車利用を劇的に効率化するUberのプラン(15:51)

トラビス・カラニック(Travis Kalanick)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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今日お話しするのは、人間が運転する交通手段の未来についてです。より多くの人を、より少ない車で運ぶことで渋滞や公害や駐車場をいかに減らせるか。それをみんなのポケットの中にある技術でどう実現するか。
そう、スマートフォンのことです。自動運転車ではありません。

まずは100年ばかり時を遡るところから始めましょう。実はUberよりずっと以前にUberがあったからです。
仮に それが存続していれば、交通機関の未来は たぶん もう実現していたことでしょう。

皆さんに「ジットニー」を紹介します。1914年に L・P・ドレイパーという男が 考案したものです。
LAの自動車販売業者だった彼には あるアイデアがありました。私の故郷でもある LAの市街を 彼が運転していると、市電が見えました。そこには目的地に向かう人々の長い列がありました。彼は こう思いました。
「自分の車に看板を掲げてジットニー1枚で目的地まで 乗せて行くのは どうだろう?」
ジットニーとは 5セント硬貨の俗称です。

人々は先を争って乗りました。LAだけでなく アメリカ中いたる所でです。
1年後の 1915年には シアトルで1日5万人、カンザスでは4万5千人、LAでは1日15万人が 利用していました。比較して欲しいのですが、LAでは現在1日15万7千人が Uberを利用しています。100年経っているのにです。

彼らは市電の乗務員です。当時、独占的な交通機関でした。彼らはジットニーの大群には明らかに不満でした。
そこで運動を始めて 国中の都市に出向き、ジットニーの発展を遅らせるために 規制を設けさせました。

実に様々な規制がありました。免許は 多くの場合 費用が高額でした。一部の街では ジットニーの運転手には 1日16時間の乗車が 義務付けられていました。また いくつかの街では ジットニー1台につき 運転手が2人必要でした。
中には すごく面白い 規制もありました。後部座席に照明をつける というものです ジットニー全部に設置して 新種の有害行為、いちゃつきを防止するためです(笑)

さて その結果どうなったでしょうか。
ジットニーは1年で大流行しましたが 1919年までには 規制の強化で 完全に消滅しました。

残念なことです。なぜなら 車を共用できなければ 自分で持つしかなく、自動車の所有率が急増したからです。
2007年に米国には 男性も女性も子どもも含む 全国民1人あたり1台の 自動車があったのも 不思議はありません。この現象は地球規模で広がりました。2011年には中国での 自動車販売台数が アメリカを抜きました。

このような自動車の個人所有には 当然 社会的コストが伴いました。アメリカでは 私たちは渋滞の中で 年に70億時間を 無駄に過ごしています。渋滞に巻き込まれることで 1,600億ドル分の 生産性が失われ、二酸化炭素排出量 全体の 5分の1は 私たちが乗る車から 大気中に放出されています。

ただ、これは問題全体の わずか4%を占めるに過ぎません。車を個人で所有しても 96%の時間は 使っていないからです。結果として 私たちの土地や空間は 最大で3割もが この鉄の塊を収容するために 使われているのです。自動車だけのために作られた 高層ビルまであります。これが 今日 私たちの 暮らしている世界です。

この問題には 多くの都市が 何十年も取り組んできました。公共交通機関です。でも 世界有数の人口密集地帯である NYのような街では、世界的にも優れた 公共交通機関があるにもかかわらず 毎日 250万台もの車が 橋を行き来しています。なぜでしょう。公共交通機関は 乗客みんなを家の前まで送り届ける方法を まだ見出していないからです。私が住むサンフランシスコなんか 状況は さらに深刻です。というより世界中で深刻なのです。

2010年にUberを始めた時 目指していたのは、ボタン一つで 車が呼べることでした。壮大な計画が あったわけではありません。でも実際やってみると ボタン一つで車を呼びたい人は たくさんいて、さらに、経路がダブるケースが 多いことがわかりました。同じボタンを 同じ頃に押し、ほぼ同じ場所へ 行こうとする人たちを たくさん目にしたのです。

