脳の働きを劇的に変化させる為に、今あなたが出来ることとは何でしょうか?「運動することです!」そう断言するのは、神経科学者ウェンディー・スズキ。運動することが、気分も記憶力も向上させる科学的根拠を説明するスズキのトークを聞きながら、ジムに行く気を起こしてください―そして、あなたの脳をアルツハイマー病のような神経変性で起こる病気から守りましょう。
自動スクロールはしませんので、映像に合わせてスクロールさせてご覧下さい。
もし私が皆さんに あなたの脳の向上に 即効的な あなたの気分や集中力を高める 今すぐ出来ることがあると伝えたら どう思われますか? そしてもし その同じことには 持続的な効果があり うつ病 アルツハイマー病や 認知症等の病気から あなたの脳を守れるとしたら あなたはすぐそれを実行しますか? もちろん!
私が話すのは 身体運動が生む パワフルな効果のことです 身体をただ動かすだけで あなたの脳に即効的で長続きし 保護的な影響を与えます その効果は生涯にわたり 持続することも可能です そこで 今日はある話をしたいと思います 私が神経科学の教授として 神経科学に対する深い理解をもとに ある実験を自分自身にしたことです 今日 あなたの脳にとって なぜ運動が 最も大きな変化を起こさせるものであるか その科学的根拠を発見しました 神経科学の専門家として断言できるのは 私たちの脳ー すなわち私たちの頭の中にあるものはー 人類が知る一番複雑な生物学的構造です しかし 脳の話をするのと 実際に見るのでは大違いです
そこでここに保存された 実物の人間の脳をお見せします これをご覧になると 本日話す 二つの重要な部分がわかります 第1が額のすぐ後ろにある 前頭前皮質 判断 集中 注意や性格を左右する 重要な働きをする部分です 第2の重要な部分は ここ 側頭葉にあります 人間の脳には 左右2つの側頭葉があります その側頭葉の奥深い部分に 事実や出来事を長期記憶として 形成し保持するのに 重要な構造があります その構造が「海馬」と呼ばれます 私は海馬にずっと魅惑されてきました たった1分程度の出来事 例えばあなたの最初のキスや 最初の子供が生まれた瞬間等が どのようにして 一生の間続く脳の変化をもたらす 記憶を形作るのでしょう 私が理解したいのがその点です 被験者が新しい記憶を形成している時の 海馬にある個々の脳細胞の活動を 記録してみたいと思いました 神経細胞同士がコミュニケーションに使う 短時間の電気活動バーストの意味を解明し それがどのように新しい記憶を形成したり しなかったりするか解明したいと思いました
ところが私は数年前 科学の世界では珍しいことをしました 神経科学の教授としての研究課題を すっかり変えることにしたのです 多くの人々の生活を変える 可能性を秘める 大変驚くべきことに遭遇し それを研究せずにいられなかったからです 運動に脳を変化させる機能があることを見つけ その効果を自ら体験したのです それは 全く予期せぬ方法による出会いでした 私が以前から続けていた 記憶に関する研究は快調に進み 研究データが溢れるほど集まり 私の研究分野では 知られる存在になっていました 全てがうまくいっているはずでした ―科学的にということでしたが ところが閉された研究室から 頭をつき出して見ると あることに気付きました 私には社交生活が全くありませんでした 私は暗い部屋で たった一人で 脳の細胞ばかりに耳を傾けていました (笑) 身体は一切動かしていません 体重は11kgも増えました 実はそれに気付くまでに 何年もかかりましたが 実際 みじめでした みじめであるべきではありません そこで川下りの旅に出ました— 社交生活がなかったので一人で その帰りに—
(笑)
「あの旅の参加者の中で 一番体力に欠けていた」と思い ある使命を抱いて帰ってきました 「川下りの旅で一番体力のない者だと 二度と思いたくない」と 自分に言い聞かせました そのことで発奮し ジムに通うようになりました 自分の生真面目なA型人間の性格に注目し ジムが主催する全てのエクササイズに 参加することしました とにかく全て試してみました キックボクシング ダンス ヨガ ステップ運動 最初は本当にきつく感じましたが 汗をかくワークアウトを重ねるごとに 気分とエネルギーの昂揚を 感じることに気付きました そのおかげでジムに通い続けました すると徐々に体力が向上し 気分も良くなり 11kg増えた体重も減りました
規則的な運動を続けて一年半経つと 真剣に注目することがあるのに気付きました 机に座り 研究費の申請を書いていると ある考えが頭をよぎったのです 今まで頭に浮かんだことが 一度もないことでした その考えとは 「今日は研究費申請を書くのが うまくいっている」 科学者はみんな—
(笑)
そう言うといつも 科学者はみんな笑うの— 研究費の申請を書くのは 決してうまくいかないからです 本当に大変で いつも頭を抱えたくなります 百万ドルの助成金をもらえる アイデアを考えるのは大変です ところがスムーズに 申請が書けたのです 以前に比べて集中力があり 注意の持続性が増していたからです 私の研究室の課題だった長期記憶力も 私の中で良くなっているように感じました そうして申請書が完成しました
