90パーセント以上のアメリカの子どもが1年に1回は必ず医者にかかり、親は待合室で時間を限りなく無駄にしています。その時間をお金の節約のような、生産的なことに使えるとしたら? 小児科医でTEDフェローのルーシー・マーシルが率いる団体 StreetCred は、通院の際に何ができるかを考え直し、まさにその待合室で納税申告の手続きを無料で支援し、多くの家族を貧困から救い出しています。無料の納税申告書類作成支援や助言がどうしてアメリカの貧困への最善の処方箋になり得るのか、詳しく聞いてみましょう。
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皆さんの中で 医者から性生活について 聞かれたことのある人は何人いますか 心の健康状態については? 飲酒については? こういった質問は いたって一般的ですが では お金について 聞かれたことのある人は? そんな人は ほとんどいませんね でもそれは 奇妙なことです 大半の高所得国と比べて アメリカでは子どもの貧困が 感染症のように蔓延しているのですから 貧困は ストレスホルモン濃度を高め 脳の発達を阻害する原因になりえます アメリカの貧しい子どもの死亡率は1.5倍 入院する確率は2倍 中流層の子どもと比べると多いのです
それで 同僚のマイケル・ホール医師と私は 母親達にお金について聞くことにしました 子どもを貧困から救い 健康な人生を送る機会を提供するために 通院の際に 何ができるのかを 考え直す必要があることを 私たちは分かっていたのです
私たちの問いは 驚くべき 解決策に至りました 税の控除です 勤労所得税額控除 すなわち EITC こそ アメリカでは最良の 貧困への 処方箋だと判明したのです EITCにより 平均的な母親が得る額は 1人につき年に2000~3000ドルです その収入がある世帯ほど 母親と赤ちゃんは健康です つまり 鬱の母親が少なく 出生時の赤ちゃんの体重が 重いのです しかし 控除対象世帯の5分の1は 控除を受けていませんし 控除を受けている人の大半は 営利目的の申告書作成代行業者への支払いで 何百ドルも損しています
ある日 「こうしてる間に納税申告が できないの?」と聞く母親がいました 診察の待ち時間でのことです
(笑)
誰もが その苦しみに共感できますね あの時間を有効利用できないでしょうか
そのような考えから 私たちは 「StreetCred」ー 小児科医院で納税申告書の作成を 支援する組織を立ち上げたのです この試みは 全く新しいもので 正気を疑われもしました 所詮 私たちは医者であり 税理士ではないのです ただ医者には 税理士にはないものがあります 家族と接する機会です アメリカでは90パーセント以上の子どもが 1年に1回は必ず医者にかかります 親は医者を信頼し 子どものより良い人生のためなら 何でもします
アメリカじゅうの医院の医者が この取り組みに参加できるでしょう 本当に簡単です 自分の医院を 納税申告会場として 登録すれば 医学生から退職者まで あらゆる人が 内国歳入庁の試験に合格した後 申告書類作成ボランティアになれます 思うほど難しくありません 保証します 私なんて ひとの納税手続きなんか 絶対しないと思っていましたが 今 やっています
この取り組みを始めて もうすぐ3年になります 最初の2年間で ボストンだけで750世帯が 160万ドルの還付を受けました 今年は―
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今年は 申告会場を 4つの州の 9か所に増やしました そこを訪れた世帯の63パーセントが EITCの事を聞いたことがありませんでした 聞いたことのないものを 手に入れる手続きなどできますか 半数の世帯は 申告書類の無料作成を 利用したことがありませんでした
この 年2000~3000ドルは 家計に大きく寄与します 食の問題を見てみましょう 母親と2人の子どもが 栄養十分で低コストの食事を摂るには 月に477ドル必要です EITC による還付があれば この世帯は 5~6ヶ月分の食費を捻出できるのです 医療についてはどうでしょう アメリカでは2,000万の子どもが 現代小児医学の標準的な治療を 受けられずにいます そして 子ども1人当たりの医療費は わずか 年平均400ドルです EITCによる還付があれば 医療が受けられない問題を是正できます このお金は ひょっとすると何よりも 母親の 希望の光になるかもしれません ある母親は 還付金を 息子のスペイン留学の費用に充てました 母親は 家賃の支払いが 大きな負担ではありましたが その眼には 還付金が 息子の 豊かな未来への扉と映りました
私たちにはチャンスがあります 医者として そしてアメリカ国民として 貧困問題の核心をとらえる チャンスがです 私たちは 医療を 病気の様々な原因に対処する場として 再考することができるのです その原因が感染症であっても 金銭問題であってもです
ありがとうございました
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