私たちの生活を形作る階段の隠れた役割(03:09)
講演内容の日本語対訳テキストです。
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ひょっとすると階段は 建築家が扱うものの中で 最も感情に影響を与えやすい 物理的要素かもしれません
[小さなこと 偉大なアイデア]
[デイヴィッド・ロックウェル 階段を語る]
基本的に階段は 高さの異なる A地点からB地点に行く手段です 階段には共通語があります 私たちが歩くのが「踏み面」で 「蹴込み板」は2枚の踏み面を 隔てる垂直の板です 階段の多くは 踏み面の先に 「段鼻」がついています そして連結する部分が 「側桁(がわげた)」です このように様々な形をした部品から 全ての階段はできています
階段が作られたきっかけは 多分 誰かが言ったのでしょう 「あの低い岩から この高い岩に登りたい」と 人々は使えるものは 何でも使って登りました 階段状に置いた丸太や はしごや 時と共に踏み固められた 自然道など チチェン・イッツァのピラミッドや 中国の泰山を登る道にあるような ごく初期の階段のいくつかは 人々が 神への崇拝や加護を求めて 高みへと到達するための手段でした
技術が進歩するにつれて 実用性も進歩しました 階段は 様々な材質で 作ることができ 直線階段もあれば 螺旋階段もあり 室内にも室外にも 作ることができます 緊急時には間違いなく役立ちますが 階段そのもの自体がすなわち アートの一様式でもあります
階段を上り下りする時 階段の形状は 私たちの 歩調、感情、安全を左右し 私たちの周囲の空間との 関係性や関わり方に影響します 一瞬の間 ニューヨーク公共図書館にあるような 緩やかで堂々とした階段を 下りる様を想像して下さい そこからの眺めは 通りや周りの人々が一望できる上に 踏面の幅が広いので 足取りが ゆっくりでしっかりとしたものになります このような体験は 狭い階段を下りて 古いパブのような空間に なだれ込むのとは 全く異なります 階段が急だと 歩調も急になります
階段は壮大なドラマを もたらしてくれます 従来 その場に入場するという 経験を際立たせつつ その瞬間に脚光を浴びる存在でした 階段は英雄的にさえなりえます 9月11日の 世界貿易センターへの攻撃に 持ちこたえて残った階段は 「Survivors' Staircase (生存者たちの階段)」と呼ばれました 何百人もの人々を安全な場所へと導く 主要経路の役割を果たしたからです
一方で小さな階段も 大きな効果を持つことがあります 玄関先の階段は 近所の人たちが集まり 賑やかに音楽を奏で 街の動きを眺める場所です 人々が階段に集う様子に 私は非常に興味をそそられます 単なる地面の上という以上の 空間にいたいと願う 私たちの深い人間的欲求を 階段が満たしているのだと思います だから 上り階段の半ばに 腰掛けることができたら そこはある意味 魔法の場所なのです
階段は、単に人をA地点からB地点へと移動させるだけのものではありません。建築家のデイヴィッド・ロックウェルが、階段がいかに人の動作や感情を演出するかについて説明します。