「アハ!」の瞬間を追い求めて(14:11)

マット・ゴールドマン(Matt Goldman)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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1969年の ニューヨーク市 小学3年生の音楽の授業で 先生はピアノとイスだけの部屋に 僕たちを連れていきました 先生は僕たちを1人ずつ呼んで 真ん中のドを弾き それを歌うように言いました

(歌う)

そして僕たちは 部屋の右側か 左側に行くよう指示されます

(笑)

そして35人全員がそれを終えると 部屋の左側のほうにいる僕たちは 起立して教室に戻るよう 言われました

(笑) そして その誰もが 小学校で再び音楽の授業を 受けることはなかったのです メンバーかメンバー外かが 決められたわけですが 当時は その振り分けテストが何なのか 分かってもいませんでした

数年後 国語の授業で・・・

(笑)

新学期の最初の課題が出て それが返却されました 成績はC+ 「期待どおりの出来ね」と コメントが付いていました

(笑)

正直に言って C+なのは構いませんでした C-やDではなかったので ハッピーでした でも「期待どおりの出来ね」 というコメントは・・・ 年端のいかない頃の自分でさえ 何か違うと思いました なんだか 見限られている 感じがしました

同じような経験のある方は どれくらいおられるでしょう? 学校でも 職場でも? 仲間がいますね

皮肉だなとも思うんですが 私の人生が向かっていった先は ブルーマングループの 作曲や書き物という仕事だったわけです

(笑)

そして学校も始めたんですよ

(笑)

しかし学校というところは 僕にとって拷問でした 生まれつき勉強が好きじゃなくて 教師にも理解されたことが なかったような人間で 学校でどうやればいいか 分からなかったし 学校のほうも 僕の扱い方が分からなかったんです それで考え始めました その当時にですよ もしこういった環境が 標準的な型にはまらない人間を もてあますのなら 環境のあり方のほうを変えて それぞれの強みを生かせるようにしたら いいのでは? 僕はこう信じるようになりました 僕たちに必要なのは 安全で助けとなる場を作りあげ 新しくて革新的なアイデアが 豊かに育つようにすることだと

ご存知のとおり 人間は生まれつき革新的なんです もしそうでなければ 僕たちは1万年前に使っていたのと 同じ矢じりを使っているでしょう ですから僕が問い始めたことの1つは 革新をより簡単に より頻繁に起こす方法はないか ということです 「アハ!」体験は ランダムで時々しか 起こらないような飛躍的進歩ですが それを意図的に 頻繁に 起こす方法がないか?

僕たちが1988年に ブルーマングループを始めたとき オフ・ブロードウェイでの 出演経験はありませんでした 舞台で演じたこと自体 ほぼなかったんです でも 何に情熱を捧げたいかは 決まっていました それはまったく 僕たちが舞台で 見たこともないようなことです アートとポップカルチャーと テクノロジーと社会学と 人類学とパーカッションとコメディー そして至福を追求するようなものです 僕たちが設定したルールは 過去に見たことがあるものは 舞台でやらないということでした 自分たちや観客の中に 創造性やつながりを呼び起こしたかったんです 少しばかり社会の役に立ちたかったし それを楽しんでやりたいと思いました オフィスでは 外にいるときよりも みんながお互いのことを ほんの少しだけ 良く ほんの少しだけ 尊敬し配慮しあう環境を 作りたかったんです そして僕たちは 繰り返しを重ね 力を合わせて まだ誰も見たことがないものを 生み出す方法を探し続けました

時を経るにつれ 僕が見い出したのは この種の創造的で革新的な環境を 作るための最適条件です 明確な意図、目的、情熱 これは 自分の身の丈よりも 大きなことに取り組むときに有効です

人としての誠実さ 言行一致ということです あらゆる関わりのなかで 素直な自分でいることです

直接的なコミュニケーションと 明確な期待 たとえ課題が困難なときでもです

やり抜く力と 粘り強さ 繰り返し、繰り返し、繰り返し

協力しあえるチーム作り 深い信頼と相互尊重を 積み重ねていくこと 全員が チームのメンバーです メンバー外の人は 誰もいません 浮きも 沈みも チームとして経験します 一度決まったことには 覆されるまで 従います

多様な見方を受け入れること どんな意見も重要だし どんな感情も重要です

不一致は真正面から取り上げること 誰もが存在を認められ 耳を傾けてもらえると感じられるように

リスクを取り 失敗を称えること 組織として学び続けるために 必須の姿勢です 革新や学習の曲線が らせん状に 上昇していくよう常に試みるんです

それから 発言に表裏のないこと これは これまで挙げた条件を全て つなぎ合わせるものかもしれません その場にいない人について話すときに その人が その場にいるときと まったく同じように話すのです これは基本的なことのように見えますが 意欲的な実践なんです より相手を尊重したやり方で 難しい状況に対処するのを助けてくれます この実践を入れ込むことは 達すべき基準を引き上げることや 相互尊重や信頼の強化に 絶大な効果がありますし その際 オフィスや教室での ゴシップや権力争いの問題も減らします そして 革新的な過程で生じる 障害を減らしてくれるのです

