地球上の生活を向上するために宇宙技術をどう使えば良いか?(10:52)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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17歳の時に進む道を決めました
フロリダの暑い夏の夜に 海岸から数キロ離れた 野外に立っていました 奇跡が起こるのを待っていたのです その夏 私はNASAの ケネディ宇宙センターで インターンとして働く機会に恵まれ 私が待っていた奇跡とは 科学者たちがブラックホールの縁を観察できる チャンドラX線観測衛星を載せた スペースシャトル・コロンビアの打ち上げです 空一面が光に満たされました 真夜中に昼がやって来たかの様でした すぐに私の胸を震わせる ロケットエンジンの轟音を感じました それは奇跡でも何でもなく 何千もの人々が チームとして力を合わせた 努力の結晶で 不可能な事を実現するような仕事です 私はそんなチームに加わりたいと思いました
そこで航空宇宙工学を学べる大学に 出願する事にしました その次の年に 工学のトレーニングをMITで開始しました そして宇宙ロボットを製作する 学生プロジェクトに参加しました すべては私の計画通りに進みましたが とても重要な事で迷っていました 私の迷いは夏休みにやって来ました ケニアにある学校を訪れて ボランティアとして5歳から17歳の少女に 英語と数学と科学の授業をしました 彼女たちはスワヒリ語の歌を教えてくれました ほとんどの時間は 彼女たちを理解する事に費やし 一緒にいる時間を楽しみました そんな少女たちと コミュニティのリーダーたちは 大きな障壁を乗り越えて 彼女たちが人生において 最大の可能性を実現することを 目指していました 私はそのチームに加わりたいと思いました
障壁を崩すチームの一員として 世界中の少女たちの生活を改善する 手伝いをしたかったのです ただ 宇宙工学を学んでも あまり役立たないのではないかと 心配していました このケニアのチームは 私が宇宙について学んだ技術を 使えないかもしれない しかしうれしい事に 私が間違っていたと後日学びました 私はNASAのインターンに戻りました 今回は ある指導教授が ケニアの様な国は生活改善のため 何十年も宇宙技術を使っていると 教えてくれたのです そのおかげで 宇宙と開発の 両方に関わる仕事ができると 分かったのです
この考え方は新しくありません 実は1967年に宇宙条約策定のために 世界中の国々が協力しました この条約では大胆な声明が策定されました 「宇宙空間の探査及び利用は すべての国の人々のために その経済的又は科学的発展の 程度にかかわりなく 続行されなければならない」 この理想を現実のものにするため 何十年も活動が続いていますが 実現していません 植民地主義や人種差別主義などの力や 性の不平等によって 多くの人々が宇宙の恩恵から 排除されたことが 宇宙は 限られた人々、富裕層 エリート層のためだけにあると 私たちが思い込む原因になっています しかしこのような態度を 受け入れる訳にはいきません すべての人々の生活を向上させる という極めて重要な使命を 世界は担っているからです
この使命のロードマップは国連の定めた 17の持続可能な開発目標に 由来します 国連に加盟するすべての国と地域は これが現在から2030年までの 優先事項であると合意しました この開発目標は 現代における 重要な機会でありチャンス— 極度の貧困をなくし 誰もが 確実に食料や清潔な水を 手に入れられるようにするチャンスです 国際コミュニティーとして ゴールの達成を目指さなくてはなりません 宇宙で培った技術は 持続可能な開発を支援します 事実6つの宇宙関連サービスが 持続可能な開発目標の達成に向けて 後押しをしてくれます これからその6つのサービスと それらのサービスが支援する 目標の例を見ていきましょう 準備は良いですか? それでは
通信衛星が電話やインターネット接続を 地球上のあらゆる場所に提供します 災害復旧においては特に重要です 台風ハイヤンがフィリピンを襲った時 現地の通信ネットワークの修理が急務となり 通信衛星と交信できる 風船タイプの衛星通信アンテナを 複数のチームが持ち込みました これは修理や復旧の際に とても役立ちました
測位衛星は衛星の位置を通して 私たちのいる位置を教えてくれます 科学者たちはこの技術を野性の 絶滅危惧動物を追跡するのに使えます このウミガメには 装置が付けられていて これが測位衛星から 位置情報を受け取り その情報を 通信衛星を経由して 科学者に送信します 科学者たちは この知識を使って より良い政策を作り 希少生物を保全する方法を 決めることができます
