もし世界最古の病気の1つを撲滅することができるなら?(10:13)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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ちょっと 想像してみて下さい あなたのまつ毛が 外側でなく内側に生え それにより 瞬きをする度に まつ毛が眼球の表面を擦り 角膜を損傷し ゆっくりと 痛みを感じながら 視覚が失われていくところを
それがトラコーマという 病気の症状です この画像の男の子 ザンビア出身の パメロはトラコーマです もし何もしなければ 彼は失明します
トラコーマというのは 奇妙な病気です それは人から人へ 又はハエを媒体に感染する 細菌感染症です 何度も感染すると 瞼が傷つき その結果 瞼は萎縮し 内反がおこります 特に女性への感染が 多くみられます 女性は子供と接触する機会が 多いからです ですから エチオピアのような場所で 女の子がこのような ピンセットを首から下げて まつ毛をそれで抜いているのを よく見かけます しかし もちろん それは一時的な対処に過ぎず 病を更に悪化させるだけです
世界では 2百万人程の人々が トラコーマが原因で 視覚の全て または一部を失っています そして私達は 世界中で2億人もの人々に 視覚を失うリスクがあると 考えています
これはとても 古くからある病気です ご覧になっている写真は 北スーダンにある古墳の壁画です 同僚と私は 人里離れた村を訪れ 1人の年配の男性に 小さな古墳への案内を頼みました その壁画に 2つの目が描かれていました そのうちの1つは 泣いていて ご覧のとおり すぐ隣にピンセットがあります サイモンは言いました 「なんと これはトラコーマではないか?」 そこでこの写真を 大英博物館に送ったところ トラコーマだと 認められました 何千年も前 古代ヌビア人は 自分達の墓の壁に トラコーマの絵を描いたのです 悲劇的なのは 現在も その地域では この病が蔓延していることです 素晴らしいことに 私達は その病を食い止める方法を知っていて
その上 トラコーマのコミュニティでは お互いの力をまとめて 1つにしようとしています 競いあうのではなく 協力しあっているのです
私のNGO分野での経験から お伝えすると 常にそうであるとは限りません 私達はトラコーマを 世界から根絶するための同盟 (ICTC)を 設立しました そして トラコーマと戦う為の 戦略を編み出しました それは 「SAFE戦略」と言います WHOから 認証を得ています
“S”は “Surgery(手術)” 瞼を正しい位置に戻すという 単純明快な処置です 私達はこの方法を 看護師に教育し 局所麻酔薬を使っています ご覧のように 必要であれば 庭先でも処置することができます
“A”は“antibiotics(抗生物質)” 製薬会社のファイザー社から 寄付してもらっています ファイザー社は国内の港に 薬を運送する費用も支払っています 港から 薬は村々に運ばれ 何十万人もの 地域のボランティアが 人々に薬を届けます 私達はそのボランティアに 教育を施し 複雑な運送を必要とする 支部の手伝いをします また ボランティアは全員 このようなポールを持っています これは「ドーズ・ポール」 と呼ばれます 元々カメルーンのものですが ご覧のように 異なる色で区切られています 患者の身長によって 薬を何粒渡せばよいか 分かるようになっています
“F”は “face washing(洗顔)” かつてイギリスやアメリカにも トラコーマはありました 事実 カーター大統領は 幼い頃 ジョージア州では トラコーマが深刻な問題だったと 語っています イギリスで有名な ムーアフィールズ眼科病院は 元々 トラコーマ専門の病院でした 私達は このような子供たちに 洗顔の重要性を教えています
最後に “E”は“environment(環境)” 私達は地域の人々が 野外トイレを建設するのを手伝い ハエの繁殖を抑えるために 生活圏から動物を切り離すように 教えます このように 私達はトラコーマへの 取り組み方を知っています 次に知る必要があるのは 発生場所ですが 私達は 知っています なぜなら 数年前 サイトセーバーが 素晴らしいプログラムを実施したからです グローバル・トラコーマ・ マッピング・プロジェクトです 3年かかりましたが 私達は29の国々に行き 地域の医療従事者に 区画を一つずつ回ってもらいました そして 彼らは250万人以上の 人々の瞼を検査しました データをダウンロードするため アンドロイド携帯を使いました そこから どこでトラコーマが 流行しているかがわかる 地図が作成できました これは どの国が トラコーマの問題を抱えているかを示す 大まかな地図です
皆さんは訊くでしょう 「その作戦で本当にうまくいくの?」 はい うまくいきます この地図は 現在までの 進捗を表しています 緑色は トラコーマが 既に撲滅されたとし WHOによる確認プロセスが 終了した 又は途中の国です 黄色は トラコーマ撲滅のための 資金や資源がある国です いくつかの国は 本当に 撲滅まであと少しです 赤色は 十分な資金がない国です 資金をさらに集められなければ トラコーマを撲滅できません 私達は現在の進捗が 止まらないか懸念しています
Audaciousプロジェクトの担当者に 相談しようとした時 私達は自問しました もし 次の4、5年 本気で頑張って 資金があったら 何を達成することが できるだろうか?
