環境保護にサプライチェーン情報の公開が役立つ理由(13:20)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私たちは 生活のほぼあらゆる面で 完全な情報を 瞬時に得ることができます 携帯電話があれば 自分の貯蓄・運用状況を 全て確認できます また 自分の正確な現在地を 地図に表示して 目的地までの最適経路を 知ることもできます ボタンをクリックするだけで その一方で 小売り食品となると 情報も透明性もありません
近所にあるスーパーの魚売り場に行けば 色々な種類の魚から 好きなものを 選べると思います ですが 誰がどこで捕った魚なのかは 売り場の人でも 答えられないでしょう 漁をしたのは 持続可能な漁業の海域だったのか どのように輸送されたかも不明です これは 私たちが買うほぼ全ての 商品について言えることです 缶詰のスープも 精肉も Tシャツも
今 私たち人間は 生き延びるために必要な かけがえのない地球を破壊しつつあります 今日 直面している 恐ろしい問題は 気候変動にせよ サプライチェーンに 組み込まれた 現代の奴隷制度にせよ つまるところは 選択の結果なのです あの方法じゃなくてこの方法で 生産しようと 決めているのは人間です そうして 私たち消費者が 地球と人間自身を 害するような 決定を下す羽目に 陥ったんです 間違った製品を選ぶことによって ですが ここに来ている皆さんは もちろんのこと 率直に言って この地球上の誰も 地球や人間を害する商品を買いたいと 考えるとは とても信じられません 選択肢さえあれば
選択肢という言葉は 含みのある表現です 選択肢は代替案があるということ その代替案にお金を出せるということを 意味します また選択肢は 選ぶための情報が 十分にあるということでもあります ところが 今はこの情報が 全くありません あるいは 少なくとも非常に 取得しにくい状況にあります ですが この状況が 変わろうとしています テクノロジーを使えば この情報の問題を 解決できるからです このために必要となるテクノロジーの多くは 近年 どんどん良くなり 費用も下がっています 大規模な適用ができる状態です
そこで この2年間 私のチームは 世界最大の自然保護団体であるWWFと 一緒に OpenSC という会社を設立しました SC はサプライチェーンの頭文字です このテクノロジーを使うことで サプライチェーンにおいて 透明性と トレーサビリティが促進され 私たちの買い物の仕方や生産の仕方の 大革命につながります これからご紹介する内容は いくぶんか SF のように聞こえると思いますが すでに実現されています 説明しましょう
この情報の問題を解決するためには 3つのことをする必要があります それが 検証、追跡、公開です 環境破壊なく倫理的に生産されたという 表示を データに基づいて自動的に検証し 環境破壊なく倫理的に生産されたという表示を それぞれデータに基づいて自動的に検証し サプライチェーン全体にわたる その商品の動きを追跡します 最後に この情報を公開することで 消費者に本当の意味での選択肢を与えて 自分の価値観に沿った消費行動を 選べるようにします 実際の食品とサプライチェーンを例にして どのように実現しているかを 説明しましょう マジェランアイナメ または― アメリカでチリアン・シーバスとも 呼ばれる魚です
まず最初は「検証」です それが どのように生産されたかを 検証します 「大丈夫 ちゃんとやってる 正しいことを全部やっている 信じて」 そんな言葉だけでは不十分です 一品一品について 生産方法を示す 裏付けを用意するのです 環境に優しいとか 倫理的に生産された という 個別の証拠を提示するのです たとえば 魚の場合であれば 魚が十分にいる漁場での 持続可能な範囲の漁獲だったか? そこは海洋保護区ではなかったか? 具体的には 船のGPSデータを ほぼリアルタイムで取得します これにより その漁船の現在地 そして 進行方向とスピードがわかります そのうえで これを水深など 他の種類のデータと関連付けます こうした全ての情報を統合すれば 当社の機械学習アルゴリズムで 自動的に その漁船が 指定の漁場内だけで 漁をしたかどうかを検証できます
また センサー価格が下がると 多種多様な情報を 取得できるようになります つまり 取得できるデータが増え これが データサイエンスの進歩と相まって 環境に優しく倫理的に生産されたことを 個別に 継続的かつ自動的にリアルタイムで 検証できるようになりました これで この情報革命の基盤が しっかりと整ったわけです
次は「追跡」です 個々の生産品を追跡して ある食品について検証済みの表示が 消費者の目の前にある食品に 対応した表示だと 分かるようにします ここまでのトレーサビリティーがなければ 最初に検証した内容も 誰かが どこかで ある時したという 事実でしかありません 持続可能な方法で漁をしたことや 従業員に劣悪な環境を強いて Tシャツを製造していない 不必要に農薬を使わずに 野菜を育てた という事実だけです 最初から一点一点を 識別できるようにして サプライチェーン全体を通して 追跡しなければ そういうことを表示したり 正しく生産することの価値を 目の前の現物に付加することはできません
先ほど 安価なセンサーの話をしました それ以外にも 色々な技術的進歩があります そのおかげで 様々なアイデアが これまで以上に実現しやすくなっています 例えば タグの価格が 下がっています 生産物は名前やシリアル番号などで 識別しますが タグがパスポートの役目を果たします
このビデオは マジェランアイナメ漁の様子です 延縄(はえなわ)漁と呼ばれる方法で 魚は釣り針で釣り上げられます 船まで引き上げると すぐに魚を締めて 身の部分に 小さなタグを埋め込みます このタグには 固有のシリアル番号を持つ RFIDチップが入っています このタグは サプライチェーンの 端から端まで 魚について回ります 港、トラック、加工工場のどこででも 非常に簡単に魚の所在を確認できます その一方で RFIDタグは 消費者が読めるものではありません そこで その魚を切り身にして 包装するときに RFIDタグを読み取ってから 魚から取り外します そのうえで 魚の包装に 固有のQRコードを貼り付けます このQRコードは 一番最初にこの魚について 検証した情報とリンクされています
