21世紀のアメリカの投票システムに必要なこと(11:30)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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まず皆さん 最後にファックスを送信 もしくは受信したときのことを 思い出してください
(笑)
私の場合 それは今朝のことでした というのも 投票するのに必要な情報を 全アメリカ国民が 確実に入手できるようにすることが 私の仕事の1つであり そうした情報を それを管理している 行政地区の役所から収集するとなると 大量のファックスを やり取りすることになるからです
投票は人権の中でも 最も基本的な部類に入り 私たち一人一人が 地域のコミュニティ形成に携わるための 最も身近な手段の一つでもあります テクノロジーのおかげで 何もかもが変化しつつあるという 第四次産業革命の時代が 始まりつつある中では 投票の権利なんて重要なことなら 最先端で 最も安全で 誰にでも開かれたシステムが 存在するはずだと思いますよね … でも そうではないんです 他の民主主義国家と比較してみると アメリカ合衆国の投票率は 世界最低水準です この国の投票システムでは どんなに根気強い投票者でも うんざりするような障壁に 突き当たってしまいます 20世紀のテクノロジー 例えばファックス そして時代遅れの選挙運営方法が 完全で活発な投票参加を妨げています アメリカ合衆国大統領選挙の投票率は 60%前後です 地方選挙での数字はさらに落ちます つまり40%近くのアメリカ人が 投票していません これはおよそ1億人に相当します
私はとても単純なことを信じています 投票するために必要な情報を 誰でも入手できて然るべきで 投票の過程はスムーズで 安全なものであるべきです どの立候補者に入れるか決めるための 信頼できる情報を 全有権者が入手できなければなりません なぜなら 投票する人が多ければ 共に 自分のコミュニティについて より良い選択ができるからです
私は過去8年間 この国の民主主義を 21世紀版にアップデートするという ミッションに従事してきました さて 選挙の近代化を推進するには 選挙方法の変更を提唱する などといったやり方が普通です 投票者を何百万人規模で増やすことのできる システムを作るにあたっては 非常に重要な戦略の一部です でも私は別のアプローチをとり 選挙の近代化に非常に重要でありながら 見過ごされていた 人的資源に目を向けました 地域の選挙管理人たちです 私は 全国の何千人という 地域の選挙管理人向けに こんにちの有権者の選挙への関わり方を 一変させるために利用できる— ツールやスキルを開発するという 支援を行なっています カットやマリーのような人々のためです カットやマリーは何年も バージニア州西部マーサー郡裁判所の 窓の無い地下のオフィスで 働いてきました 二人ともとても重要な責務を背負っています 二人は 郡の有権者4万人を 管轄する地域選挙管理人なのです
地域選挙管理人は公務員で 選挙システムを日々運営しています 有権者登録申請書に記入すると 登録処理をしてくれる人たちです 投票や開票に使われる機械を 購入する人でもあります 地域の投票所のボランティアを募ったり 研修したりもします 公式な立場で 党派を超え 地域住民に 投票の仕方を教える人々です 中央で選挙を一元管理する機関がある 他の国とは違って アメリカ合衆国には 7,897の郡や市町村それぞれに 選挙管理機関があり カットやマリーの例のように 選挙を管理する役割を それぞれが別個に担っています つまり地域ごとに投票のやり方が 少しずつ異なり 8,000近くのバリエーションが あるということです
カットとマリーの話を聞いてみると 私がこれまでに話を聞いてきた 大都市 郊外都市いずれの 選挙管理人にも多かったのですが 住民の手助けができることを とても誇りに思いながら 不安も抱えていました 人々が情報源として利用している 新しいツール— インターネット、ソーシャルメディアは 効果的な活用方法がわかりづらいし 自分たちは郡の有権者のニーズを 満たしていないのではと感じていました 二人が切望していたものの1つは ウェブサイトでした そこに情報のハブを作り 次の選挙に有権者として 登録する方法を載せたり 選挙結果を知らせたりできるからです 当時 有権者は わからないことがあれば オフィスに電話をするか 実際に訪ねていくしかありませんでした つまりカットとマリーは何度も何度も 同じ質問に答えるはめになります それは時間の無駄づかいでしたし 有権者にとっては 全く不要な障壁でした 情報をネットに置いておけば 済む話だったのですから
マーサー郡に限った話ではありませんでした その頃 マーサー郡を含めた966の郡では 投票に関する情報が ネットで提供されていませんでした 考えてもみてください アメリカの郡のおよそ3分の1が 投票に関する情報を 全くネットで 提供していなかったのです
