私の人生を変えてくれた教育の力(10:41)

アシュウィーサ・シェティ(Ashweetha Shetty)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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8才の頃でした あの日のことは 昨日のことのように覚えています 私の母は 煙草巻きの仕事をしています 家計を支えるために 地元産の煙草を手で巻いています 母は働き者です 毎日10~12時間も 煙草を巻いていました その日 母は帰ってくるなり 賃金台帳を私に見せ その週の稼ぎが いくらだったのかを尋ねました 台帳に目を通すと 目に留まったのは 各ページに押された母の拇印でした

母は一度も学校に行ったことがありません だから 自分の稼ぎを記録する時に サインの代わりに 拇印を使っています その日 私はなぜだか 母にペンの持ち方と 名前の書き方を教えたくなりました 母は最初は気乗りしない様子で 笑いながらかぶりを振っていたのですが 内心では挑戦してみたいはずだと 私は確信していました ちょっとした根気と かなりの努力が必要でしたが 何とか名前を書けるようになりました 母は 手は震わせながらも 顔は誇らしげに輝いて見えました

そんな母を見ていて 人生で初めて 何とも言えない感情が湧いてきました 自分に存在価値があるという感情です この感情は本当に特別でした なぜなら 私には価値が無いと 決めつけられてきたからです インドの田舎では 女子は大抵 無価値とみなされています 手のかかる厄介者であり 何かに役立つとすれば 料理をするか 家の掃除をするか 子供の世話をするくらいだと 保守的なインド人家庭の 次女として生まれた私は かなり幼い時から よく分かっていました 自分は誰からも何も 期待されていないということを 私はこんな風に信じ込んでいました 自分を定義する3つの属性ー 貧しく 田舎育ちで 女であることは 意見することも 選択することも叶わぬ運命を意味すると この3つの属性を前にすると 生まれてくるべきでなかったと 考えてしまうのです

それでも私は 子供時代に 母の隣で仕事を手伝いながら ずっと気になっていました 将来どんなことが 待ち受けているのだろうと 不安で一杯になった私は よく母に尋ねたものです 「私はお母さんとは違う人生を送れるの? 自分の人生を選ぶことはできるの? 大学に行けるの?」 母は答えたものです 「まずは高校を出なさい」 母は私を失望させようとした わけではないと思います ただ この村の女子としては 私の夢は大きすぎるということを 理解させたかったのでしょう

13才の時 ヘレン・ケラーの 自伝に出会いました ヘレンは私の励みになりました 彼女の不屈の精神にあこがれました 彼女のように 大学の学位を取りたいと思いました だから 大学へ行かせて欲しいと 父や親戚に反抗しました 結果は成功でした

学部生の最後の年に 結婚を無理強いされることから どうしても逃れたくて デリーで募集中の 奨学金付きプログラムに応募しました 村から2,600km離れた場所です

(笑)

今でも覚えていますが 申請書を作成できる唯一の時間は 大学への通学途中くらいでした パソコンがなかったため 大学の後輩の携帯電話を 借りる必要がありました 女の私が携帯電話を持っているのを 見られるわけにはいきません だから 背を丸めて 携帯電話をショールに隠し 音を聞かれないように なるべくゆっくりと 文字を打ち込んだものです 何度もの面接を経て 全額支給の奨学金付きプログラムに 合格しました 父は困惑していましたし 母は心配していました

(拍手)

父は困惑していましたし 母は心配していました 一方 私は緊張して落ち着きませんでした なぜなら 生まれて初めて村を出て 首都に行き 勉強することになったからです

その年に選ばれた97名の同級生のうち 私が唯一の田舎の大学出身者でした 私のような見た目の人も しゃべり方の人もいませんでした 疎外感を覚え 尻込みしました 大勢から値踏みされている気がしました ある同級生から 「ココナッツ娘」と呼ばれました なぜだか分かりますか どうですか 髪の毛に大量のココナッツオイルを 塗りつけていたからです

(笑)

どこで英語を学んだのか 聞いてくる人もいました 私と同じ課題のチームになるのを 嫌がる同級生もいました ディスカッションで貢献できないと 思われていたからです インドの田舎者は 何一つ価値あるものを提供できないと 多くの同級生が信じているようでした インド人の大多数が 田舎に住んでいるにも関わらずです 私のようなケースは特例であり 決して期待の星ではないのだと 気付きました

