生産的対立が職場にもたらすもの(6:08)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私は労働組合を主催しています 2013年にcoworker.org(同僚組合) を共同設立しました テクノロジーを使い 社員どうしが団結・組織化(organize)し 職場に改善を求める手助けをしています
この活動への人々の反応は 2種類あります いや 実際は3種類です まず1つめは“organize” という言葉を完全に誤解する人 主治医に仕事は何かと聞かれ 話した時 「マリエ・コンドー的なことか」 と思われたようです
(笑)
主治医は「それはいいね! 私もお世話になりたいな 患者のファイルを 整理したいところだったんだ」 彼に説明しないといけませんでした 「その“organize”じゃなくて 言うなれば 明日 あなたが出勤すると オフィス中の看護師が結集して 全面的な賃上げを 要求してくるようなものだ」と
(笑)
「へえ」と彼は言ったきり 黙り込んでしまいました
(笑)
そうなんです 今のが2つめ 気まずい反応というやつです 大抵は 会話から抜けて 他に話す相手を見つけます
そして 3つめが ノリノリな反応です 「そう!こういうのを探していたんだよ!」 そして その場の誰かが語り始めます 決まって 仕事や 同僚や友人の話で 職場で理不尽な扱いを受けている という話です 気が付いたのは 私の活動に対して 中立の意見はないことです 反射的に拒絶するか らんらんと目を輝かせるかのどちらかです
なぜ 私の仕事はこれほどまでに 人の感情をかき立てるのでしょうか? 私の勘では 「対立」という テーマのせいだと思います あなたが会社で権力を持つ立場 例えば社長や重役的な役職の人なら その権力に立ち向かって来られることを 快く思わないはずです 一方 自分が権力を持たないか 知り合いに 権力を持たず必要としている人がいるなら 私の肩をつかんで揺さぶるくらい 興奮するかもしれません しかし 職場での「対立」が 何をもたらすか理解することは 私たち全員にメリットをもたらしうるのです
職場での権力の不均衡は確実に存在し 絶えず変化し続けています 権力は役割や地位次第で 両者の間を行ったり来たりします こんな活動はまるで社内政治じゃないかと 感じることもありますよね 決して楽しいものではありません しかし 同僚と協力し合い よく考えながら 力を求めることができれば とてつもない成果を生み出すこともあります
このような「生産的対立」こそ 今日皆さんにお伝えしたいことなのです 一部の人々は あまり好まない種類の対立です ビジネスリーダーの方々は 会社の方針や決断に対する 部下の反発を歓迎するべきです そこから教訓が得られるだけでなく お互いに対する真剣さを 表すものだからです
では「生産的対立」とは 何のことでしょうか? 以前 こんなことがありました 2016年のことです アウトドア小売業の従業員 — 仮にアレックスとしましょう — アレックスは上司に昇給を求めました しかし 上司には彼女の給料は そこそこ平均的なものだと言われ そもそも自分には給料を上げる権限がないと 言われてしまいました 交渉はここで終わったはずでした しかしアレックスは納得できず coworker.orgでキャンペーンを立ち上げ 店舗スタッフの賃上げを求めて 本社に働きかけることにしました みるみるうちに 全国の従業員が アレックスの活動に賛同し 自分の給与についての話を 投稿し始めました 時給11〜12ドルしかもらえず そのせいで いかに生活が苦しいか といった話です 中にはこんなケースもありました 給与の高い競合企業へ移ったけれど 本当は元の会社を辞めたくなかった といった話です 彼らは前の仕事も好きで 会社の理念に賛同していました ただ 賃金面の問題は どうしても我慢できなかったのでした 数週間にわたる大運動の末 企業側は賃上げを決定しました 全国の店舗で5~15%の昇給です これこそが私の言う「生産的対立」です 他に進むべき道がないとき 障害となっているものに 立ち向かうということです
他にも学んだことがあります 「生産的対立」に関与する人は 仕事も同僚も大事に思っている ということです はじめは驚きました 最悪の職業や 劣悪な労働環境といった問題が うちのサイトに登場すると思っていたら 実際は正反対なケースが多かったのです
力を合わせることで 大きなことが成し遂げられます ある会社では 50を超える抗議活動が起こっています ドレスコードの変更要求から もっともな 安全性への懸念まで様々です ところがです この会社は 同業他社に比べ 自発的な離職率が 最も低い会社でもあるのです そして 生産性も高い部類に入ります
ビジネスリーダーの皆さん 対立を恐れてはいけません もし本当に対立が起こったとしたら すぐさま鎮圧しようとするのも よくありません 確かに 扱いにくい不確実要素が 生まれるかもしれませんが そのような不確実要素は 自分たちがまだ気づけていない 未知なる問題があることを 伝えようとしているのです これは今 特に重要なことだと思います 今や テクノロジーによって ほぼあらゆる人の仕事が激変し 仕事の枠組みも 産業革命以来 前代未聞の速さで 変化し続けていますからね これからの仕事は 私たち全員で 形作っていく必要があります 自分の職場で機能していない部分に 向き合い 変えていかねばなりません
ですから もしあなたの同僚が 連名で上司に手紙を書こうと誘ってきたり 逆に部下が 新しい 医療保障制度への懸念についての 話し合いに応じてほしいと願い出てきたら それは より良い仕事環境を整え 会社の競争力を向上し 皆に有益な資源効率を達成するための 新たな「チャンス」として 捉えてみてください
ご静聴ありがとうございました
(拍手)
職場をより良くするアイディアをお持ちのあなたへ。労働組合を主催するTEDフェロー、ジェス・カッチが、どうやって行動に移せば良いか教えてくれます。この短いトークでは、同僚どうし力を合わせて職場環境の問題に立ち向かい、改善に働きかけるという「生産的対立」が従業員だけでなく、会社側にも有益なものであると説明します。