貧しい人々を都市計画に参画させたなら?(13:19)

スムルティ・ジュクル・ジョハリ(Smruti Jukur johari)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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都市のイメージとは どんなものでしょう? 都市から連想するのは こんなイメージでは ないでしょうか? でも 見ているのが 写真の半分だけで 都市の中に 都市があるのだとしたら? この地域はスラム街 スコッター居住地域 非正規市街地などと呼ばれ そこで暮らす人々は不法占拠者 非正規居住者 犯罪者、受益者 被支援者などと呼ばれます しかし 実際は 選択肢を持たない 貧しい人々です

貧困とは 悪循環です 貧しい家庭に生まれると そこから抜け出すには 3世代以上かかるかもしれません 多くの人々は この悪循環の中で 他に選択肢がなく 路上や 線路脇や ごみ捨て場や 川辺や 沼地などの 本来住宅地ではない場所で 清潔な水も トイレも 家もない 生活を強いられています

私は スラム街をよく知っています 6歳の頃から ボンベイのスラム街で 診療をしていた― 医者の父に連れられ 行っていたからです 大きくなると 学校のあと 父の往診鞄を運ぶ 手伝いをしたものです 私はそうするのが大好きでした 私はスラム街の居住環境を 何とかしたいと思い 建築家を志しました しかし かなり早い段階で 建築の美は 富裕層のためのものだと悟り 都市計画に携わることにして インドのNGOに加わりました 上下水道や住宅のような基本的な 生活インフラを手にするため 自ら組織化している都市貧困層に 協力する組織です

私は10年かけて 専門知識を学びましたが それに囚われなくなるまでに 5年かかりました なぜかというと 建築、設計、プランニングについて 学んだことすべてが 実際の現場で役に立たないと 分かったからです そして 私は「選択の力」を学び 多くのことに 囚われなくなりました 私たちが抱えている 貧しい人々についての誤った俗説を 2つご紹介します

1つ目は 貧しい人々の都市への移住が 問題だという見方です 彼らは本当に 移住を選択したのでしょうか? 私の師であるシーラ・パテル氏は これを問題だと思う人々に こう言いました 「皆さんのお祖父さんに出身地を 聞いてみてください」と

では 貧しい人々は都市に来て 何をするのでしょう? 例をお見せしましょう これはムンバイ国際空港です 空港周辺の青い部分は 大きな非正規市街地です ここに約7万5千人が暮らしています ホテルやレストランで 作業員や ベビーシッターや 家政婦 その他諸々の仕事を 黙々とこなし 都市が正常に機能するために 必要な人々は誰でしょうか? 彼らの暮らしている所は? 多くの都市で 彼らは スラム街に暮らしているのです もう一度考えてみましょう 貧しい人々が都市に 移住しないようにしたいですか? 彼らにそういう選択肢があったなら どうなっていたのでしょうか?

2つ目は 個人的な経験でもありますが 自分たち専門家のほうが 分かっているんだという態度です 専門家は 他人のために 特に貧しい人々のために 選択してやるのが大好きです こんな経験をしました 近隣スラムの 貧困世帯のために建てる 250軒の住宅についての 設計検討会で 様々な建築資材が提示されました パピエマシェ、段ボール ハニカム材などで どれも費用が抑えられるものです そこに輸送用コンテナを使う 案が出されると 私たちは即座に賛成しました 資源を再利用でき 大規模に行え 廉価だと考えたからです しかし このプレゼン中に スラム街の女性が慎ましくも率直に 発表者に尋ねました 「ご自分はコンテナに 住もうと思いますか?」

(笑)

「そうでないなら なぜ私たちが そうしたがるとお考えなんですか?」 目から鱗が落ちた瞬間でした 貧困が変えるのは 何を買えるかだけで 望むものは変わらないのだと 悟ったんです

貧しい人々は 生涯を通して 仮設住宅で暮らし 壁を変えていきます レンガからブリキの家へと 竹や防水シートや プラスティックの家から 段ボールやブリキや レンガやセメントの家へと 移っていきます ちょうど私たちが家を移るように この過程のどこかで 私たちの選択を押し付けていたのです 私たちは選択を 押し付けるべきなのでしょうか? それとも 選択の幅を 広げるべきでしょうか?

もし 彼らに選択の機会を与えたなら? ムンバイ近郊で 路上生活をしている女性たちです 絶えず立ち退きを迫られるなか それを受けて 「マヒラ・ミラン」という 女性ネットワークを立ち上げました 権力者による 強制撤去に対抗し お金を貯めて 土地を購入しただけでなく 自分たちの家を設計し 建てるのを手伝いました 読み書きも出来ないのに どうやったのでしょうか? 大きさを把握するために 絨毯やサリーを使ったんです サリーは長さ4m、幅1.5mです シンプルな日用品を使って モデルハウスを示し 3種類から選べるようにまでして 知り合い全員を集めて 内見会を開きました

(笑)

すると ロフト付きのものが 2つの点で好評でした 第1に 大家族が寝る場所が 確保できるから 第2に 在宅就労が可能となり 腕輪作り アクセサリーのデザイン 刺繍や 梱包作業などが できるからです また 家の中にはトイレを付けず 外の通路に設置することに決めました 単に屋内のスペースを広くして コストを抑えるためです 専門家なら絶対に こういう案は 思い付きません 教科書的な設計だと 住宅にトイレは不可欠です

