なぜ世界にWikiLeaksが必要なのか(19:33)

ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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ようこそ ジュリアン あなたの作った WikiLeaksが この数年すっぱ抜いてきたものは 世界中の報道機関すべてを 合わせたよりも 多いと伺いました そんなことって あり得るのでしょうか?

あり得て いいのでしょうかねえ… 憂えますよね― 小さな活動家の一団の方が 機密情報を より多く 公開できているなんて 世界の報道機関の仕事ぶりは まずいのではないでしょうか

どういう仕組みなんですか? どう 情報を受け取り― どう プライバシーを守っているんですか?

私達が受け取る情報は おそらくは 内部告発によるものです データの受け渡し方法は いくつも用意しています 例えば最新の暗号技術を用い インターネット上で痕跡を消しつつ スウェーデンやベルギーのような 法的保護の整った国を介しながら データをあちこち転送します 普通の郵便という方法もあります 暗号化されていることもあれば されていないこともあります それを 普通の報道機関のように 裏を取り 形式を整えます データが巨大だと なかなか厄介な作業です それを世間に公表し 当然予想される 法的 政治的な攻撃から 身を守ります

つまり 情報の正当性を 検証しているということですね しかし 情報源が誰なのかは 実際 分からないんですよね?

ええ 滅多に分かりません たとえ分かったとしても すぐに情報を破棄します (着信音) ああ しまった

観衆:(笑)

きっとCIAですよ TEDの会員コードを教えろと

観衆:(笑)

では 実例を見てみましょう これは何年か前に あなた方がすっぱ抜いたものです スライド 出るかな… ケニアでの話です どんな情報を公開し それでどうなったのでしょう?

これは「クロール レポート」です 2004年の選挙後に ケニア政府が作らせた 極秘のレポートです 2004年まで ケニアは18年間 ダニエル アラップ モイにより 支配されていました 彼はケニアの独裁者でした そこへ 汚職一掃を 望む人々に推され キバキが権力の座に着きました そして200万ポンドかけて この「クロール レポート」と 関連レポートを作ったのです それから政府はこれを ケニアで1番の金持ちだった― 今でもそうですが― モイに対抗する 武器として使ったのです ケニアのジャーナリズムにおける 渇望の品です 私は2007年にケニアに赴き 選挙の少し前に どうにかこれを入手しました 12月28日の国政選挙の時です 私達がこのレポートを公開したのは キバキ新大統領が 追放するはずの― ダニエル アラップ モイと 手を結ぶことに決めた 3日後のことでした だからこのレポートは キバキ大統領を患わせる 目の上の瘤のようになったのです

簡単に言うと このレポートに関する情報は ケニア側の機関が公開したのではなく 外部からケニアに入ってきたのですね? それで選挙結果が変わったと お考えですか? ええ ガーディアン紙の一面に載って その後 タンザニアや南アフリカ等の 周囲の国の新聞にも載ったことで ケニアに情報が入りました 2、3日すると ケニアのマスコミも 報道しても安全だと思うようになり 20日連続でテレビで流しました ケニアの情報機関の調査によれば 投票に 10%の違いが出たそうです それにより 選挙結果が変わりました

あなた方が公開したことで 本当に世界を変えたわけですね

ええ

観衆:(拍手)

次は バグダッドでの戦闘の 短いビデオクリップを ご覧に入れます 実際は長いのですが ここでは一部だけ お見せします 衝撃的な映像だと警告しておきます

(無線) 視野に入ったらぶちかませ そちらの部隊を確認した ハンヴィー4台と… 撃ってよし 了解 掃射する 片付いたら知らせてくれ やっつけろ 全部吹っ飛ばせ 行け! (機関砲の発射音) 掃射…掃射… (機関砲の発射音) 掃射… こちら ブッシュマスター2-6 即移動したい 了解 敵8人と交戦 ヘリ2機 確認 依然交戦中 了解 捕捉した 2-6 こちら移動中だ おっと失礼 どうなってたんだ? おいおい カイル ハッハッハ 当たった

この映像でどんな波紋がありましたか?

関係者には大きな衝撃が 走りました 私達はバグダッドに2人送り 追跡調査しました 今の映像は この時に起きた 3度の攻撃の 最初の部分です

確か 11人がこの攻撃で亡くなり ロイター記者が2人含まれていたという?

そうです 2人のロイター記者が死に 2人の幼いこどもが 重傷を負いました 全部で18人から26人が 殺されました

この映像の公開によって 人々の間に ものすごい怒りが起きました その怒りを引き起こした 大きな要素は何だったと思いますか?

おそらく 甚だしい力の不均衡を 目の当たりにしたことではないでしょうか くつろいで歩いているところへ 突然 1キロ先からアパッチヘリが 30ミリ機関砲弾を 全員に浴びせかけたのです 撃つべき口実を探しながら… 救助に来た人たちまで殺しました それにあの2人は 常勤の記者で 明らかに反乱者ではありません

米の諜報分析家が 逮捕されましたね ブラッドリー マニング上等兵です 彼はこのビデオ他 28万本の 米大使館の機密電信を WikiLeaksに渡したと チャット上で認めた と言われていますが 本当でしょうか?

