自ら形を変え変身する折り紙ロボット(12:25)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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ロボット開発者としてよく聞かれます 「ロボットが朝ご飯を作って くれるようになるのはいつか?」 未来のロボットは 人間の姿に 近づくのではないかと考えました 自分に近い容姿になると考えたので 自分の目を模倣した目を作成しました 物を私に渡せるように 器用な指を作りました 野球のボールとか
こちらのような 古典的なロボットは 決まった数の関節と 駆動装置で構成され 機能します このことが意味するのは 機能と形状は構想の段階で 確定してしまうということです このロボットアームに 素晴しい投球ができ カメラの三脚に 当てさえしたとしても 朝ご飯を作ってくれるわけでは ありません スクランブルエッグを 作るのには向いていないのです
これが 未来のロボットのビジョンを 思いついた瞬間です 変形ロボットです 車のように走り 人のように駆け 鳥のように飛び 新しい環境とその時の作業に 合わせて変形します これを実現するために ロボットデザインの方法を 考え直さねばなりません 多角形型のロボットモジュールがあるとして その単純な多角形を使って 様々な形を再構築して 異なる作業向けに異なる形のロボットを 作り出すことを想像してください コンピュータグラフィックスでは 目新しいことではありません かなり前から 多くの映画が そのように作られています でも物理的に動くロボットを そのように作ろうとするなら まったく別の新しい話で まったく別のパラダイムです
でも皆さんは 既に やったことがあります 紙飛行機や 紙の船や 折り鶴を 作ったことのない人は? 折り紙はデザイナーにとって 万能の道具です 一枚の紙から様々な形状を作ることができ もし気に入らなければ広げて もう一度折り直せます 折ることで 二次元の面から どんな三次元の形でも作れ そのことは数学的に証明されています もし知的な紙があって 自律的に折り上がり 求めるどんな形にも いつでも変形できるとしたら どうでしょうか? それこそが私の取り組んでいることなのです 私はこの折り紙のロボットを 「ロボガミ」と呼んでいます
これが最初のロボガミの変形の様子です 私が10年くらい前に作ったものです 平坦なシート状のロボットが ピラミッド型になって また平らなシートに戻り 今度はスペースシャトルになります すごく愛らしいです
10年経って私たちのグループの ニンジャ折り紙ロボット研究者は 22名ほどになりましたが 新しい世代のロボガミができ 少し効率的になって できることが増えました 新世代のロボガミは 実用的な目的を果たします 例えばこのロボットでは 地形によって自動的に進み方を変えます 地面が平らで乾いていれば 這って進みます 急に荒れた地形になると 転がり始め 同じロボットですが こうなります 地形に応じて 駆動装置の動かし方を 変えるのです 障害物があれば 跳び越えます この動作では それぞれの脚に エネルギーを蓄え パチンコのように放っています 体操技だってします ジャーンプ
(笑)
ロボガミが単体でどのように 動くのかをご覧いただきました では グループで行動したらどうでしょうか? もっと複雑な作業に力を合わせて取り組みます モジュールにはアクティブなもの パッシブなものがあり 組み合わせて 異なる形状を作り出せます それだけではなく 関節を制御することで 異なるタスクを作り 挑むことができ 形が新たなタスク空間を作るのです ここで最重要なのは組み立てです 違った場所にいる相手を 自動的に見つけ出す必要があり 環境と作業に応じて くっついたり離れたりします そしてもう実現できているのです
さて次はどうなるのか? 想像力を働かせましょう
これは このタイプのモジュールで 達成できることの シミュレーションです 4本足で歩くものを作ろうと決め よちよち歩く子犬にしました 同じモジュールで別のものを 作ることもできます ロボットアームは典型的で 古典的なロボットの用途です ロボットアームで物体を つかみ上げられます 更にモジュールを追加すれば より大きな あるいはより小さな物体を 掴み上げられるよう ロボットアームの腕を長くでき 3本目の腕だって付けられます ロボガミには 決まった形状や 作業はありません いつでも どこでも どんな形状にも 変形できるのです
