私はいかにしてアルツハイマー病になる準備をしているか(6:26)

アラナ・シェイク (Alanna Shaikh)
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対訳テキスト
講演内容の日本語対訳テキストです。
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私の父について話したいと思います。父はアルツハイマー病です。症状は12年位前に表れ、2005年に正式にアルツハイマー病と診断されました。現在、父の病状はだいぶ悪化しています。食事や着替えに介助を要し、自分がどこにいて、今何時か分かりません。それはひどくつらいことです。父は私にとってヒーローであり、人生の助言者でもありました。過去10年間、私はそんな父の面影が消えていくのを見守ってきました。

父だけではありません。世界には認知症を抱えた人が3500万人います。2030年には、その数は倍の7000万人になると予測されています。大変な数です。私たちは認知症を恐れています。症状である、困惑した表情や手の震え―増える患者数に、私たちは恐怖感を抱きます。その恐怖心ゆえに、私たちは認知症に対して次のいずれかの反応を示しがちです。
一つは否定です。「私には関係ない、そんなことが自分に起こるはずがない」。
もう一つの反応は予防です。「あらゆる予防策をとっているから、自分はアルツハイマー病にはならないはずだ」。
私は第三の道を行こうとしています。「アルツハイマー病になる準備を今からしておこう」。

予防自体は良いことです。私自身も、予防のために色々なことをしています。適切な食事、適度な運動、物事に対して前向きであること。研究の結果、予防策として勧められていることです。ただ、100%予防する方法がないことも、研究から明らかです。アルツハイマー病に狙われたら逃げる術はないのです。父に起こったことがまさにそれでした。父は2カ国語を話す大学教授で、趣味はチェス、ブリッジ、新聞にコラムを書くことでした(笑)。それでも、父は認知症になりました。この怪物に狙われたら逃げられないのです。私は特に逃れられません。この病は遺伝する傾向があるためです。という訳で、アルツハイマー病になる準備を始めたのです。

父の介護や認知症と共に生きるとはどういうことか調査することを通して、3つの準備をすることにしました。趣味を変えること、体力をつけること、そして、難しいことですが、より良い人間になることです。まず趣味から話しましょう。認知症になると次第に楽しみが減ります。古い友人のことも分からなくなるので、彼らと長い時間話すことも難しくなります。テレビを見ても混乱するだけで、しばしば恐怖すら伴います。読書にいたっては全く不可能です。認知症の介護をする人に向けた訓練では、慣れ親しんだ、継続できる手作業を患者に与えることを学びます。父の場合、書類作成がそのような手作業でした。父は州立大学の教授だったので、書類仕事がどんなものか知っています。だから下線を見れば全て署名し、ボックスには全部チェックを付け、必要と思う所に番号を振るのです。そんな父を見て思いました。私を介護する人はどうするだろう? 娘の私も、国際保健学について、大いに読み、書き、考えてきました。だから、余白に書き込めるように学術誌でもくれるのでしょうか。それとも塗り絵ができるよう、グラフや図表をくれるのでしょうか。そういう訳にもいかないでしょうから、手を使う作業をするよう努めています。元々絵を描くのが好きなので、下手くそですが沢山描くようにしています。折り紙もやってます。きれいな箱をつくることも出来るんです(笑)。編み物も独学でやってます。まだ毛糸の塊のようなものしか編めませんが(笑)。

ただ重要なのは、上手かどうかよりも手がやり方を覚えているかどうかです。手が覚えていることが沢山あれば、脳の働きが衰えても楽しんで熱中できるのです。何かすることがある人はハッピーで、そうした人のケアはより容易で病気の進行も遅いと言われています。これは大変重要なことのように思えます。私は出来るだけ長い間ハッピーでありたいと願っています。アルツハイマー病には認知的症状だけでなく、身体症状があることを多くの人は知りません。平衡感覚を失い筋肉が震える結果、動きが少なくなります。歩き回ることや動くことが怖くなるのです。だから私は平衡感覚を鍛える運動をしています。平衡感覚が多少衰えても動くことができるようにヨガや太極拳をやっています。また、少し筋力が落ちても動けるように自分の体重を負荷とする運動もやっています。

最後に第三の点です。私はより良い人間になろうと努めています。父は、親切で誰からも愛される人物です。病気になる前からずっと変わりません。私は父が知性・ユーモア・言語能力を失うのを見てきましたが、同時に、父が私や私の息子たち、私の兄弟、母、介護してくれる人達を変わらず愛してくれることも見てきました。その愛情こそが、現在の非常に困難な状況においても私たちを父の周りに繋ぎ止めているものなのです。この世で学んだ全てを奪い去られても、父の心の輝きが消えることはありません。私は父ほど人に優しくもないし、愛される人間でもありませんでした。しかし今、私は父のようにありたいと強く感じています。認知症によって飾りが奪われてもなお、輝きを失わない美しい心を持ちたいと強く願っています。

アルツハイマー病になりたい訳ではありません。私に間に合うように、20年以内に治療薬が開発されればと思います。ただ、この怪物に狙われても私には準備ができているのです。

ありがとうございました。

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このプレゼンテーションについて:

自分の親がアルツハイマー病を患う姿を目の当たりにすると、私たちの多くは「自分だけは別」という否定か、過剰な予防のための努力という反応を示します。しかし、世界保健の専門家でTEDフェローのアラナ・シェイクはこの問題を別の視点から見ています。彼女は自分が(やがては訪れる)アルツハイマー病になったときに備えて、三つの具体的な準備をしています。

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