女性を黙らせる7つの通念を捨て去るには(12:50)
講演内容の日本語対訳テキストです。
自動スクロールはしませんので、映像に合わせてスクロールさせてご覧下さい。
(シャー・ルク・カーン) 「女子は首を突っ込むな」 「黙れ」「静かにしろ」 女の子たちを沈黙させるこれらの言葉は 彼女たちが子供の頃から 大人になり さらに年を取っても使われます
次の講演者は 女性の声に対する真の擁護者であり 貧困、ジェンダー 国際開発のアドバイザーを 世界銀行や国連 そしてインドおよび世界中の NGOに対して務めています 自らを「教養探偵」と称する方です 盛大にお迎えしましょう 社会科学者で作家の ディーパ・ナラヤンさんです
(音楽)
(拍手)
(ディーパ・ナラヤン) 子煩悩な両親は誰しも 立派な娘たちを育てるのが目標です ですが実際に両親が行っているのは 娘たちを束縛し 封じ込め 押し潰してしまうことなのです 両親は娘たちを押し潰しながら 虐待への下地を作っているのです さすがにこれは余りにも衝撃的で どの親にとっても 耐えがたいことでしょうから 巧妙に隠されています
インドではこれを「我慢する」と呼びます 聞いたことがあるはずです 「いい子だ ちょっと我慢しなさい 我慢するだけだ 何が起きても我慢しておきなさい」 この「我慢」によって少女たちは 無力にさせられ 存在せず 目に留まらず 自己を持たぬよう躾けられ 男の子たちは世界中の権力と権限を 手に入れるよう躾けられるのです 一方で 男女同権と 女性の社会進出について 話し合いを続けています
2012年 デリーにて 移動中のバス内で 起きた集団レイプ事件の後 虐待の根源を理解したくなった私は とても簡単な質問を 尋ねるようになりました 「あなたにとって この頃の立派な女性や 男性になるとはどういう意味ですか?」と 特に若者たちから得た回答で 耳にした答えに驚愕したため この課題は研究プロジェクトになり 私の人生の全てを占めるようになりました
3年間で600人以上の教養人や中流階級の 女性や男性 子供に話を聞き 聞き取りは1,800時間に及び メモは8,000ページに至り その意味を読み取るのに さらに1年かかりました
最近では この場にいる多くの方々のように 身なりが良くて教養ある女性が見られます ここにいる皆さんも そして私自身も 世界が変わったと思っていますが このような外側の変化は極めて 誤解を招きやすいのです なぜなら内側では 私たちは変わっていないからです
今日は 貧困層について 話すつもりはありません 中流と上流階級についてだけ お話しします 私たちこそが 最も現実から目を背けているからです 私たちは幾度となく声を上げてきました 女性が教育を受け 雇用され 収入を得たら 女性は男性と同等になり 力を得て 自由になると でも そうではありません なぜでしょう?