電信の話は否定しました 5日ほど前に 彼は 15万本の電信を入手し― 内50本を漏洩したことで 告発されました 私達は 今年初めにレイキャビクの 米大使館から入手した 電信を公開しましたが それは無関係です 大使館へは私が行ったのですから

ではもし 何千本という 外交電信を 受け取っていたとしたら…

(ジュリアン:公開します) …公開するんですね?

ええ (クリス: どうして?)

このようなものは 例えば アラブ諸国の政府における 人権侵害が本当のところ どうなっているのか 明らかにしてくれます 機密解除された電信を見れば そういった資料があるのが分かります

もう少し広く見ていきましょう どのような信念に基づき 機密情報の漏洩を勧めることが 正しいと お考えになるのですか?

どんな情報が世界に重要で― 改革を達成させるのか― という問いがありますね 様々な情報がありますが 組織が金をかけてまで 情報を隠そうとしているというのは その情報を世に出せば 社会的利益があるという よい目印になるのです なにしろ 情報を― 熟知している企業が 必死に隠そうとしているわけですから それが私達が活動する中で学んだことです ジャーナリズムは 歴史的にそういうものなのです

しかし リスクはありませんか? 関係者や 社会全体に対して? 漏洩によって 予期せぬ結果が 生じることはありませんか?

そういうことは 起きていません 私達は万全を期しています 個人的な情報 個人を特定できる情報は 特別な扱いをしています 正当な秘密というのも存在します 例えば 個人の医療記録などは 正当な秘密です 私達が相手にしているのは 良心に動かされた 内部告発者です

良心に動かされたにしても たとえば誰か 息子が米軍で働いている人が 言うかもしれませんよね― “あれは 誰かが思惑があって 流出させたんだ アメリカ兵が笑いながら 人を殺す映像を公開したことで 世界中の何百万という人が アメリカ兵はみんな人でなしだと 誤解してしまった 息子は違うのに なんてことを!” それに対して どう答えますか?

そういうことはよく言われます しかし考えてみてください バグダッドや イラクや アフガニスタンの人たちは… ビデオを観ずとも こういう光景を 日常で目にしているのです だから彼らの意見や認識を 変えることはありません 私達が望むのは このような行為に 費用を払っている人たちの 意見や認識を変えることです

あなたは このような企業や政府の 暗い一面に光りを当てる 方法を見つけたわけですね 光は良いものです しかし その光を当てるために 他でもないあなたが 情報源を 機密扱いしなければならないとは 皮肉なことではありませんか?

そうでもありません WikiLeaksの反体派は 現れていません 相反する情報を示す人も 現れていません そうなると 難しいことになるのでしょうが… 私達は WikiLeaksの任務遂行が 道義的に正しいと 納得してもらえるよう 活動しているつもりです

ここまでお話を伺ってきて― 会場の皆さんの意見はどうでしょうか WikiLeaksとジュリアンに対しては 見方が分かれると思います “大切な光をもたらしてくれる みんなのヒーロー”という見方と “危険なトラブルメーカー”という見方です ヒーローだと思う方? 危険なトラブルメーカーだと思う方?

ほら 少しはいるでしょ! (笑)

皆さん寛大なんですよ もう1つの例を見ましょう この話は まだ公になっていませんが ここTEDにて 教えてくださるそうですね その“最近起こった面白い話” とは 何なのでしょう?

これは私達の日々の活動を お見せできる いい例です 去年の暮れ 11月に アルバニアで 一連の 石油流出事故がありました メキシコ湾の流出事故みたいなものですが そこまで大規模ではありません 私達は あるレポートを手に入れました 事故の技術分析資料のようでした そこには ライバル石油会社の 警備員がトラックでやってきて 爆破したのだと書いてあり― アルバニア政府が絡んでいる とのことでした しかし その資料には表紙も何もなくて 非常に扱いの難しいものでした 内容は分かるものの 誰が書いたか分からないのです ライバル会社がでっち上げた 可能性も疑いましたが 但し書き付きで 公開しました “この資料に関しては 疑念がある 中身はもっともらしく見えるが 検証はできなかった” そしたら今週になって このレポートを書いた会社から 手紙が届きまして 情報の流出元を調べたいと… (笑) “あの資料は誰から?” と聞くので 私達は “教えてください 正確には どの文書のお話でしょうか? 文書の法的権利は お持ちですか? 本当にお宅のなんですか?” そうしたら彼らは Microsoft Wordの 作成者欄の スクリーンショットを送ってきました そういうわけです (拍手) こういうことは 良くあります 文書の正当性を検証する 1つのやり方です 相手に手紙を書かせるわけです

BP内部からの情報というのは お持ちですか?

