コンピューターのように考えることで良い決断をする3つの方法(11:40)

トム・グリフィス(Tom Griffiths)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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家を買ったり 借りたりするのが 大変な街といえば ここシドニーです 最近 この街で家探しを したことのある人なら この問題は お馴染みでしょう 売り出し中の家に 足を踏み入れれば どんな物件があるのか 情報が得られますが 立ち去るときには 最高の掘り出し物を 逃してしまうリスクがあります 探すのを止めて契約へと 進めるべきタイミングは どうすれば分かるのでしょう?

これはとても無情かつ よくある問題なので 簡単な答えがあると言ったら 驚くかもしれません 37%です

(笑)

最高のものを見付けられる 可能性を最大化したければ 出ている物件の 37%を見て 次に出会った これまでで一番良いやつに 決めればいいんです 1ヶ月で探すなら 37%の時間— 11日間で基準を決め 行動に移る準備をします

なぜそう言えるかというと 家を探すというのは 「最適停止問題」の一例だからで これは数学者や コンピューター科学者によって よく研究されている 問題なんです

私は計算論的認知科学者です 驚くほどの偉業もすれば ひどい機能不全にもなる 人間の心の働きを 理解しようと 時間を費やしています そのために 日常で現れる問題の 計算論的な構造を考え その問題への 理想的な解決法と 私達が実際にしている行動とを 比較します その副産物として コンピューター科学を 少しばかり適用することで 人間の意思決定は 楽にできることが分かりました

これには個人的な 動機があります 頭でっかちな子供として パースで育った私は—

(笑)

常に合理的と思える 方法を求め あらゆる決定を論理的にし 取るべき最善の行動を 見出そうとしていました しかしこのアプローチでは 大人の生活に持ち上がってくる 諸々の問題に うまく対応し切れません 私はそのために恋人と別れようと 思ったことさえありました 2人の好みを考慮して 完璧な答えを 見出そうとすることに—

(笑)

疲れてしまったからです

(笑)

私はこの問題に 間違ったアプローチをしていると 彼女は指摘したものです その子は後に 私の妻になりました

(笑)

(拍手)

どのレストランに行くか決めるという 簡単な問題から 残りの人生を共に歩む相手を決めるという 重大な問題まで 人生は 計算論的な問題に 満ちていて 単に根性で解決しようとするには 難しすぎます そういった問題については 専門家の意見を 聞くのがいいでしょう コンピューター科学者です

(笑)

人生のアドバイスがほしいとき コンピューター科学者というのは 最初に思い付く相手ではないでしょう コンピューターみたいに 暮らしていて ステレオタイプとしては 正確 網羅的で 時計仕掛けのようで 楽しそうでありません しかし人間の意思決定を コンピューター科学で考えると 逆であることが分かります 人間の生活に 現れるような 難しい問題に 適用するときには コンピューターは 人間の行動とよく似た方法で 問題を解くんです

たとえば どのレストランに行くか 決めようとしているとしましょう これは ある計算論的な 構造を持った問題です 一連の選択肢があり その中から1つを選び 同じ問題に 明日も 直面することになります この状況では 「探索と活用のトレードオフ」と コンピューター科学者が呼ぶものが生じ 「探索と活用のトレードオフ」と コンピューター科学者が呼ぶものが生じ ある決断を しなければなりません 何か新しいものを試し 将来使える情報を 集めるために 「探索」をするか あるいは 結構良いと 既に分かっているところに行き これまでに集めた情報を 「活用」するか 探索と活用のトレードオフは 新しいものに挑戦するか 結構良いことが分かっているもので 手を打つかを選ぶ時に生じるもので これは音楽を聞く時でも 誰と一緒に過ごすか 決める時でもそうです これはまた ウェブサイトに出す 広告を決めるような時に テクノロジー企業が 直面する問題でもあります 新しい広告を出して そこから学ぶべきか それとも 多くの人がクリックするのが 分かっている広告を出すべきか それとも 多くの人がクリックするのが 分かっている広告を出すべきか

これまでの60年で コンピューター科学者は これまでの60年で コンピューター科学者は 探索と活用のトレードオフについての 理解を深め 驚くような洞察も 得られています どのレストランに行くか 決めようとするとき 最初に問うべきことは その街に あとどれくらい いるのかということです そこに短期間しかいないなら 活用を選ぶべきです 情報を集めても しょうがないので 良いと分かっているところに 行けばいい でも長くいることになるのであれば 探索しましょう 新しいことを試し 得られた情報で 将来より良い選択が できるでしょう 情報の価値は その情報を使う機会が 多いほど大きくなります

この原理は人間の 一生の流れについても 洞察を与えてくれます 赤ちゃんは分別という点では あまり評判が良くありません いつも新しいことを試み 何でも口に突っ込みます でも これはまさに赤ちゃんが すべきことなんです 人生の探索期にいるのであり 試したものの中には おいしいものもあるでしょう 反対に お年寄りだと いつも同じ レストランに行って いつも同じものを 食べる人がいますが これは退屈な あり方ではなく 最適化されているのです

(笑)

人生の経験を 通して得た知識を 活用しているわけです 一般に 探索と活用のトレードオフを 理解していると 何か決断するときに 自分に寛容になれて 気が楽になります 毎晩最高のレストランに 行く必要はありません 思い切って何か新しいものを試し 探索すればいい 何か学べるかもしれません そうやって得られた情報は 1度のおいしい晩ご飯よりも 価値があるでしょう