自分の研究から 私は女性を消し去り いないものにしてしまう 7つの習慣を特定しましたが これらの習慣は現在も存在していて それは それらが余りにも馴染み深く 立派で道徳的だと されてきたせいなのです 立派で道徳的なことを変えたり 止めたり出来ますか? 私たちは子供を愛し 娘を愛す一方で 彼女たちを押し潰しているのです
習慣その1「お前に身体はない」 女の子を幽霊に仕立てる第一段階は その身体を消滅させること 彼女の身体を無いものと 振る舞うことです 23歳のアカンシャはこう言いました 「家族内で 身体の話は 一切しませんでした 一切です」 まさにこの沈黙の中で 何百万人もの娘たちが性的虐待を受け それを母親に話す事さえ出来ないでいます そして他人からの否定的な意見のせいで 女性の90%が自分の身体を 好きではないと考えているのです 女の子が自らの身体を拒絶するということは 唯一の拠り所を拒絶することになり 透明になってしまった自分に 自信を持てず 彼女の基盤を非常に脆くしてしまいます
習慣その2「静かにしろ 黙れ」 存在していないことになっていて 身体もないとすれば 声を出すことなどできるでしょうか? ほぼ全ての女性が言いました 「小さい時に母にこう叱られました 『お喋りしないで 静かに 黙りなさい 物を言う時は優しく 言い争わない 口答えしないの 答えなくていいから』と」 皆さん耳にしたことがあるでしょう これで女の子たちは恐れ 引きこもってしまうのです おとなしくなった彼女たちは こう言います 「あきらめよう 放っておこう 意味ないもん 誰も聞いてないし」 教養ある女性たちが言うには 自分たちの一番の問題点は 自由に発言できないことだったとのことです まるで今にも窒息させようとする足が喉元に 圧し掛かかるようだったと 沈黙が女性たちを削ぎ取ってゆくのです
習慣その3「人から好かれるように振る舞え」 人を喜ばせろ 誰しも素敵な女性を好みます いつも笑顔で ノーと言わず 搾取されていようが 決して怒らない女性をです 18歳のアミシャは言いました 「父に言われました 『お前が微笑んでいないと 俺の気分が塞ぐんだ』と」 だから彼女は笑顔です お前の幸せよりも俺の幸せの方が ずっと大事だと 父親が教え込んでいるのです そしてこのように 常に皆を 幸せにしようと努めるうちに 女の子たちは決断を下すのを 恐れるようになります 尋ねてごらんなさい こんな調子です 「何なりと お好きなように! 何でもいい! 全てはそのまま 過ぎていくだけ」 25歳のダルシャは ひどく誇らしげにこう言いました 「私はすごく融通が利くんです 求めに応じて 何にでもなれますよ」 このような女の子たちは 自らの夢を 希望を諦めてしまい うつにでもならない限り 誰一人そのことに気づきさえしません 忍び寄るのはうつ病です 女の子の一面が また削ぎ取られていきます
習慣その4「お前に性などない」 皆さん同意して下さると思います 13億人以上の人口を抱えるインドにおいて 性行為は目新しいものではないと 目新しいのは ようやく女性にも 性欲を感じる権利があると 認める人が増えてきたことです ですが 自分の身体を持つことを許されず 身体についての教育を受けられず 性的虐待を受けてきたかもしれず ノーと言えず 恥辱感に満ちあふれてきた女性が どう性欲を主張できるというのでしょう 女性の性は抑圧されているのです
習慣その5「女を信じるな」 想像してみて下さい 女性が連帯して集えば どれほど世界が変わることでしょう ですが そのような事を絶対に 起こさせないよう 私たちの文化は 男性と家族の秘密への忠誠に 高い道徳的価値を置いています 女性という女性が言いました 「信頼できる女性はたったひとり それは私だけ」 デリー大学で 女性の社会進出を研究する 30歳のルチですらこうです 「女性は信用していません 嫉妬深くて 陰口をきくから」 おまけに当然 都市部では 女性は同性グループに入りません 理由は「ゴシップに付き合う暇はない」 からということです 独りでいる女性を押し潰すのは とても簡単です
