ニコチン依存症の過去 現在 そして未来(17:22)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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お話ししたいことがあります 最も致命的な消費者製品が どのようにこの世に 現れたのかについてです タバコのことです タバコは使用方法に従って 利用した場合に 長期利用者の半数を早死にさせる 唯一の消費者製品です しかし これは同時に 米国食品医薬品局(FDA)での 我々の研究についての話でもあります 特に その中でも 未来のタバコを生み出す研究のことです 依存を引き起こさず 依存症にならないようなタバコです
多くの人が アメリカにおいて タバコや喫煙に関する問題は 解決したと感じているのは なぜなら この40〜50年で 状況が大きく前進し 消費と流通が 目覚しく減少したからです これは事実です 喫煙率は歴史的にみて 低水準になりました 大人も若者もどちらもです そして 喫煙者を見てみても 歴史上のどの時代よりも 1日の喫煙量が かなり減ったのも事実です
しかし こう述べたらどうでしょう 主に能動喫煙と受動喫煙での タバコの煙の吸入のために いまだにアメリカでは喫煙が 完全に予防可能な病気や死の 主要因なのです これも事実です さらに実際に 命を奪われているのは 今まで思っていたより 多数に上ると述べたらどうでしょう? これも事実です タバコによって 毎年 アルコール、エイズ、自動車事故 違法ドラッグ、 殺人、 自殺の 合計死亡数より多くの命が奪われています 毎年です
2014年に アダムス博士の前任長官が 喫煙と健康に関する公衆衛生総監報告書の 50周年記念号を発行しました この報告では タバコによる 年間死者数の増加が示唆されました 喫煙関連疾患のリストが 拡大したからです 現在 控え目に推定しても 毎年48万人のアメリカ人が 喫煙によって亡くなっています これは避けようと思えば 完全に避けられる死なのです
このような統計を どう理解したらいいでしょうか 今日このカンファレンスで 耳にした話の多くは 個人的な体験であり その方独特の経験についてでした 国家レベルでは どう対応できるでしょうか 48万人の母親、父親、姉妹、兄弟 おば、おじが タバコによって毎年 不要な死を遂げているのです
このままの傾向が続いていけば 将来 何が起こると思いますか? 単純な計算をしてみましょう 50周年記念の 公衆衛生総監報告書で 5年前に恐ろしい統計が発表されてから 今世紀半ばには アメリカで回避可能な 喫煙による死亡数は 1,700万を超えるはずです 主に市販の紙巻きタバコが原因です 公衆衛生局長官は 2014年時点でアメリカに生きる 子供達のうち 560万人が タバコが原因で早死にをすると 報告をまとめました 560万人もの子供達です
ですから私達全員にとって 非常に大きな公衆衛生問題なのです 特に規制当局である 米国食品医薬品局(FDA)と タバコ製品センターには重大問題です 私達に何ができるでしょうか この 病と死へとつながる軌道を覆すには 何をしたらよいでしょうか
問題解決の助けとなる 興味深い指標があります 例えば タバコがどのように ここまで発展してきたかや タバコ業界の真の性質は どんなものなのか タバコ産業は 歴史的に規制のなかった市場で どう動いていたのか 私達の指標になるのは 以前は内部機密文書として扱われてきた タバコ産業界の資料です では タバコ産業の資料という タイムマシーンで 一緒に時をさかのぼってみましょう
1963年は 公衆衛生局長官が ニコチンとタバコには依存性があると 結論付けるに至った年の25年前です [1988年] の公衆衛生総監報告書まで これは表明されませんでした 1963年は 公衆衛生総監報告書が初めて公表された 1964年の1年前です
1964年の頃を覚えています 公衆衛生総監報告書については 覚えていませんが 1964年は覚えています 私はニューヨークのブルックリンで 暮らす子供でした 当時 アメリカの成人の ほぼ2人に1人が喫煙者でした 当時 私の両親は共に ヘビースモーカーでした 喫煙は極めて常態化していて ちなみにこれは ノースカロライナ州や バージニア州 ケンタッキー州ではなく ブルックリンの話ですが 図工の授業で両親のために 灰皿を作っていたくらいです
(笑)
私が作った灰皿は酷い出来でしたが それでも灰皿でした
(笑)
ばらになったタバコがお皿に載って 客への歓迎の挨拶として 自宅や他のお宅の玄関広間に 置かれているのも 一般的な光景でした
さて 話を1963年に戻しましょう 当時 全米3位の タバコ企業だった ブラウン&ウィリアムソンの 顧問弁護士が次のように書いています 「ニコチンには依存性がある よって ニコチン販売産業である我々は 依存性薬物販売をしている」 これは注目すべき発言です 発言そのもの同様に 言外の意味も注目できます 彼は 紙巻きたばこ産業とは言わず タバコ産業とも 言いませんでした ニコチン販売産業と 言ったのです
