オオカバマダラと地球を救う方法(11:48)

メアリー・エレン・ハンニバル(Mary Ellen Hannibal)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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こんにちは 私はよく 蝶が喋れたらいいのにと 言うのですが 近頃では 考え直しています ただでさえ騒々しい世の中で もしも 蝶たちが あちこちで お喋りしたら どうなると思いますか?

でも もし蝶に1つ質問ができるなら 蝶にまつわる説話の意味を 聞きたいものです なぜなら 明らかに世界中の文化圏で 蝶と人間の魂にまつわる― 似たような伝承や説話が 存在しているからです ある文化圏では 蝶は不慮の死や 早世した子どもの魂を運び 別の文化圏では 先祖の魂を私たちの所へ運ぶと 考えられています これはコノハチョウです 翅の表側は美しいのですが 裏側は葉っぱのようで 翅を閉じて 捕食者から逃れるために 葉っぱに擬態します 今見えたと思いきや また見えなくなり 姿を見え隠れさせます この蝶から 人間の魂に関する 発想を得たのかもしれません

ですから 蝶はあの世で 何かしらの 大きな役割を 持っているのかもしれません でも 蝶たちは この世では 非常に深刻な問題に直面しています

こちらの画像は蛾です 蛾と蝶は同種ですが 通常 蛾は夜行性です この蛾の亜種名はpraedictaですが 存在を ダーウィンが予想 (predict) したからです

今日 全世界で 実に60種以上の蝶が 絶滅危惧種とされています それ以上に懸念されるのは 昆虫の数が 減少の一途を辿っていることです 過去50年のうちに 昆虫の生息総数の50パーセント近くが 絶滅しました 大惨事です 気候変動よりも深刻かつ急速に 影響を及ぼしかねません 私たちが依存する生態系で 蝶が果たす役割は大きくなくても 私たちが依存する他の生物に 影響を与えますし これは どの昆虫にも同じことが言えます 昆虫の生活は 生命維持システムの 一番の根幹部分にあります 私たちは 昆虫を失うことはできません 生物多様性は 世界のあちこちで減少しています 生息地の喪失、殺虫剤、除草剤 気候変動による影響などが要因です 生息地の喪失は 非常に深刻な問題で だからこそ 私たちには より適切で慎重な開発が 求められるのです

最悪の時代と言えます 私たちは 自身が抱える問題で手一杯ですから 同時に 最良の時代でもあります すばらしい面もあるからです ちょうど必要なものがあり 自然を守る土台となる環境が ちょうどあるからです それが「市民科学」です

一般的には 博士号を持たない者による 科学研究への貢献のことを指します コミュニティ科学とも呼ばれますが これは市民科学における 公共の目的を意図していて 一緒に共有地のために行動することです アマチュアによる科学です 今日では 膨大な計算能力、統計的分析 スマホにより質が向上していますが 市民科学は 人々が常に実践してきた 昔ながらの手法です アマチュアによる科学です 専門分野としての科学は アマチュア科学に起源があります

チャールズ・ダーウィンは 市民科学者でした 持っていた学位は学士号までで 独学で知識を得ました ある人がダーウィンに アングレクム・ セスキペダレを見せました 花びらに 約30cmの距があり その奥に花の蜜があります その人は ダーウィンに花を見せて こう言いました 「これは 進化が自然に 生じないことを証明している この花が証明するのは 神だけが この非常に奇異で 複雑な外見の生物を 創造できるという事である なぜなら この花の送粉者になりうる 昆虫が存在しないからだ 神が受粉させているのに違いない」 すると ダーウィンは言いました 「いや この花に送粉するための 長い吻を持つ昆虫が どこかにいるはずだ」 ダーウィンは正しかったのです

これはオオカバマダラの飛来分布図です オオカバマダラの話は 前述した蛾の話とは異なりますが ダーウィンの基本的な考え方を 反映しています この考え方は 共進化と呼ばれ 自然の機能の中心に 位置づけられるもので 今日 自然界に起きている問題の 中心でもあります つまり 蛾の吻の長さが 時を経て伸びるにつれ 花の距の長さも伸びていったのです 数百万年の時間をかけ この植物と蛾は お互いに生存できる確率を 高め合うような関係を築きました オオカバマダラには また別の形の 共進化関係があり 今日 それはこの蝶に起こっている 問題の中心なのです

お見せしているのは オオカバマダラの飛来地分布図です この蝶には驚くべき習性があり 1年間かけて 北米全体を渡りますが 4〜5世代かけて移動していくのです 第1世代の蝶の寿命は数週間です 交尾をし 産卵した後息絶えます 次の世代が蝶になると 旅を引き継いでいきます どう旅をするかは不明です どの世代よりも寿命が長い第5世代は 方向転換し メキシコとカリフォルニアで 越冬するのですが そこに着く頃には 第1世代誕生の地に向かい 移動を始めます けれど 第5世代も 第4世代も かの地に行ったことはありません どうやってたどり着くかは不明です

