スクリーンと向き合う子供達に対する3つの不安―何故それが真実ではないのか(11:52)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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まずは今 皆さんの ポケットに入っている このデバイス スマホについて 考えてみたいと思います アメリカ人の40%以上が 毎朝起きてから 5分以内に スマホの チェックをしているのです その後 その日の内に もう50回チェックをします 大人はこのデバイスを 必需品だと思っています
しかしこれが 3歳児の手にあると想像したら 皆さん 不安になりますよね 親ならとても心配です この機械が子供達の 社会的成長を妨げるのではないか ベッドから出て 体を動かすのを 阻害するのではないか これが児童期を 駄目にしてしまうのではないかと― この態度に 私は異議を唱えたいのです 私には 未就学児が スマホと向き合うのを ワクワクしながら 目にする未来を 思い描く事が出来るのです スマホによって 子供達は もっと体を動かすようになります 標準テストよりもスマホを通しての方が 子供達が何を学んでいるかが よく分かるのです 実におかしな考え方ですが スマホの画面には子供と親との 実生活での会話を促す力が あると思うのです
私はこの主張を擁護するような タイプではありませんでした 私は児童文学を研究していました 子供と本に関する仕事を しようと思ったからです しかし 約20年前 興味の対象が変わるような ある経験をしました 未就学児とウェブサイトに関する 調査研究の手伝いをしており 私はマリアという 3歳児の担当となりました 彼女は 一度もコンピューターを 見た事がなかったので まずマウスの動かし方から 教えなければなりませんでした 私が画面を開くと 彼女がマウスを動かし フクロウⅩというキャラクターの上で カーソルを止めました 彼女がそうすると フクロウは翼を持ち上げて 彼女に向かって 手を振ったのです マリアは マウスを落とし テーブルを押しのけて 飛び上がり フクロウに向かって 必死に 手を振り返しました 彼女とフクロウの繋がりは 本能的なものでした それは受動的な 画面上の経験ではなく 人間的な経験でした それは正に 3歳児らしいものだったのです
私は PBS Kidsに 15年以上勤務しており 子供の生活に テクノロジーの力を役立てる事に 重点を置いて仕事をしています 社会は 大きな好機を 逃していると思うのです 私達がこれらのデバイスに関して 恐怖や疑いを持つせいで 子供達の生活の中で それらの潜在能力を知る事が 出来なくなっているのです
子供とテクノロジーに関する不安は 今に始まった事ではなく 以前からあった事です 50年以上前 新たにメディアを 支配した物が 物議が醸しました テレビです リビングにある 例の箱の事です それは 子供同士を 引き離す物かも知れず 子供達を 外の世界から 遠ざける物かも知れません しかしその時『Minster Rogers' Neighborhood』の 司会を長く務めたフレッド・ロジャースは 社会に対して テレビを 情緒を育む道具だと 見なすよう説いたのです テレビを 情緒を育む道具だ と見なすよう説いたのです 彼がやったのはこうです テレビの中から まるで子供達1人1人に その気持ちを尋ねるように 会話をしたのです そして間を取りました 子供達に考える時間を 与えたのです 今では あらゆるメディアで 彼の影響を目にしますが 当時は革命的な事でした 子供達の生活に密着したテレビに対する 私達の見方を変えたのです
こんにち それはテレビのみに 留まりません 子供達は 様々なデバイスに 囲まれているのです 私も親ですし 不安な気持ちは分かります しかし 親が抱く 3つの共通の不安を 見直してみたいのです そしてその各々の中にある好機に 目を向けてみたいのです
では いきます 不安その1 「画面は受動的な物だ そのせいで 子供達は 体を動かさなくなるだろう クリスとマーティン・クラッツは 動物学者の兄弟で 『ワイルドクラッツ』という 動物ショーの司会をしています 2人は PBSチームに 提案をしてきました 「どのデバイスにも カメラが付いているから これを使って 何か出来ないだろうか?」 このカメラで 動物の真似をする ごく自然な子供の遊びのパターンを 捉えられるだろうか?」
最初に取り上げたのはコウモリです 子供達がこのゲームをする為 中に入ると 羽根を付けた自分が 画面に映るのを見て 大喜びしていました しかし 私のお気に入りは この部分です ゲームが終わり 私達が画像を消すと 子供達は コウモリのままでいるのです 部屋中を 蚊を捕まえる為に 右へ左へと飛び回ります 子供達は大事な事を 覚えていました コウモリが 夜に飛び回る事です そして寝る時は 羽根を畳んで 逆さまにぶら下がる事を 覚えていたのです このゲームで 俄然 子供達は活発に動き回りました それだけでなく外に出ると 子供達は鳥を観察して 考えるのです 「僕がコウモリになって飛ぶのと 本物の鳥の飛び方って どう違うのかな?」 デジタル技術は子供達が 現実の世界に応用できる 具体的な学びの体験を 促したのです
不安その2 「テレビの画面上でゲームをするのは 単なる時間の無駄だ ゲームのせいで 子供達は 勉強をしなくなるだろう」 ゲームの開発者は バックエンドデータを見れば プレイヤーのスキルに関して いろいろ学べる事を知っています プレイヤーが どこで一時停止したか? 正解を見つけるまでに どこで間違いを犯したのか? チームはそれを 学校での学習に応用しようと考えました
ボストン公共放送局の プロデューサーは 一連の『おさるのジョージ』ゲームを 算数をテーマに創りました 研究者が介入し 80人の未就学児童に そのゲームをさせました その後 その未就学児80人全てが 算数の標準テストを受けました 早い段階で このゲームによって 子供達は いくつかの 重要なスキルを 身につけられるとわかりました しかしUCLAの共同研究者は さらに掘り下げた調査をしたいと考え データ解析と子供達の評価に 焦点を当てました ゲームのバックエンドデータを取り 子供達の 算数の点数を予測する為に それが使えるかどうかを確かめました ニューラルネットワークを作成し このデータを使う為に コンピューターを 根本的に訓練しました これが その結果です これが 子供達の 算数の標準テストの点数です そして これが 『おさるのジョージ』ゲームの 結果に基づく コンピューターによる 子供達の予測点数です 予測は驚く程 正確です 殊に このゲームが評価の為に 作られた物ではないという事実を 考慮に入れると― この研究を行ったチームは この手のゲームは 子供達の認知学習に関する事柄を 標準テストより 上手く推し量れると思っています ゲームが 教室でテストをする時間を 削減出来るならどうでしょう? ゲームで 生徒のテストへの 不安を拭えればどうでしょう? 教師が 個別学習にもっと 力を注ぐ手助けとなる為に どうやって ゲームが教師に 洞察を与えられるでしょうか?
