人種差別の構造を壊す(16:50)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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両親は私にすごい名前を 付けてくれました “バラトゥンデ・ラフィク・サーストン” バラトゥンデは ナイジェリアで使われている ヨルバ語の名前ですが 私たちはナイジェリア人じゃ ありません
(笑)
単に母が筋金入りの 黒人だったということです
(笑)
この子に一番黒人的な名前を 付けてあげたいから 調べてみようと
(笑)
ラフィクはアラビア語の名前ですが 私たちはアラブ人ではありません 母はきっと この21世紀において 私が飛行機に乗るのを 難しくしたかったんでしょう
(笑)
アメリカが移民排斥に向かうのを 見越していた 予言的な黒人だったんです
(拍手)
サーストンは英国の名前ですが 私たちは英国人ではありません 幾世代にもわたる非人間的な アメリカ奴隷経済機構への 叫びなのかもしれません サーストンは スターバックスでは便利です (「渇いた」に見え) 急いで 作ってもらえますから
(笑)
母はルネサンス的な人でした アーニータ・ロレイン・サーストン プログラマーであり 元家庭内労働者 性的暴力からの生還者 芸術家にして 活動家 母はこの世界の教訓を 私に教えてくれました 黒人史 格闘術 都市農業 母は私を中学から 私立のシドウェル・ フレンズ・スクールに通わせました 大統領の子女が行く学校に こんな私を行かせたのです
(笑)
学校で為すべきタスクが 2つありました 黒人であることを忘れないことと 眼鏡を忘れないことです どちらも成し遂げました
(笑)
シドウェルは教養や科学を学ぶのに 最高の場所でしたが 白人の中で生きる術も 学びました そこで学んだことが 後に役に立ちました ハーバードでも 企業コンサルタントの仕事でも 『ザ・デイリー・ショー』や 『ジ・オニオン』の仕事でも そういった教訓の多くを回想録 『黒人として生きる方法』に書きました もしまだ読んでない人は 人種差別主義者でしょう
(笑)
読む時間は 十分あったはずですから
でもアメリカという国は アメリカで 黒人でいることの意味を 繰り返し 思い出させようとします
2018年12月のこと 私は婚約者と ウィスコンシン州の 郊外にいました 彼女のご両親に 会いに行くところでした 2人とも白人で 結果 彼女も白人になりました そういうことになってるんです 私のせいじゃありません
(笑)
彼女が少し飲んでいたので 私がご両親の車を運転していたところ 警察に止められました 恐怖を感じました 服従の意思を示すため ライトを点滅させ ゆっくりと 街灯の一番 明るいところに車を止めました 目撃者やドライブレコーダーの映像が 必要になる事態に備えて— 身分証と車両登録証を 出して拡げ 窓を開け 両手をハンドルの上に 載せました— 警官が車から 降りるよりも前に これは死なないための方法です 待っている間に こんな見出しが頭に浮かびました 「警官 またも丸腰の黒人を射殺」 そんな目に遭いたくはありません
さいわい その警官は友好的な人で ナンバープレートが 期限切れだと教えてくれました すべての白人の親御さんに お願いしたいのは もしお子さんの 付き合っている相手が ドウェイン・ジョンソンより 濃い色をしているようなら—
(笑)
子供たちが訪れるときに 車検や書類に不備がないようにしてください それが最低限の 礼儀ってもんです
(笑)
(拍手)
私はラッキーでした ちゃんとした警官に 当たりました 私は生き抜いたんです— 生存が問題になるべきでないことに 「警官 またも丸腰の黒人を射殺」 といったニュースのことを考えます その頃 そういうニュースが 至る所で聞かれました ソーシャルメディアを 見ていると 子供が生まれたという写真での 報告があり [新しい赤ちゃん!] 昨日 友達にちょっと話ただけの製品の 広告があり [監視経済!] 警官が私のような見た目の誰かを 射殺した映像があり [お前は安全ではない!] ミレニアル世代はセックスより アボカドトーストを 選ぶという解説記事があります [ミレニアルの衝撃再び!]
