図書館司書の視点から延滞料金に反対する(13:53)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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こんにちは 皆さん ここでお会いできて嬉しいです 実はこれはラクロス公共図書館に 来館した人々に 私が言う言葉そのものです そう言うのは 心から そう思うからです 図書館に来る子供たちは 友達も同然です その子たちの必要とするものや 将来を気にかけています 幸せに成功してほしいと 願っています 素晴らしい本や楽しめる映画に 出会ってほしいと思います 難題への解決策を 見つけるのもいいでしょう
図書館は一般的に コミュニティを支えていると 素晴らしい評価を受けています 図書館では 綱領や設立目的に コミュニティとより広い世界を 結びつけることを掲げています 人々の思考を引きつけ 生涯学習者を育てます こうした理想が 図書館にとって 非常に重要なものであるのは 図書館には世界をよりよくする力が あることを知っているからです よりつながりを持ち 関わり合い 共感できる世界です 書籍には力がありますし 情報にも力があります コミュニティにいる 力を持たない人々にとって それらにアクセスすることは 一層大切なことです
1995年 ベティ・ハートと トッド・リズリーが 発表した研究によると 労働者階級の家族や 社会福祉を受けている人々は 現在「3千万語の格差」と 呼ばれるものを経験すると言います つまり この研究でわかったことには こうした家族の子供たちは 一日あたりに耳にする言葉が 他に比べて 大変少ないため 3歳になるまでに 学習される言語に大きな格差が 生じるということです 学習言語の格差は 就学しても つきまとい 読み書きが遅かったり 読解力が貧弱であったり 成績がよくないことに つながるのです 子供たちは日々 言葉を耳にする必要があり 日常的な会話だけでなく 難解な言葉も 耳にする必要があります およそ1万語からなる 共通語彙以外の言葉です
ある児童書から 短い抜粋を読みたいと思います 児童書コーナーの人気作家の一人 エリック・カールの作品です 『はらぺこあおむし』を ご存じの方もいるでしょう 『ゆっくりがいっぱい』からの 抜粋です
「とうとう ナマケモノは 答えました 『ぼくは 確かに ゆっくりで 静かで 退屈だよ ぼくは ぼんやりしてるし のらくら ぶらぶら 過ごしているさ 動じることなく けだるく 冷静で 落ち着いて のろくて 無気力で 穏やかで 取り乱さず まったりとして のんきで― つまり ナマケモノなのさ! リラックスして 物静かで 平穏なのが好きなんだ でも 怠けてるんじゃないよ』 ナマケモノは あくびをして こう言いました 『それが僕なんだもの 何でも ゆっくり ゆっくり ゆっくり やるのが好きなんだ』」 当館にある1冊の ごく短い例からも 作者が20もの言葉を使って 子供たちに 内容を伝えているのがわかります
さて 図書館に来る多くの家族― 私たちの多くの友達が 経済的に苦しいことは 知られています 貧しい暮らしをしている人々や 十分な食料や安全な住居を 持たない人々もいます 放課後にやってくるジェームズは 地元のシェルターで暮らしていて 年相応の本を読めていない― いえ おそらく 読んだこともないのです 3千万語の格差があり 3年生になるまでの 習熟度を比較してみると どちらも家庭の収入に 正比例するのです
こうした格差に働きかけるために 図書館にはどんな責任があるでしょう? どうしたら 私たちの友達が より成功し もっと教育を受け いつの日か よりよい世界市民に なれるでしょう? まずは 無料かつ公平に 図書館が提供するものすべてを 利用できるようにすることです 本は 参加条件を公平にします あらゆる社会経済的背景の子供たちに 言葉を体験させるからです 図書館で提供するプログラムは 5つの初期の識字発達に 基づいています 遊び、歌、おしゃべり 読むこと、書くことです 大人のためのプログラムには コンピュータのクラスや 就労支援があります 起業支援もあります コミュニティの人々のために 素晴らしい努力を行うと同時に 利用者に罰金や料金を科すことで それを相殺しています