扱う食品の状態に応じて QRコード、バーコード、RFIDタグや その他のタグ技術を使うことができます また タグに取って代わる画期的な技術も 今まさに大規模展開の寸前です また タグに取って代わる画期的な技術も 今まさに大規模展開の寸前です 例えば 食品中の微量元素を分析することで 産地を非常に正確に知ることができます ブロックチェーンもあります 分散型の技術で この革命の触媒役になるかもしれません 情報を提供して 消費者に対して その情報を根拠に消費行動を変えるようー 働きかける時につきものの 信頼性の問題の軽減に役立つからです そこで我々はブロックチェーン技術も 事業に価値を加えるところで使っています その一方で 重要なことですが ブロックチェーン技術には まだ制約が残されており たとえば規模拡大も問題の1つです それが事業の妨げにならないよう 注意しています
そして次が第3のポイント「公開」です 検証して追跡した情報を どう公開するか つまり どこで生産されて どのように加工され どう流通してきたのか という 情報を公開する方法は 商品の種類ごとに 大きく変わってきます また どこで買うかによっても異なります 人の行動は状況によって変わるからです スーパーで買い物する時は 疲れていて 時間もあまりありません 食事中は デートの相手に見とれてしまって 集中できないかもしれません 逆に オンラインで高額の買い物をするなら 厳しい目で詳しく調べるでしょう ですので 私たちは 魚専門店の冷凍庫にある魚を選ぶときの 顧客体験を開発しました これを使えば 魚そのものと 流通過程の情報の全てが分かります 一方で レストランと協力して これとは別の顧客体験も開発しました ここでは 食事という状況に合わせて 魚と流通の主要な情報を要約します あまりデート相手を困らせないように
これで 端から端まで見ました 魚が 持続可能な漁場で 捕まえられたことを検証しました 次に その魚を サプライチェーン全体に わたって追跡して 魚を識別し 紐付けられた情報を 追えるようにしました そしてさらに 消費者にその情報を公開して 選択肢を与えることで 消費者がそれぞれの価値観に沿って 判断できるようにしました
今ご紹介した魚の事例では この技術が すでに大々的に展開されています 今シーズン マジェランアイナメの 大手である オーストラル社では 今シーズン マジェランアイナメの 大手である オーストラル社では 全ての漁船で 捕獲した全ての魚にタグを付けて 「Glacier 51」という特級ブランドで 販売しています この魚はすでに市場で買えます 今日ご紹介した情報だけでなく さらにさまざまなデータが 販売される1尾またはひと切れごとに 付けられています
これは魚やシーフードに 限定される話ではありません 我々はさまざまな消費財や製品と 世界のサプライチェーンを対象にしています 乳製品から果物や野菜 さらに 食べられない木材製品もあります 消費者が大きな負担を強いられるのでは? と心配するかもしれません 何かを買うときに その都度 こうした 全ての情報を見る時間はないのですから ですが その必要はありません その点についても準備しています
この先 どれを買うかの決定は ますます機械任せになるでしょう あなたのことをよく知ったアルゴリズムが 代わりに決めてくれるからです しかも 機械の方がうまくやってくれる かもしれません 最近の研究では バーチャルアシスタントを 使って買い物をした人の85%が 最初に買おうと思っていた 商品やブランドではなく 最初に買おうと思っていた 商品やブランドではなく バーチャルアシスタントのおすすめ品を 選んだことがある と認めています 「トイレットペーパーが必要」と ひとこと言えば アルゴリズムが ブランドや 好みの価格帯 あるいは リサイクル原料でもいいのか どうかを 判断します 今のところ 通常の判断材料は 過去の買い物履歴や バーチャルアシスタントへ 最大の支払いをする会社がどこかなどです ですが これに皆さんの価値観を 加えるべきでは ないでしょうか?
地球に優しいものを買いたいと思っていること 割高になってもいいのか いくらまでなら払う 用意があり払えるのかも 分かるのですから これで 簡単かつシームレスな状態のまま 細かな効果とデータを考慮に入れて 適切な商品を選ぶことができます 必ずしも自分でする必要はありません 環境に対するあなたの関心度を知っている アルゴリズムに聞けばいいのです 自分でしなければならない わけではなく アルゴリズムに聞けばいいのです アルゴリズムは 時間に追われることも 気が散ることもなく デートの相手に見とれてしまって 注意散漫になることもありません あなたが環境や人間に どの程度関心を持っているかを知っています そうした全ての情報を 代わりに見て 判断してもらえばいいのです
このような信頼と信用に足る情報と 適切な情報活用システムを使うことで 消費者は 持続可能で倫理的な方法の 生産者を支援できます 他の商品ではなく その商品を選ぶたびに 適切な行動を支援できるのです つまり善良な生産者や加工業者 小売業者が報われるのです 不適正な業者は 業務を改善するよう迫られ そうしなければ事業ができなくなります これは必要なことです この美しい地球に人類として ずっと住みたければ 本当に必要なことなのです
ありがとうございました
(拍手)
選択肢を与えられたら、地球に危害を及ぼす商品を選ぶ人は少ないでしょう。その一方で、消費者向け商品は、ほとんどの場合、どのように生産・調達されたものなのかが非常に不透明です。マーカス・ムッツは、この状況が変わろうとしている、と言います。サプライチェーンの革新を進めるムッツは、マジェランアイナメを例にとり、ブロックチェーン技術を活用しながら、海洋から食卓にのぼるまでの魚の動きを追跡する方法を説明し、消費者が信用できる商品の提供が可能であることを示します。