これらは割と小さい事例ですが 大規模な事例もあります 8億8100万人 現時点で 世界人口の 約6分の1にあたる人々が スラム街や非正規市街地に 暮らしています グローバル・サウスのほとんどの都市に 町くらい大きなスラムがあります ナイロビのキベラ ムンバイのダラビ 南アフリカのカヤリシャなどです 当初 そこは都市の中で 目もくれられない 荒地や放棄地でした やがて都市が成長し 貧しい人々が そういう場所に家を建て始め 時と共に 価値が上がり 今日では 誰もが欲しがる 人気のある不動産になりました

すると都市当局や権力者は どういう選択をするでしょう? 建物を壊して強制退去を行い 貧しい人々を都市や 経済活動から締め出して 新しいインフラを作ります 住人は縦型の住宅に移されますが 実際はこのような感じです すし詰め状態のため 自然光は入らず 換気も悪く 不衛生な状態であることも しばしばです

一方では 設計段階で 貧しい人々が参画しておらず 建物の品質も良くありません 他方では 貧しい人々は管理維持の方法が 分かっていません 請求書の保管も 記録付けも コミュニティ作りも 彼らには 難しいことなのです こういう正規の社会に 強制的に移されると 数年後にはこうなります 正規への移行は 物の話ではなく 過程だからです 非正規から正規への移行は 貧しい人々には旅路なのです 受け入れ 順応するには 時間がかかります 選択肢が与えられないと 結果はこのようになり 将来的に スラム化してしまう 懸念があります

こういう結果を避けるため 貧しい人々に便宜を図り 都市の一部となって 住んでいる場所を開発するという 選択を与え この写真のように 基本的なインフラを 提供したらどうでしょう? 都市と政府が協力し 政府が貧しい人々の存在を認めて 共に築いたなら?

これはムクルです ナイロビの大きな 非正規居住区で アフリカでも 最大規模のものです 30万人が 2.6㎢ほどの土地に 暮らしています わかりやすく例えると ピッツバーグの全人口を ニューヨークのセントラルパークに 押し込んだようなものです それがムクルなのです 画像でお見せすると 住宅はこういう状態で 街路はこのようになっています

ムクルでの生活がどのようなものか 簡単に言うと 1つの蛇口を550人が使い 水道料金は 都市の他地域の9倍です 上水道が整備されていないためで 水は買うものなのです 仕事から帰ってくると ブルドーザーで壊されたり 燃やされたりして 家がなくなっているなんて よくあることです こういう状況に疲れ果て 「ムンガノ」という 地元のスラム住民組織は 行動を起こすことを決めました その4年後には 2万人が加盟し データを集めたり 建物の地図を作り まとめ上げました 計画はとてもシンプルで 4つのことだけを 求めていました 清潔な水 トイレ、まともな道路 そして 一番重要な 追い出されないことです

彼らがこれをナイロビ当局に 提示したところ なんと歴史上初めて 市側が同意したのです ナイロビ市とケニア政府は ムクルを特別計画地域に指定し 住民自らが計画を 提案できるようになりました 自分たちの基準を 提案できるようになったのです 正規住民のための基準は 非正規市街地には 合わないからです

どういう意味か 例を見てみましょう これがムクルの道路ですが 道の両脇に家がひしめいています 市バスを導入するために 基準に基づいて プランナーが 贅沢にも道幅を25mにすると 建物の25%を撤去することになり 多くの人に影響が出ます そこで 道幅を12mにすることを 提案しました 建物を撤去することなく 市バスを導入でき 運行にもあまり支障は出ません

別の例 共同トイレについて お話ししましょう 人口密度が高い所では 私達の公衆トイレのような 個室を設けるゆとりがなく 男性 女性の区分だけです でも想像してみてください 朝のトイレが非常に込み合う時間帯に 皆がかなり我慢をしながら 50人もの列に並んでいます 子供も大人の後にいますが 勝つのは誰ですか? 子供は外で用を足すことになります こうした状況から 女性たちは 子供用トイレの設置を 提案しました 誰が そのようなことを 思い付けたでしょうか?

このように 貧しい人々自身が 選べるなら より良い選択をすることが 分かります 彼らにとって 機能するものを選びます 選択できるということ 選択の力が 重要だということです 権力を持つ者― 政治家、指導者、政府職員 建築家、プランナー、 機関投資家、研究者 そして私達みんなが 日常的に 選択を尊重する必要があります 貧しい人々のために 選択してやろうとするのではなく 彼らに選択の権利を認め 権限を与えましょう それが より良い 誰も排除しない 明日の都市を つくる方法であり 住民自身の選択で創られた 都市の姿を 生むことになるのです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

世界の約10億人が非正規のコミュニティやスラム街で暮らしており、多くの場合、清潔な水やトイレ、ちゃんとした道路といった基本的なインフラさえ欠いています。都市プランナーであるスムルティ・ジュクル・ジョハリが、これらのコミュニティにまつわる俗説を打ち崩し、政府や建築家がそういう住民を避けるのでなく協働することによって可能となるシンプルで常識ある解決策の例をお話しします。

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