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「がん免疫療法」の安全性を高めるカギとなるたんぱく質を、マウスを使った実験で突き止めたと、大阪大のチームが発表した。このたんぱく質の働きを抑えれば、がんを攻撃する免疫細胞が活性化する一方、副作用は軽減できる可能性があるという。論文が22日、科学誌サイエンスに掲載される。
免疫細胞には、ウイルスやがんを攻撃して体を病気から守る「キラーT細胞」などのほか、逆にキラーT細胞などの働きにブレーキをかけ、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」も存在する。がん免疫療法では、これらの免疫細胞に働きかけ、効果的にがんを攻撃させる複数の薬が開発されているが、全身で炎症が起きるなどの副作用が出やすいことが課題だ。
阪大の山本雅裕教授(免疫学)らは、がんになったマウスの体内で、特にがんとの関係が深く、キラーT細胞などの攻撃からがんを守る特殊なTレグが増えることに着目。詳しく調べた結果、がんの内部の細胞が「PF4」というたんぱく質を分泌し、特殊なTレグが増えることがわかった。
がん細胞を移植したマウスにPF4の働きを抑える薬を与えると、特殊なTレグは減少し、がんが大きくなるのも抑えた。このTレグはがん患部に集中していると考えられ、薬を与えても体重が減少するなどの強い副作用はみられなかったという。
国立がん研究センターの西川博嘉分野長(免疫学)の話「特殊なTレグができる仕組みを突き止めたことは有意義だ。今後は人で効果があるかどうかや、がんの種類によって影響に違いがないかどうかを確かめる必要がある」
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こども家庭庁は来年度から、発達障害の可能性を見極めるのに有効な「5歳児健診」の普及に乗り出す。早期に障害がある子どもを支援し、症状の改善につなげるのが狙い。健診に必要な医師らを確保する費用や研修費を自治体に補助し、14%にとどまる実施率を2028年度までに100%にすることを目指す。
母子保健法は、1歳半と3歳児の健診を自治体に義務付けているが、5歳児健診は任意となっており、22年度の実施率は14・1%。多くの子どもは3歳児健診後、小学校入学前に受ける「就学時健診」まで、約3年の空白期間がある。
文部科学省によると、22年度に自閉症などの発達障害があって特別支援学級に通う児童は、約13万人に上った。就学時健診を機に発達障害が判明しても、進路選びや学校側の支援体制の構築に時間が足りないという課題があった。
5歳になると社会性が高まり、発達障害が認知されやすくなる。5歳児健診を実施している大分県竹田市で行われた研究では、自己表現や集団行動が苦手だった発達障害の子どもの多くが、支援を受けた結果、通常学級で過ごした。
全国的な普及に向け、こども家庭庁が健診を行っていない自治体に聞き取りをしたところ、「医師が確保できない」「発達障害児の支援体制の整備が難しい」といった声が寄せられた。
このため、同庁は来年度から医師の派遣に必要な費用のほか、発達障害児をサポートする保健師、心理士向けの研修費を補助する。5歳児健診を行う自治体への補助額についても、1人あたり3000円から5000円に引き上げる。
自治体には発達障害と判明した場合、子どもが在籍する保育所などで個別の支援計画を作るよう要請。円滑な学習や集団生活につなげるため、入学先の小学校にも伝えるよう求める。総務省の人口推計では、23年10月1日現在の5歳児は約91万5000人だった。
小児神経科医でもある鳥取県倉吉保健所の小倉加恵子所長は「5歳児健診は子どもの状態に応じた支援の必要性を保護者がとらえ、就学後に本人が学校に適応していくために重要だ。地域で発達障害がある子どもを支援する体制を作るためにも、制度を定着させる意義は大きい」と指摘する。
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日本の医療産業の競争力強化に向けた政府の「医療分野研究開発推進計画」の案を内閣府がまとめた。医薬品や医療機器の実用化を重点目標とし、AI(人工知能)を活用した創薬や治験の体制強化を盛り込んだ。今年度内に正式決定する。
今月13日に専門家会議に示した計画案では、2025~29年度の5年間に政府が進めるべき施策を挙げた。研究成果の企業への権利譲渡などを年130件、治験を年60件行うとしている。さらに長期目標として、〈1〉政府の支援を受けて研究開発された製品が欧米で承認を受ける〈2〉国の資金支援を受けた医療系スタートアップ(新興企業)の企業価値を10億ドル(約1550億円)超とする――なども掲げた。
目標達成のため、AI技術を用いた創薬や診断システムの構築、国際共同治験を行う体制整備、新興企業への助言などの事業に取り組むとしている。
