大量投獄の背景にある人間の物語(13:40)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私は逮捕されたことがありません 刑務所で一夜を過ごしたことも 愛する人がパトカーの後部座席に 放り込まれたことも 収監されたこともないし 恐ろしい 混乱した制度に 翻弄されたこともありません せいぜい人を冷淡に見るか 最悪 怪物と見なすような制度です アメリカ合衆国は 地球上のどの国家よりも多くの人を 収監しており ルイジアナ州は 国内で最も投獄率の高い場所です おそらく皆さんの大半は 私と同じで 幸運です 犯罪や刑罰を目にするのは せいぜいテレビででしょう ラジオドキュメンタリー 『Unprisoned』を制作中 以前は私たちと同じだった ある女性に会いました シーラ・フィップスです
(録音)シーラ: 息子が刑務所に入る前は テレビに映った人が 取っ組み合ったり 「この人はやってない 無実だ」と言うのを見て 冷たい態度で 取り合わなかった 「ええ どうでもいいわ」ってね 誤解しないでほしいのは 服役するべき人はたくさんいて ここには多くの犯罪者がいる でも刑務所には 無実の人もたくさんいるわ
イヴ:シーラの子 マッキンリーは 罪のない人々の1人です 過失致死罪で30年の判決を受け 17年を務めました 彼に前科はなく この事件で 法医学的な証拠は 見つけられませんでした 彼は目撃証言だけに基づいて 有罪判決を受けましたが 何十年にもわたる調査で 目撃証言は これまで信じられていたほど 信憑性がないことが分かっています 科学者は 記憶は正確ではないと言います ビデオを再生するというより パズルを組み立てるようなものです 1989年にDNA鑑定の使用で 初めて罪のない人々が釈放されてから 覆された有罪判決の70%以上が 目撃証言に基づいていました 去年 マッキンリーの事件を起訴した 地方検察局の検事長が 事件とは無関係の収賄容疑で 有罪判決を受けました 30年の経歴を持つ この検事長が辞任した時 マッキンリーの事件の目撃者たちが 名乗り出て 地方検事たちから証言するよう 圧力をかけられていたと語り その圧力には刑務所行きという 脅しも含まれていました それにも関わらず マッキンリーは未だ刑務所にいます
(録音)シーラ: このことがなかったら 考えもしなかったと思う そうね 私にとっては 実際にこんなことが続いているなんて 想像もしなかった 実の息子に起こるまではね 目が覚めたわ 本当に目が覚めたの 正直な気持ちよ
イヴ:収監される無実の人の数は 推定で1%から4%に及びます 大した人数ではないと 思うかもしれません ただし 計算すると 約8万7千人になります 母親や父親、息子たちが 犯してもいない罪で しばしば何十年も収監されるのです そして この数字に含まれていない およそ50万人は 有罪宣告すらされていません つまり 推定無罪なのに 刑務所を出るための保釈金が払えず 数週間も数か月も拘置され 事件の裁判が始まるまで 待機する人々や はるかに可能性が高いのは 釈放に必要な 司法取引を待つ人々です これら全ての人々には 帰りを待つ家族がいます
(録音)コートニー・ウィリアムズ: 兄は私の高校の卒業式に来なかった 前日の夜に 投獄されたからです 私の誕生日のディナーに 来られませんでした 実はその日に 投獄されたからです 兄は自分の誕生日の ディナーにも いませんでした 不運な時に不運な場所に 居合わせたからです
(録音)イヴ:お兄さんが 刑務所に入ることになった時 告訴はされていた? それとも ただ連れて行かれた?
コートニー:起訴されて 保釈金が支払われれば 告訴は取り下げられます 証拠がなかったからです
イヴ:私がコートニーに出会ったのは 彼女が通う大学の教室で 『Unprisoned』について話した時でした 彼女は この番組のエピソードで 伯母のトロイリン・ロバートソンと 対談することになりました
(録音)コートニー:子供たちと 経験してきた― 全てのことを通して もし私が子供を持ったら伝えたい― アドバイスはある?