カットとマリーには 選挙サイトが無いなど あってはならないことでしたが どうしようもありませんでした ウェブサイト制作業者に委託する 予算も無ければ 自分たちで作る知識も無かったので サイト無しで選挙に臨みました マーサー郡の有権者4万人も そんな状態で選挙を迎えたんです 今 私たちは 市民参画のあり方を変えてしまえる 前代未聞の機会を前にしています テクノロジーにより 科学や産業に革新が続き 人と人との繋がり方も 人が世界を理解する方法も すっかり様変わりしているというのに この国の民主主義機関は 時代遅れのままです アメリカは個人に 自分で有権者登録させるという 世界でも数少ない民主主義大国で 政府はそれを代行してくれません 投票の方法を決めるルールは 州ごとに異なります 郡によっても違うことがあります さらに投票用紙は 何ページもあります 今月行われる選挙の 投票用紙を見たのですが それこそ100を超える 候補者や投票項目の中から 選ばなければならないという状態です こんな複雑な環境では 投票を支援するツールとして 最高のものを駆使すべきなのに そうできていません
私が職場で最もよく耳にするのは こんな言い方です 「市民の参政率が低いのは 無関心だからであり 政治などどうでもいいからだ」 でもシビックデザインセンターの 私の優秀な友人たちが言うには 関心の欠如は システムに起因するもので 有権者のせいではないそうです システムは今すぐ変えられます カットとマリーのような 地域の選挙管理人たちに 21世紀型投票ツールを提供し 有権者へのサービスを向上するための 利用方法を教えればいいのです 例えば ソーシャルメディアを使って 投票を呼びかける方法や データに基づいて 投票所にスタッフや機材を配置し 投票所で何時間も 並ばなくてもいいように計らう方法や 投票システムの安全を保障するための サイバーセキュリティの ベストプラクティス講習などです
こうした取り組みに投資すると 長きに渡って有意義な成果を出せます カットとマリーは今ネットを使っています 私たちは 二人の経験を参考に シビックデザインの 研究結果を取り入れ ウェブサイトの雛形を作りました 講習プログラムの開発もしました カットとマリーが自分たちでサイトの 管理をするようになることを目指したものです 1週間もせずに 二人は サイトの裏側を 全く知らない状態から 郡の有権者向けの 情報提供サイトを作り 2014年から自分たちで 運営しています 今では マーサー郡では4万人の 全国では10万人の有権者たちが 投票をするために必要な情報の全てを 地域の選挙管理人から直接 わかりやすく 使いやすい スマホ対応サイトで入手できます
このような成果は さらに広めることもできます 各地の選挙管理人たちが 独自のルートに限定して 情報提供をするのではなく 協力して情報提供の輪を 広げていけばいいのです 「投票情報プロジェクト」 などの取り組みでは 全国の選挙管理人たちと協力して 投票用紙の内容や投票所の場所などといった 重要な情報が集約された— 標準データベースを作っています その情報は グーグルや フェイスブックが作ったツールにより ニュースフィードや検索など 人々が既に利用している場所に 届くのです 2016年に「投票情報プロジェクト」は 候補者や投票項目について 2億回以上も市民に情報を提供し 3分の1から半数の投票者の 決断を助けました そのモデルは世界中の選挙で 取り入れられました
他の行政分野での取り組みを見てみると 市民のニーズに耳を傾ければ 現代のツールで解決できるような 機会が見つかります 「mRelief」 の例では 26万世帯が救われました 行政機関に力を貸して 20ページに及ぶ 紙ベースの食糧配給申請を テキストメッセージで 10の質問に答えれば 3分以下で済むような 手続きに変えさせたことで 新たに4200万ドルの 食糧費補助が可能になったのです 投票システムにも そんな変革を起こせるのです 今そうなってきていますが まだまだやることは山積みです
もしあなたが技術的な事が得意なら そう 全部解決できます 必要な技術はもうありますし 皆の専門知識を合わせればいいのです 地元の選挙管理事務所で ボランティアを お考えの方もいるかもしれません 解決志向で素晴らしいです でもはっきり言います 選挙システムの近代化というものは 1日の仕事量の20%を費やせばできるとか ハッカソンをやればできるとか 単発のプロジェクトで 達成できるようなものではありません 必要なのは長期に渡り持続する 大規模な投資です テクノロジーに投資し 地域の選挙管理人たちの 21世紀の選挙を運営するスキルの 向上に投資しましょう 長期的な展望で投資しないと 永遠に時代遅れのままです
何百万人という人々を手助けする 心の準備のある方 今あるシステムと あるべきシステムの間の ギャップを埋めたいという気持ちがある方 手を貸してください そんな仕事を年中している団体が あなたを必要としています 地域の選挙管理事務所が あなたを必要としています あなたも加わってください
ありがとうございました
(拍手)
アメリカの選挙システムは控えめに言っても複雑ですが、投票は私たち一人一人が地域のコミュニティ形成に携わるための最も身近な手段の一つ。どうしたらこのシステムをもっと現代的で誰にでも使いやすく安全なものにできるのでしょうか? アメリカの投票システムを21世紀型にアップデートし、全ての有権者に投票してもらうために必要なこととは何か、市民社会参画を推進するティアナ・エップス=ジョンソンが説明します。