1972年 フィリップ・モリスは 「紙巻きタバコは商品ではなく パッケージだ 商品はニコチンである タバコの箱はその日の ニコチン摂取量の入った容器に過ぎず 紙巻きたばこは 1回あたりの服用量の ニコチンのディスペンサーである」 1回あたりのニコチン服用量については また後で話しましょう
R・J・レイノルズの 1972年の言葉です 「ある意味でタバコ産業は 製薬業界における専門的で 非常に習慣化かつ様式化した分野と 思われているのかもしれない タバコは 様々な生理的現象を生む 薬物であるニコチンを含有し それを届ける独特な製品である」
当時 それから数十年に渡って 公に タバコ産業界は依存性を完全に否定し 病気との因果関係を 完全に否定し続けました しかし彼らは 自分たちの業界の 真相を知っていました そして 時折 タバコによる健康被害が 何十年にも渡り 公になりましたが タバコ産業はどう応じたでしょうか 歴史的にみて規制のなかった市場内で どう措置を講じたのでしょうか
1930年代にさかのぼると 医師や他の医療関係者のイメージを 大きく起用した広告を作り 安全性を訴えていました これは ラッキーストライクという 1930年代に人気があった タバコの広告です
「20,679人の医師が言います 『ラッキーでは喉を痛めない』 あなたの喉を痛みと咳から守ります」
(笑)
今なら笑えますが 当時は こういう広告が 健康への安全性を 訴えるために使われていました
1950年代 60年代 70年代と進むと ここでも まだ規制のない時代に 私たちが見たのは 健康被害の懸念に応ずるための 商品改定や 製品デザインの修正でした
これは ケントの マイクロナイトフィルターです
いわゆる革新的なフィルター付きの タバコのはずでした
「喫煙の喜びを維持しつつ 今までにない健康保証付き」
この製品の喫煙者が 知らなかった事 彼らの担当医が 知らなかった事 政府が知らなかった事は このフィルターにはアスベストが 含まれていたことでした
(息をのむ) ですから喫煙者が このフィルタータバコを吸うと ガンや肺疾患 心疾患の原因と 知られている タバコの化学物質や煙を 吸い込んだうえに アスベスト繊維も 吸い込んでいたのです (息をのむ)
1960年代と70年代に 革新的と呼ばれたものに ライトタバコがありました これは当時典型的な銘柄であった TRUEという商品です 公衆衛生総監報告書が 発行され始めた後です 彼女の表情から その心配が見て取れます
「耳にした話を考えて 禁煙するか TRUEを吸うか 決めることにしました 私はTRUEに決めました」
(笑)
「低タール 低ニコチンタバコ」 「考えてみてください」と書かれており その下にごく小さい文字で タールとニコチンの含有量が 記載されています ライトタバコとは何でしょう どのように作用するのでしょう
これは「通気性フィルター」として 知られている 改良製品のイラストです 実物の拡大図ではありません これはイメージで フィルター上にレーザーで開けられた 直線状の通気孔が わかりやすく描かれています 実物のタバコを見ると 目で確認することは難しいです この製品の どの特許を見ても 唇が接するフィルターの吸い込み口から 通気孔まで12mmと示されています どう作用するのでしょうか
機械にタバコを差し込むと 機械はタバコをふかし始め タールとニコチン量を記録します 機械が吸い込むと 外気が通気孔を通して入り タバコからの煙が薄まる仕組みです したがって 機械が吸うと 確かに 通常のタバコと比較して 吸収されるタールとニコチンは 少ないのです タバコ産業が知っていたのは 人間は 機械のようには 吸わないという事です 人間はどのようにして 吸うでしょうか 指はどこを掴みますか
(ざわめき)
唇はどこを咥えますか 特許を見る限り 唇から通気孔までの距離は 12mmに設定されています 喫煙者は穴がどこにあるかも 知りませんでしたが 指と唇で 穴は 塞がれてしまいます 通気孔が塞がれば もはや ライトタバコではありません 実際のところ ライトタバコと通常タバコは 同量のニコチンを 含有していました 違いは外側だけです しかし 外側の通気孔を 塞いでしまえば ただの普通のタバコです
議会が FDAに タバコ製品の規制局を設置してから 今年6月で 10年になります この話の冒頭では タバコが いかに疾病と死の原因になっているかの 統計をお見せしました そして タバコがいかに 薬物を摂取するための 装置として機能しているかや 極めて効果的にニコチンを 摂取させるかに注目してきました じゃあ これを見てください 喫煙者がタバコをふかすと ニコチンが脳まで到達するのに 10秒もかかりません 10秒未満です 脳内には ニコチン受容体という器官があります 受容体は そこで 待機しています それらは フィリップモリス文書の 言うところの 「1回あたりの服用量の ニコチン」を待っているのです