ではどのように製作するのでしょうか? ロボガミ最大の技術的な課題は 非常に薄くし 柔軟にしながら 機能を維持することです 多層の回路やモーターや マイクロコントローラーやセンサーを すべて本体内に持ち 一つ一つの接合部を制御して 指示通りに動き こんな柔らかな動きもできます 一つの作業のためだけに 作られたロボットとは違い ロボガミは複数の作業をすることに 最適化されています このことは 地球上の過酷で独特な環境や 宇宙での作業で重要になります
宇宙はロボガミにぴったりな環境です 宇宙では 作業ごとに専用のロボットを 用意する余裕はありません 宇宙では どれほど多様な作業が 必要になるかわかりません 様々な作業向けに変形するような ロボットが必要になります ロボガミのモジュール一式が 変形して いくつもの作業を こなすようにしたいのです 私だけが言っているわけではないですよ このコンセプトに 資金援助をしているのは 欧州宇宙機関とスイス宇宙局だからです
ここにはロボガミのいろいろな構成の イメージが描かれていますが 異星の地表を探査するものもあれば 地面を掘っているものもあります 探査だけではありません 宇宙飛行士にも手伝いが必要です インターンを連れて行く余裕はありませんから
(笑)
宇宙飛行士はあらゆる退屈な作業を こなさねばなりません 単純な作業かもしれませんが とてもインタラクティブです ロボットに実験を手助けさせる必要があります コミュニケーションをとりながら 宇宙飛行士を支援し いろいろなところに張り付いて 道具を支える3本目の腕となります でも 例えば宇宙ステーションの 外側にいるロボガミを どう制御するのでしょうか? このケースでは ロボガミが宇宙ゴミを 捕えている様子が描かれています 目で見ながら操作できますが 感触を直接 宇宙飛行士の手に伝えられたら もっといいでしょう 必要になるのは触覚デバイスで 触覚インターフェイスが 手触りを再現します ロボガミを使えば それも可能です
これは世界最小の触覚インターフェイスです 指先に触感を 再現することができます ロボガミに 巨視的な動きと微視的な動きを させることで実現しました これを使うことで 物体の大きさや 物体の曲率やまっすぐさを 感じられるだけでなく 硬さや手触りも感じられるのです アレックスがこのインターフェイスを 親指で操作しています そしてこのインターフェイスに VRゴーグルとコントローラーとを合わせると 仮想現実はもはや仮想ではなくなり 触れられる現実となります 彼が見ている青 赤 黒のボールは その色だけで区別されるものではなくなり 青いゴムボール 赤いスポンジボール 黒いビリヤード球として感じられます すでに可能な技術です ちょっとお見せしましょう
これを一般の方の前で ライブ公開するのは 本当に初めてで うまくいくといいのですが ここに示すのは解剖学の人体図と ロボガミの触覚インターフェイスです 他の再構成可能なロボットと同様に 複数の作業をします マウスと同じように操作できるだけでなく 触覚インターフェイスとして機能します
たとえば物体のない白い背景部分では 何も触るものがないので インターフェイスの反応は とてもスムーズです マウスのように操作して 肌や 筋肉質の腕のほうに移動して 上腕二頭筋や 肩を触ってみましょう 固くなったのが 分かると思います もう少し調べてみましょう 胸郭に近づいてみましょう 肋骨の上か 肋間筋の上かで 柔らかくなったり 固くなったりし 固さの違いを感じることができます 本当ですよ ご覧のように 私の指に対して 固いあるいは強い力で 押し戻してきます
動いていない表面についてお見せしましたが 動いているものに 近づいたらどうでしょうか? たとえば拍動する心臓ではどうでしょう? 何か感じられるでしょうか?
(拍手)
自分の心臓の脈だって取れます オンラインショッピングを楽しんでいる時に ポケットに入れておけば 買おうとしているセーターの感触の違いや どんな柔らかさなのか カシミアかどうかも分かり あるいは買おうとしているベーグルが どのくらいの固さか カリカリの程度も分かるのです もうできるようになっています
このロボット技術は皆さんの日常のニーズに 合わせて パーソナライズされ 適応できるよう進化しています 再構成可能なこの独特なロボットは 視覚的でない直感的なインターフェイスを ニーズに的確に合わせて提供する プラットフォームです そのようなロボットの姿はもはや 映画で描かれるようなものではなく 皆さんの望み通りのものになるのです
ありがとうございました
(拍手)
折り紙からデザインのヒントを得て、ロボット開発者のジェイミー・ペイクと彼女のチームは、非常に薄い素材を折ってできたロボットで自ら形を変え変身する「ロボガミ」を創り出しました。このトークと技術デモでペイクはロボガミが地上や宇宙で様々な作業をこなすためにどう適応できるのかを示し、丸まったり跳んだりパチンコのように射出したり、更には心臓の拍動のように脈打ったりする様を実演してお目にかけます。