たくさんあります あいにく資金調達や 技術的な 作業に追われ ここ数ヶ月は 公開の頻度が最小限に 抑えられています 最近 急上昇した 社会的関心に対応できるよう バックエンドのシステムを再構築しているんです 困ったものです 急成長するベンチャーが陥りがちな “自らの成長についていけない” という問題です つまり 莫大な量の 手腕を要する 機密情報の 開示が行われていますが 処理や検証作業の 人員が足りていないのです

ジャーナリスト的な作業を受け持つ ボランティアや資金を募るのが 主な障害というわけですね?

ええ それも信頼できる人間が必要です 扱っているものの性格上 組織として急速に成長する― ということが難しいのです 組織を再編する必要があります 国の安全保障に関わる 高度な機密情報と 重要度の低い情報は 別なグループで扱うべきでしょう

あなたの性格と ここに至るまでの 経緯を知りたいのですが 子供の頃 37もの学校を 渡り歩いたそうですね 本当なんですか?

両親が映画産業で働いていたのと あるカルトから逃げていたのが― 重なって そんなことに…

観衆:(笑)

心理学者なら 言うでしょうね 妄想的な人間が育つ格好の条件だと

ああ 映画産業がですか?(笑)

観衆:(拍手)

それから あなたは若い頃 ハッカーをしていて 当局と衝突したそうですね …いえ ジャーナリストです 若い頃から― ジャーナリストで 活動家でした 十代の時 雑誌投稿が元で 起訴されたことがあります ハッカーという言葉は 注意して使う必要があります この技術は様々なことに使えますが あいにく 最近では お年寄りの預金口座から盗む ロシアン マフィアに使われています だから その言いまわしは かつてのようには 良くありません

あなたが どこかのお年寄りから お金を盗むとは 思いもしませんが でもあなたの中心的な価値観は 何なのでしょうか? それがどんなものなのか― また そう考えるに至った きっかけを教えてください

きっかけは 特にありませんが 中心的な価値観は… 有能で親切な人間は 犠牲者を生み出すのではなく 犠牲者を助ける ということです これは父をはじめ 私が人生で出会った 有能で親切な人たちから 学んだことです

なるほど 有能で親切な人間は 犠牲者を生み出すのではなく 助ける

ええ もっとも私は 闘争的な人間で 助けるという部分は 強くありません しかし 犠牲者を助ける方法は 他にもあります 私は悪人を取り締まることで 犠牲者を助けます それが 長年の間 私の性格の核を 成してきたものなのです

最後に 手短にお聞きしたいのですが アイスランドでは 何があったんですか? あなたは そこで何かを公開して 銀行と衝突しましたね そして その話の報道が 差止命令を受けましたよね 代わりに あなたのことが報道され 注目を集めました その後の展開は?

これは重要な事例です アイスランドの金融危機は どの国よりも 深刻なものでした 金融業のGDPが その他すべての 10倍にもなっていたのです 私達は去年の7月に レポートを公開したのですが 国営テレビが 放送5分前に 差止命令を受けました 映画のシーンみたいに 差止命令が ニュースデスクに届き キャスターは “こんなの初めてです どうしましょう?” と だからその代わりに WikiLeaksのサイトを見せたのです それでアイスランドで有名になり この問題について話しました 再びあってはならないという 気運が高まり その結果として アイスランドの政治家や 国際法の専門家と一緒に アイスランドが 世界一 報道の自由が保障された― 報道の聖域となるよう 一連の法案を作り上げました また 言論の自由のための ノーベル賞を設けるよう 働きかけました アイスランドは北欧の国なので ノルウェー同様 システムに入り込みやすいのです ほんの一ヶ月前のことですが アイスランド議会で 満場一致で可決されました

クリス: すごいですね

観衆:(拍手)

最後の質問です 社会はどうなっていくと思いますか? 巨大な権力による監視が 強くなっていくような 社会になると思いますか? それとも我々が 権力を 監視するような社会になると思いますか? あいるは可能性は五分五分でしょうか?

どちらに転ぶかは 分かりません 言論の自由や透明性を巡って 大きな力が 世界中で働いています EU諸国の間や 中国とアメリカの間でです どちらに転がるのでしょう? 予想は難しいです だからこそ 現在は面白い時なのです ほんのちょっとした努力で どちらに押しやることもできるのですから

会場の思いを代表して言いますが ジュリアン どうか気をつけて 健闘をお祈りしています

ジュリアン: ありがとうございます クリス: ありがとうございました

観衆:(スタンディングオベーション)

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このプレゼンテーションについて

物議を醸しているWebサイトWikiLeaksでは、極秘にされている文書やビデオを収集しています。喚問のため米国当局から追求されていると言われるWikiLeaksの創設者ジュリアン・アサンジが、TEDのクリス・アンダーソンに、サイトがどのように運営されているのか、どのようなことを達成してきたのか、そして何が彼を駆り立てているのか話しています。このインタビューには最近注目を集めたバグダッドにおけるヘリ攻撃の映像も登場します。

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