不安症を乗り越えられる子供の育て方(15:10)

アン・マリー・アルバーノ(Anne Marie Albano)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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子供の頃 怖いものが色々ありました 雷の光や虫が怖かったですし 大きい音や着ぐるみのキャラクターも それに深刻な恐怖症が2つありました 医者と注射に対してです かかりつけの医師から逃れようと 苦戦しているうちに 体を使って攻撃するようになり 医師は私にショックを与えるために 平手打ちをしました 私は6歳でした 当時の私は 闘争・逃走反応しか知らず 簡単な予防接種で体を押さえるにも 大人3~4人が必要でした 両親を含めてです

その後 私が高校に入ると同時に うちの家族はニューヨークから フロリダに引っ越しました 教会が母体の学校で転入生となり 知り合いもいなくて うまく馴染めるか心配しながら 登校した初日 先生が出席を取る際に 「アン・マリー・アルバーノ」と呼びました 私が(ニューヨークのスタテン島訛りで) 「はい」と答えると 先生は笑って「まあ かわいい 立ち上がって 『い・ぬ』と言ってみて」と 言いました 私は(スタテン島訛りで) 「犬?」と答えました 教室中が爆笑し 先生も笑っていました それだけで終わりませんでした 先生は私を笑い者にする言葉を 他にもたくさん知っていたのです

私は泣きながら家に帰り 取り乱して 「ニューヨークに帰らせて」と懇願しました 修道院でもいいからと 何が何でも もうあの学校には 戻りたくなかったのです

両親は私の願いを聞き入れ 「ニューヨークのモンシニョール(聖職者)と 相談してみるけれど スタテン島で高校1年生に編入する時 出席日数が足りるよう 学校には休まず行きなさい」と言いました すべてはメールや携帯電話が 普及する前の出来事ですから そこから数週間にわたり おそらく手紙のやり取りが マンハッタンの大司教区と マイアミと バチカンの間で行われたんでしょう その間 私は毎日泣きながら登校し 泣きながら家に帰り 枢機卿や司教から届いたという 最新メッセージで言い含められていました 「こっちに空きが出るまで通学を続けて」 というものです

当時の私 純真でしょ?

(笑)

数週間後のある日 スクールバスを待っていると デビーという女の子に出会いました 彼女が自分の友達に紹介してくれて その子たちとも友達になりました こうしてローマ教皇は 難を逃れたわけですね

(笑)

私の心は落ち着き 馴染めるようになっていきました

私が過去30年で行なった 子供の不安についての研究は 私自身の自己理解を求める思いに 端を発した部分があります 実際 たくさん解明できました 若者の精神疾患の中でも一番多く 見られるのが不安症です こうした精神疾患は4歳までという 幼いうちに 症状が出始め 思春期までには12人に1人が 家庭や学校、仲間との関係において 役割を果たせなくなるほど 重度の障害を抱えてしまいます この子供たちは ひどく怯えていて 心配事が多く 実際 不安のせいで 身体に不調をきたしています 彼らには学校で集中することや リラックスして楽しむこと 友達を作ることなど 子供ならやって当然の事が困難なのです 不安は子供にとって苦痛をもたらし 親は我が子の苦悩を直に しょっちゅう目の当たりにします

仕事を通じて 不安を持つ子供たちに会ううちに 私は自分の父と母に尋ねたいことが いくつか出てきました 「私が注射を怖がっていると知りながら どうして私の体を押さえて 無理やり打たせたの? それから なぜ学校に行かせるために デマカセなんか言ったの? また皆にバカにされることが すごく心配だったのに」 答えはこうでした 「いつも胸がつぶれそうだったけど 避けては通れないことだというのも わかっていたの あなたが怒るというリスクを伴ったとしても あなたが時間をかけて経験を積むことで あの状況に慣れてくれるまで待っていたの 予防接種は受けなければいけなかったし 登校も しなきゃいけなかった」

両親は知る由もなかったのですが 予防接種で彼らが私にしてくれたのは 麻疹に対してだけではなく 生涯にわたる不安症に対しての 予防でもあったのです 幼児期に感じる過度の不安は 強力な細菌のようなもので 感染力が強く どんどん増殖していきます これは私が診る子供たちもそうで 複数の不安症状を 同時に持っていることが多いです 例えば特定の恐怖症に 分離不安症と社交不安症を あわせて患っています 治療せずに放っておくと 幼少期の不安は思春期までに うつ病につながることがあります これらは薬物乱用や自殺念慮に 関係することもあります

