太陽光を使った地球工学は進めるべきか?(07:05)

ダニー・ヒリス(Danny Hillis)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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[ダニー・ヒリスからの挑発]

[今こそ 地球の気候の操作について 語り始めるときです]

もし仮に 地球の温度を いつでも下げられる サーモスタットを作る方法があったら どうしますか? 実現方法についてまことしやかな アイデアを持った人がいたら 皆さん そのアイデアに熱狂して 盛んに実現方法の研究が 行われると思いますよね でも実は 多くの人が その方法を知っています ただ この分野の研究は あまり支持されないのが実情です その理由の一端は このアイデアに関する 根本的な 誤解のせいだと 私は思っています ですから 今日 私はこれが名案だと 納得してもらおうとは思っていません かわりに 私は このアイデアへの 取り組みについて皆さんの興味を引き出し 誤解のいくつかを 解きたいと思っています

太陽光に対するジオエンジニアリングの 基本的な発想とは 太陽の光を 宇宙に向けて 少し余分に反射させるだけで 物の温度を下げられるというものです そして 実現方法のアイデアは 文字通り何十年も前から存在しています このような 下層雲のような雲は それを実行するための最高の方法です 雲の下の気温が低いことは 誰でも知っています 私がこの雲を気に入っているのは この雲の中の水分含有量が 周囲の透明な空気中と全く同じだからです このことから分かるように 空気の流れが ほんの少し変化するだけで 雲ができるんです 私たちは 常々人工的な雲を作っています これは 飛行機雲という 人工的な水蒸気の雲で ジェットエンジンの通過で 発生したものです つまり 私たちはとっくに 地球上の雲を変化させています 偶然か 超極秘任務を受けた政府の陰謀かのご判断は お好みでどうぞ

(笑)

でも 私たちは既にこんなことは 数多くやっている訳です これはNASAが撮影した海上交通路です 実は 船の運行が 雲の形成の原因になります またこれには十分な効果があり なんと約1℃ 地球温暖化の 軽減に貢献しています 私たちは既に 太陽光の工学を 実践しているわけです アイデアの実行策はたくさんあります 人々はこれまでに 宇宙空間に巨大なパラソルを 設置するという案から 海水を泡立たせる案まで あらゆる方法を検討してました しかも これらの案のうちには 実際とても頷けるものがあります 最近 ハーヴァードの デイヴィッド・キース博士が公開した案は 成層圏に石灰の粉を撒いて 日光を撥ね返そうというものです これはかなりの妙案です 何故なら 石灰は地上で 最もありふれた鉱物で とても安全なので 離乳食にも入っているくらいです また 基本的に石灰は成層圏に撒いても 数年後には 全部 雨水に溶け込んで降ってきます さて 雨水の中の石灰の心配を始める前に それがごくわずかで済むということを 説明させてください 計算はとても簡単です これは 私が 文字通り封筒の裏で 行った大雑把な計算です

(笑)

(拍手)

もちろん もっとずっと 念入りに計算したものでも 同じ答えが出ました つまり 私たちが過去に及ぼした CO2の影響を相殺するには 1年に1000万トンのペースで 石灰を成層圏に撒かねばならないということ— これは 気温に限ったことで あらゆる影響を相殺する訳ではありません 実行したらどんな様子になるか? 年間1000万トンという量は想像できません そこで ケンブリッジ消防局と テイラー・ミルサルに 手を貸してもらいました これは ホースで年間1000万トンの 水を放水しているところ これを見れば 産業革命前のレベルまで 地球の温度を下げようとするなら どれほどの量を 成層圏に 放出すれば良いか分かります 驚くほどわずかな量です ホース1本分で地球全体ですから さてもちろん 実際には ホースなんか使わずに 飛行機か何かで 上空に行くことになるでしょう でも 量はごくわずかで 言うなれば 一握りの石灰を オリンピック用競泳プール一杯分の 雨水に入れるようなものです 微々たる量です

では何故 この妙案が 受け入れられないのか? 何故 真面目に受け取ってもらえないのか? ごくもっともな理由がいくつかあります 多くの人が これについて 議論すべきではないと考えています そして 今日の客席にいる 私のごく親しい友人で 私がすごく尊敬している人の中にも 私がこのことについて語るべき ではないと考えている人がいます そういう意見の人の理由は もし簡単な解決策が見つかったら 人は化石燃料への依存を 断ち切ろうと思わなくなるの ではないかと懸念しているからです 私もそれを心配しています 本当に深刻な問題だと思います でも もっと深刻な問題もあると思います 地球全体を台無しにするなんて 誰も望みません 私だって絶対に嫌です 私は地球を心底愛しています 地球を台無しにしたいとは思いません でも 私たちは既に 地球の大気を変動させ 既に地球を台無しにしつつあるのです 私たちがその影響を 緩和するための方法を探すことは 意味のあることだと思います そのためには 研究せねばなりません 科学的に把握する必要があります

あるテーマがあることに気づきました それはTEDで膨らんだテーマです それは 「不安 vs 期待」のようなものです あるいは「創意 vs 警告」です もちろん両方とも必要です つまり 確実な方法はどこにもありません このアイデアは 確かに特効薬ではありません でも 私たちにどんな選択肢があるか 教えてくれる科学が必要です 私たちに 創意も警告も 示してくれる科学が必要です ですから 私は 未来の人類に対して楽観的ですが 些細な問題だと思うから 楽観的なのではありません 私が楽観的なのは 人類の問題解決能力は 想像よりも遥かに偉大だと思うからです

どうも ありがとうございます

(拍手)

[このトークは TED2017で 多くの論争を引き起こしました]
[是非 オンラインで 議論をご覧いただき 他の意見もご覧ください]

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このプレゼンテーションについて

視点を変えるこのトークで、ダニー・ヒリスは、気候変動といった地球規模の問題に対して、創造的な科学的方法でアプローチするよう、私たちを促しています。太陽光を使ったジオエンジニアリング(地球工学)に賛同する立場から、ヒリスは柔軟な姿勢で、好奇心を持ちながら、賛否両論のある解決策に目を向けています。

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