描くことで人はどれほど自由になれるのか(7:39)

シャンテル・マーティン(Shantell Martin)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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皆さんこんにちは 私は家にこもっています きっと多くの皆さんもそうでしょう そんな中 みんな 気付き始めたのは 自分自身や 他の人たちや 自分のいる空間との関係が 私たちのアイデンティティーや 目的意識に 深く影響を与えうる ということです 色々なことが 劇的に変化しました かつてなかったような 距離の感覚があります

でも どうでしょう 心から手への道を 見つけることで 再び繋がれるんだと 言ったら? その考えを受け入れて 実践することを通して 皆さんが心の微調整をする お手伝いをしましょう この新たな現実を楽しみつつ 情熱と想像力と希望を持って 探索できるようになります それには ただのペンが一本 あればいいのです それを分かっていただくために 私の生い立ちからお話ししましょう

ロンドン南東部の 公営住宅団地で育った私は よそ者でした 私は6人きょうだいの一番上で 他はみんな イギリス人らしい見た目で 金髪に青い目の 可愛らしい子供でした その中にいたのが 褐色の肌でアフロヘアの ナイジェリア人ハーフの私でした 見た目も違えば 感じ方も違い 色々な面で まわりのあらゆる人とも物とも 違った考え方をするようになったら どうなるでしょう? 人種差別的・同性愛者差別的な 暗く孤独な場所から 抜け出す方法を どう見つけられるでしょう?

そこでペンです 私は絵を描くようになりました ご覧の通り ここにペンを持っていますが それは 行き先を知っています 私は それを追いかける術を しっかり身に付けました 私がまず始めにしたのは ペンが描く線を追い 私に「お前にはできない」 としか言わない社会から 自分を引っ張り出す ということです 私はペンに信頼を寄せ それは私を セントラル・ セント・マーチンズという 由緒ある美術学校に導いてくれ そこを主席で卒業しました でもやがて気づいたのは ロンドンには私の居場所はないことでした 信じられないかもしれませんが 英国というのは いまだ階級制度に根差し 機能している国だからです 私みたいに労働階級出身で同性愛者の 若い黒人女性アーティストには チャンスがなかったんです

そのため ロンドンを離れ 日本に居を移しました そこでは 誰からも出身について 尋ねられることはありませんでした 私はただの「ガイジン」の1人でした それが「よそ者」を意味する 言葉なのは皮肉ですが ものづくりと工芸を重んじ 人々が代々 技術を磨いてきた そんな日本文化の中に 私は身を投じました 日本文化は 時間と空間の使い方を極めており アーティストたちは 本当に自由に創作ができます そこで私は怒りを覚えることのない場所を 見出したのです 東京では 不当な扱いは 何ら受けませんでした 私は もはや怒りや心の痛みで 創作はできななくなりました 勇気を出して 違う観点から 創作する必要がありました そうして探し当てた 素晴らしい手段は 紙の上の線を超えたものでした 私が見つけたのは 頭と心を繋げ 手と まわりの全てを 繋ぐものでした

世の中を見る目が 一新されました 片隅にあった繋がりや 存在さえ知らなかった問題の 解決法を発見しました 世界の姿と余白がすべて 見えるようになった感じです それを見るだけで 怖い気持ちは もうなくなりました ペンが懐中電灯になったみたいで まだ未知のものはあっても 怖いとは感じなくなりました

日本に5年間住み 集中的に作品作りに取り組んだ後 新たな挑戦を求める 気持ちになりました 目指したのはニューヨーク アーティストなら一度は 住みたい町ですよね? まったく見えない存在に なったように感じられる 世界最高の街に 移り住んだのです 自分に正面から問いかけはじめたのは この頃でした 「自分は何者なのか?」と 朝起きて 1日をはじめるに際して 瞑想をしながら問いかけました その問いかけを胸に 絵を描き続けました 線を追いかけました 線が導くに任せました 誰にでも手に入るペンを 手に取るというプロセス あらゆる思い 恐怖 不安から 心を解き放つのを自分に許すこと 自分が 自分らしくあることを妨げる あらゆるものから逃れること それが自由になるための 私なりのやり方となりました

ニューヨークに着いた時 アート界のルールには 囚われたくないと思いました よそ者として振る舞うことを続け ひたすら絵を描き続けました 好奇心が私のペンのインクとなり 私は より深いところへと 飛び込み続けました やがて 力強く自信に満ちた 自分の空間を作りはじめました 私だけの空間です 最初それは自分の部屋でしたが それが『ニューヨークタイムズ』 で取り上げられて 突如として 私の作り上げた世界が 世間に注目されるようになりました それ以来 最高のアーティストや 組織や場所と コラボレーションするようになり タイムズスクエアの 大型ビジョンを手始めに ニューヨーク・シティ・バレエ団の アーティストシリーズでは 沢山のダンサーたちに インタビューをし 彼らから聞いた言葉や話を元に 30を超える 線描画や作品を作り それが遊歩道の壁面や 窓や床を満たしました

私は長いこと 瞑想と詩のための空間を 作りたいと思っていました そして2019年 まさにそれを実現できる 機会を得ました ガバナーズ島トラストの依頼で 絶好のキャンバスが与えられました かつて軍隊の教会だった建物です 『メイ・ルーム(願いの部屋)』を ご紹介します 建物の外壁の線描画は 島の歴史にヒントを得ており 中に入って靴を脱いで上がると そこには迷路が描かれていて 自分自身へと導かれます 穏やかな気持ちへと誘われ そうすると 壁に描かれた 言葉が見えてくるでしょう 「思慮深くなれますように」 「夜 安らかに眠れますように」 「木々を守れますように」 沢山の「〜できますように」 と願う言葉です これらの言葉は 見る人から浮かび上がってくるようにも 見る人へと降り注ぐようにも 感じられます

私は 自分の絵の線が 言葉のようになり 命のように 展開するにまかせます そして 沈黙が訪れた時には 会話することにより繋がりを探し 質問することにより いづらさを押しのけてきました 絵を描くことにより 自分だけの ルールを作ることを学びました 目を開いて そこにあるものだけでなく ありうるものをも 見ることを学びました 制度が破綻している場合は 一握りの選ばれた人たちだけでなく みんなのためになり 機能する制度を 新たに作ることができます

絵を描くことで 世の中に しっかり関与していく術を学びました そして 線の言葉から 気づくようになったのは 大切なのは 見られることではなく 私たちが他の人に与える 見るという贈り物であり 真の自由というのは 見る力なのだということです 文字通りにではありません 視覚は 人がものを見る 手段の一つにすぎません 私が言いたいのは 世界そのものを経験するということで それは 昨今のような 困難な状況にあってこそ 一層大切なのかもしれません

シャンテル・マーティンでした 私は絵を描きます 皆さんも ペンを手に取って どこにたどり着けるか 試してみてください

(音楽)

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このプレゼンテーションについて

「自分は何者か?」この疑問に答えるべく、アーティストのシャンテル・マーティンはペンが導く先へと赴きます。この素晴らしく視覚に訴えるトークでは、タイムズスクエアの大型ビジョンから、ニューヨーク・シティ・バレエ団の踊り子たちの体まで、あらゆるものを横断して描くマーティン特有のフリースタイルの線描画を取り上げながら、彼女がアートを通じ、どのように自由や新たなものの見方を発見したのかについて語っていきます。絵を描くことで、どのように手と心を繋げ、世界との繋がりを深められるのか見てみましょう。

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