私たちは皆 生まれながらの境遇を 盲目的に受け入れてしまいます 何かのきっかけで目を覚まし 新しい世界が開ける瞬間までは 母が初めて賃金台帳に書いた サインを見た瞬間 50時間に及ぶ 列車の旅を終えて デリーの熱気を顔に感じた瞬間 やっと自由を感じ 本当の自分を取り戻した瞬間に 私は願い続けた新たな世界を 垣間見たのです 私のような女性が もはや 手のかかる厄介者ではなく 役に立ち 価値があるとみなされ 必要とされる世界です

プログラムが修了する頃には 私の人生は一変していました 物を言う力を取り戻しただけではなく 自分の存在価値を確立する道を 選択できるようにもなっていました 22才の時 村に戻り 「Bodhi Tree Foundation」 を設立しました 田舎の若者に教育を提供し ライフスキルを教え 機会を与えることで 自立を支援する団体です 田舎の若者の人生を変え コミュニティに恩恵をもたらせるよう 若者と一緒になって取り組みました

この団体の活動は うまくいっているのでしょうか? 6か月前 新人を迎えました カビアラシという女性です ティルネルヴェーリにある地方大学で 初めて彼女を目にしました 私が開催した講習会の最中でした 見ての通り 彼女は記憶に残るような 笑顔の持ち主です 私たちは 彼女がデリーのアショカ大学で 学べるように手引きしました この話の素晴らしい点ですが 彼女は今 Bodhi Treeに戻り 同じ境遇の子の人生を変えるべく トレーナーとして献身的に働いているのです 彼女が願うのは 自分が例外的な存在ではない世界です そのために 誰かの役に立ちたいと 願っているのです

このほど カビアラシは アニータを担当しました アニータも人里離れた田舎の村出身で 3メートル四方ばかりの家に 住んでいました 彼女の両親も農家でした カビアラシの支援でアニータは インドのトップ大学の一流学部の 入学許可を取得できました しかも 全額支給の奨学金付きです アニータの両親は子供を遠くにやるのを 嫌がりましたが 私たちは 地区の行政職員にお願いして 両親を説得してもらいました それが功を奏しました

そして パドマです パドマと私は 一緒に大学に通っていました 彼女は村で初めて 大学を卒業した人物です 私とともにBodhi Treeで 働いていましたが ある日 団体を離れ 大学院に行くことを決めました 理由を尋ねたところ こう答えました 人生において 今後一切 自分が誰かにとっての 厄介者になることはないという 確信を持ちたかったのだと

パドマ アニータ カビアラシの3人は 想像しうる最も過酷な家庭環境や地域で 生まれ育ちました それでも 私自身が存在価値を 見出すための過程が 彼女たちの存在価値を 見出すことにも役に立ったのです

もちろん 困難もあります 一夜にして変化をもたらすことなどできません 私の仕事の多くは 家族や地域の人に理解してもらうことです なぜ教育を与えることが あらゆる人にとって 有益なのかということを やってみせることが 最短の説得方法です 実際に子供たちが教育を受け 仕事を得るところを見ると 考えが変わり始めます

私の家庭が最も良い例でしょう 先日 私は社会活動を認められ 州知事から表彰されました つまり 私がテレビに出るということです

(笑)

当日の朝 両親を含む皆が テレビにくぎ付けになりました テレビに出演する娘の姿を見て 母も自分の存在価値を実感したはずです できれば 結婚するように迫ることも やめてもらいたいです

(笑)

存在価値を見つけることで 社会に押し付けられた自分から 解放されました 「貧しい田舎の女子」である自分です 存在価値を見つけることで 閉じ込められた檻の中から 外に出ることができました 存在価値を見つけることで 物を言う自信を得て 自尊心と自由を 取り戻すことができました

最後にこの思いをお伝えします 皆さんの存在価値を感じる場所を 探してみてください その場所こそが 自分の意見を発信し 自由を取り戻せる場所だからです

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

人生の目的を見つけることこそが最高の自由であると教育推進を提唱するアシュウィーサ・シェティは言います。インドの田舎の貧しい家庭に生まれたシェティは、コミュニティの規範に屈して夢をあきらめたり、意見を押し殺したりはしませんでした。個人の経験に基づくトークの中で、彼女が教育を通じて、どのように自分の存在価値を見つけ出したのかを共有します。そして、田舎の若者の可能性を探るための支援活動について語ります。シェティは言います「私たちは皆、生まれながらの境遇を盲目的に受け入れてしまいます。何かのきっかけで目を覚まし、新しい世界が開ける瞬間までは。」

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