ブルーマングループでは 繰り返しは創造の過程に不可欠でした ある作品を書いていたときのこと 僕たちはその作品で 消費と廃棄の循環について 楽しめて 創造的で アッと驚くやり方で 観客に示したかったんです もし皆さん自身が 同じことに 挑戦しようと思うなら ここで時間を大幅に 節約してさしあげましょう お教えします オートミール、ゼリー、 クリーム状のシリアル、 スライム、プリン、粘土、タピオカ、 変形自在のシリコン、トマトペーストは 衣装の下で渦巻き状にしたチューブを うまく通過しません 胸のところに開けた穴から 出てきて 観客に向かって 噴射するはずだったんですが それはできません

(笑)

何か月も試行錯誤してやっと 実現できました― バナナです

(笑)

誰が知っていたでしょう バナナがまさにぴったりだったとは 空気圧でチューブから押し出しても 固形のままで それでいて 劇的なほどニュルッと出てくる そのインパクト これこそ探し求めていたものでした

(笑)

これは ブルーマンショーの 代表作になりました

でも僕たちは 劇場作品のルールを ことごとく無視したわけではありません 舞台装置をデザインし 照明もデザインし ショーを取り仕切る ステージマネージャーもいました でも僕は確信していますが 僕たちのものは 観客とつながりを作るために 尊敬をこめて 観客を逆さ吊りにした 史上初のショーです

(笑)

観客を絵の具に浸して キャンバスにぶち当てたんです

(笑)

頭を 30kgのスライムに突っ込み ショーの英雄にしました

(笑)

さらに 僕たちは 必要のない手直しは しませんでした

(笑)

何年もたって この学びを全て生かし 僕たちは学校を創立しました 自分たちが通いたかった学校を 子どもたちのために作りました その学校では 休み時間に廊下で起きることも 授業中に起きることも どちらも等しく重要です 真ん中のドが歌えなくても 音楽の授業を受けます ブルースクールでは 教師と保護者と子どもが 対等の立場で協力します 安全な場を作ることを意識して 学習に対する 生涯にわたる 喜びに満ちた情熱を伸ばせるようにします

繰り返しになりますが 僕たちは 必要のない手直しはしませんでした 従来からのやり方を 避けたりはしません たとえば直接的指示が 学ぶのに最適なときはそうします でもそれと 全教科にまたがる 統合的な学習とのバランスをとっています バランスが重要なんです 事実 ブルースクールが その礎としていたのは 学業を修めることと 創造的に考えること 自己や他者を理解することとの バランスでした これは常識のように 聞こえるかもしれませんね でも一部の人たちにとっては 「ラディカル」なんです

(笑)

そしてこういった性質によって ブルースクールは多くの注目を集めました 真に革新的な学校だと

ほぼ10年たって 僕たちは これを拡大して 中学校を創ることを公表しました 教員が小学校の6年生に頼んで 中学校の掲げる価値観を 一緒に考えてもらいました これは1つの問いから始まりました ハッピーで実り多い日々のために この学校がどうあることが必要か? 子どもたちは6週間かけて 個人作業や共同作業に取り組み 案を洗練して 合意に至り そうして考案されたリストは きわめて素晴らしいものです

お互いに きちんと心をこめて関わる

学ぶために他の人が必要としていることを 尊重し 支える

多様な人たちが 学校の一員だと感じられるようにする 見た目や考え 行動が違ってもです

自分を知り 他者を知るための 場にしていく

楽しさや喜びを誇りとし そういう時間を持つ

自分自身に挑戦する 大丈夫と思うようにして 失敗を恐れない そういうことを通して お互いに支えあう

いいですか これを考え出したのは 11歳の子どもたちなんですよ 20年かけて僕たちが見い出したことを 子どもたちが言葉にしたんです

この活気に満ちたコミュニティ作りの 大きな副産物の1つは こういった価値観を重視したい人たちを 引き寄せられたことです それを お金や権威や伝統などよりも 大事だと考えたい人たちです 僕たちは同じ方向を向いて やっていけます 皆さんそれぞれ 会社での 独自の価値観をお持ちですし それはコミュニティや 家族においてもそうでしょう 僕たち 少なくとも僕にとっては 子どもの声を最も大事と考えて 調和的で持続可能な世界を築く助けになる ツールを彼らにあげたいのです 皆さん ぜひ このワクワクする― 情熱溢れる喜びいっぱいの旅に 一緒に加わりましょう 一緒にやれば 「期待通りの出来」は 計り知れないものになります その期待とは 僕たちのいる環境を改めて形作り 世界を変えることなんですから

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

1988年、マット・ゴールドマンはブルーマングループを共同で立ち上げました。このグループはオフ・ブロードウェイから生まれ、ユーモアが溢れた、青色に塗った体とワイルドなパフォーマンスで知られるセンセーションを起こしました。そのショーは、あるいくつかの条件を満たせば「アハ!の瞬間」、つまり驚きと学び、そして活力に満ちた瞬間を、ランダムで時々ではなく、頻繁かつ意図的に創り出すことができるという前提で行われています。現在ゴールドマンはブルースクールを創設し、ブルーマングループから学んだことを教育に生かす取り組みをしています。この学校は、学業を修めることと創造的に考えること、そして自己と他者を理解することのバランスをとったものです。「僕たちに必要なのは、安全で助けとなる場を作りあげ、新しくて革新的なアイデアが豊かに育つようにすることだ」とゴールドマンは言います。

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