現在 ラクロス図書館では 1万人の利用者が罰金や料金のために 図書館の資料を 借り出すことができません 最も貧困に苦しむ地域に注目すると― ここでは82%の生徒が 経済的困難にあるとされるのですが― この地域の実に 23%の人々にあたります これはこの地域の話ではありますが 全国的にも当てはまります 全国の罰金を科す図書館では 最も貧困である地域に 利用できない人が一番多いのです 実際 コロラド州立図書館は このことを憂いて 白書を発表し はっきりと表明しました 罰金への恐れから貧しい家族が 図書館を利用しないのだと
ある同僚が昨年 アトランタでタクシーに乗り よくあるように 運転手に 図書館について話し始めました 運転手は 子供の頃は 地元の図書館が好きでよく行ったけれど 3人の子供の母親となった今は 子供たちに図書館利用証を 作らせてやれないと言うのです 返却期限が厳しく 決まっているからです 「支払いができない クレジットカードみたいなもの」と
一方で 他の図書館では罰金を 廃止する試みを行っています 例えば サン・ラファエルでは 子供への罰金をなくしました すると 最初の数か月の間に 子供の利用証の申し込みが 126%も増加したのです 罰金を科せられる 恐れがなければ 人々は図書館が提供するものを 利用しようと列を成すのです 図書館は何を 伝えているのでしょう? 図書館には2つの 異なる考えがあります
かたや 図書館は 民主主義の擁護者として すべての市民が自分で学べるよう 存在していると述べています 初期の識字教育の持つ力を唱えて 習熟度や学習言語の格差を 減らせると述べています 「図書館は皆さんの味方です」 と言います その一方で 経済的に困難で 一度間違いをすると― ここにいる誰もが 犯しうるような間違いです 図書館の貸し出し袋が 本来の期間よりも 数週間 余分に長く 家の中にあったり CDを紛失したり 本にコーヒーをこぼしたりすると 突如として 味方ではなくなってきます なぜなら 間違いを犯すと その代償を払わせるからです 払うことができなければ どうしようもありません
私は長い間 図書館司書をしています ここ数年の間に 私自身 延滞料金で 500ドル以上も支払いました なぜだろうとお思いでしょう 毎日 そこで仕事をしているし システムについても知っているはずです でも 図書館に来る 友達の皆さんと同じように 私は忙しいですし 物忘れだってします 家が散らかっていることもあれば DVDが2枚ほどソファの下で 行方知れずになることもあります 私は 幸いなことに ここ数年の間に 500ドルを支払うことができました 喜んでというわけでなくとも 支払うことはできたわけです では 罰金を払える人は これまで通りに利用でき 一度間違いを犯した人は 二度と利用できないなんて 公平で公正なサービスであると 果たして言えるでしょうか? そんなわけありません
では 最も脆弱な利用者が 最も打撃を受けるようなモデルで 図書館が運営され続けているのは なぜでしょう? 理由はいくつかあります 責任もそのひとつです 中には 責任を教えることが 図書館の責務だと 考えているところもあります 金銭を介在しない方法が あるかもしれないとしても まだ見つけ出せていないのです コミュニティが共同して 資源を共有しているのだから 順番を守るという考えもあります 『マイ・リトル・ポニー』の映画を 私が延滞している間 他の人が見たいのなら 公平ではありません それから お金の理由もあります コミュニティの人々は 図書館を大切に思っており サービスの提供が維持されなく なってほしくないのです
幸いなことに 最も脆弱な人々を 遠ざけることなく これらすべてを 様々な方法で実現できます 中には Netflixのモデルを 採用した図書館もあります なじみがあるかもしれませんね 物を借り出して 利用を終えたら 返却します 返却をしなければ さらに借り出しはできません でも 返却さえすれば とがめられることはありません また借り出しができます 罰則を継続する図書館もありますが 利用者に代替案を提供することを 考えています 食品で支払うところでは お金でなく缶詰食品を持参させたり 読書で支払うところでは 館内での読書が罰金の代わりです ウィスコンシン州の ある図書館では カウンターで渡された スクラッチカードを削り 10%~20%の罰金の割引を 受けられるところもあります 恩赦の日というのもあります 一年に一度のその日に 延滞中の図書を返却すれば 許されるというものです サンフランシスコのある図書館が 昨年 恩赦の日を実践し 利用不可になっていた5,000人の 利用者を再び歓迎したそうです その日 延滞されていた 70万点もの図書が返却されました 中には 100年延滞されていたものも ありました