私達は トラコーマ撲滅は可能だと 信じています 12のアフリカ諸国や アメリカ大陸の国々 そして 太平洋に広がる全ての国々で― そして トラコーマの 疾病負荷が最も高い エチオピアとナイジェリアの 2か国で 大きく進展できます そうすることで 寄付された20億ドル以上もの価値の 薬をうまく活用できます
(拍手)
さて この地図はこのプロジェクトによる 変化予測を示しています どれだけの国が 緑色になるかご覧ください ご覧のとおり エチオピアと ナイジェリアでも進展が見られます はい まだ赤色の国もあります それらは主に 紛争がおきている国です イエメン、南スーダンといった場所は 活動が難しいのです さて 私達にはチーム、戦略 地図があります さらに 各国の政府との つながりもあり 効率的に活動するために 他の疾病管理のプログラムと 私達のプログラムとを 連携させることができます そんなことができたら 素晴らしいと思いませんか? 私達はトラコーマに 勝つことができるのです 全世界からトラコーマを撲滅する 最終段階まで迫れるでしょう
このトークを終える前に 皆さんに伝えたいことがあります サイトセーバー創立者の ジョン・ウィルソン卿の言葉です 彼は12歳の時に失明しました 彼は言いました 「一度に百万人ずつ 失明するのではない 1人1人失明していくんだ」 自分の国からトラコーマが 撲滅できたことに 歓声を上げる一方で 忘れてはならないのは トラコーマが 個人の人生を 破壊する病気だということです
トワイバのような人を 私は昨年タンザニアでトワイバと 出会いました 彼女は物心ついた頃から ずっとトラコーマを患っていました 私と出会う数か月前に 手術を受けました 大袈裟ではなく それが彼女の人生を 完全に変えました 私達は 失われた視覚を取り戻し 痛みから解放しました 彼女は眠れるようになり 働き 友人と会うことが できるようになりました 彼女は言いました 「自分の人生を 取り戻すことができました」 その話に感動せずには いられませんでした トワイバのような人が たくさんいます その人たち全員を 見つけ出したいのです もう誰も苦しみながら 失明して欲しくはないのです
世界には 解決できない 問題がたくさんあります しかし トラコーマは違います トラコーマは解決できます このような子供たちが トラコーマを恐れることなく 成長できるようになります この子供たちの為に トワイバのような人々の為に トラコーマを撲滅しましょう できると思いませんか? そうです 私達が 心からそう願うなら それは可能なのです
ありがとうございました
(拍手)
数千年前、古代ヌビア人は古墳の壁に、瞼が巻き込まれ失明の原因となる恐ろしい病気の絵を描きました。このトラコーマという病気は、現在も世界の多くの場所で人々を苦しめています。しかしトラコーマは完全に予防可能な病だとキャロライン・ハーパーは言います。ハーパーが所属する団体サイトセーバーには、グローバル・マッピング・プロジェクトによるデータを武器にした計画があります。トラコーマ撲滅の障壁となる資金格差がある国々に焦点を当て、被害が最も深刻な国に対する取り組みを強化するのです。トラコーマを過去のものとしようとする彼らの目標について、そして皆さんが彼らをサポートする方法について学びましょう。