コンピューター科学はまた 家庭や仕事場ですることも 楽にしてくれます 衣類を整理しなければ ならなくて 難しい決断を迫られたことが あるかもしれません どれを取っておき どれを手放すか 決めなければなりません マーサ・スチュワートはこの問題について 一生懸命考えたようです

(笑)

良いアドバイスをしています 彼女曰く 「4つのことを自問しましょう どれほど長く 所持しているか? まだちゃんと使えるか? 持っている他のものと かぶっていないか? それを最後に 使ったのはいつか?」 この問題について さらに熱心に考察している 専門家がいて この質問の中の1つは 他の3つよりも重要だと指摘するでしょう その専門家とは? コンピューターの記憶システムの 設計者です コンピューターの多くは 2種類の記憶システムを持っています 高速な記憶システム— メモリーチップのような 高価で容量が 限られているものと ずっと大容量で低速な 記憶システムです コンピューターをできるだけ 効率的に作動させるためには 使うデータは 素早く取り出せるよう 使うデータは 素早く取り出せるよう 高速な記憶システムに 入っているようにすべきです 高速な記憶システムに 入っているようにすべきです アクセスするたびにデータは 高速な記憶システムに 取り込まれますが 容量が限られているので 代わりにどのデータを取り除くか 決めなければなりません

コンピューター科学者たちは 長年にわたり 高速記憶から取り除くデータを 決める方法を いろいろ試してきました ランダムに選ぶとか 「先入れ先出し方式」と呼ばれる 一番長くメモリーに 入っているものを 取り除く方法もあります でも一番効果的なのは 最も長く使われていないものを 選ぶという方法です メモリーから何か 取り除こうというときには 最後に使われた時点が 最も古いものを選ぶということです これには理由があります そのデータを最後に使ってから 長い時間が過ぎているのなら 再び必要になるまでの時間も 長いだろうと期待できます 衣装ダンスもコンピューターの メモリーと似たようなものです 容量が限られていて 素早く取り出せるように 最も必要になりそうなものを そこに入れておきたい そうであれば 衣装ダンスの整理にも そうであれば 衣装ダンスの整理にも この「最長未使用原則」を 適用すると良いかもしれません マーサの4つの質問に戻ると コンピューター科学者は この中で 最後の質問が 一番重要だと言うでしょう

最も必要になりそうなものが 最も取り出しやすいところに来るよう 整理するというアイデアは 仕事場にも適用できます 日本の経済学者の 野口悠紀雄は まさにこの性質を持つ 書類整理法を考案しました 段ボール箱を使い 書類を箱の左端に入れます 書類を追加するときには 元からあるものを 右にずらして 左端に入れます 書類を使うときは 箱から取り出し 使った後は 箱の左端に戻します そうすることで 書類は左から右に 最近使われた順で 並ぶことになります 書類を探すときは 左から右へと 見ていくことで 素早く見付けられると 彼は気付きました

家へと急ぎ戻って この書類システムを作ろうとする前に—

(笑)

たぶん皆さんはこれを既に お持ちであることを指摘しておきます

(笑)

机の上の書類の山です 乱雑で整理されていないと 言われがちですが 書類の山というのは 実は完璧に整理されているのです

(笑)

取り出した書類をいつも 山の上に戻していれば 書類は常に 上から下へ 最近使われた順に 並んでいます 上の方から見ていけば 探している書類を速やかに 見付けられるでしょう

衣装ダンスや机を 整理するというのは 皆さんにとって人生で最も 切迫した問題ではないでしょう 私達が解決しなければならない問題が 単にすごく難しいということもあります そういう場合でも コンピューター科学は そういう場合でも コンピューター科学は 何らかの戦略や慰めを 提供できます 最高のアルゴリズムというのは 最も意味あることを 最小限の時間で行うものです コンピューターは 困難な問題に直面したとき 問題を簡単化することで対処します ランダム性を取り入れるとか 制約を取り除くとか 近似値で済ますとか 簡単化した問題は 困難な問題に対する ヒントを与え それ自体が結構良い 解決法になっていることもあります

こういったことを知っていることで 決断の際に気が楽になります たとえば家を探すときには 37%の法則を使うことができます すべての選択肢を 考慮することはできないので 賭に出ることも必要です 最適な戦略を取ったとしても 完璧な結果が得られる 保証はありません 37%の法則に従うとき 一番良いものを 引き当てられる確率は 奇遇にも—

(笑)

37%です 多くの場合に 失敗しますが それが皆さんにできる 最善のことなんです

コンピューター科学は 自分の限界に寛容になれるよう 助けてくれるんです 結果を制御はできず 制御できるのはプロセスだけです 最高のプロセスを使っているなら 最善を尽くしたと言えるのです 最高のプロセスが 賭けを含むこともあります すべての選択肢を考慮しないで かなり良い答えで 手を打つということです これは合理的にやれないときにする 妥協というわけではなく これこそが合理的ということの 意味なのです

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

何か決断に困ったときは、この講演が役立つでしょう。認知科学者であるトム・グリフィスは、人間の抱えるこんがらがった問題に対してコンピューターのロジックがどう適用できるか示し、家を見付けることから今晩行くレストランを選ぶことまで、あらゆることについてより良い決断をするための3つの実践的戦略を紹介します。

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