(録音)トロイリン: あなたが子供を持ったらこう伝えるわ 最初に思い浮かぶのは 子供を愛すること そして守ることね でも私はこう言うわ 守ることに加えて 司法制度の知識を持って 子を育てなさい 私たちはいつも子供たちに 人さらいとか 悪い人たちに注意するように言うけど 司法制度に注意する方法は 教えないわ
イヴ:私たちの刑事司法制度が 有色人種を過度に 標的にしているという事実を コートニーのような若者が 知っているのは珍しくありません 高校を訪問して 生徒に 『Unprisoned』の話をするようになって わかったのですが インタビューした若者の約3分の1は 大切な人を収監されていました
(録音)女の子:1番難しいのは 彼がいる場所 あるいは 公判日を知ることです
女の子:はい 彼は私の1歳の誕生日に 投獄されました
女の子:父の仕事は看守です 父は刑務所で叔父に会いました 終身刑です
イヴ:Annie E. Casey Foundationによると 投獄された父親を持つ若者の数は 1980年から2000年の間に 500%増加しました 現代の500万人以上の子供たちが 幼少時代のある時期に 親が投獄されるのを経験します アフリカ系アメリカ人の子供が より大きく影響されます 彼らが14歳になるまでに 4人に1人の黒人の子供たちが 父が刑務所に入るのを見ます 白人の子供だと その割合は30人に1人です 受刑者と子供 両者の 将来の成功を左右する重要な要素の1つは 親の投獄の期間中 関係を維持できるかどうかですが 囚人が家に電話をかけるには 通常の電話より 20倍から30倍の 費用がかかります そこで 多くの家族は 手紙で連絡を取り合うのです
(録音:手紙を開く音)
アニッサ・クリスマス:お兄ちゃんへ もう16歳になっちゃうのよ もう赤ちゃんじゃないのね 今でもプロムに連れて行ってくれる? 本当に会いたいよ ありのままの私に接してくれるのは お兄ちゃんだけ ここにいてくれたら 愚痴を聞いてもらえるのにな 前回の面会から いろんなことが起きたよ (途切れる声)良いニュースがあるの サイエンスフェアで優勝したんだ 私 理科オタクよ チームで地区大会に進むのよ 信じられないでしょ? 高校って 時間が過ぎるのが すごく早いわ 2年もしないうちに 私が卒業するのを 見に来てくれるといいな そこは退屈だから 手紙を書こうと思ったの 笑顔になってくれたらいいな
イヴ:アニッサは高校2年生の時 この手紙を兄に向けて書きました 彼女は兄からの手紙を寝室の 鏡の枠に挟んで 何度も繰り返し読みます アニッサの兄が収監されているのには 正当な理由があると考えたいです 誰もが司法制度を 正しく機能させたいと思っていますが わかってきたのは 私たちが学校で学んだ 高い理想が この国の刑務所や拘置所、法廷では まるで別物に見えることです
(録音)ダニー・エンゲルバーグ: 法廷に入っていくと 長くこの仕事をしていますが それでも息を飲みます 「有色人種が あまりに多い」 と感じるのです でも この町の人口の90%が アフリカ系アメリカ人という訳ではありません ではオレンジの囚人服を着た人の90%が アフリカ系アメリカ人なのは なぜでしょうか?
(録音)イヴ:公選弁護人のダニーのように 地方 あるいはどの裁判所にも どれほど多くの黒人がいるか 気づいている人は 他にもいます 気づかないわけがありません
誰が裁判官に会うのを 座って待っていますか? どんな外見ですか?
(録音)男性:大半が 僕と同じアフリカ系アメリカ人
男性:大半 たぶん85%くらいが黒人です あの後ろの仕切りにいる 収監されて囚人服を着た人の大半がそうです 男性:誰が待っているか? 大半が黒人です 白人も何人かいました
女性:そこにいた約85%が アフリカ系アメリカ人だったと思います
イヴ:現在 米国で育っている 黒人の若者はどのように正義を 理解するようになるのでしょうか? 『Unprisoned』の別のエピソードは ダンサー集団が 『Hoods Up』という作品の振付をし 市議会の前でそれを披露する話でした ダウォンタ・ホワイトはダンサーの1人で 当時 中学1年生でした
(録音)ダウォンタ:皆で黒のパーカーを 着たのはトレイボン・マーティンが殺された時 パーカーを着ていたからです だからそのことを考えて 僕らはトレイボンみたいに パーカーを着ようと言いました
(録音)イヴ:アイデアを 思いついたのは誰?
