ジョナサン クレインが語る「世界を変えた写真」(6:02)

ジョナサン クレイン(Jonathan Klein)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私の業界には 写真は世界を変えることができるという信念があります。そう 無邪気で根拠のないやる気に満ちています。実は分かっています。写真そのものは世界を変えることはありません。その一方で 写真が登場した頃から分かっていたことは、人が写真に反応して その反応が何らかの変化を起こすということです。

実際にいくつか写真を見てみましょう。これらほとんどを みなさんご存じのはずです。象徴的な写真ばかりですね。象徴的すぎて陳腐だと思われるかもしれません。あまりによく知られているので 少し違ったかたちでお見せしても 認識できるかもしれません。

観衆:(笑)

しかし私たちはそれ以上のことを探しています。象徴以上の何かを。重要な問題に妥協なく光をあてる写真を。国境や宗教を超える写真を。私たちに立ちあがって 何かをさせる――言い換えると 行動させる写真を 私たちは探しているのです。こちらの写真は 見たことがありますね。自然界への見方を変えることになった写真です。それまで このような角度から地球を見たことがありませんでした。こう信じる人がたくさんいます――環境保護運動が盛んに始まったのは このような角度から 地球を初めて見て 地球の小ささと脆さを知ったからだと。

40年後にはこのグループは 人類が地球環境を変えるほどの 破壊力を持っていることに気づきました。人類はやっとこの問題に立ち向かいはじめたようです。この破壊力には様々な形があります。これらの写真はブレント・スティアトンが コンゴで撮影したものです。ゴリラが殺され はりつけにされています。当然のことながら 国際的な非難が向けられました。最近のものでは ハイチでの地震の悲惨な状況から 自然の破壊力を思い知らされました。

これよりさらにひどいのは、人間の人間に対する破壊力です。アウシュビッツからの生還者であるサミュエル パイサーの言葉を引用します。
「自然がどれだけ荒れ狂おうと それは人間が倫理基準と理性を失ったときほど 冷酷には振舞えまいということを ホロコーストは私たちに教えてくれた」。

こちらはまた別のはりつけです。アブグレイブ刑務所と グアンタナモ収容所からの恐ろしい写真からは 深い衝撃を受けます。これらの写真を公開することは 写真そのものとは違って 政府の政策を変えさせる力があります。イラクでの暴動を煽ったのは 実際にとられた行動より これらの写真だという人もいます。さらにこれらの写真は 占領軍の高い倫理基準など永遠に信じられないものにしました。

少し過去を振り返ってみましょう。1960年代~1970年代には アメリカの家庭には明けても暮れても ベトナム戦争のニュースが流れていました。ニュースの中の写真を通して人々は 戦争被害者と直面することとなりました。ナパーム弾でやけどを負った少女や ケント州立大学で抗議中に州兵に殺された学生。これらの写真は実際に抗議活動そのものとなりました。

写真には 疑いや無知に対して 理解の光をあてる力があります。特に――多くの写真のなかから また一枚お見せしましょう。エイズ問題です 1980年代はエイズに対しての人々の非難が 大きな障害となって 話し合いをすることさえ出来ませんでした。1987年、世界で最も有名な女性ダイアナ妃のほんの小さな行動――エイズに感染した子供に触れたことは 特にヨーロッパで この差別をなくす大きな理由となりました。彼女は写真の力をよく知っていたのです。

強烈な印象を持つ写真に遭遇したとき 選択肢は2つあります。目をそらすか 立ち向かうかです。ありがたいことに、1998年にこれらの写真が ガーディアン誌に載ったときは、多くの人が問題に目をむけ、スーダンの飢餓に対して 多くの救済金が集まりました。写真は世界を変えたのでしょうか? 答えはノーですが、大きな影響を与えました。写真は私たちの信念と責任感に 疑問を投げかけてくれます。ハリケーン・カトリーナの罹災後に誰もが見た写真です。何百万という人が 強い衝撃を受けたことでしょう。そしてこの感情は 2008年の大統領選のときのアメリカ人の感情と そう変わらないのではと思います。

残念なことに重要な意味を持つ写真には あまりに鮮明で見るに堪えないものもあります。1枚写真をお見せします。ユージン・リチャードがイラク帰還兵を撮った写真で、まだ出版されていない傑作 「兵士たちの戦争」の作品です。しかし写真は戦争の悲劇を伝えるために 鮮明である必要はありません。アーリントン国立墓地でジョン・ムーアが撮影した1枚です。世界中の紛争地域からの 張りつめた空気を感じ取ったあとに見る、静かな場所からの写真には 他のどの写真よりも心を打たれます。

アンセル・アダムスの「写真家は写真を撮影するのでなく――作るのだ」という言葉は間違いだと思います。私が思うに、写真を作るのは写真家ではなく あなたなのです。それぞれの写真に 自分の価値観や思想を重ねると、写真がそれに反響してくれるのです。私の会社には7000万もの写真がありますが、私のオフィスには1枚です。こちらです。次にみなさんが 何かを語りかけてくる写真に出会ったとき、なぜなのかもっと良く理解し、何らかの行動に移してくださることを今日皆さんとお話をして確信しました。

協力してくださった写真家の皆さまにも感謝しています。

観衆:(拍手)

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このプレゼンテーションについて

写真は歴史を保存するだけではありません-写真は歴史を作るのです。ゲッティ イメージズのジョナサン・クレインがTEDユニバーシティで、その最も象徴的な写真を公開します。強烈な印象を心に焼き付ける写真は、一度見ると目をそらすことができません。もう知らないふりはできないのです。

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