習慣その6「望みよりも義務」 立派な女の子に関する長々とした定義を 教えてくれたムスカンは まだ15歳です 「親切で 優しくて 礼儀正しく 愛情深くて 思いやりがあって 誠実で 素直で お年寄りを敬い 無条件に万人を助け 他人に良くして 義務を果たす子」 疲れると思いませんか 義務を果たすまでに 残ったどんな些細な望みも 失せてしまいます そして犠牲となってきた母親たちが 話すことといえば ただ食べ物の話だけです 「ご飯食べた? 晩御飯は? 何食べる?」 24歳のサウラブのような男性は 母親を「退屈」といいます 女性は残りかすになってしまうというわけです
習慣その7「完全に依存しろ」 このような習慣全てが重なり合って 女性たちを押し潰し 恐怖に怯えさせ 生き残るために 完全に男性に 依存させてしまいます その結果 男性優位社会の仕組みが続くのを 許しているのです
したがって 私たちが適切で道徳的だと 考えていたこれら7つの習慣は 女の子たちから人生を取り上げ 虐待する側に男性を据えています
私たちは変わらなければいけません でもどうやって? 習慣は習慣にすぎません どんな習慣も経験で得られたものですから 捨て去れるはずです この自己変革が非常に重要なのです 私も変わる必要がありました ですが これでは 数多の女性を押し潰している 仕組みを変えることにはなりません 根源に行きつかなければならないのです 立派な女性 立派な男性の意味を 変えなければなりません これこそがあらゆる社会の基盤だからです 融通が利く女性ではなく 融通が利く定義が必要です 男性にもです この大きな社会的変化は 男性の関与無しでは起こせません 貴方たちが必要です 男性に変化の擁護者に なってほしいのです 変化への強固な影響力を 身につけてほしいのです そうでなければ 私たちの娘や息子が 安全と自由を手に入れるのは あと2世紀ほど 先になってしまうでしょう
想像して下さい 5億人の女性が男性に支えられ お互いに 個人的かつ政治的な対話のため 変化のために集うのです 男性たちが仲間内でも集い 男性と女性が団結し 決めつけも 咎めもせず 非難もせず 臆することもなく ただお互いの話に じっと耳を傾けたらどうでしょう どれだけ変われるのかを 想像して下さい 私たちは一緒にやれるはずです 女性の方々 我慢しないで下さい 男性の方々 我慢して下さい 今がその時です
ありがとうございました
(拍手)
(シャー・ルク)素晴らしい 皆さん ディーパさんでした お話を聞いて気づきました 女性とのごく単純な会話の中ですら 僕たち男性は強引だなあと 例えば 僕は娘に 時々こう言っています 「君が笑ってると嬉しいけれど そうじゃなきゃ気分が塞ぐよ」 申し訳ない もう二度と言いません 今日からは娘にこう言います 君が何をしたって 僕は嬉しいから 僕のために何かをしようなどと思わずに 自分がやりたいことをしなさい いいね? と
(拍手)
どう思いましたか もっと幸せなのだろうと みなしていた少女たちの 沢山の満たされない話や 望みや 独立できない状況を 最初に耳にしたとき
(ディーパ) 大変落ち込みました ショックだったからこそ 立ち止まる訳にはいきませんでした 調査や執筆の予定は ありませんでしたから これまでに17冊の本を書いてきて 「もうおしまい」と思っていましたが 聖スティーブンス大学を訪問したときに あなたもよくご存じの デリーで一番のこの大学で 若い人たちに 女性であることや 男性であることの意味を聞くと 私の世代どころか まるで母の世代のような答えだったのです それからあちこちの大学を渡り歩きました 印象的だったのは どの女性も孤独を感じていて 恐れを隠し 身を潜めていたことです それが自分の欠点だと 思っているからです でもそれは欠点ではなく 躾けなのです 一番明らかになった事実は 私たちが振りを止めれば 世界は変わるということです
(シャー・ルク)娘さんたち ディーパさんの意見に賛成ですか?
(拍手)
若い娘さんがもう言っていますね 「彼女の言葉を聞いたかって? あなたに言われたくない」 ええ これがあるべき姿です 「我慢なさいよ 男子 私たちはもう我慢しない」でしょ?
(拍手)
どうもありがとうございます 素敵な夜を
(拍手)
インド(と多くの他の国々)では、少女や女性が礼儀と抑制の伝統的な規則のせいで沈黙したままだと社会学者のディーパ・ナラヤンは言います。この率直なトークの中で、不平等を助長している長年凝り固まった7つの規範を特定し、変化をもたらす手助けを求め男性に呼びかけます。