そこで考え始めました。経路の重なる2つの賃走を 1つにまとめるには どうすればいいか。もし まとめられれば 運賃は相当 安くでき、最大で5割くらい 下げられるでしょう。もちろん、都市部なら 多くの乗客を ずっと少ない台数で さばけるようになります。

ここで大きな疑問は うまくいくのか ということです。
みんなが進んで 相乗りしようとするほど 運賃を安くできるだろうか?
幸い その答えは 圧倒的にイエスでした。

サンフランシスコでは 相乗りサービスuberPOOLが できる以前は、どこへ行くのにも 誰もが自分の車で出かけていました。明るい色の部分は 車が密集している場所です。私たちがuberPOOLを開始すると 明るい部分は ほとんどなくなりました。多くの人が 少ない台数で 街の中を移動することで 道路から車が 減っているのです。uberPOOLは うまくいくようです。

それで LAにも展開しました。8か月前のことです。私たちは それ以来 交通量を 走行距離にして1,270万キロ分減らし、大気中の二酸化炭素を 1,400トン削減しています。

私が本当に気に入っている統計があります。いいですか、私はLA出身で 何年もの間 ハンドルを握りながら どうにか改善できないものか 考えてきたのです。私が気に入っているのは、この8か月で 相乗りを毎週利用するという人が 10万人増えている点です。

中国では すべてが超巨大で uberPOOLの利用は 1か月当たり1,500万件 1日だと50万件です。確かに 私たちは今 急速に成長しています。実は 同じことがLAでも見られます。だからと言って 私たちは会社で 「毎週10万人が相乗りしているぞ、成功だ」などとは言いません。「どうすれば100万人にできるか?」と考えています。中国なら数百万人にできるはずです。

uberPOOLは 都市部での相乗りには かなり有効な解決策です。ただ郊外では どうでしょう?

ここは 私が育ったLAにある通りで ノースリッジという 郊外の住宅街です。延々と郵便受けが並んでいます。毎朝 ほぼ同じ時間に それぞれの家から 車が出てきます。ほとんどは1人しか 乗っていません。そして みんな仕事しに 都市部へと向かいます。そこで考えたのは、どうすれば このたくさんの通勤する車を――文字通り何千万台もあるんですが――全部 相乗りに切り替えられるかということです。

これにぴったりなのが、最近 開始したuberCOMMUTEです。朝起きて 会社に行く準備をし、コーヒーを飲んで 車に乗って、Uberアプリを立ち上げると その瞬間に皆さんは Uberドライバーに早変わりします。そしてUberが 通勤中の皆さんを 近所の人と組み合わせます。実にすばらしい。

ただ一つ問題があります。「規制」です 「1マイル54セント」 何だと思いますか? これはアメリカ政府が決めた 1マイル当たりの 自動車の所有コストです。国内では誰でも自分の車に乗せて どこにでも すぐ連れて行けますが、運賃は1マイル54セント以下でなければなりません。もし1マイル60セント請求すると 犯罪になるのです。でも もし1マイル60セントにすれば LAで 相乗りが50万人増えるとしたら どうでしょう? 1マイル60セントにすれば、アメリカ全体で 相乗りが5千万人増えるとしたら? もし それが可能なら やったほうがいいに決まっています。

ジットニーの教訓を振り返りましょう。
もしもジットニーが流行した1915年に 規制が行われず、そのまま成長し続けていたら私たちの住む都市は今頃どうなっていたでしょう? 駐車場になっている場所は公園だったかもしれません。私たちはチャンスを逃したのです。でもテクノロジーによって新たな機会を得ました。

自動運転車には 私も期待していますが、本当に5年 10年 20年と 待たなければ 新しい街は 実現できないのでしょうか? 今ポケットの中にある技術と、より賢明な規制さえあれば 車をすべて共用車に変え、自分たちの街を取り戻せます。しかも今日から。

ありがとう(拍手)

クリス・アンダーソン:ありがとう

トラビス・カラニック:ありがとう

クリス:あなたが作った会社は 本当に驚異的です。今は そのごく一部、特に影響の大きな部分について 話していただきました。自家用車を公共交通機関に変える というアイデアです。素晴らしいと思います。ただ 2つほど質問させてください。みんな知りたがっていることなので。

1つ目ですが、確か先週 スマホからUberを予約しようとしたら アプリが見つからなかったんですが、とても大胆で 思い切った 大幅なデザイン変更をしましたね。

トラビス:ええ

クリス:どうでしたか その日 アプリを見つけられなかった人は いませんでした? このデザインの変更で 人々を取り込めそうですか?

