膵臓がん患者への吉報(6:03)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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挙手をお願いします。この中で1人は知っている という方、手を挙げて下さい。わあ ほとんど全員ですね。それぞれの分野で 名を成した方々ですものね。彼らに共通する点をご存知ですか? 全員 膵臓がんで亡くなりました。とても悲しい事ですが この方々の知名度のお陰で 膵臓がんが どれ程致命的か という認識が高められました。
膵臓がんは3番目に 致死率の高い癌です。この患者の5年生存率は わずか8%で それは 特に 90%に近い 乳がん患者の生存率と比べると 非常に低い数字です。従って 膵臓がんだと診断されるのは 死の宣告を受けたのも 同然の事なのです。でも 驚く事に 過去40年間 その生存率は 少しも変わっていないのです。他の癌の生存率は 随分と上がって来たというのに― では どうすれば 膵臓がんの治療は より効果的になるのでしょうか? 私はバイオ医療起業家として 不可能と思われる問題に その限界を理解しながら 結果を変えられる 新しい革新的な解決法を捜そうと 取り組むのが好きです。
膵臓がんのまず最初の問題は 膵臓が まさに お腹の真ん中にあるという事です。スライドでは膵臓は オレンジ色になっていますが その前にある他の臓器を どけないと よく見えません。その前にある他の臓器を どけないと よく見えません。また命に関わる重要な臓器— 肝臓、胃、胆管などに囲まれています。それらの隣接した臓器に 転移しやすいことが 膵臓がんを 最も痛みの激しい 癌の1つにしているのです。また手術で摘出し難い場所にあり、乳がんの様に 日常的には 手術が行われていません。これらの理由から 化学療法だけが 膵臓がん患者に 残された選択肢です。
これが 次の問題を引き起こします。膵臓がんは血管が殆どないのです。なぜ腫瘍の血管が 問題となるのでしょう? 化学療法の働きを 考えてみましょう。薬が血管に注入され 薬は体中を巡り 腫瘍に届きます。それは目的地まで到着しようと 高速道路を運転するようなものです。もしその高速道路に 目的地への出口がなかったらどうでしょう? 目的地へ到着する事はありません。それと全く同じ問題が 膵臓がん治療の化学療法にあるのです。薬は体中を巡り 健康な臓器は 毒性の高い作用を受けるというのに 腫瘍そのものには薬は ほとんど届くことがなく 薬の効果はとても 限られたものになります。
特定の臓器を標的にする為には 全身療法は直観的にも 賛成できるものではありません。しかしながら過去40年間 多額の費用、多くの研究、多大なる努力が膵臓がん治療の為、新しい強力な薬の開発に向けられてきましたが、薬の投与方法については 何1つ変わっていません。
このような2つの問題が あるにも拘らず、吉報もあります。MITとボストンの マサチューセッツ総合病院の共同研究者と共に癌治療法に革命を起こし、薬の局所投与が現実となりました。簡単に言うと、あなたは 目的地に パラシュートで降ろされ、高速道路を通り抜けなくてもいい というようなものです。この様なものを開発し、これに薬を埋め込みました。これは十分な 柔軟性があるので、畳んで カテーテルの中に入れられます。そうして腫瘍の上に これを直接、侵襲性が最小限の手術で移植します。このデバイスは 十分な硬さがあるので 一旦 腫瘍の上に落ち着くと 腫瘍を閉じ込める働きをして 物理的に癌が他の臓器に 移らないようにし、癌の転移を防ぎます。
また このデバイスは生分解するので、一旦身体に入ると 分解し始め、溶解し、中の薬がゆっくりと標的の箇所に 効果的に投与されていきます。既存の全身療法では あり得ない事です。前臨床試験で この局所アプローチが 治療効果を 12倍向上させられると実証されました。
既存の薬を使い、それを 最も必要な箇所に投与することで 既存の治療の12倍強力な効果を示し 全身的な副作用を減らします。この技術を次のレベルへと持って行く為、我々は絶えず研究を続けています。今 前臨床試験の最終段階で 動物実験をしています。FDAへ治験許可申請の前に 通らなくてはならない段階です。
現在 膵臓がん患者の大多数が 命を落としています。いつか我々は 膵臓がん患者の苦痛を減らし、寿命を伸ばし、膵臓がんが治せる病気になることを願っています。
薬の投与方法を考え直すことで、我々は薬の効用を、毒性の低い強力なものにするだけでなく、膵臓がんであろうと なかろうと、他のほとんどの不可能な問題にも 新しい革新的な解決への 扉を開いているのです。新しい革新的な解決への扉を開いているのです。
ありがとうございました(拍手)
膵臓がんは、他に何の健康の問題もない人ですら罹る事のある病気です。愛する人を膵臓がんで亡した人なら誰でも、この病気が如何に衝撃的な早さで進行するかご存知でしょう。TEDフェローでバイオ物医療起業家であるローラ・インドルフィは、この複雑で致命的な病気の、革新的な治療技術の開発に携わっています。腫瘍を封じ込め、転移を防ぎ、薬を腫瘍に直接投与するという画期的なデバイスを紹介しながら、「いつか、膵臓がんを治せるようにしたいと願っている」とインドルフィは語ります。