこと ありますよね?
(笑)
でも バーに行ったお陰で 2億ドルのビジネスを ものにしたことはありますか? それが 10年前 私たちに起きたことなんです それは ある ついてない日のことでした 私たちは大口顧客から 切られようとしていました 私たちはITコンサル会社ですが その顧客が ある最先端のクラウドシステムを 展開できるようにするための プログラミング技術を 見出せずにいました エンジニアなら たくさんいますが 誰もその顧客を満足させることが できませんでした そして契約を 失いかけていました
それでバーに行ったんです バーテンをしている友人の ジェフとおしゃべりし 彼は良いバーテンが することをしました 私たちに同情し 慰めてくれ 私たちの悩みを理解し 言いました 「ちょっと大げさに 言ってるだけですよ 心配いりませんって」 それから まじめな顔をして 言いました 「なんなら俺を 送り込んでくださいよ どうにかしますから」 その翌日 私たちは会社の会議室にいて みんな少し ぼーっとしていました
(笑)
私は冗談半分に提案しました 「どうせ切られそうなことだし バーテンのジェフを 送り込んでみたら?」
(笑)
しばらく沈黙があり 呆れたような視線がありましたが それからボスが言ったんです 「そりゃいい考えだ」
(笑)
「ジェフは世知に長けているし 頭がいい どうにかできるかもな あいつを送り込んでみよう」
ジェフはプログラマーではありません ペンシルベニア大学の 哲学科を中退していますが 地頭が良く 本質的なところを 突くことができ どの道 私たちは 切られようとしていました それで彼を 送り込んだんです ハラハラしながら 2日過ごしましたが ジェフはまだ 向こうでやっていて 追い返されはしませんでした 信じられませんでした 「あいつ一体何やってんだ?」
分かったのはこういうことです ジェフは顧客のプログラミング技術についての こだわりを解きました 彼は話題を変え 私たちが作るべきものさえ 変えました いまや議論の対象は 何を何のために作るのかということになりました そしてジェフは技術的な 解決策を見出したのです その顧客は我が社にとって 一番の推薦者となりました
当時は社員200人で その半分はコンピューターサイエンスか 工学の専攻でした でもジェフの一件で 思うようになりました こういうのを もっとできないか? それで私たちは採用や トレーニングのやり方を変えました 今でもソフトウェアエンジニアや コンピューターサイエンス専攻者は求めていますが それに加えて絵描きや音楽家や ライターも採るようになり 会社中でジェフの例が 幾度も再現されることになりました うちの最高技術責任者は 国文専攻で マンハッタンで自転車便の 配達係をしていました 今では千人の社員がいますが コンピューターサイエンスや 工学専攻だった人は百人足らずです 私たちは今も ITコンサル企業です この分野では ナンバーワンの企業で 年間売上げが 百億ドルに達する 最も早く成長しているソフトウェア パッケージを擁しています このやり方は 成功だったということです
一方で 米国における STEM教育— 科学 技術 工学 数学を中心とした 教育の推進は 凄まじいばかりです 誰にとっても避けがたく そして大きな間違いだと思います 2009年以来 米国のSTEM専攻者の数は 43%増えていますが 人文専攻の数は 変わっていません オバマ前大統領は 他の分野を犠牲にして STEM教育に 10億ドル以上注ぎ込み トランプ現大統領は最近 教育省の予算2億ドルを コンピューターサイエンスに 割り当てることを決めました 企業のCEOは絶えず 技術者不足を嘆いています このような動きや 否定しがたい 技術方面の 経済的成功があり— 認めましょう 世界で時価総額が 最も高い企業10社のうち 7社までがテクノロジー企業です そういったことから 将来の労働力はSTEM分野の人で 満たされるという予想が生まれます
それは分かります 理屈は通っているし 興味深い考えですが ちょっと度を過ぎています サッカーでチームの 全員が1箇所に向かって ボールを追いかけている ようなものです STEMを過大評価 すべきではありません 科学に対し 人文以上に 重きを置くべきではありません それには いくつか 理由があります
第一に 今日のテクノロジーは 非常に直感的であること 私たちが あらゆる分野の人を 採用しながら 専門的な技術を まかせられるのは 現代のシステムは コードを書かずに扱えるからです レゴブロックのように 容易に組み立てられ 容易に学べ 容易にプログラミングさえできます 学ぶための情報が 膨大にあるためです 専門技術が必要なのは 確かですが そのような技術に必要とされる 厳格で正式な教育は 昔に比べてずっと 少なくなっています
第2に 直感的技術の世界において 不可欠な差別化できる スキルというのは 人間として一緒に 働く力であり 難しい部分は 最終的な製品や その有用性を イメージするということで そのためには現実の世界における 経験や判断力や歴史的文脈が必要となるのです ジェフの話が 教えてくれたのは 顧客が間違ったものに とらわれているということです よくある話です 技術屋は ビジネス系の人や エンドユーザーと うまくコミュニケーションが取れず ビジネス系の人は 何が必要なのか 明確に述べることができない そういうのを いつも目にしています コミュニケーションを取って 共に生み出すという人間としての能力を 私たちはまだ 本当に生かせていません どうやって作ればいいのかを 科学が教えてくれる一方 何をなぜ作るのかを 教えてくれるのは人文です どちらも同じくらいに重要で 同じくらいに難しいのです
うんざりするのは— 人文が何かより劣った 簡単な道のように 言われているのを 聞いたときです そんなことありません 人文は世界における 文脈を与えてくれます 批判的に考える方法を 教えてくれます 科学が意図して 構造化されているのに対し 人文は意図して 構造を持たないのです 説得する方法を教え 言葉を与えてくれ それによって私たちは 感情を思考と行動に変えるのです 人文にも科学と対等の地位を 与える必要があります 芸術家をたくさん雇って テクノロジー企業を作り 素晴らしい結果を 出すことだってできるんです
STEMが悪いと言おうと しているのではありません 女の子はプログラミングなんて するもんじゃないと言うのではありません
(笑)
違います 車で橋を渡ろうというときや エレベーターに 乗り込もうというときには それが間違いなく 技術者の 手になるようにしましょう
(笑)
しかし将来の仕事が STEM分野の人で占められる という思い込みは 単に馬鹿げています もし友人なり 子供なり 親戚なり 孫なり 姪なり 甥なりがいるなら 「なりたいものになれ」と 言ってください
(拍手)
仕事はあります STEMの卒業生を求めている テクノロジー企業のCEOが 誰を採用しているか 分かりますか? Googleや Appleや Facebook そういった企業で 求人している職の 65%は非技術系です マーケティング担当者 デザイナー プロジェクトマネージャー プログラムマネージャー プロダクトマネージャー 法務担当 人事管理専門家 トレーナー コーチ 販売担当 購買担当 その他 求められているのは そういった職です 将来の人材に求められるものが 何かあるとしたら— これについては同意して もらえると思いますが 多様性です 多様性というのは 男女や人種に限りません 経歴やスキルについても 多様性が必要です 内向的な人も 外向的な人も リーダーもフォロワーも 必要です それが将来の人材です テクノロジーが より易しく 使いやすいものに なっていることで みんな何だって 好きなことを学べるのです
ありがとうございました
(拍手)
創造力に富む問題解決者のチームを作りたいなら、科学と同じくらい人文にも価値を置くべきだと、起業家のエリック・バーリッジは言います。テクノロジー企業は科学技術分野の人ばかり採用すべきではなく、芸術や人文分野の人がいかに技術系の職場に創造性やひらめきをもたらすかを説明します。