トラビス:まず はじめに 言っておきたいのは 私たちが何をしようと したのかです。この会社の歴史を 少し知っておいてもらうと わかりやすいと思います。私たちは、最初は黒塗りの 高級車からスタートしました。ボタン一つで ベンツSクラスが やって来るというものです。私たちがやっていたのは、未熟な高級ブランド とでも言うべきものだったので 高級車のエンブレム みたいにしたのです。

その後 世界進出を果たして、Sクラスから インドの三輪タクシーまで 拡大するにつれ私たちにとって重要になってきたのは、もっと利用しやすくすること、もっと地元に密着すること、人々が暮らす街と 関わることでした。それが あの模様や色に 込められています。象徴性も重要です。「U」の文字は サンスクリット語でも 中国語でも意味をなしません。これが 変更した意図の一部です。

それにしても こういうものを発表する時は 手は汗ばむし、誰だって ちょっとは不安になるものです。しかし実際に目にしたのは アプリを開く人の数の 増加です。開くと どうなるか 興味を引いたんです。だから数字は 私たちの予想を少し上回りました。

クリス:なるほど。ところで あなたには 少し謎めいたところがありますね。ずっと あなたを支援している 支持者や投資家は こう考えているようです。タクシー業界などが持つ 強大な既得権益に食い込める 可能性があるとしたら、強烈で容赦のないライバルが 現れる以外にない。あなたは そういう存在であることを 証明してきました。

ただ、あなたがやり過ぎだと 感じている人もいます。1〜2年前 物議を醸すことがあって、多くの女性が 怒りをあらわにしました。その時期 社内は どんな感じでしたか? 業績の低下はありましたか? そこから 学んだことは?

トラビス:私は 高校の頃から起業家でした。起業家というのは いろいろな困難に直面します。私たちにとって 1年半前が そんな場面で、私たちにも辛い時期でした。
内側にいると、何というか… いろいろあっても 自分たち自身では 良いことをしている、良い人間だと感じていましたが、外からはそれがわかりません。しなければならないことが たくさんありました。例えば… 私たちは小さな会社から出発し、わずか2年半前には社員は400名でしたが、今は6,500名です。これほどの成長を遂げると 自分の文化的価値観を 強固なものにして 常に伝えていかなければ なりません。そして みんながそれを 常に確認しなければなりません。
「自分たちは 良いことをしている 良い人間だろうか」と。
それを確認したら 次にやるのは 自分のメッセージを 確かに伝えることです。私たちは いろいろ学びもしましたが その時期を乗り切って より逞しくなったと思います。でも確かに大変な時期でした。

クリス:あなたはどこを向いても 誰かに難題を吹きかけられるようです。NYなどでは 一部のUberドライバーが 運賃の変更に怒り狂っています。あなたが料金体系を変更したせいで やっていけないと訴えています。
あなたは言いましたね。Uberを始めた そもそものきっかけは、ボタン一つで車が呼べる クールさだったと。それが成功して 現在 世界中の経済に 影響を与えています。望むと望まざるとにかかわらず、あなたは世界を変革する 世界的ビジョナリーに ならざるをえません。でも本当は何者なんですか? そうなりたいですか? そういう者としてやっていく 覚悟はありますか?