私の生活に取り入れた沢山の運動が 私の脳に変化を与えたのではないか 私は気付かずに 自分を実験台にしていたのでは そこで好奇心旺盛な神経科学者の私は 運動が脳に与える影響について 記載された文献を探しました そこで発見したのが 興味深い 日々発表される研究結果が 私自身も気付いたことを 裏付けていることでした 気分の改善 やる気の増強 記憶力や集中力の増強 知れば知るほど 運動のパワフルな効果に 気付きました そのことが私の大きな決断の きっかけとなり 研究課題を大きく転換させました そして今このテーマに 集中するようになって数年経ち 以下の結論に達しました 運動はあなたの脳に 今すぐに 最も大きな変化をもたらすものです それには3つの理由があります
第1に 即効的な効果を脳に与えます たった1回のワークアウトで ドーパミンやセロトニン ノルアドリナリン等の 神経伝達物質のレベルを高めます それがワークアウト直後の あなたの気分を高めます 私が感じたのと全く同じです また 私の研究室は 1回のワークアウトだけで 注目の対象を素早く変え 集中する能力が高まり その効果は最低2時間持続することを 示しました そして最後に いくつもの研究から 1回のワークアウトで 反応時間が 短縮することが明らかになりました 要するに スターバックスのコーヒーカップが カウンターから落ちるとき あなたは素早くカップを つかむことできるということです これは大変重要なことです
(笑)
しかしながらこれらの効果は 運動直後のことで一時的です あなたがするべきことは 私が実践したことです あなたの運動習慣を変え 心肺機能を高め 長期的な効果を得ることです 効果は本当に長期間持続します 運動は脳の構造 生理や機能を 実際に変えるからです それでは私の一番のお気に入り 海馬から始めてみましょう 海馬で— 運動が新しい脳細胞を 実際に作り出します 海馬の新しい脳細胞が 実際その容積を増やします そして同時に長期記憶も改善します いいですね? それは あなたも私も同じです
次に 長期に渡る運動の影響について 一番多く見られる 神経科学の研究結果は 前頭前皮質に依存する 注意機能の改善 注意力と集中力が良くなるだけではなく 海馬の容積も増えます 最後に 運動によって 即効的に気分が改善するだけでなく その影響は持続します 気分を向上させる 神経伝達物質の増加が長続きします
ところが 運動が与える 一番大きな変化は 脳に対する保護効果です ここでは脳を筋肉と考えてください ワークアウトをすればするほど 海馬と前頭前皮質が 大きく 強くなります なぜそれが重要かというと 海馬と前頭前皮質の2つの部分が 各種の神経変性疾患や 老化現象による通常の認知機能の低下で 一番おかされやすい部分だからです 生涯にわたる運動量が増えても 認知症やアルツハイマー病は治せませんが 一番大きくて丈夫な 海馬と前頭前皮質を作り上げ これらの病いの進行が見られるまでの 時間を引き延ばします すなわち 運動とは 脳のために高額を払い込んだ 401K(米国の確定拠出個人年金制度)と 考えてみてください わかりますか? 実はそれよりもっと優れています 一切お金がかからないからです
トークでこのポイントに到達すると いつも聞かれることが 「ウェンディー 素晴らしい話ね だけど本音を言うと 知りたいのはたったひとつのことだけ このような変化の影響を受けるのに必要な 最低限の運動量は一体どれぐらいなの」
(笑)
そこでその質問に答えます まず1番に トライアスロン選手でなくても その効果は得られます 週に3〜4回ぐらいのペースを目安に 一回あたり最低限30分の運動量 有酸素運動を含めましょう 要するに 心拍数を増やしてください 嬉しいことに 高い入会費を払って ジムに通う必要もありません 早足で歩くパワーウォーキングを 日課の散歩に一周足して見てください 階段があれば 階段を使ってください 掃除機をかける際は パワフルに掃除すれば ジムでエアロビクスをするのと 同じぐらいの効果です
こうして私は「記憶の開拓者」から 「運動の探検家」に変身しました 脳の奥深い機能を研究することから 運動が脳の機能を改善させる仕組みを 理解する方向へと進みました 研究室での 現在の私の目標は 今 お伝えした 週3~4回 最低30分という 目安を知ることだけではありません あなたにとって最適な運動量— 年齢や健康状態 遺伝的背景に合った運動量を知ることで 今日やった運動の 効果を最大にして 生涯にわたって脳の機能が向上し 脳を最大限 保護できるように したいと考えています
運動の話をするのと 実際にするのとでは違います そこで「認可エクササイズ インストラクター」の権限を使い 皆さんには立ってもらいます
(笑)
1分間の体操をしてもらいます 呼びかけに応える形式です 私がすることを真似して 言うことを繰り返してください 隣の人にパンチしないように いいですか? 音楽お願いします!
(軽快な音楽)
5、6、7、8 そこで右、左、右、左 ではいきますよ 力が満ちてきた さあ どうぞ
(聴衆)力が満ちてきた
(ウェンディー)みなさん ワンダーウーマンみたいに強く どうぞ!
(聴衆)ワンダーウーマンみたいに強く
(ウェンディー)動きを変えて— アッパーカット 右、左 元気が出た どうぞ!
(聴衆)元気が出た
(ウェンディー)最後の動き— 引っ張りましょう 右から左、右から左 私はやる気に燃える! どうぞ
(聴衆)私はやる気に燃える
(ウェンディー)はい終わり 上出来でした!
(拍手)
ありがとうございました 終わりに 一つの想いを 残したいと思います それは 運動を生活の中に取り入れることが もっと幸せな 安心できる人生に 導いてくれるだけではなく あなたの脳を不治の病から守る 備えとなります そうすることで あなたが歩む人生の軌跡を 良い方向へと転換することが可能となります
ありがとうございました
(拍手)
ありがとう
(拍手)