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厚生労働省は、地域住民の健康づくりを支援する「健康サポート薬局」について、医薬品医療機器法(薬機法)に基づく認定制度を導入する方針を決めた。介護用品の販売などの要件を定めて都道府県が審査を行うことで、質の向上を図る。来年の通常国会に同法改正案の提出を目指す。
健康サポート薬局の仕組みは2016年に始まった。夜間の相談や在宅療養への対応などが求められ、一定の実務経験を持つ薬剤師が常駐する薬局が所定の研修を受けると、都道府県に届け出てウェブサイトなどで名乗ることができるようになる。今年3月時点で全薬局の5%にあたる約3200か所が届けているが、各薬局の支援内容にばらつきがあるとの課題があった。
今回、超高齢社会に対応する機能の充実に重点を置き、都道府県が認定する制度に改める。認定要件には〈1〉介護用品や市販薬の販売〈2〉住民と医療・介護の関係機関をつなぐ機能〈3〉自治体が行う健康増進や介護予防事業への積極的な参加〈4〉住民からの健康相談体制の整備――などが想定される。
今後、地方を中心に医師や看護師らが不足する見通しだ。厚労省は、住民が主体的に健康づくりを行うほか、軽症者が医療機関を受診せずに市販薬で対処することを推進しており、認定制度の導入もその一環となる。
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厚生労働省は13日、米製薬大手イーライリリーのアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」(商品名ケサンラ)を公的医療保険の対象とすることを決めた。薬価(公定価格)は1人あたり年間308万円で、20日から適用となる。
薬価は、昨年承認された同じタイプの治療薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)の薬価(体重50キロの場合、年間298万円)を基準に算定された。投与開始1年の時点で治療を終了できる可能性を評価する加算がついた。患者の自己負担は、国の高額療養費制度により軽減される。
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子どもを中心に流行するマイコプラズマ肺炎について、国立感染症研究所は12日、3日までの1週間に全国約500の医療機関から報告があった患者数は1医療機関あたり2・46人(速報値)だったと発表した。現在の調査方法となった1999年以降で最多となった前週の2・49人のほぼ横ばいとなり、大きな流行が続いている。専門家は「治療薬が効きにくいタイプが6割近くに上り、感染拡大の一因となっている」と指摘している。
マイコプラズマ肺炎は「肺炎マイコプラズマ」と呼ばれる細菌に感染することで引き起こされる。発熱や長引くせきなどが表れ、多くは軽症だが、一部で重症化したり、心筋炎などを合併したりする。治療には「マクロライド系」という種類の抗菌薬が使われる。
川崎医大の調査では、今年1~9月に全国7医療機関で採取された細菌を解析したところ、マクロライド系が効きにくい耐性菌が56%を占めた。同大の大石智洋教授(臨床感染症学)は「薬を2~3日飲んでも解熱しなければ、再度受診してほしい。耐性菌でも別の種類の抗菌薬を使えば治療できる」と話している。
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厚生労働省は8日、インフルエンザが流行入りしたと発表した。全国約5000か所の医療機関から10月28日~11月3日の1週間に報告された感染者数は、1医療機関あたり1・04人で、流行入りの目安となる1人を超えた。年間を通じて流行が続いた2023年を除けば、過去10年で最も早い流行入りとなる。
都道府県別では、沖縄(10・64人)が最も多く、静岡(2・09人)、千葉(2・00人)が続いた。16県で1人以上だった。
新型コロナウイルスの感染対策の徹底などにより、インフルエンザは20年春から約2年半、流行しなかった。その後、22年末に始まった流行は24年4月まで続いた。
三鴨広繁・愛知医大教授(感染症学)は「今シーズンは、まだワクチンを接種していない人が多いとみている。いつもより患者が増える可能性がある。混雑する場所でのマスク着用のほか、幅広い世代で早めのワクチン接種を検討してほしい」と呼びかけている。
一方、新型コロナは、1医療機関あたり1・57人。前週(1・69人)の0・93倍で、10週連続で減少した。
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厚生労働省は2025年度、中堅以降の医師に総合的な診療能力を習得してもらうための学び直しの支援事業を始める方針を固めた。幅広い病気を診られる医師を増やし、医師不足が深刻な地方での勤務を促すことで、医師偏在の改善につなげる考えだ。
総合的な診療能力を持つ医師は様々な症状の患者を診察し、必要に応じて専門医を紹介する。高血圧や骨粗しょう症、白内障などいくつもの持病を抱える高齢者の割合が高い地方では特にニーズが高まっている。