トラビス:盛りだくさんな質問ですね(笑)

まず 料金については… 忘れないでほしいのは、UberXを始めた頃は 黒塗りの高級車版より 10%〜15% 低料金でした。現在は 多くの街でタクシーの半額です。手元にある どのデータを見ても、Uberドライバーは タクシー運転手より 1時間当たりの収入が多いのです。
運賃を値下げすると、人々がUberを 1日の もっと多くの時間帯で 使うようになり、以前は車で行かなかった場所にも Uberを使うようになります。するとドライバーにとっては 客を どこで降ろそうと 戻る時 他の客を拾える可能性が ずっと高くなるのです。 そうなると1時間当たりの 賃走時間が増加し、利益を上げている時間が長くなって 実際に収入が増加します。

いくつかの街で私たちは 5〜6回値下げをしていますが そのたびに 収入は増加しているのです。NYについても 『4 Septembers』という ブログ記事で 収入の比較をしています 9月 次の9月 さらに次というように 毎年 同じ月を比べます。すると運賃が下がる中で 収入が時とともに 増加しているんです。当然 最適な価格があって 下げ続けるわけにはいきません。運賃を下げても 収入が増加しなかった 場所では 運賃を元に戻しています。

これが最初の質問への答えです。それから 謎めいているとか 何とかという点ですが、私は起業家の中でも 難問を解決することに ワクワクするタイプなんです。数学教授のようなもの という説明をよくしています。数学の教授は、解くべき難問がないと 実に悲しいものです。Uberで働く私たちも 難問が好きです。難問に直面し それを解くことに ワクワクするんです。でも問題なら 何でもいいわけではなく、できるだけ難しい問題を 求めています。解けたときに 大きな喜びを得られるような 問題を求めているんです。

クリス:数年後、いつかはわかりませんが 例えば5年後、素晴らしい自動運転車を 展開して それは 現状のUberよりも コストが安くなるでしょう。その頃 100万人を超えているであろう ドライバーたちに どう説明しますか?

トラビス:第一に それには かなり時間がかかると 考えています。大げさな宣伝や メディアの予想より 時間がかかるでしょう。これが1つ目です。第二に 移行にはさらに 時間がかかるだろうということ。自動運転車は うまくいく場所 行かない場所があります。挑戦しがいがあることです。なぜなら Googleは2007年から投資していますし、テスラ・モーターズや Appleも始めるでしょう。自動車メーカー各社も 始めるでしょう。そういう世界は実現しそうだし 実現すべきです。年に100万人が 自動車事故で亡くなります。それに世界中の人々が 何十億時間 いや何兆時間も 車のシートに座って ストレスや不安を感じながら運転しています。生活の質が どれだけ改善されるか 考えてください。人々の時間を取り戻し 不安を取り除いたなら 良いことが たくさんあります。

私たちは これを 挑戦ととらえています。前向きに進めていく という挑戦です。タクシー業界や 市電業界のように、テクノロジーに抵抗するのではなく それを受け入れて 未来に参加すべきです。

でも どうすれば前向きに 進められるでしょう? 市当局と連携する道は あるでしょうか? 移行期間に向けた 職業訓練や 教育システムを用意する 方法はあるでしょうか? この移行期間は 私たちの予想よりも ずっと時間がかかるでしょう。でも それが未来の世界でしょうし、それは よりよい世界になるでしょう。

クリス:あなたが築いているものは 本当に素晴らしい。ここTEDで 率直な話を 聞かせてくれたことに感謝します。ありがとうございました

トラビス:こちらこそ

(拍手)

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このプレゼンテーションについて:

Uberは、渋滞や公害の削減という壮大な目標を初めから持っていたわけではありません。でも会社が成功するにつれて、共同設立者のトラビス・カラニックはこう思うようになりました。「同じ経路でUberを使う人たちが相乗りできるようにする方法はないだろうか? そうすれば運賃や二酸化炭素排出量を減らせるのに」。その結果が、Uberの自動車相乗りサービスuberPOOLです。このサービスは開始から8か月で、ロサンゼルスの路上から交通量を走行距離にして1,270万キロ分減らし、大気から二酸化炭素を1,400トン削減しました。相乗りは郊外からの通勤にも有効たり得るとカラニックは言います。「現在我々が既に手にしている技術と、もっと賢明な規制さえあれば、すべての車を共用車に変え、街を取り戻せます。それも今日から」

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