ばかげていると思うかもしれませんが 私の経験から知っているのは 延滞しているものがあると 司書に怒られるよりも 図書館を去ることを 選ぶ人が多いのです 司会のマイケルが言ったように 私は15年間司書をしていますが 私の母は何十年も 図書館に行っていません 若い頃に 図書を紛失したからです
これらは 小さな一歩として 素晴らしいものです それでも 十分ではありません 利用者に試練を与えているからです 決められた日時に 図書館に行く必要があったり 余分な食料がなければなりません その場で本を読むには 読み書きができる必要があります 図書館を再び利用してほしいと思うなら 単純に罰則を なくしてしまえばいいのです
私が金銭的な理由に 言及しないとお思いでしょう 図書館には運営費が必要でしたね しかし 罰金が図書館の予算で 果たす役割について 何点か考える必要があります まず 罰金が 安定的な収入源だったことはありません 常に不規則に変動しており 実際 ここ数十年で 額は減少し続けています 特に不景気に襲われると 支払い能力も低下します ですから 利用不可になっている― 1万人の友達の多くは そもそも支払えないのかもしれません 罰金をなくそうと言うときに 実際に思うほどに 金銭的ダメージはないのです 第三に 驚かれるかもしれませんが 全国で平均すると 図書館の運営予算において 罰金が占めるのは1.5%程度です これは大きな額かもしれません 大規模な図書館や 大きな図書館システムにおいては 実際の金額も高いでしょう でも多くの図書館にとっては 負担しうる削減額です
最後に そしておそらく最も重要なことに 罰金の徴収にもお金がかかります 罰金を徴収する あらゆる方法を考慮すると 罰金について通知する 封筒や切手代や 返却管理サービスのような サービスもそうですし 電話やメールでの通知にも 図書館の予算が必要です 人件費は図書館にとって 大きな出費です 顧客対応のスタッフは カウンターに立って 罰金について説明したり 時には 罰金をめぐってもめたりしています これらの要素をすべて取り除くと 実際には 罰金をなくせば 図書館の経費節減になるかもしれません あるいは 少なくとも 図書館の存在意義の追求に沿った形で スタッフの作業時間を 再構成できるでしょう
皆さんに理解してほしい もうひとつのことは 罰金を科しても 思うような効果はないということです 罰金を巡る議論は― 科するべきか否かにせよ その金額にせよ 目新しいものではありません ここ100年ほど 続いている議論です さっきの本の延滞期間と 同じですね 多くの研究によると 図書館が罰金を科する理由は 期限内に図書を返却させ 効率を上げられるという 強固な考えによるもので そこに根拠はありません 基本的に 罰金があるのは ずっと罰金を科してきたからです 皆さんの地元の図書館にとって 最良の選択は目的を優先させることです コミュニティがそう求めれば 図書館も対応するでしょう
今日 帰ったら 近くの公共図書館に行き 司書と話をしてください 近所の人や 図書館の運営委員と 話してみてください コミュニティのあらゆる人々にとって 読み書きが重要だと話してください 図書館が真の意味で すべての人に開かれているなら 罰金を廃止し コミュニティを 受け容れるべきだと伝えてください
ありがとうございました
(拍手)
図書館には、世界をよりよくする力があります。コミュニティを結びつけ、読み書きを向上させ、生涯学習を活気づかせます。でも人々を遠ざけるものが、ひとつあります。それは貸出図書の延滞料金が発生するおそれです。考えさせられるこのトークで、図書館司書のドーン・ウォシックが、延滞料金を科しても思っているような効果はないと説明します。地元の図書館が延滞料金...を科すのを一切やめたとしたら、どうなるのでしょうか?