私の両親は心理療法士ではなかったですし 心理学者の知り合いもいませんでした 両親が知っていたのは ああいう状況が 私には不快ではあるが 有害ではないということだけです 私がああいう状況を避けて逃げるのを もし両親が許していたら そして時々出くわす苦痛に 耐える方法を学べていなかったら 私の過度の不安感はもっと長期間 私に害をもたらしていたでしょう 要するに うちの親が行なったのは 自家製バージョンの 暴露療法だったのです 暴露療法は不安に対する認知行動療法の 鍵となる中心的な治療法です

私は仲間と 7歳から17歳までの子供の 不安の治療法について 最大規模のランダム化比較試験を行いました 研究の結果 子供向けの認知行動療法の暴露療法や 選択的セロトニン再取り込み阻害薬による 投薬治療が 60%の子供に効果的だとわかりました 2つの治療法を併用すると 80%の子供が3ヶ月以内に良くなります すべて朗報です そしてもし投薬治療を続ければ もしくは研究に参加していた期間と同様 毎月 暴露療法を続ければ 1年以上 良い状態を保つ可能性があります しかし この治療法の研究が終わった後 参加者の追跡調査を行なったところ 時間の経過とともに再発する子供が 多いことがわかりました また科学的根拠に基づく 最良の治療法であるにも関わらず 不安症の子供のうち約40%に 調査期間中ずっと症状が見られることも わかりました

私たちは この結果について 考察を重ねました 何が足りないのでしょうか 私たちが力を入れていたのは 子供だけに焦点を当てた介入だったけれど ひょっとしたら ご両親にも呼びかけて 治療に参加してもらうことが 大切なのではないか という仮説を立てました

私自身の研究所や 世界中の仲間たちが行なった研究は 一貫した傾向を示しています それは善意のある親たちが うっかり不安の連鎖に 引き込まれてしまうことです 子供に対し 親のほうが折れて 融通をきかせ過ぎてしまい 子供を困難の伴う状況から 逃れさせてしまいます 考えてみてください あなたの子供が涙を流しながら 家に帰ってきました その子は5歳か6歳 「学校でみんなに嫌われてるの あの子たちは意地悪 誰も遊んでくれないの」 我が子がこんなに取り乱していたら どう感じますか? 何をしますか? 親としての自然本能的な反応は 子を慰め 落ち着かせ その子を守り 状況を改善することです 先生にも関わってもらうよう呼びかけたり 親同士で子供たちの遊びの約束をするのは 5歳だったらそれで良いかもしれないです でも もしあなたの子供が毎日毎日 涙を流しながら家に帰ってきたらどうしますか 8歳、10歳、14歳になっても 子供のために状況を改善してあげますか 子供というのは成長する中で 例外なく困難な状況に遭遇するものです 例えば お泊まり会や発表の場 難しい試験に出くわしたり スポーツチームへの加入や 学芸会の役に挑戦したり 友達との いさかいなど こうした場面はすべてリスクを伴います 良い結果を残せないリスクに 望みどおりに行かないリスク ミスを犯すかもしれないリスクや 恥をかくリスクです

不安症を持ち リスクを取らず 物事に深く関わろうとしない子供は そういう場面をうまく対処する方法を 学ぶことができません そうでしょう? なぜならスキルというのは 時間をかけて 子供たちが日常の中で遭遇する場面に 何度も身をさらしながら育むものだからです 例えば「セルフ・スージング」という 気が立った時に自分で自分を 落ち着かせるスキルや 対人トラブルの解決能力を含む 「問題解決スキル」 そして「満足遅延耐性」 これは 結果がわかるまで時間がかかり 待たされるとしても 努力を続けられる能力のことです これらを含む多くのスキルの発達は リスクを取り 物事に深く関わるタイプの子供に見られます そうして「自己効力感」が形成されますが これは簡単に言うと 困難な状況でも 自分は乗り越えられると信じる力です

不安症を持つ子供がこうした状況で 逃げたり避けたりして 他者に代わりに対応してもらっていると 時間が経つにつれて ますます不安が募り 同時に自分に対する自信が薄れていきます 不安に苦しんでいない子供たちとは対照的に 自分にはこうした状況を自分で切り抜ける 能力がないと信じてしまうようになります このような子供は 親など自分以外の人に 対応してもらわなければと考えます