ダウォンタ: グループ皆です 少し緊張してたけど 最後までやり抜きました 僕らがやっていることを気づいてもらえるなら 良いことだと感じました
(録音)イヴ:シュライベル・ブラウンは この一団のもう1人の 振付師でダンサーです 警察は自分のような外見の人を 非難すると言います 他の黒人がしたかもしれないことを基に 判断されていると感じています 警察に自分をどう見てほしい? そして どう考えてほしい?
シュライベル:脅威ではないと
イヴ:警察はなぜあなたを脅威だと思うの? 14歳だって言ったよね?
シュライベル:そうです でも黒人男性の多くが 悪党とかギャングだと言われます でも自分をそうだと 思ってほしくありません
イヴ:私のような外見の人にとって 最も簡単で楽なのは 注意を向けないこと― 私たちの刑事司法制度が 機能しているふりをすることです でもこの前提を疑うことが 私たちの責任でないなら 誰の責任だというのでしょう? ここには大量投獄について学んでいる あるユダヤ教会があり 多くの信徒が こう結論づけています 大量投獄によって 多くの人々の暮らしが大混乱に陥るので 実際により多くの犯罪が起こり 人々の安全性は低くなる 信徒のテリ・ハンターは語ります 行動の第一歩は 理解することでなければならない この問題と私たちとのつながりは 明白ではないかもしれないけれど それを理解することは 誰にとっても 極めて重要であると
(録音)テリ:私たちの責任は 見て見ぬふりをして 「私たちには関係ない」という態度を 絶対にとらないことです 私たちユダヤ人は そういう歴史を経験してきたのですから 「自分には関係ない」と 社会が ある部分に背を向けることで 何が起こるか見てきたのです ですからユダヤ人として ユダヤ人コミュニティーのメンバーとしての 私たちの責任は 私たちのコミュニティーあるいは 少なくとも私たちの教会仲間を できる限り教育することです
イヴ:「私たちに」「私たちは」という 代名詞を使ってきたのは これは私たちの刑事司法制度で 私たちの子供だからです 私たちは これらの制度を 「我ら人民」のために運用する 地方検事や裁判官や立法者を 選出します 1つの社会として 私たちは有罪の人を野放しにするより 無罪の人を収監する危険を 進んで冒す傾向にあります 「犯罪に甘い」と レッテルを貼られるのを恐れる政治家を選出し 厳しい法案を通過させ 莫大な資源を 収監することに割り当てるように促します 犯罪が行われると 迅速に懲罰をという私たちの強い要求が 警察の文化に影響し 彼らは容疑者を 素早く捕まえようと躍起になり 多くの場合 徹底的に調査するための 十分な手段なしに あるいはそれら捜査が 厳しい監視なしに行われます
私たちは検察官に 待ったをかけません 過去20年から30年間にわたり 国中で 窃盗や暴力犯罪が減少したにも関わらず 雇用された検察官と 起訴件数が増加しました 検察官は警察が逮捕した人に対し 法的措置を取るか否かを決め 検察官が決める求刑内容は 被告人が直面するかもしれない 服役期間の長さに直接影響します 検察官に待ったをかける方法の1つは 弁護です 正義の女神を想像してください 目隠しで天秤を持つあの女性は 私たちの司法制度のバランスを 象徴するものです 残念ながらその天秤は傾いています この国では被告人の大多数が 国選弁護人によって弁護されます このような公選弁護人は 地方検事より 30%も少ない経費で しばしば アメリカ法曹協会の推奨を はるかに上回る数の事件を 取り扱っています
シーラが言ったように 中には服役するべき人もいますが 全員の裁判結果がとても似たものなら 有罪と無罪の区別は難しくなります
私たち全員が正義を望みます でも被告人に対し とても不利に働くこの仕組みでは 正義を得るのは困難です 私たちの刑事司法制度は 「我ら人民」が運用するものです 現状が気に入らないなら それを変えるのは私たち次第です
ありがとうございました
(拍手)
ドキュメンタリー作家のイヴ・エイブラムスは次のように語ります。アメリカは世界中のどの国よりも多くの人を収監しており、刑務所にいる約1%から4%の人々はおそらく無実です。すなわち8万7千人の兄弟や姉妹、母親や父親が不必要に家族から切り離され、夢や人生の邪魔をされています。そしてその大部分はアフリカ系アメリカ人です。イヴは、投獄された人々とその家族をインタビューした際の音声を使って、大量投獄の影響を受けた人々の感動的な話を共有します。彼女が求めるのは、私たち全員が立ち上がり、全ての人のために司法制度を確実に機能させることです。