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混乱させられる時代です そういう話が持ち上がり 続けていましたが 2018年には違った種類の 話を目にするようになりました 「白人女性 Uber待ちの 黒人女性を警察に通報」みたいな これは #ブルックリン・ベッキー です 「白人女性 飲料水を売る 8歳の黒人少女を警察に通報」 これは #パーミット・パティ です 「白人女性 オークランドの湖畔でバーベキューする 黒人家族を警察に通報」 これは #バーベキュー・ベッキー です
こうした話は 黒人として生きることの 進歩だと私は言いたいです 以前なら 警官による裁判なしの処刑が 起きてはじめて知ることなりましたが 今や110番する人の映像が 出回るんですから 源へと遡り 問題に近づくほど 解決に近づきます
それで私は こういった ニュースの収集を始め 今も進化し成長を続けるデータベースを baratunde.com/livingwhileblack に作りました こういったニュースを 理解するには 文章を図式化すると 良いと気付きました シドウェルのエリカ・ベリー先生その他 英語教師の皆さんに感謝したいです 自由のために戦う 武器を与えてくれました
ニュースの見出しを分解し そこにある一貫した構造を 理解するのです [主体が] [何かの活動をしている] [標的に対して] [ある行動を取る] [白人女性] [飲料水を売る] [8歳の黒人少女を] [警察に通報]というのは [白人男性] [近所のプールを使う] [黒人女性を] [警察に通報]というのと同じであり [女性] [地元で選挙活動する] [黒人オレゴン州議員を] [警察に通報]と同じです みんな同じなんです 文章の図式化によって そのような文章を成り立たせる 白人至上主義を図式化できます ここで用語を 明確にしておきましょう
私が「白人至上主義」と言うとき ナチや「ホワイトパワー」活動家だけを 指しているのではなく 白人がみんな差別主義者だと 言っているわけでもありません 私が言っているのは 社会 経済 政治において 白人を他の人種に対し 構造的に優遇するシステムのことです 「司法の平等イニシアチブ」の ブライアン・スティーヴンソンが 「人種の違いの物語」と呼ぶもの 奴隷制やジム・クロウ法や 大量投獄を正当化するために 人々が自分に 言い聞かせる話です
このパターンが繰り返すのを見て 怒りを感じると同時に ゲームにすることを 思い付きました この心に傷を残すような体験を 癒しの体験に変える 言葉遊びです そのゲームを皆さんに お教えしましょう
最初のレベルは練習レベルで 皆さんの参加が必要です 目的は真偽を 見極めることです これは実際に 起きたことでしょうか? 「カトリック大学法学部図書館員 論争的な学生を警察に通報」 本当だと思う人 拍手をお願いします
(拍手)
嘘だと思う人 拍手をお願いします
(より大きな拍手)
あいにく これは 本当にあったことです この話のポイントは 法学部図書館というのは 論争的であるのがまさに 適切な場所だということです
(笑)
その学生は教授に 抜擢すべきでしょう
練習レベルは終わりです 本番に入りましょう
レベル1の目的は 役割の逆転です [女性] [地元で選挙活動する] [黒人オレゴン州議員を] [警察に通報]は [黒人オレゴン州議員] [地元で選挙活動する] [女性を] [警察に通報] になり [白人男性] [近所のプールを使う] [黒人女性を] [警察に通報] は [黒人女性] [近所のプールを使う] [白人男性を] [警察に通報] になります 逆差別主義者の例を どう思いますか?
レベル1はこれで終わりです レベル2に移りましょう ここでの目的は逆転させた例を もっともらしくすることです [黒人女性] [近所のプールを使う] [白人男性を] [警察に通報] というのは 十分に馬鹿げていません 「許可なく髪に触れようとした」 だったらどうでしょう? あるいは「一輪車に乗って オートミルクを作る」だったら? あるいは「会議でみんなと議論する」だったら?
(笑)
みんなやってることでしょう? まったくの話
レベル2はこれで終わりですが ひとつ注意があります 不正の向きを変えても 公正にはならないことです それは復讐であり 私たちの目的ではありません 別のゲームです レベル3に進みましょう 目的は行動を変えること またの名を— 「警察呼ぶ以外にできることあるよね おかしいんじゃない?」です
(拍手)
ここでいったん立ち止まって 構造を思い出しましょう [主体が] [何かの活動をしている] [標的に対して] [ある行動を取る] [白人女性] [自分の地所を点検する] [黒人不動産投資家を] [警察に通報] [カリフォルニアのセーフウェイ] [ホームレスに食事を与える] [黒人女性を] [警察に通報] [ゴルフクラブ] [プレーが遅すぎる] [黒人女性を] [警察に2度通報] これらすべてにおいて 主体は通常白人であり 標的は通常黒人で 標的の活動は何でもあり得ます 「スターバックスで座っている」 「間違った種類のバーベキュー グリルを使っている」 「居眠りしている」 「仕事に向かい “苛立った様子で” 歩いている」 私なら単に「歩いて仕事に行く」と 言いますけど
(笑)
私が好きなのは 「自分の犬が相手の犬と 交尾するのをやめさせない」というやつです これは人間の警察でなく 犬の警察の問題でしょう
これらの活動をまとめると 生活するということであり 私たちの存在そのものが 犯罪視されているんです