さて 親の本能として 子供を慰め 守り 安心させる事は自然ですが 1930年に精神科医の アルフレッド・アドラーは すでに親たちに対して こう忠告しています 「子供をいくらでも愛しても良いが その子を依存させてはならない」 彼が親たちに助言したのは 子供たちに最初から自分の足で 立つ練習をさせることです またアドラーは もし子供が 「自分の親は自分の言いなりになる以外 することがない」という印象を受けると 愛情に対して誤ったイメージを持ってしまう と指摘しました

現代の不安を持つ子供たちは 絶えず親に電話をしたり 昼夜を問わずメッセージで 助けを求めたりしています もし不安症の子供が幼い頃に 正しい対処メカニズムを学ばなかったら 大人になった彼らは どうなるのでしょう

私は不安症の若者を子に持つ 親たちのグループを運営しています 子供たちは18歳から28歳です ほとんどの子たちが実家で 親に頼って暮らしています その多くは学校や大学に 行った経験があるでしょう 何人かは卒業もしています ほとんど全員が職に就いておらず 大したこともせず ただ家で過ごしています 誰とも有意義な関係を持たず 親に完全に依存していて 自分のために 何もかも やってもらっています 親たちは未だに子供の病院の予約を とってあげます 子供の幼なじみに頼み込んで 家へ遊びに来てもらいます 子供のために洗濯もするし ご飯も作ります そして親たちは我が子と 激しく衝突しています なぜなら不安感だけが勢いよく成長し 子供自身は成長できていないからです こうした親たちは莫大な罪悪感を抱き 時に憤りを感じ そしてまた罪悪感を増幅させます

それでは朗報に移りましょう もし親なり 子供の人生において重要な人物なりが 手を貸し その子が 自分の恐怖心に立ち向かえるよう支援して 問題の解決法を学ばせることができれば その子は自分の不安を乗り越える 内的な対処メカニズムを 自ら育む可能性が高まります 私たちは現在 親御さんを対象に 一瞬一瞬に気を配ることを教え 子供の不安感に対する自分の反応について 考えるよう指導しています こうお願いしています 「状況を見て自問してください 目の前にあるのは どんな状況なのか 子供の身をどれほど脅かすのか そして最終的に この状況から 子供に何を学んでほしいか」

もちろん親たちには 耳を澄ませて聞くようにしてほしいです もし子供が深刻ないじめや 危ない目に遭っているのなら 親に介入してほしいからです 絶対にです けれど典型的な日常の中で 不安を招くような状況では 親は子供にとって一番の助けになり得ます ただし親が落ち着いて 淡々としつつも温かい態度をとり 子供の気持ちの妥当性を認めながら 一方で子供が その状況をどう対処するか 自分で計画できるよう手助けし 支援すればの話です そして ここが重要なのですが 実際に子供自身にその状況の 対応をさせることです

もちろん 子供が苦しむ姿を見るのは 心が痛みます 私の両親が後に打ち明けてくれたとおりです 子供が苦しんでいるのを目撃し 自分がサッと舞い降りて 我が子を痛みから救い出せそうなら それに越したことはないですよね そうしてあげたいのです しかし若くても歳をとっていても 過剰な不安によって私たちは リスクや苦痛を過大に見積もってしまい その一方で自分の対処能力を 過小に見積もってしまうのです 自分が恐れる対象を何度も経験すると 不安が小さくなると同時に 精神力と立ち直る力が養われることが わかっています

私の両親は心得ていたんでしょう こんにちの過剰に不安な若者たちが 過保護な子育てで 良くなることはありません 落ち着きや自信はただの感情ではなく 親も子供も学ぶことのできる 対処能力なのです

ありがとうございました

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このプレゼンテーションについて

成長するということは新たな困難に立ち向かうということです。しかし一部の子供たちは先の見えない状況に置かれることが不安につながり、親はこれをなだめようとします。心理学者のアン・マリー・アルバーノが、子供の問題をいつも慌てて解決しようとする育児が、一生続く依存と怒りのサイクルを生んでしまうメカニズムを解説し、健全な範囲のリスクに晒されることによって子供が揺るぎない自信を培う理由を紹介します。

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