あなたが使うスマートフォンは人権問題である(7:44)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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2016年の春 AppleとFBIの間に起きた 法廷闘争に 世界中の注目が集まりました。
Appleは自社製のモバイル機器に セキュリティ機能を組み込んでいて 所有者以外の誰にも デバイス上の データは見られません つまり犯罪者やハッカー 及び 各国政府さえ 手出しはできないのです Appleの顧客にとっては 素晴らしいことです 一方 政府にとっては不満の種です Appleは 政府に手を貸す 監視ビジネスから 足を洗うことを 意図的に選んだのですから Appleは 政府やその他の主体による 監視を可能な限り 難しくしようとしています。
スマートフォンの世界市場には 実質2種類のOSがあります iOSとAndroidです iOSはApple製 AndroidはGoogle製です Appleは多くの時間と費用をかけて 可能な限り自社製品の 機密性の向上に努めてきました iPhoneに保存されるデータはすべて デフォルトで暗号化され 利用者間でやり取りされる テキストメッセージもデフォルトで 暗号化されています ユーザーが設定する必要はありません。
これがどんな意味を持つかというと 警察が押収したiPhoneに パスワードがかかっている場合 警察がそこからデータを取り出すのは 相当困難で おそらく不可能だということです それに比べて Androidのセキュリティは そこまでではありません 一般に販売されている Androidスマホの ほとんどは デバイス上のデータが デフォルトでは暗号化されておらず Android標準のテキストメッセージ・アプリは 暗号を使用していません だから警察がAndroidスマホを押収すれば おそらく そのデバイスから 必要なデータをすべて 取り出せるでしょう。
世界の二大企業が作った 2種類のスマートフォンがあり 片やデフォルトでデータが保護され 片や保護されていないのです。
Appleは高級品を扱っていて 高価格帯市場を支配しています 私たちが高級品メーカーに 期待するのは 製品により多くの 機能を搭載することです ただ 誰もがiPhoneを 買えるわけではありません そこがAndroidが 絶対的に支配する市場 — 中低価格帯の市場です 電話1台に600ドルは払えないか 払いたくない15億人のための スマートフォンなのです。
でも Androidの市場支配で 引き起こされるのは いわゆる 「デジタル・セキュリティ格差」です つまり現在 広がりつつある格差とは プライバシーとセキュリティの 格差であり 金持ちは初期設定でデータを 保護されたデバイスが買えるのに 貧乏人のデバイスは 初期設定ではデータが ほとんど保護されていないのです。
平均的なAppleの顧客を 思い浮かべてください 銀行員や弁護士 医師や政治家です こういった人々の ポケットに入っているスマートフォンは 通話やテキストメッセージ デバイス上のすべてのデータを 暗号化しますが 情報を保護するために 何もする必要はありません その一方で貧しい人や 社会的弱者は 使用するデバイスのせいで 監視活動に対して 非常に脆弱な立場に置かれます。
私が暮らすアメリカでは アフリカ系アメリカ人が 犯罪の容疑者となる可能性が高く 個人情報を収集されやすいため 国家による監視の ターゲットにされやすい現状があります それでもアフリカ系アメリカ人は 監視に対して自衛できない Androidデバイスを 使う場合が非常に多いのです これは問題です。
忘れてはいけないのは 監視は「道具」だということです 権力のある者が 権力のない者に対して 使う道具なのです Appleのような企業が 人々に簡単な暗号化の手段を提供するのは 間違いなく素晴らしいことだと 私は思っていますが 政府の監視から自分を守れるのが 豊かで権力のある人々だけだとしたら それは問題です これはプライバシーやサイバー・ セキュリティの問題にとどまりません 人権の問題なのです。
Androidで初期設定時の セキュリティが不十分なことは Androidのデバイスに頼る 貧しい人々や社会的な弱者の 問題にとどまりません 実は 民主主義の問題なのです この点を説明しましょう。
現代の社会運動は テクノロジーに頼っています 「Black Lives Matter(黒人の命も大切)」 「アラブの春」「ウォール街を占拠せよ」もそうです こういった運動の リーダーやメンバーは スマートフォンで連絡や 連携をとることが多くなっています ですから こういった運動を 脅威と感じる政府は 当然 リーダーや その人のスマートフォンも 標的にするはずです さて 未来のキング牧師や マンデラやガンジーが iPhoneを手にして 政府の監視から 逃れる可能性もなくはありません でも彼らのポケットには 安価な20ドルのAndroidスマホが 入っている可能性の方が高いでしょう。
だから デジタル・セキュリティ格差 について 何の策も講じなければ — この社会に暮らす人がすべて 暗号化の恩恵を同じように受けられて 全ての人が平等に 国家による監視から 自衛できるようにしなければ — 貧しい人や社会的弱者が 監視の目に晒されるだけでなく 将来の人権運動は 可能性が開花する前に 潰されてしまうかもしれないのです。
ありがとう。
観衆:(拍手)
ヘレン・ウォルターズ: ありがとう クリス 質問があります 最近 報道で明らかになりましたが Facebookのマーク・ザッカーバーグは ウェブカメラに覆いをつけていて ヘッドフォン・マイク端子にも 何かしています そこで 個人的に聞きたいのですが あなたもしていますか? ここにいるみんなと私のために 教えてください みんな そうすべきですか? 覆いをつけるべきでしょうか?
クリストファー・ソゴイアン:何か貼るのは… 私は実はバンドエイドが気に入っていて それは通話したい時や Skypeを使いたい時に 剥がして また貼り直せるからです ウェブカメラに何か貼るのは コストパフォーマンスの面で プライバシーを守る 最高の方法じゃないでしょうか 世間には ライトを点灯させなくても ウェブカメラを乗っ取れる マルウェアや悪意のあるソフトが 本当にあるんです これを犯罪者や ストーカーが使っています オンラインで「元カノ監視」用ソフトが 19.99ドルで購入できるんです すごく怖いことです それから もちろん 政府もそれを使います それに これには明らかに 性的暴行の要素もあって この手の監視は 女性など 社会的に辱められうる人々に対して 非常に効果を発揮します たとえ 隠し事などないと思っていても 子供や若者と暮らしているなら 最低限 その子たちのカメラに何か貼って 守ってやるべきです。
ヘレン:なるほど ありがとう。
クリス:ありがとう。
ヘレン:ありがとう クリス。
観衆:(拍手)
皆さんが使っているスマートフォンは、単なる個人の趣味以上の意味を持っています。どの程度、追跡できるかを決める可能性があるのです。プライバシー問題の専門家クリストファー・ソゴイアンは、AppleとAndroidデバイスで使用されている暗号化の明らかな違いについて解説し、広がりつつあるデジタル・セキュリティ格差に目を向けるよう促します。ソゴイアンは訴えます。「政府の監視の目から自分を守れるのが豊かで権力のある人々だけだとしたら、それは問題です。これはプライバシーやサイバー・セキュリティの問題にとどまりません。人権の問題なのです」