そして 私が述べたい 3つ目の恐怖とは しばしば 最大の恐怖だと 思っているものです それが こちらです 「画面は 私から子供を 引き離してしまう」 あるシナリオを見ていきましょう あなたが仮に 親であり 夕食の準備をするのに 25分間 邪魔されたくないとします その為に あなたは3歳の我が子に タブレットを手渡します さて この時が正に自分のやった事に 心底 罪悪感を 感じる瞬間でしょう
しかし こう想像してみてください 20分後 いつもあなたの 手元にある携帯に 1通のメッセージが届きます こう書いてあります「アレックスが 言葉遊びのゲームをやってるんだ 一緒にやろうと言ってよ catと同じリズムの言葉を 思いつかない? ballはどうかな?」 私達の研究では 親はこんな ちょっとしたヒントを受け取ると 背中を押された気がするのです 親はとてもワクワクして 夕食のテーブルで 子供達と一緒に ゲームをするのです 子供達も 大喜びでやります 子供の遊んでいるものを 親が知る事は 魔法のように 感じられるだけでなく 子供達は親とゲームをするのが 大好きなのです 親がメディアについて 子供達と話すという行為そのものが 信じられない程 強力なものとなるのです
昨夏 テキサス工科大学が 研究を発表しました 『Daniel Tiger's Neighborhood』 という番組が 子供達の間で 共感の育成を 促進させられるというものです しかしこの研究には 非常に重要なポイントがあるのです 最大の効果は 見た番組について 親が子供と話し合う時にしか 得られないという事です 見るだけでも 話をするだけでも 十分ではありませんでした その組み合わせが 重要だったのです だから この研究を読んだ時 未就学児の親達は実際 子供達が遊んでいることや 見ている事の内容に関して 滅多に話をしないものだと 考え始めたのです
そこで 私は4歳の我が子と 話してみる事にしました 私はこう言いました 「さっきは 車のゲームをしていたの?」 すると ベンジャミンが 元気に言います 「そうだよ!キュウリから 車を作ったのを見た? トランクを開けるのが 凄く大変だったよ」
(笑)
ゲームの何が 面白かったとか どうすれば うまくいったかという この陽気な会話が その朝 幼稚園へ行く間 ずっと続きました
私は全てのデジタルメディアが 子供達に有益だと言ってはいません 子供向けコンテンツの 現在の状況に関し 私達が懸念を持つ 正当な理由があるのです 私達がバランスについて 考えるのは当然の事です― 子供達が学び育つのに 必要な全ての事柄に対し デバイスは どう役立てるのでしょうか? しかし 私達が 不安がってばかりいると 真に重要なポイントを見失うのです つまり 子供達は 大人が1日に50回以上も スマホをチェックするような 世の中に 生きているという事です
スクリーンは 子供達の生活の一部です もし私達が そうでないふりをしたり 不安で押し潰されそうになったら 子供達は それを使う理由や方法を 決して学ぶことはないでしょう 私達がこのメディアに もっと期待をかけてみては どうでしょうか? 子供達と定期的に メディアの内容について 話し合ってみては どうでしょうか? 子供達の生活の中で このテクノロジーが与える良い影響を 私達が探し始めては どうでしょうか? その時 このツールの可能性は 現実となり得るのです
ありがとうございました
(拍手)
私達は1日に50回もスマホをチェックするのに、子供達がそれで遊ぶ時には神経質になってしまいます。スクリーンが児童期を台無しにしているのでしょうか?子供のメディア専門家であるサラ・デウィットはそうではないと言います。このトークを聞けば、夕食の支度をする間子供にタブレットを渡す時の罪悪感が少し減るかもしれません。デウィットは、デバイスを使う子供達を私達大人がワクワクしながら眺める未来を思い描きます。また、新たなテクノロジーによって子供達が成長し、繋がり合い、学ぶことができる様子を私達に見せてくれます。