支援事業の対象は、各診療科で働く中堅やベテランの医師ら。大学病院や大病院の勤務医らには、開業や定年後を見据えて総合的な診療能力を持つことが強みになる点をアピールするなど、それぞれの事情を踏まえ学び直しを促す。
希望者には、総合診療の経験豊富な医師らから、オンラインなどを通じて多くの領域の知識や診療のポイントを学ぶ研修の機会を提供する。指導的な立場の医師の助言を得ながら、総合診療の経験を積める中小病院や診療所も紹介する。病院団体や学会などが実務にあたる。
国内では専門医の認定を担う日本専門医機構が総合診療専門医の育成を進めてきた。ただ、研修や試験を経て認定されるのは若手を中心に年数百人にとどまる。
厚労省は、都市部の大病院で特定の臓器や病気を診療してきた専門医が、学び直しにより幅広い領域を診られるようになれば、地方で勤務しやすくなるとみる。支援事業で一定の技能を習得した医師らに、医師不足が深刻な地域の医療機関を紹介することも検討している。
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横須賀共済病院(横須賀市米が浜通)は1日、不整脈の一つ「心房細動」の患者に高電圧の電流を用いる最新治療を開始した。高齢社会で心房細動の患者数が増える中、従来の治療法よりも低リスクで手術時間も短縮できる。各地で実施例があるが、県内での導入は初めてという。(光尾豊)
心房細動は、血液が流れ込む心臓上部の左心房が1分間に500~600回(通常60~100回)の速さで震える病気。血液が滞って血栓ができやすくなり、心不全や脳梗塞のリスクが高くなる。動悸や不快さを感じるが、約半数は無症状で気付かない人も多い。
国内の患者数は100万人と推計され、同病院では年間400~450件の治療を実施している。加齢や心臓病などが原因とされ、高齢社会に伴い患者数も増えている。
同病院が1日に導入した新治療は「パルスフィールドアブレーション」と呼ばれ、静脈から心房に入れたカテーテル(細い管)で肺静脈近くの筋肉に高電圧をかける。細胞を壊死させることで心房細動を引き起こす異常な電気信号を遮断するという。
同病院が導入したカテーテルは先端が五つに分かれた立体構造。手元の操作で紡錘状に細くしたり、花弁状に広げたりでき、ピンポイントで高電圧をかけられる。
従来の治療法は、筋肉をカテーテルの先から出る高熱で焼いたり、低温のガスを入れた風船で凍傷にしたりして壊死させていた。熱を使うため、周辺の食道や神経に与える影響も少なくなかった。手術時間も2~3時間を要したが、新治療では、1時間程度に短縮でき、患者への負担も小さくなるという。
同病院循環器内科の田中泰章部長は「新治療法はヨーロッパで10万例の実績があり、安全性は確保されている。熱を使わないので心臓近くの食道などを損傷するリスクも軽減される」と話している。
心房細動治療の問い合わせは、横須賀共済病院ブランド推進室(046・822・2710)へ。
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藤田医科大ばんたね病院(名古屋市中川区)が、虫歯の歯痛と症状が似ていて診断が難しい三叉神経痛の専門外来を設け、地域の歯科診療所と連携して早期発見と根治に取り組んでいる。同病院脳神経外科の小松文成准教授によると、県内の発症者は、年間300~600人で、手術で根治が可能という。
三叉神経痛は、額、頬、あごなどの感覚を脳に伝える三叉神経が、周囲の血管に圧迫されることで発症する。顔の片側で、上下のあご付近に激しい痛みが繰り返す。洗顔、化粧、歯磨き、食事、会話などの日常活動がきっかけとなり、数秒から数十秒の痛みが発生する。小松准教授によると、50歳以上の女性に比較的多く、県内の患者は約2250人と推計している。
痛みによって日常生活に支障がでる場合があるが、普通の痛み止め薬は効かず、治療には、脳神経を鎮める薬物療法や神経ブロックが一時的に施される。根治手術は、三叉神経から圧迫の原因となっている血管を離す手術などが必要になる。
ただ、強い歯痛と勘違いして、初診は歯科に通う患者が多いことが課題になっている。歯科では診断に至らず、複数の医療機関を受診して治療の開始が遅れる傾向も見られるという。
このため、2021年4月から専門外来を週2回開く小松准教授らは、一宮市や安城市など各地の歯科医師会を訪問し、説明や講演で連携を図っている。歯科医師向けに三叉神経痛の問診票も作成して、患者が10項目のうち半数以上に該当すれば、診断に有効な頭部の磁気共鳴画像(MRI)検査を勧めるように依頼している。
専門外来では、MRIとコンピューター断層撮影(CT)を合成して、立体画像で診断を行う。手術は内視鏡を使い、耳の後ろを約1・5センチ開ける方法を採る。同年54件、22年99件、23年92件の手術を実施、従来の開頭手術よりも内視鏡内にあるカメラで状況を把握しやすく、安全性は高まっているという。
小松准教授は「手術でほぼ根本的に痛みが治まる。地域の歯科医師と連携して、原因が分からないという患者の不安を解消したい」と話している。