ここでプレゼンにおいて お決まりの部分です すべてが人種の問題ではなく 犯罪は通報すべきものだと ただ自問して欲しいのは こういった状況の解決に 武装した人間に登場願う必要があったのかどうか その人達の登場は 私にとっては話が違うからです 警官は白人よりも黒人に対して 実力行使することが多いことは みんな知っています そこでの110番の役割が 分かってきました 「警察活動公平性センター」による 予備的な調査によって 都市によっては 警察と市民の関わりの ほとんどが 警察の巡回ではなく 110番通報によることが 分かりました そして警察の市民に対する 実力行使は ほとんどの場合 通報に対する反応として 行われています さらに 通報により駆けつけた 警官が実力行使する割合は 「住民に占める白人の割合が 高い地域」ほど高くなります すなわち「高級化の度合いが高い」ほど すなわち「一輪車でオートミルクを作る」ほど すなわちバーベキュー・ベッキーが 脅威を感じるとき 自宅の近所においてすら 彼女は私にとって脅威になるのです そうなると私のような人間は 自らを取り締まる必要が 出てきます 静かに心がけ 薄氷を踏むように行動し 一番明るい街灯の下に 車を止めるのです 自分の殺される場面が カメラにちゃんと捉えられるように それというのも 私たちが 暮らしているシステムでは 白人が自分の快適さのために 殺害部隊を容易に 呼び出せるからです
(拍手)
カリフォルニアのセーフウェイは ホームレスに食事を与えていた黒人女性に対し 警察を呼んだだけではありません 責任免除された武装部隊を 彼女に差し向けたのです 基本的にドローン爆撃を 要請したのと一緒です これは武器と化した不快感であり 新しい話ではありません
1877年から1950年にかけて アメリカにおいて 黒人の人種差別的なリンチが 少なくとも4,400件 記録されています それにも見出しがあります [T・A・アレン牧師は] [ミシシッピ州ヘルナンドで] [分益小作農の組織化を行ったため] [リンチされた] [オリバー・ムーアは] [ノースカロライナ州エッジコム郡で] [白人少女を怯えさせため] [リンチされた] [ネイサン・バードは] [テキサス州ルリング近くで] [息子を群衆に引き渡さなかったため] [リンチされた] 行動を変えなければなりません それが「リンチ」であれ 「警察に通報」であれ—
この2つの距離を縮めたので ゲームに戻りましょう
レベル3の目的は 行動を変えることです ホームレスに食事を与える黒人女性を 「警察に通報」する代わりに カリフォルニアのセーフウェイが 彼女にただ「礼を言う」というのはどうでしょう? 警察を現場に呼ぶよりも礼を言う方が ずっと安く付きます
(拍手)
あるいは「余分の食べ物を彼女にあげる」なら 株を上げられたでしょう あるいは白人女性は 8歳の黒人少女を 「警察に通報」する代わりに 彼女の商売を支えてやるため 「在庫をみんな買い取る」 こともできました 黒人不動産投資家を「警察に通報」した 白人女性については 彼女が余計なお節介をせず 無視していればよかったのは 警察も同意するでしょう
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余計なお節介をしないというのは 素晴らしい選択です もっと頻繁にすべきでしょう
レベル3はこれで終わりですが ボーナスレベルがあります 目的はインクルージョンです こんな見出しも目にします [権力者の男性] [自分のオフィスに来た] [若い女性に] [自慰して見せる] 権力者としてまったく 奇妙な選択です 他に取れる選択肢は たくさんあったでしょうに
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たとえば「話に耳を傾ける」とか 「メンタリングする」とか 触発されて「共同事業を始め みんなで金持ちになる」とか
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みんな金持ちになる世界に 生きたいですが 彼のまずい選択によって 私たちはみんな より貧しい世界に生きています こんな風である必要はないんです この言葉遊びは そこに構造的な白人至上主義 構造的女性蔑視 構造的権力乱用があることを 思い起こさせてくれます 構造的であることが それをシステム的なものにしています 皆さんにはぜひ 構造を見ていただきたい 権力がどこにあるのか さらに重要なのは この構造によって標的にされる人の 人間性を見て欲しいのです
私がここにいられるのは 私が愛され 力を注がれ 守られ ラッキーだったからです 良い学校に行き そこそこ有名で 概ね幸せで 日に2回瞑想するからです しかし それでも 私は恐怖心を抱きながら 外を歩いています 誰か私を脅威に感じる人が 私の命にとっての 脅威になりうるからです いい加減疲れました 他人の恐怖の見えない重荷を 背負うことに疲れました 私たちの多くがそうですが そんな風で あるべきではありません これは変えられる ことだからです 私たちは行動を変えられます それによって物語が変わり そのようなことが起こるのを許している システムを変えることになるのです システムというのは みんなが信じている 物語の集まりに過ぎません それを変えるとき 私たちは みんなにとって より良い現実を作り出すのです どうか選ぶ力を 使ってください レベルアップしてください
ありがとうございました バラトゥンデ・ラフィク・サーストンでした
(拍手)
アメリカにおいて黒人が食事し、歩き、何であれ「黒人として生きる」行為を犯罪視した白人が警察に通報するという現象を、バラトゥンデ・サーストンが追求します。時に笑いを誘いつつ考えさせる奥深い講演を通じ、彼は心に傷を残すような話を癒される話に変える言葉の力を示し、私たちみんなにレベルアップすることを求めます。