世界初のクラウドソースによる宇宙交通監視システム(05:29)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私は宇宙力学の研究者です 映画『オデッセイ』に出てきた リッチ・パーネルと同じです そして私の仕事は 宇宙空間の物体の 動きについて研究し予測することです 現在 私たちは軌道上の危険な物体の 約1パーセントを追跡しています 危険を及ぼす対象は位置情報 農業 金融 放送や通信など そしてすぐに 本当にすぐに その対象は インターネットにさえ及びます
現時点では それらのサービスは概算で 50万個の様々な物体に対し無防備です サイズで言うと 塗料の小片から スクールバスの大きさの 物体まで様々です 塗料の小片は それなりのスピードで宇宙を移動していて 他の物体に衝突すると その物体を使い物にならなくする おそれがあります しかし塗料の小片サイズの 小さな物体は追跡できません スマートフォンサイズなら 追跡は可能になりますが 憂慮しなければならない物体が 50万個もある内 私たちが追跡できるのは 2万6千個に過ぎません その2万6千個の中で 機能を果たしているのは わずかに2千個です それ以外はすべて ゴミです 本当にたくさんのゴミです
更にもう少しばかり良くないことに 私たちが打ち上げる殆どのものは 戻ってくることがないのです 私たちは衛星を軌道に打ち出し それが機能を停止し あるいは 燃料を使い切ってしまうと 別の衛星を打ち上げます そしてまた 別の衛星を打ち上げ そしてまた別のものという具合です
また場合によっては そのうちの2つが衝突を起こしたり あるいはその1つが爆発を起こしたり 更に悪いケースでは 軌道上の衛星を 何者かが 破壊するかもしれず その場合には より多くの破片が生み出されて それらの大半もまた 永遠に戻ることはありません
そのような物体は 単に無造作に 軌道上に散在しているわけではありません 時空の曲率を考慮すると いくつかの衛星は 配置すべき場所が決まります 宇宙の高速道路だと考えてください 地上の高速道路とよく似ていて 宇宙の高速道路も 宇宙での安全な運用を継続するために 担うことのできる交通量には 上限があります 地上の高速道路と異なるのは 宇宙には交通ルールが全くないことです 本当に何もないのです 信じられますか? ああっ これではどうなってしまうのでしょう?
(笑)
そこで あったらいいなと思うのが 宇宙の交通地図のようなものです 宇宙版Waze(GPSアプリ)のように 宇宙での現在の交通状況を調べられ 更には 予測までできるかもしれません しかしここで問題があります 5人の異なる人に こう尋ねたとします 「軌道上で何が起きていますか? 物体はどこに向かっていますか?」 すると10の異なる答えを 得ることになるでしょう 一体なぜでしょう 軌道上での物体に関する情報が 一元的に共有されていないからなのです
そこでもしも私たちに 宇宙にある全物体の位置を 広く知らせることのできるー 世界中からアクセス可能な オープンで透明な情報システムがあったら? 宇宙を安全かつ持続可能で あり続けさせるためにです そして もしそのシステムが 宇宙における交通ルールの 根拠に基づく行動規範を定めるのに 利用できるとしたらどうでしょうか?
そこで私はASTRIAGraphという 世界初のクラウドソースによる 宇宙交通状況監視システムを テキサス大学オースティン校で開発しました ASTRIAGraphは産学官の 世界中の情報を統合して それを今や誰もがアクセスできる ― 共通フレームワークに表示します このように地球を周回する軌道にある 2万6千個の物体が表示され 複数の機関の見解が ほぼリアルタイムで反映されます
宇宙交通地図の問題に戻りましょう もし米国政府からの情報しかないと どうなるでしょうか? その場合には宇宙交通地図は このようになります でもロシアの意見ではどうなるでしょうか? 全然見た感じが違いますね 誰が正しくて 誰が間違っているのか? 何を信じればいいのか? 何が信用できるのか? これは課題の1つです
宇宙関係者の行動や 宇宙での活動を 監視するための このフレームワーク ― つまり そのような物体のある位置を監視して くい違う見解の間を取り持って そしてその知識を共通認識にするための このフレームワークが欠如していると 人類の公益のために宇宙を活用する能力を 失うリスクを負うことになるのです
ありがとうございました
(拍手と歓声)
「宇宙に打ち上げたもののほとんどが地球に戻ることはない」と、宇宙力学者でTEDフェローでもあるモリバ・ヤーは言います。この先進思考のトークで、ヤーは地球を取り巻く宇宙空間の高速道路について説明し、なぜそれらがもっぱら宇宙ゴミの置き場になっているのかを説明します。世界初となるクラウドソースによる宇宙交通監視システムの開発とその規模の拡大という彼の探求と、そしてそれがどのように地球近傍の宇宙ゴミ問題の解決に寄与するかを学んでください。