不時着事故から学んだ三つのこと(5:02)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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想像してみてください 上空900メートルを越えて上昇中に大爆発 機体は煙に包まれています エンジン音が カラッ カラッ カラッ カラッ カラッ カラッ カラッ 不安に襲われてきます その日は ちょうど「1D」に座っていました 客室乗務員と話せる唯一の席です さっと 視線を送ると 「大丈夫ですよ 鳥があたったようですね」 でも飛行機は 方向転換しています 飛び立ってすぐで マンハッタンが見えています 2分後 同時に 三つの事が起こりました ハドソン川と並行するように機体が向けられました いつもの経路ではありません (笑) エンジンを切って 機内を静寂が包む中 機長の声が流れます 初めて聞く とても冷静な一言です 「衝撃に備えてください」 客室乗務員に聞く必要はもうない (笑) 客室乗務員の目を見ると 恐怖が読み取れ 死ぬんだと思いました。
その日 学んだ三つのことをお話しします まず 一瞬で何もかもが変わるということ だれにでも やるべき事や やりたいことが たくさんあります 連絡をとるつもりだった人 修理したかったフェンス やり残したことなどが 浮かんできました 後で その時の思いを振り返って こう思い立ちました 「安物のワインを集めよう」 そんなワインなら 人が来たときに開けられるからです もう 人生で 何も後回しにしたくない そういった切迫感と決意から 私の人生は大きく変わりました。
そして二つ目 ― ジョージ・ワシントン・ブリッジの すぐ近くを通過しながら 感じていたのは まさに後悔の気持ちでした きちんと生きてきて 人を思いやったり つまずきながら 常に上を目指してきましたが 思いやりの中には エゴもありました 大切な人との時間を どうでもよいことで 無駄にした という後悔を感じました 人間関係についても考えました 妻や友人などのこと 後で それを思い返して 人生から負のエネルギーを排除することにしたら ずいぶん楽になりました 2年間 夫婦げんかはありません 最高です 今 私が優先するのは 正しさより 幸せです。
そして 三つ目 ― カウントダウンが始まって 「15... 14... 13...」 水面が近づいてくると 「爆発してくれ」と思いました ドキュメンタリーで見るように バラバラに吹き飛ぶのは嫌です どんどん下降する中 感じたのは 「死ぬのは怖くない」ということです もとから心づもりがあったかのようです でも とても悲しいのです 死にたくない 自分の人生が好きだ その悲しみは ある思いにつながりました たった一つの願いです 「子どもの成長だけでも見届けたい」 1ヶ月後 娘の発表会に行きました 1年生で 芸術的な才能はさほどですが ... 今のところです (笑) 声を上げて泣きました 幼い子どものようでした そこで はっきりと気付きました その時 二つの点がつながり 気が付いたのです 人生で大切なことは一つ それは 良き父であること 何にもまして大切な 人生のたった一つの目標は 良き父であることです。
あの日を生き延び 奇跡を授かりました そして 未来に立ち会える という奇跡 戻ってきて 以前と違う 生き方ができる奇跡もです 今日 飛行機に乗る方は 同じことが起こったらと想像してください 起こらないで欲しいですが― どう変わりますか? 長い人生 そのうちやるつもりだったことの どれをやりますか? 人付き合いをどう変えますか? 負のエネルギーをどう変えますか? 何より 親としてベストを尽くしていますか?
ありがとうございました
観衆:(拍手)
2009年1月、ニューヨークを流れるハドソン川に不時着した1549便の最前列に座っていたリック・エリアス。不運に見舞われ降下を続ける機体の中で、心をよぎった思いとは。TEDで、初めて打ち明けてくれます。