オオカバマダラが渡りをすることが 分かっているのは— この大移動については まだ 未知の部分が多いですが— 市民科学のお陰なのです つまり 過去数十年に渡り 人々が オオカバマダラを目撃した 場所と日時を記録し Journey Northのようなプラットホームに 観測結果を提供してきました これは Journey Northに送られた 蝶の観測結果の分布図です よく見ると 点が色分けされ 観測時期を示しているのが わかるでしょう 大量のデータが Journey Northなどに送られ それを元に オオカバマダラが 1年のこの時期に どこに向かうのかを 地図にします また市民科学により オオカバマダラの数が 下降の一途を辿っているのがわかりました 80年代 ここカリフォルニアで 冬を越す蝶の数は 実に400万羽を数えましたが 昨年は3万羽でした

(聴衆 息をのむ)

80年代以降 400万から3万にまで落ち込んだのです 東海岸では状況は 多少はましであるものの それでも数は減少しています

ではこれに対して 何ができるでしょう? 誰に言われたわけでもなく 自然発生的に 北米大陸の人々がオオカバマダラの 保護活動をしています

問題の核心は トウワタです これも共進化関係の話ですが トウワタは有毒です 毒を持つことで 他の昆虫から 食べられないよう進化しましたが オオカバマダラは トウワタに対して 異なる関係 異なる戦略を構築しました オオカバマダラは 毒に耐性を持つだけでなく 有毒物質を体内に蓄えるので 捕食者に対し毒を持つのです オオカバマダラが産卵をするのも 孵化した幼虫の餌も トウワタのみです オオカバマダラが種として成り立つには トウワタの毒が必要だからです

そのため トウワタが 生息地破壊や殺虫剤 除草剤の使用や気候変動の影響で 失われた場所に 新たに植える活動が 全米で行われています 蝶や送粉者となる昆虫の生息地を 窓台に作ることもできます お住まいの地元の園芸店で 在来植物を見つければ 美しい生物が あなたの元に やって来るでしょう

市民科学は オオカバマダラの保護以外にも 様々なことが出来ます 大規模に展開できるので 自然保護に必要な人数を賄えるほどです 一例として シティネイチャーチャレンジについて お話しします シティネイチャーチャレンジとは カリフォルニア科学アカデミーと ロサンゼルス自然史博物館との 共同プロジェクトです 4年間にわたり このプロジェクトでは 世界中の人々に 居住地の生物多様性を調べる活動に 参加するよう呼びかけてきました この4月には 世界中の参加者による 生物多様性の観察データが 100万件に達しました サンフランシスコには残念ですが 今年の勝者は南アフリカでした

(笑)

あちらの方が より生物多様性が豊かなのです 居住する地域の自然資源について 理解できてくると なかなか興味深いものがあります 観察していくと 生物多様性の 豊かな場所に住みたいと思うからです ところで 市民科学は 社会正義や環境正義の目標達成を助ける 優れたツールです データを揃え 写真を見せ 原因を指摘し ピンポイント攻撃をすれば どんな問題でもサポートできます

だから このプロジェクトは 国連から表彰されるべきと思います かつて世界規模で 自然のために このような協調がなされたでしょうか? これは 素晴らしく 優れた 実に巧妙な草の根の活動です その上 蝶やその他生物に関する 興味深い情報が こういう生物調査を通じ得られます

このプロジェクトでは 基本的に iNaturalistというツールを使いますが これは市民科学への ゲートウェイドラッグのようなものです(笑) パソコンでサイトに登録してから スマホにアプリを ダウンロードするのを お勧めします iNaturalistで 野鳥、昆虫 蛇などの写真を撮り AI機能と専門審査システムで 観察対象の検証ができます アプリは 観察対象について 観察日時、緯度と経度といった 地理位置情報を提供してくれます このデータは 市民科学における 科学の部分なのです 次にデータが共有されますが この共有することこそが 市民科学の本質なのです データを共有することで 今 起こっている実態を 俯瞰的に見ることができます オオカバマダラの大移動の実態を 知ることができたのも 数十年かけて集めたデータが 共有されたお陰なのです 自然の機能の仕方の 核心部分を見ることができたのは ひとえに市民科学のお陰です

これはクセルケスカバイロシジミです ゴールデンゲートパークの生息地が 失われた時に絶滅しました 蟻と共進化関係にありましたが それはまた別の機会に

(笑)

最後に皆さんにお願いがあります どんな形ででも良いので どうぞ市民科学に参加してください 素晴らしくポジティブな経験が得られます 市民科学が真に機能するには 大勢の人の参加が必要です

また 付け加えておきたいのは 蝶は多くの課題を 抱えているということです 人間の魂を運ぶ暇などありません

(笑)

でも まだ知らない事が 沢山ありますよね また 蝶の話はどうですか? そこから何が学べますか? 私たち人間の魂は 蝶と共進化を遂げたのかもしれません 紛れもなく 私たちは現状解っているより  蝶とずっと深く関わりあっているのです 私たちが蝶を守らなければ 蝶の秘密を解明できる日は 永遠に訪れないでしょう ですから 今こそ一緒に 自然を守ってください

ありがとうございました

(拍手)

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このプレゼンテーションについて

世界中でオオカバマダラの生息数は激減しており、この迫り来る絶滅は人類の生活をも危機に晒しています。けれども、作家のメアリー・エレン・ハンニバルによると、市民科学者がこの昆虫を保護する一助になるのです。この草の根活動に参加するボランティアたちが、減少の一途を辿るオオカバマダラの観測と保護にどのように大きな役割を果たしてきたのか、そして皆さんが自然保護を手伝うための入会方法などを学んでください。(良い仲間がいますよ。チャールズ・ダーウィンは市民科学者だったのです!)

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