非公式経済における隠れたチャンス(07:19)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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アフリカの非公式市場は典型的に 混乱し 怠惰だと見られがちです 「非公式」と聞くと 直ちに とてもネガティヴなことに 直結していると思われています それは大きな影響や経済損失を及ぼし 非公式市場だけの利益率でも 40から60%の増減を生みます 非公式市場の現状を研究するため 東アフリカでの 国境を超える貿易について 20年前まで遡り すべての報告 研究を 徹底的に文献調査しました 何が問題で非公式取引を非公式セクターに 留めてしまうのかを理解するための 現地調査の準備でした
20年を遡って見つけたのは 密売や密輸のような不法取引と 合法だが記録されることのない― たとえば トマト オレンジ 果物の売買が 区別されていないことです この非公式取引を犯罪視すること― スワヒリ語では商売を意味する 「ビアシャラ」と 密輸を意味する「マゲンド」とに 区別するのに 英語では2つを区別しないため 非公式セクターを 犯罪視してしまい アフリカ各国経済における 年間GDP成長率の 60から80%を見失うことになりかねません アフリカの経済を回している 原動力に気づいていないからです
「現代の経済」とも呼ばれている 従来の公式な経済に比べて 非公式市場は 4倍の速さで雇用を増加させています 従来の研究領域で 非熟練労働者と呼ばれる人々に 雇用と収入を得る機会を与えます でも皆さんは 中古車から フライドポテトを作る機械が作れますか?
ですから 非公式セクター全体を 犯罪視してしまっていると 認識することが急務なのです 非公式市場は「犯罪的」だ 「闇」だ 「不法」だ という固定概念がある限り 非公式市場を 公式の市場や ましてやグローバル市場に 組み込もうとはしません
テレシアの話をします 彼女は小売業者ですが 私たちのあらゆる先入観を覆しました 20年分の文献調査を行ったところ それまですっかり染み込んでいた あらゆる先入観に 疑問を持つようになりました 彼女はマラバの町の 木の下で服を売っています ウガンダとケニアの国境です とても単純なことだと思いませんか? 木の枝に洋服をかけて 防水シートをかけて 座って お客さんが来るのを 待つだけ 彼女は 文献や研究報告に書かれた 「非公式経済」に ぴったりあてはまる人物像でした 子供を育てるために 商売を始めたシングルマザーという点まで あてはまっていました
何が私たちの想定を覆したのでしょうか? 何が私たちを驚かせたのでしょうか? まず テレシアは 木の下で商売できるように 営業した日数分の 場所代を国に支払っていました 彼女は7年間ずっとそれを行い レシートを取っておきました 記録も取ります 私たちが目にしているのは 社会から追いやられ 恵まれず 傷つきやすいアフリカ女性の 露店商人ではありません 私たちが見たのは 数年に渡って売上を記録し 商品をウガンダから仕入れる 完成された小売エコシステムを 形成していた姿です 商品を運ぶ手押車を持ち 一日の終わりに集金する 移動集金人もいます テレシアが毎月平均して いくら分の仕入れをしていたか― ナイロビから新しい服を 仕入れていたかわかりますか? 1,500USドルです 一年にすると 約2万ドルが 商品とサービスに 投資されたことになります テレシアは 見えない存在— 隠れた中流です
こういう町のマイクロビジネスの中では 彼女はまだ駆け出しです すくなくとも広域のマラバ国境では まだ駆け出しです より本格的な商売人は 軽く3つのビジネスを掛け持ちして 毎月2,500から3,000USドルを 投資しています レシートを受け取る相手を 犯罪者と呼ぶわけにはいきません ですから 問題の本質は 犯罪視することではなく 彼らの熟練した仕事を 認識できないことです 金融の仕組みは 彼らの仕事が マイクロビジネスであることを 認識する手段を持ちません それどころか テレシアの木には 住所がないことなど 知る由もありません
だから 彼女は身動きが取れないのです 公式経済としての前提条件を すり抜けてしまっています アフリカ女性の援助に マイクロローンがあるのはご存知と思います 50から100ドルを貸してくれます でも そんな少額で何ができるでしょう テレシアは仕入れだけで 毎月その10倍ものお金を使います ここには その他のサービスや 支援エコシステムは含まれていません 彼らは 通常の政策の対象である 非熟練で 社会の周辺に追いやられた 労働者でもなければ ホワイトカラーのサラリーマンや 年金がもらえる公務員といった 中流階級を構成すると みなされる労働者でもありません
ここに見られるのは 中小企業の卵です 推進力となる事業や企業の 活力を生む種なのです 彼らのおかげで 食卓に食事が並びます このホテルでも 肉屋 パン屋 ロウソク屋のように 表からは見えない人たちが フライドポテトを揚げる機械を作り ベッドを作ります 国境をまたいで 路上のいたるところで商売をする 彼女たち隠れたビジネスウーマンは データ収集者の目には触れません さらに彼女たちは 巨大な非公式市場に組み込まれ 密輸業者や税金逃れや その他もろもろの 犯罪者たちと 真面目に働き 食卓に食事を並べ 子供を大学にやっている女性たちが 区別されていないのです
以上が私の願いです 実行から始めることが必要です 彼らの技能や仕事を認めることから 始めませんか? まずそれを認めたら 次に 彼らに合わせた 公式市場 グローバル市場 そして経済システム全体への 参入、統合の仕方を設計することで 非公式市場を変えることができます
ご清聴ありがとうございました
(拍手)
二ティ・バーンはアフリカの非公式市場の経済戦略を研究しています。対象は小商店、売店、熟練した工芸家、アフリカの経済を支える見えない原動力である労働者たちです。こういった労働者を税金逃れとか、犯罪者とさえ思いがちですが、この活力あふれる市場は合法であり投資の価値があることを二ティは証明します。非公式市場を認めれば、何千もの雇用を生み出せると彼女は言います。「これは事業や企業の活力を生む種なのです。彼らの技能や仕事を認めることから始めませんか?」