喫煙者が屋外で 他の喫煙者と群がっているのを見ますね 寒い中 風の中 雨の中 彼らはニコチンを渇望し 禁断症状を経験しているのかもしれません 禁断症状とは これらの受容体が 化学物質を通じて身体に放つ 「ニコチンをくれ!」の声です タバコ製品はそれを10秒未満で 満たすことができるのですから 非常に効果的で 依存性が非常に強いわけです 我々は多くの依存症治療の専門家に 何年もお話を伺っています 何度も何度も聞く話があります 「患者が長年苦められたヘロインや コカインやクラックコカインを 断たせる事ができても タバコは辞めさせられない」 その理由の大部分は この10秒ルールで説明がつくのです
FDAは規制の手を広げており 製品規制のツールを利用して タバコの依存性を最小化する もしくは失くすところまで来ています 我々は取り組んでいる途中です この一つの政策により 社会全体に高い効果を及ぼすはずです 一般人口レベルでのモデリングを 1年前に実施し 『ニューイングランド・ジャーナル (NEJM)』で発表しました 世代を超えた効果を望めるので これについては後で説明しますが 今世紀末までに見込まれる成果は 次のようなものです 3,300万人以上の 常習喫煙者予備軍の人々が 救われます そうならずに済むのは 開発中のタバコでは 依存に陥らないからです これにより成人喫煙率を 1.5%未満にまで抑制できます この2つを組み合わせれば 800万以上もの 予想されうる喫煙関連死亡件数を 世代を超えた効果で 抑制することができるのです
なぜ世代を超えてなのでしょうか 子供たちです 90%の成人喫煙者が 未成年で喫煙を始めています その半数がタバコ購入可能年齢以前に すでに常習喫煙者になっていました 半数が18歳未満で 常習喫煙者になっていたのです ちょっと試しただけが 常習的な喫煙になり 中毒に至り 数十年に及ぶ喫煙が 病気発症につながります だからこそ 常習使用者の半数の 死を早めてしまう製品について 話しているのです ニコチンの消費を縮小する政策は 世代を超えて 多大な影響をもたらします 古い内部文書には 若者を指す用語がありました 「代替喫煙者たち」と呼んでいたのです 死亡したり 禁煙したりした 成人の喫煙者を 代替してくれるからです
未来の未成年者たち 特に10代の若者は リスクを伴う行動をとるもので これは止められないことです しかし 彼らが 手にすることのできるタバコが もう依存性のないものだったら どうでしょうか 公衆衛生が長期間 社会全体にしてきた投資を ついに回収できます
電子タバコについて 述べていませんでしたね ちょっと言わせてください
(笑)
未成年者の間に電子タバコが 蔓延する時代になりました 最も心配なのは 蔓延の拡大とともに 増えつつあるという 喫煙頻度です 電子タバコを吸う 未成年者が増えているだけでなく 電子タバコが登場して以来 直近30日で20日以上の頻度で喫煙する 未成年の数が最も多くなりました FDAでも できるだけのことは しています プログラムや政策を通し 無害の製品ではないことを 子供たちに警告しています 加熱式かどうかにかかわらず どんなタバコ製品も 始めたり試したりしないよう 努めています しかし 電子タバコが 適切に規制された市場で販売されれば 利点が生まれるかもしれません タバコに依存している 成人の喫煙者が 禁煙への移行手段にも使えるでしょう
ですから みなさんに このビジョンをお伝えします 想像してください 未来の未成年者が経験できるのは 依存させない 依存させておかない タバコだけだという世界を ある一つの政策のおかげです こんな世界を想像してみてください 健康志向の高い喫煙者が 特にタバコ規制法が施行されて ニコチン含有量が最小化されるか 依存性のないレベルまで下げられたら ニコチンの被害が少ない代替品に 移行できるような世界です FDAで販売承認された ガム、パッチ、ドロップなどの 禁煙補助薬から始められます
そして最後に 適正に規制された市場のある世界を 想像してみてください 電子タバコであれ いかなる最新技術であれ 製造業者や市場関係者が どの製品が市場に出回るかや どう承認されるかを決めるのではなく FDAの科学者たちが 申請書を審査し 議会に託された 履行と遵守の義務のもとで ある製品が市場に出回るべきかどうかを 承認するのです そうすれば その製品の広告と 法律の文言が 適切に公衆衛生を 守るものとなるはずだからです これら強制力のある規制のツールが もうすぐそこまで来ています この国に居座り続ける 完全に予防可能な死の主要因に 立ち向かうためのツールです もし これを実現できれば 560万人の子供たちが 早死にするという予測は 覆せるのです
ありがとうございました
(拍手)
アメリカにおける予防可能な疾病や死の主原因は喫煙です。タバコは毎年、アルコール、エイズ、自動車事故、違法ドラッグ、殺人、自殺、これらの死者の合計数より多くの人を死に至らしめています。健康政策の専門家であるミッチ・ゼラーが、ニコチン依存の浅ましい歴史を暴きながらタバコ産業の闇に迫ります。さらに政策の転換によってニコチン依存に陥るのを食い止める未来図を、私達に紹介します。