地球観測衛星は 環境に何が起きているかを教えてくれます 現在 およそ150機もの衛星を 60を超える政府機関が運用しています 地球観測衛星だけで この数です 最近では企業による 地球観測衛星も増えています ほとんどの政府機関は観測衛星からのデータを オンラインで無償提供しています それらの観測衛星のいくつかは カメラで撮ったこのような画像を提供します この画像はカンザス州の農耕地です でも大部分の地球観測衛星は 写真を全く撮影しません 計測をするのです 集められた計測値は 複雑な数値計算モデルによって ここに示される様な 美しい世界図に仕立てられます これは世界全体の海流や 海水温を示します 大気中の塩分や煙や塵— 全世界的な降水量や降雪量や 陸上や海洋での 植生の年周期を見ることもできます 科学者たちは降水や植生の情報を使い 地球上のどの場所が 干ばつや飢餓の危機に瀕しているかを理解し 飢餓が深刻になる前に 食糧支援の準備ができるように 援助団体に情報を提供するのです
宇宙では国際宇宙ステーションに搭載された 軌道上実験棟があります 宇宙ステーションとその中の全ての物は 地球を周回しながら 自由落下の状態にあり 重力の影響をほとんど受けません この状態を「微小重力」と呼びます 宇宙飛行士たちが微小重力環境に置かれると 彼らの身体は まるで老化が 加速したような反応を示します 骨と筋肉は弱くなり 心血管系と免疫系は変化します 科学者たちが宇宙飛行士を 宇宙でも健康に保とうと研究し 宇宙飛行士に対して行う訓練や技術を 地球上の人に応用し 私たちの健康を増進するのです
宇宙飛行士や宇宙開発 あるいは宇宙船の技術を 開発するたびに そんな発明を地球上での生活向上に 使うことが可能です これは私のお気に入りです 水の濾過装置です 鍵となる構成部品は 国際宇宙ステーションの排水を フィルタで濾過する技術が 基礎になっています 今では世界中の至る所で使われています
また 宇宙は限りないインスピレーションの 源泉になっています 教育、研究、天文学や 昔ながらの星空の観察を通じて 現在世界中の国々が工学、科学 そして宇宙に関する 自国の知識を蓄積する事で 独自の開発を促進する活動に 携わっています
世界中の 生まれたての 人工衛星の技術者を紹介します エリカ・アベリョはベネズエラ出身です エリカはベネズエラの 国家人工衛星プロジェクトの 衛星技術者としての訓練を受けています 彼女が設計したソフトウェアは チームがより優れた電力系統を 設計することを可能にしました
こちらはアデル・カスティリョ=デュランです フィリピンの出身です アデルは気象学者であり 衛星技術者なので 人工衛星からのデータを 自身の天気予報に活用しています
そして最後にハラです ハラはスーダン出身です 彼女はハルツームで 学部生として電気工学を 学んでいた時に 仲間の学生と 人工衛星を製作する計画を立てました その後ハラは人工衛星工学の大学院で奨学金を 受ける事になりました
ここでご紹介したお話は どれも 宇宙が あらゆる人々の利益となる 持続可能な開発にとって 本当に役立つことを示しています でも私たちにはもっとすべき事があります なぜなら人々を宇宙から除外し このような科学技術の影響を制限する— 障壁が存在するからです 多くの人にとって 地球観測のデータは複雑です 衛星通信サービスはあまりにも高価です 微小重力研究には 手が届かないように思えます この事こそが私のMITメディアラボで 教授として働く原動力なのです 最近「宇宙開発の派生利用」という 研究グループを立ち上げました 宇宙からの恩恵を制限するような障壁を 取り除くために活動しています また持続可能な開発に ずっと役立っていく 将来の応用方法を開発しようとしています 私たちは真の意味で すべての人にとって宇宙が役に立ち 宇宙を活用可能なものと言える日が来るまで この取り組みを続けます
ありがとうございました
(拍手)
ダニエレ・ウッドはMITメディアラボで宇宙開発派生研究グループを率いて、宇宙開発がもたらす利益を限られた少数の富裕層やエリートだけのものにしている障壁の解消を目指しています。 彼女は世界中で持続可能な開発に貢献できる、宇宙探査用に開発された6つの宇宙技術を紹介します。援助団体に情報を提供する観測衛星や地球上で健康増進に役立つ微小重力に関する医学的研究などです。 「宇宙はあらゆる人々の利益となる持続可能な開発にとって、本当に役立つ」と、ウッド氏は述べています。